
若い男女の試験では、差は得意なやり方の違いとして表れた
「女性は地図が読めない」という言い方は、いまもよく聞く。2024年の試験の著者らは、問題の出発点をこう書く[10]。動物の研究は、いわゆる女性ホルモンのエストロゲンが空間のナビゲーションと記憶を高めると示唆している。これは、男性のほうが空間の課題でおおむね上回るという観察と食い違う。しかし多くの研究をよく見ると、成績の差はそれほどはっきりしない[10]。
試験は二重盲検で偽薬と比べる形で組まれた。月経周期のうちホルモンの低い時期にある健康な若い女性にエストラジオール吉草酸エステルを飲んでもらい、健康な若い男性と比べた[10]。課題は、動物の研究の手法をもとにした、景色の豊かな一人称の立体のコンピューターゲームである[10]。
結果は、エストロゲンの影響よりも性の影響が大きかった。男性は周りの位置関係を基準にするやり方(他者中心)で、女性は自分の体を基準にするやり方(自己中心)で成績がよかった[10]。エストロゲンの値が上がっても、女性でも男性でも空間の力が全体に上がることはなく、ナビゲーションの柔軟さを映す行動の変化が出た[10]。著者らは、エストロゲンによる空間の認知の違いは、決まった成績や技能の上下より、ナビゲーションの柔軟さの連続した幅で捉えるほうがよいと結論している[10]。
「地図が読めない」と「地図の読み方が違う」は、だいぶ違う。北が上の地図で周りの関係から考えるか、次の角を右と自分の体から考えるか。この試験の結果が示すのは、得意な道の違いである。どちらのやり方がどんな人に向くかを、この1本で決めることはできない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
脳の男女差を40年探して、成果は約束に届かなかった
脳の男女差の話には、もっと大きな背景がある。2025年の総説によれば、人の脳の画像の研究は1980年代に広がり、行動と心の健康の男女差の分析にあふれるほど使われてきた[8]。その大半は、参加者を受付の男女の欄で2つに分け、画像で見つかった性差が神経や精神の病気の治療に大きく役立つと主張してきた[8]。
しかし著者によれば、40年の取り組みの実際の成果は、その約束に届かなかった。理由の一部は、性を2つに分けすぎたことと、人の行動と脳の働きに影響する複雑な要因としてのジェンダーを見てこなかったことにある[8]。総説は、近代の男女の脳の違いをめぐる主張が外れてきた歴史と、その研究を動かしてきた潤沢な資金の誘因も検討している[8]。
では、どうすればよいのか。著者は、不安、危険を冒す傾向、言葉の記憶、空間のナビゲーションといった具体的な行動に絞り、体の大きさ、ホルモンの値、遺伝子の働き、世話をする役割、経済的な自立、差別といった性とジェンダーの具体的な要素を見るべきだとする[8]。
地図の話に戻せば、男女の箱で比べる前に、誰がどれだけ一人で知らない町を歩いてきたかを聞くほうが、ずっと多くのことが分かるのかもしれない。これは私の推測で、この総説が方向音痴を調べたわけではない。

音で方向を知らせ、自分で歩き回って探る
迷いにくくする手がかりの研究もある。2025年の試験は、45〜65歳の64人を、仮想現実の迷路で音による方向の手がかりを受ける群と、受けない群に無作為に分けた[7]。音の手助けを受けた群は課題を有意に速く終え、主観的な頭の負担も低いと答えた[7]。課題をやり遂げた割合と使いやすさの評点は、音の群に良い傾向はあったが統計的に有意ではなかった[7]。男女で分けた解析では、音の案内が成績の差を縮める助けになるかもしれず、とくにもともと空間に自信の低い人に役立つ可能性が示された[7]。
子どもの研究は、別の角度から手がかりをくれる。2024年のレビューは、3,385本の研究を見て47本を選び、子どもの空間のナビゲーションを、歩くなどの移動の中でどう測るかを整理した[19]。多くは5〜12歳を対象にしていて、乳児と就学前の子どもを扱ったのは9本だった[19]。著者らの結論のうち2つを挙げる。神経発達の障害がある子ども、またはそのおそれのある子どもは、ナビゲーションの力が低い。そして、空間を自分で選んで探れることが、どう移動するかより大切だということだ[19]。著者らは、乳児期の早いうちから移動の中でナビゲーションを測る道具が要るとも結んでいる[19]。
どう移動するかよりも、自分で探る選択肢があるかどうか。大人の方向音痴に当てはめてよいかは別の話だが、ナビの矢印のとおりに歩くだけの日と、自分で角を選ぶ日とを比べてみたくなる結果ではある。
年を重ねて急に道に迷うようになったら
若いころからの方向音痴と、年を重ねてからの変化は、分けて考えたい。2026年の総説によれば、認知の加齢は人によって大きく違い、年齢だけでは認知の健康をうまく予測できない[16]。総説は、出来事の記憶と空間のナビゲーションに欠かせない内側側頭葉に注目し、認知の衰えは神経細胞の目に見える減少より、網の目の調節とつながりの柔軟さの変化と結びついているとまとめている[16]。
一方で、ナビゲーションの衰えが病気の手がかりになる場面もある。2022年の系統的レビューとメタ分析は、見つかった1,372本の論文から24本の研究を統合し、軽度認知障害や認知症の高齢の人のナビゲーションの成績を、健康な高齢の人と比べた[11]。認知の衰えのある人では差が大きく、標準化平均差(群の差の大きさを表す数字)は0.87だった[11]。記憶の障害が目立つ軽度認知障害では1.10、アルツハイマー病では1.60である[11]。混合型と血管性の認知症では、課題で差を見分けられなかった[11]。床に描いた迷路を歩く検査がもっとも大きな差を示し、歩くことを求める課題で2つの群の違いがいちばん大きかった[11]。著者らは、ナビゲーションの障害は重要な、ただし病気に特有の行動の目印で、早い段階でも見つけられることを示唆するとしている[11]。
親が、何十年も通った道で迷うようになった。そういう変化は、方向音痴の話として笑って済ませず、医師に相談する材料の1つにしてよい。

よくある誤解
「女性は地図が読めない」。若い男女を比べた試験で出たのは、男性は他者中心、女性は自己中心のやり方で成績がよいという違いだった[10]。同じ著者らは、多くの研究を見ると成績の男女差はそれほどはっきりしないと書いている[10]。脳の画像の研究で性を2つに分けすぎたことが、40年の成果が約束に届かなかった理由の一部だとする総説もある[8]。
「女性ホルモンが増えれば方向感覚がよくなる」。動物の研究はそう示唆してきたが、人の試験ではエストロゲンの値が上がっても空間の力は全体に上がらず、変わったのはやり方の柔軟さだった[10]。
「方向音痴は、脳のどこか1か所の問題だ」。場所に反応する細胞は主に海馬に、目印の見え方に反応する細胞は海馬傍回にあり[1]、景色を捉える領域と景色を地図に置く領域も別だった[2]。道順の計画には前頭葉の仕組みも加わる[3]。どれも方向音痴の人を調べた研究ではないが、道を見つける働きが1か所に収まっていないことは分かる。
今日からできること
- 迷いやすい駅では、出口ごとに目印を1つ決める。317個の細胞を記録した研究では、目印の見え方に反応する細胞が海馬傍回に見つかり[1]、地図を動かない目印につなぎ止める入力も報告されている[3]。目印を決める工夫そのものを試した研究ではない
- 景色を見たら、その景色が駅のどちら側かを一度言葉にする。景色を捉える領域と、景色を広い空間に置く領域は2つに分かれていた[2]。言葉にすることの効果は、まだ試されていない
- 自分が得意なやり方を知る。周りの位置関係で考えるか、自分の体から「次を右」と考えるかで、男女の成績の出方が違った試験がある[10]
- 音の案内を遠慮なく使う。64人の試験では、音の方向の手がかりで仮想の迷路を有意に速く抜け、頭の負担も低かった[7]
- 時々はナビを閉じて、自分で角を選んで歩く。47本の研究のレビューは、子どもでは空間を自分で選んで探れることが大切だとした[19]。大人で確かめた結果ではない
- 家族が慣れた道で急に迷うようになったら、医師に相談する。24本の統合で、アルツハイマー病の人と健康な高齢の人の差は1.60と大きかった[11]
迷いにくい場所にあるオンザショア
目印を決めても、迷う日はある。通う場所は、迷う余地の少ないところにあるほうがいい。オンザショア立川店は、JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。
店の営業は8:00〜23:30だが、レッスンの始まりは曜日で違う。8時の回は土曜と日曜だけで、平日の朝いちばんは月曜から木曜が10時、金曜が13時、夜の遅い回は水曜と金曜の21時開始である。初めてなら体験レッスン(ヨガ)が税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚とフェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが入る。
溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガのほか、常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。当店に通うと方向感覚がよくなるとは言わない。体験の予約、料金、店のトップから確かめられる。
参考文献
[1] Cellular networks underlying human spatial navigation — Ekstrom AD, Kahana MJ, Caplan JB, Fields TA, Isham EA, Newman EL, Fried I., 2003, Nature. DOI: 10.1038/nature01964
[2] Parahippocampal and retrosplenial contributions to human spatial navigation — Epstein RA., 2008, Trends in cognitive sciences. DOI: 10.1016/j.tics.2008.07.004
[3] The cognitive map in humans: spatial navigation and beyond — Epstein RA, Patai EZ, Julian JB, Spiers HJ., 2017, Nature neuroscience. DOI: 10.1038/nn.4656
[4] A prefrontal-thalamo-hippocampal circuit for goal-directed spatial navigation — Ito HT, Zhang SJ, Witter MP, Moser EI, Moser MB., 2015, Nature. DOI: 10.1038/nature14396
[5] Engagement of neural circuits underlying 2D spatial navigation in a rodent virtual reality system — Aronov D, Tank DW., 2014, Neuron. DOI: 10.1016/j.neuron.2014.08.042
[6] Sublayer-Specific Coding Dynamics during Spatial Navigation and Learning in Hippocampal Area CA1 — Danielson NB, Zaremba JD, Kaifosh P, Bowler J, Ladow M, Losonczy A., 2016, Neuron. DOI: 10.1016/j.neuron.2016.06.020
[7] The effects of auditory directional cues on task performance and cognitive load in virtual reality for middle-aged adults — Yeh P, Wu Y., 2025, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2025.09.033
[8] “Precision Medicine” and the Failed Search for Binary Brain Sex Differences to Address Gender Behavioral Health Disparities — Eliot L., 2025, American journal of human biology : the official journal of the Human Biology Council. DOI: 10.1002/ajhb.70041
[10] Effects of estrogen on spatial navigation and memory — Joue G, Navarro-Schröder T, Achtzehn J, Moffat S, Hennies N, Fuß J, Döller C, Wo, 2024, Psychopharmacology. DOI: 10.1007/s00213-024-06539-3
[11] Spatial navigation in older adults with mild cognitive impairment and dementia: A systematic review and meta-analysis — Plácido J, de Almeida CAB, Ferreira JV, de Oliveira Silva F, Monteiro-Junior RS, 2022, Experimental gerontology. DOI: 10.1016/j.exger.2022.111852
[13] Continuous attractor dynamics in spatial navigation: from population geometry to flexible computation — Chen Y, Hua M, Sun X, Peng J., 2026, Frontiers in neuroscience. DOI: 10.3389/fnins.2026.1788255
[16] Hallmarks of healthy cognitive aging: Inter-individual differences in aging trajectories — Abrous DN, Blin N, Boraxbekk CJ, Catheline G, Fitzsimons CP, Hilscher M, Lemoine, 2026, Ageing research reviews. DOI: 10.1016/j.arr.2026.103102
[17] The Neural Mechanisms of Visual and Vestibular Interaction in Self-Motion Perception — Liu J, Zeng F., 2025, Biology. DOI: 10.3390/biology14070740
[18] Common and specific activations supporting optic flow processing and navigation as revealed by a meta-analysis of neuroimaging studies — Sulpizio V, Teghil A, Pitzalis S, Boccia M., 2024, Brain structure & function. DOI: 10.1007/s00429-024-02790-8
[19] Measuring spatial navigation during locomotion in children: A systematic review — Martín-Pozuelo N, Carballo-Costa L, Solís-García M, Giancola M, Piccardi L, De L, 2024, Heliyon. DOI: 10.1016/j.heliyon.2024.e33817
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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