
同じ舌でも、直前の温度と出来事で感じ方が動く
2013年の研究は、健康な男性30人(平均26歳)で、あご先、下唇、頬、額、舌の先の5か所を左右で測った[6]。冷たさの気づき、温かさの気づき、熱さの痛みは場所によって有意に違い、冷たさの痛みには場所の差がなかった[6]。
この研究のもう一つの問いは、舌の先の出発の温度である[6]。32℃と36℃の二つの温度から測り始めると、冷たさの痛みのしきい値には差がなく、熱さの痛みのしきい値には有意な差があった[6]。著者らは、出発の温度が舌の温度への敏感さに影響したと結論している[6]。
冷たい水を飲んだあとの熱いお茶と、熱いお茶の二杯目では、舌の出発点がそもそも違う。研究が調べたのは装置で整えた32℃と36℃だが、口の中の温度が一定ではないことを考えると、同じ一杯でも日によって熱さが違って感じられることには、こうした背景があるのかもしれない、と私は読む。
口の中の別の出来事でも、感じ方は動く。2015年の研究は、健康な13人(女性6人、男性7人、平均28.4歳)の歯に電気の刺激を与え、そばの歯ぐきの感覚を測った[19]。痛い強さの刺激のあと、歯ぐきでは温かさと熱さの痛みのしきい値が下がり、押す痛みにも敏感になり、触れる感覚は鈍くなった[19]。感じないほど弱い刺激のあとでも、似た温度のしきい値の変化が出た[19]。刺激を与えない回では、変化は見られなかった[19]。著者らは、歯の刺激のあとに、歯ぐきが温かさ、熱さの痛み、圧にやや敏感になり、痛くない触れる刺激には鈍くなったとまとめている[19]。
顔の皮膚で、別の刺激のあとに変わった例もある。2007年の研究は、健康な男性10人に冷たさの刺激(寒冷昇圧刺激)を与え、右の耳の穴の約10mm前の顔の皮膚で熱さの痛みのしきい値を測った[4]。刺激のあと、熱さの痛みのしきい値は有意に上がった[4]。血液のコルチゾール、βエンドルフィン、副腎皮質刺激ホルモンが増え(5人が受けた偽の刺激では増えなかった)、刺激の間は血圧と心拍も上がった[4]。著者らは、視床下部・下垂体・副腎の軸と呼ばれるホルモンの仕組みが働いて熱さの痛みのしきい値が上がったと示唆し、体の中のオピオイドの仕組みが関わるかもしれないと書く[4]。ただし、測ったのは口の中ではなく顔の皮膚で、10人の研究である。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
冷たさに敏感な人は、熱さにも敏感な傾向がある
2013年の30人の研究は、場所ごとのしきい値の関係も調べた[6]。冷やされることに敏感な人は、あご先(相関係数0.379)、舌の先(0.610)、頬(0.431)で、温められることにも敏感だった[6]。下唇と額では、この関係は見られなかった[6]。冷たさの痛みと熱さの痛みのしきい値には、すべての場所で強い負の相関があった[6]。冷たさの痛みを早く感じる人ほど、熱さの痛みも早く感じる、という向きである。著者らは、冷たさに比較的敏感な人は熱さにもより敏感な傾向があると結論している[6]。
もっとも、これは30人の男性の相関で、冷たいものが苦手だから熱いものも苦手になる、という因果を示したものではない。
時間の面からも見ておく。2011年の研究は、舌の先のしきい値を6週間に3回測り、時間による揺れは有意でなかった[3]。著者らは、舌での時間による揺れは控えめだと書いている[3]。直前の温度や刺激では動くのに、6週間の平均では大きく揺れない。熱さへの敏感さには、その日の状態で動く部分と、その人の中で比較的そろっている部分の両方があるように見える。

年齢の差は、研究で割れている
2018年の中国の研究では、41〜61歳の群は20〜40歳の群より、温かさと冷たさの気づきが鈍かった[2]。男性は女性より、温かさの気づきと触れる感覚の気づきが鈍かった[2]。著者らは、年齢、性別、場所は必ずそろえるべき条件だと結論している[2]。
2015年の70人の研究では、24〜40歳の32人(女性16人、男性16人)と41〜69歳の38人(女性20人、男性18人)を、眼の下、あご、手で測った[10]。ほとんどの項目で女性は男性より敏感で、年齢もほとんどの項目に有意に影響した[10]。熱さの痛みのしきい値は若い群が38.07±2.94℃、年上の群が39.85±3.52℃で、温かさの検出のしきい値は1.40±0.74℃と1.89±1.14℃だった[10]。熱さの痛みの平均の差は1.78℃だが、それぞれの群の±で示されたばらつきは2.94℃と3.52℃で、差より大きい。年齢の群が違っても、重なる人は多いと読める。
一方、1992年の研究は、20〜34歳から80歳以上までの5つの年齢の区分の健康な大人60人で、口の中の感覚を調べた[11]。温度への敏感さは年齢で変わらなかった[11]。口の感覚の全体も年をとって良く保たれ、80歳を過ぎてわずかな衰えが見られただけだった[11]。
いまの時点で言えるのは、顔と口の熱の感じ方は年齢や性別で違うと報告する研究がある一方、口の温度の感覚は年齢で変わらないとする研究もある、ということだ。どれも数十人の規模で、年齢や性別だけで猫舌を説明する根拠にはならない。
よくある誤解
「猫舌は舌が弱いだけ」。熱さを不快や痛みと感じ始める温度は人によって大きく違い[8]、同じ舌でも触れる面の広さ[3]や出発の温度[6]でしきい値が動いた。そもそも猫舌そのものを試した研究は、この記事の中にない。一言の体質で片づけられるほど、舌の答えは単純ではない。
「舌は口の中でいちばん熱に強い」。逆である。口の中では舌の先がいちばん低いしきい値で[3]、いちばん敏感で、歯ぐきがいちばん鈍かった[5]。ただし、舌の先と下唇の粘膜は、あご先の皮膚よりは熱さの痛みのしきい値が高かった[2]。
「年をとると誰でも熱さに鈍くなる」。年上の群で温かさの気づきが鈍かった研究がある一方で[2][10]、口の中の温度への敏感さは年齢で変わらなかったという研究もある[11]。

今日からできること
- 熱い飲み物は、舌の先から迎えない飲み方を試す。口の中では舌の先がいちばん敏感だった[3][5]。飲み物で試した研究ではないので、自分の舌で確かめる。
- ひと口を小さくする。舌の先では触れる面が広いほど温かさと熱さの痛みのしきい値が下がり[3]、直径10mmの道具は3mmより強く感じられた[5]。飲み物で試した方法ではなく、舌での面の影響は控えめともされている[3]。
- 「熱い」と「痛い」を分けて言葉にする。熱さの不快のしきい値は、痛みのしきい値より平均で低かった[8]。嫌だと感じた段で止めてよい。
- 冷たいものの直後に熱いものを口にする日は、感じ方がいつもと違うかもしれないと知っておく。舌の先の出発の温度を32℃と36℃で変えると、熱さの痛みのしきい値に差が出た[6]。
- 家族や同僚と比べて落ち込まない。不快や痛みを感じ始める温度は、健康な若い男性どうしでも大きく違った[8]。
- やけどのあとの痛みが長く続く、口の中がいつも焼けるように痛む、しびれるといったときは、我慢せず歯科医師か医師に相談する。
熱さの好みが違うなら、オンザショアで部屋から選ぶ
この記事の研究は口と顔の温度の感じ方を測ったもので、スタジオの暑さを調べたものではない。それでも、熱さを嫌だと感じる温度に人によって大きな差があるという事実[8]は、暑さが合う人と合わない人がいることを、責めずに受け止める手がかりになると私は考える。
オンザショア立川店には、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガと、常温のヨガの両方がある。ほかにピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。妊娠中の方は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。
初めての体験レッスン(ヨガ)は税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが付く。場所はJR立川駅北口から徒歩1分の、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。店は8:00〜23:30の年中無休で開いているが、レッスンの開始の時刻は曜日で違い、12月29日から1月3日は通常のレッスンを休んで会員向けの特別の有料講座になる。予約は体験の予約、料金は料金のページ、店の全体はトップページから。
参考文献
[2] Quantitative sensory testing (QST) in the orofacial region of healthy Chinese: influence of site, gender and age — Wang Y, Mo X, Zhang J, Fan Y, Wang K, Peter S., 2018, Acta odontologica Scandinavica. DOI: 10.1080/00016357.2017.1383511
[3] Orofacial thermal thresholds: time-dependent variability and influence of spatial summation and test site — Pigg M, Svensson P, List T., 2011, Journal of orofacial pain. DOI: なし
[4] Responses of the hypothalamic-pituitary-adrenal axis and pain threshold changes in the orofacial region upon cold pressor stimulation in normal volunteers — Suzuki K, Maekawa K, Minakuchi H, Yatani H, Clark GT, Matsuka Y, Kuboki T., 2007, Archives of oral biology. DOI: 10.1016/j.archoralbio.2007.01.008
[5] Assessment of human intraoral thermal sensitivity with simple devices in the clinic: implications for orofacial pain conditions — Naganawa T, Baad-Hansen L, Iida T, Ando T, Svensson P., 2015, Journal of oral & facial pain and headache. DOI: 10.11607/ofph.1221
[6] Influence of test site and baseline temperature on orofacial thermal thresholds — Kim HK, Kim KS, Kim ME., 2013, Journal of orofacial pain. DOI: 10.11607/jop.1030
[7] Comparison of orofacial thermal sensitivity assessed with simple devices and sophisticated equipment — Ayranci M, Koutris M, Lobbezoo F, Svensson P, Baad-Hansen L., 2018, European journal of pain (London, England). DOI: 10.1002/ejp.1278
[8] Comparison of unpleasant and pain thresholds of thermal stimuli in the orofacial regions: a psychophysical study using quantitative sensory testing in healthy young men — Kim HK, Kim ME., 2018, Somatosensory & motor research. DOI: 10.1080/08990220.2018.1491837
[10] [Data of the quantitative orofacial somatosensory functions of healthy subjects and its influence factors analysis] — Yang GJ, Cao Y, Zhang L, Qin XY, Xie QF., 2015, Beijing da xue xue bao. Yi xue ban = Journal of Peking University. Health sciences. DOI: なし
[11] Age-related changes in oral sensation — Calhoun KH, Gibson B, Hartley L, Minton J, Hokanson JA., 1992, The Laryngoscope. DOI: 10.1288/00005537-199202000-00001
[18] The orotrigeminal system — Klein AH., 2019, Handbook of clinical neurology. DOI: 10.1016/b978-0-444-63855-7.00013-7
[19] Differential changes in gingival somatosensory sensitivity after painful electrical tooth stimulation — Baad-Hansen L, Lu S, Kemppainen P, List T, Zhang Z, Svensson P., 2015, Experimental brain research. DOI: 10.1007/s00221-014-4186-4
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- ぬいぐるみの心理的効果は大人にも?抱く形の機器とテディベアの実験を読む
- 腕の重さは何キロ?上腕2.1kgという値と、体重の何%かが研究ごとに違う理由
- 腕の長さは身長と同じ?両腕を広げた幅と背の高さを、日本の子どもの基準値と各国の測定で読む
- 岩盤浴でワキガは弱まる?汗で試した研究は見当たらず、脇の菌と耳あかの型の遺伝子を読む
- 適度なストレスは必要か、ほどよい緊張で力が出る説と、捉え方を変える試験を読む
- 空腹時に眠くなるのはなぜ?空腹で目が冴える説と、断食中の眠気の研究を読む
- 緑の心理的効果は本当か、緑を見た後の創造性と運動中の気分を試した実験を読む
- 温泉はなぜ気持ちいい?同じ温かさの快さが体の中の温度で変わる仕組みを研究で読む
- 指の運動は脳にいいのか、高齢者の指の体操の試験と、指の動きと認知の関係を読む
- 運動すると顔が赤くなる人とならない人は何が違う?皮膚の血流を変える体力と暑さ慣れ
- 夜に喉が渇くのはなぜ?寝る前の先回りの渇きはマウスで見つかり、人は食事の前後に飲んでいた
- ブルーライトで眠れないは本当か、睡眠との関係を実験室・家庭・メタ分析の試験で読む
- 睡眠不足でクマはできる?他人の目に暗く映った実験と、181人の写真では差が出なかった実験
- 睡眠不足で寿命は縮む?短い眠りも長い眠りも死亡の多さと結びついた追跡研究を読む
- ストレス解消に握るボールは効く?検査や手術の最中に握った試験で、不安と痛みはどう変わったか
- 体脂肪率が何%で生理は止まる?1つの線は引けず、食事の不足を鍵とみる研究を読む
- 体脂肪率は入浴後に下がる?肌を温めた実験と水を飲んだ実験から、湯上がりの数字を読む
- ソイプロテインは女性に危険?イソフラボンの試験は誰に何を測ったか、男女のホルモンを読む
- ホットヨガで汗疹はできる?汗の出口の詰まりとされるあせもの仕組みと、汗をためない工夫
- 夜勤前の仮眠は何時間がよい?試験の多くは夜勤中の仮眠、30分と2時間の眠気と寝起き
- 入浴後に疲れるのはなぜ?湯につかると心拍は上がり血圧は下がる、その数字を研究で読む
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
2







