ブルーライトで眠れないは本当か。実験室では光る電子書籍を読んだ夜に寝つきが遅れメラトニンが抑えられたが、青い光を減らす眼鏡の3試験を束ねると寝つきの差は有意でなかった。朝や昼の青い光で眠りの指標が改善した職場と家庭の試験、光だけでないスマホの夜も読む。
夜11時、明日の講義の資料を閉じて、ベッドで短い動画を3本だけ見るつもりだった。気づけば0時を過ぎている。目を閉じても頭が冴えている。ブルーライトのせいだ、とよく聞く。それは本当なのか。
夜に光る画面の光が、体内時計の目印になるホルモンのメラトニンを抑え、体内時計を遅らせ、寝つきを遅らせることは、実験室の試験で示されている[1][3]。寝る前の数時間に、光る端末で電子書籍を読んだ夜は、紙の本を読んだ夜より寝つくまでが長く、メラトニンの分泌が減り、体内時計が遅れ、翌朝の目覚めも鈍かった[1]。
一方で、青い光を減らす眼鏡をかければ眠りがよくなるか、という問いへの答えはずっと弱い。大人を対象にした3つの二重盲検の交差試験(合わせて49人)を束ねたメタ分析では、寝つくまでの時間は平均4.86分短い方向だったが、有意な差ではなかった[11]。総説は、画面と眠りの結びつきには、寝る時刻が遅れること、頭の高ぶり、通知、見る中身も関わっているかもしれず、それらは眼鏡では変わらないと書く[7]。光の作用は本当にある。ただ、夜のスマホの問題は光だけではない。

紙の本と光る電子書籍、寝る前の数時間を比べた実験室の試験
2015年の研究は、背景の数字から書き始める。この50年で平均の睡眠時間と眠りの質は下がり、アメリカの大人1,508人の代表調査では、90%が週に少なくとも数晩、寝る前1時間以内に何らかの電子機器を使っていた[1]。電子機器の光は短い波長に富み、人工の光は、目を覚まさせ、メラトニンを抑え、体内時計をずらすことが実験で示されてきた[1]。ただ、こうした機器が体内時計の位相やその後の眠りにどう影響するかは、ほとんど分かっていなかった[1]。
そこで研究は、寝る前の数時間に、光を放つ端末で電子書籍を読む場合と、紙の本を読む場合を比べた[1]。光る端末で読んだときは、紙の本のときより、寝つくまでに時間がかかり、夜の眠気が小さく、メラトニンの分泌が減り、体内時計の時刻が遅れ、翌朝の覚醒の度合いも下がった[1]。
著者らは、夜に光る電子書籍を読むと体内時計の位相が遅れ、メラトニンがその場で抑えられると結論し、こうした機器が眠り、作業の出来、健康、安全に与える影響を考えるうえで重要な意味を持つとしている[1]。
ここまでは「ブルーライトで眠れない」を支える側の結果である。ただし、実験室で、寝る前の数時間を読書に当てた条件の比べ方だ。家で、寝る前に短い時間スマホを見る夜に、そのまま同じ大きさで当てはまるとまでは言えない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
13人の5時間:LEDの画面はメラトニンを抑え、頭は冴えた
画面の光の作用を、もっと細かく測った実験がある。2011年の研究は、若い男性13人を実験室の条件で、順番をそろえた交差の設計で調べた[3]。
青の波長(464ナノメートル付近)の光が2倍以上多いLEDの白い画面と、LEDでない白い画面の前で、夜に5時間過ごしてもらった[3]。LEDの画面では、夜に上がっていくはずのメラトニンが有意に抑えられ、本人の感じる眠気と、目の動きや脳波で測った眠気の両方が小さくなった[3]。同時に、持続する注意、作業の記憶と注意、言葉を覚える記憶の成績が、LEDの画面のほうで有意によかった[3]。
面白いのは、画面の見え方の評価である。画面の質と見やすさは両方で同じに評価され、明るいと感じられがちだったのは、むしろLEDでない画面のほうだった[3]。体内時計に効く光と、目に明るく見える光は、同じとは限らない。
部屋の照明でも、似た結果がある。2011年の別の研究は、健康な若い男性16人に、夜に2時間、色の温度の違う3つの照明(いずれも40ルクスの、6500ケルビンと2500ケルビンの蛍光灯と、3000ケルビンの白熱灯)を浴びてもらった[4]。青みの強い6500ケルビンの光では、メラトニンがより強く抑えられ、本人の感じる覚醒、心地よさ、見やすさが高まった[4]。持続する注意の課題では反応が有意に速くなったが、実行の機能の課題では差がなかった[4]。著者らは、40ルクスという低い明るさでも、人の覚醒と認知の反応は青い側に敏感だとまとめている[4]。
ブルーライトは、眠気を遠ざけると同時に、頭を冴えさせてもいた。夜の試験勉強には味方で、寝つきには敵、という二つの顔である。なお、この二つの実験の参加者は若い男性だけで、女性は含まれていない。

昼と朝の青い光では、眠りの指標がよい方へ動いた:職場と家庭の試験
青い光を悪者と決めつけにくい結果もある。時刻を昼に移すと、話が変わる。
2008年の研究は、事務職の104人を2つのフロアに分け、ふだんの照明で基準を測った後、青みを強めた白い光(1万7千ケルビン)と、ふつうの白い光(4千ケルビン)を、それぞれ4週間、昼の勤務時間に浴びてもらった[5]。解析に入ったのは94人で、平均年齢は36.4歳だった[5]。青みを強めた光では、ふつうの白い光より、本人の感じる覚醒、前向きな気分、作業の出来、夕方の疲れ、いらだち、集中、目の不快感が改善し、昼の眠気が減り、本人の感じる夜の眠りの質がよくなった[5]。
ただし、参加者が光の効き目に抱いた期待を解析に加えると、効果が残った項目として挙げられたのは、作業の出来、覚醒、夕方の疲れ、いらだち、集中しにくさ、目のかすみなどで、夜の眠りの質はその並びに入っていない[5]。著者らの結論も、昼の青みの強い光が覚醒、作業の出来、夕方の疲れを改善する、というものだった[5]。
家庭で、朝と夜の光を分けて試した研究もある。2025年の研究は、自宅で暮らす60歳以上の健康な36人(女性25人)に、11週間の交差の試験で、ふつうの白い光と青みを強めた白い光を、朝に2時間、夜に2時間、自分で浴びてもらった[18]。朝に青みを強めた光を浴びる時間が長いほど、休息と活動のリズムが安定し、眠りの細切れが減った[18]。一方、夜に光を浴びると、寝つくまでの時間が延び、眠りの効率が下がった[18]。著者らは、朝の青みの強い光は役に立ち、夜の光は避けるべきだと結論している[18]。
60歳以上の試験で、若い大人に同じ大きさで当てはまるとは限らない。それでも、光の害と益を分けたのが色だけでなく時刻だったことは、はっきり書いておきたい。
眼鏡で青を減らすと、体の数字は動いたが眠りの段階は動かなかった
では、夜に青い光を減らせば眠りはよくなるのか。2015年の研究は、15〜17歳の健康な男子13人を調べた[6]。まず家での2週間、夜にLEDの画面を使う時間に、青い光を減らす眼鏡と、透明なレンズの眼鏡を1週間ずつ、順番をそろえてかけてもらった[6]。その後、実験室で、同じ眼鏡をかけたまま、夜に青みを強めたLEDの画面の光を浴び、唾液のメラトニン、眠気、注意を繰り返し測り、その夜の眠りを睡眠ポリグラフで記録した[6]。
透明なレンズと比べ、青い光を減らす眼鏡では、LEDの光によるメラトニンの抑えが有意に小さくなり、寝る前の注意と本人の感じる覚醒が下がった[6]。ところが、目で判定した眠りの段階と、翌朝の行動の測定は変わらなかった[6]。
著者らは、この眼鏡が若者の夜のLEDの画面による覚醒の作用への対策として役立つかもしれない、と結論している[6]。一方で、この試験の数字の並びは、体の側の指標が動いても、眠りそのものの記録は動かなかったことを示している。15〜17歳の男子13人の試験で、大人の女性の眠りにそのまま重ねることはできない。
数字で読むブルーライトと眠り
- 90%: アメリカの大人1,508人の調査で、週に数晩以上、寝る前1時間以内に電子機器を使っていた人の割合[1]。
- 13人・5時間: LEDの画面の前で夜を過ごした若い男性の人数と時間。メラトニンが抑えられ、注意と記憶の成績は上がった[3]。
- 40ルクス: 6500ケルビンの光でメラトニンの抑えと覚醒の高まりが見られた照明の明るさ[4]。
- 4.86分: 大人の3試験・49人を束ねたメタ分析で、青い光を減らす眼鏡で寝つきが短い方向に出た平均の時間。95%信頼区間は−20.23〜10.52分で有意差なし[11]。
- 8.75分: 同じメタ分析で、合計の睡眠時間が長い方向に出た平均の時間。これも有意差なし[11]。
- 45分と47分: 寝る時刻の計画、朝の明るい光、夜の眼鏡を組み合わせた16〜19歳の試験で、体内時計が早まった時間と、平日の睡眠が延びた時間[8]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
1
2







