運動すると顔が赤くなる人とならない人は何が違う?皮膚の血流を変える体力と暑さ慣れ

運動すると顔が赤くなる人とならない人は何が違うのか。顔の色そのものを比べた研究は見当たらないが、皮膚の血流は鍛え方、暑さへの慣れ、運動中に飲むこと、ニコチンで動き、男女12人ずつの比較では血管の広がり方に差がなかった。顔の場所ごとに違う血流の研究も読む。

レッスンのあと、更衣室の鏡の前に並ぶ。隣の人の頬は桃色に染まっているのに、自分の顔はほとんど変わらない。あるいは逆に、自分だけがのぼせたように赤い。同じ部屋で、同じ時間を動いたはずなのに、顔の色はそろわない。

運動で顔が赤く見えるのは、体の中でできた熱を外へ逃がすために、皮膚へ流れる血が増えているからだと考えるのが自然だ。体温が上がると皮膚の血流が増えて体の中心から皮膚へ熱を運び、この働きは体を動かし続ける運動の最中ほど大事になる、と1992年の総説は書く[3]。そして皮膚の血流の増え方は、人によって同じではない。鍛えた体では、同じ体の中の温度のときの皮膚の血流が、運動をしていない人やあまり鍛えていない人より高いという結果が、数は限られるが一貫して出ている[6]。暑さへの慣れ[17]、運動中に飲むこと[2]、ニコチン[9]も、皮膚の血流に関わる。一方、男性12人と女性12人を比べた研究では、皮膚の血管が広がる反応に男女の差は見られなかった[1]。

先に断っておく。この記事で読んだ研究の中に、運動中の顔の色そのものを測り、赤くなる人とならない人を比べたものはない。測られているのは、前腕や額、頬の皮膚の血流である。だからこの記事は「赤くなりやすい人の正体」を言い当てるのではなく、皮膚の血流を動かす条件を一つずつ並べる。顔が赤いほど肌によいのかという問いは、同じサイトの「美肌のための運動は顔が赤いほどよい?皮膚温が戻る時間と血流を読み解く」に、赤くなった顔を写真で比べるときの条件は「運動すると顔が赤くなる人の写真記録、部屋を移る前にそろえたい比較の条件」に譲る。

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顔が赤くなるのは、熱を外へ逃がす途中の姿

体を動かすと、筋肉で熱が生まれる。その熱を運び出す道の一つが皮膚の血流だ。1992年の総説によれば、皮膚の血流の調節には、体温、血圧、代謝といった複数の調節の仕組みが絡み合い、血管を締める力がゆるむこと、反射で血管が締まること、血管を積極的に広げることという、別々の働きが関わる[3]。総説はこの調節を、血圧を保ち、動いている筋肉へ血を送りながら、体温の調節を損なわないようにする仕組みとして描く[3]。

つまり運動中の皮膚は、血を好きなだけもらえる場所ではない。筋肉にも血が要り、血圧も保たなければならない。その中で、熱を逃がす分の血が皮膚へ回される。顔の赤さは、この配分の結果が表に出たものだと私は読んでいる。

同じ総説は、皮膚の血流に関わる運動の側の条件として、強さ、姿勢、続ける時間を挙げ、体の側の条件として、血液の量と濃さ、有酸素の体力と暑さへの慣れ、年齢を挙げる[3]。2017年の総説も、熱を逃がす働きに影響する体の側の要因として、年齢、性別、暑さへの慣れ、体力、糖尿病などの慢性の病気を並べる[16]。血圧を感じ取る受容器や、筋肉の代謝と動きを感じ取る受容器といった、温度とは別の感覚の働きも、運動中に熱を逃がす力に大きく響きうるという[16]。

違いを一言で言い当てる研究が見当たらないのは、条件の数が多すぎるからだろう。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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額と頬は、腕と同じようには動かない

顔の中でも、赤くなる場所には偏りが見える。頬と額は赤いのに、鼻の頭はそれほどでもない。そう感じたことのある人は多いだろう。

2013年の研究は、健康な20人に、右手で2分間ものを握り続ける運動をしてもらい、顔の部位ごとの皮膚の血流を測った[11]。握る運動の間、額、頬、下唇の血流は安静時より6〜10%増え、平均の血圧は13%上がったが、ほかの部位には有意な変化がなかった[11]。同じ人たちに、冷たい刺激で血圧を上げる検査を2分間行うと、額、まぶた、頬、上唇、下唇の血流は6〜8%増えた一方、鼻の血流は5%減った[11]。著者らは、交感神経の働きを通して全身の循環に負荷がかかると、顔の皮膚の血流の反応に部位ごとの違いが生まれると結論している[11]。

この研究班は以前、基本の味を口に含ませるだけでも、顔の皮膚の血流が部位ごとに独特の反応を示したと報告していたという[11]。顔は、運動にも、冷たさにも、味にも、場所ごとに違う返事をする。頬や額は赤いのに鼻はそれほどでもない、という経験と、向きは合っている。ただし、この研究が測ったのは血流で、色ではない。握る運動は2分間で、走ったり、暑い部屋で動いたりする運動とも違う。

運動の強さと体の部位の関係を調べた研究もある。1998年の研究は、健康な男性9人(平均23.2歳)に、室温28.3℃、湿度42.6%の部屋で、最大酸素摂取量の35%、50%、65%の強さで30分ずつ自転車をこいでもらった[4]。額、胸、背中、前腕、太ももの汗の量は、強さが上がるほど増え、額では汗の出方の感度も強さとともに上がった[4]。皮膚の血管が広がり始める体の中の温度(食道の温度で測った)は、強さとともに上がる傾向があり、前腕では65%のときに35%や50%のときより有意に高かったが、額と胸では、その違いは見られなかった[4]。著者らは、運動の強さに応じて皮膚の血管が広がり始める温度には部位ごとの違いがあると結論している[4]。

強い運動のとき、前腕の血管は広がるのを後回しにしたが、額では遅れが見られなかった。ランニングの後半に顔だけが赤い、という場面を思い出す人もいるかもしれない。これは私の読みであって、顔の色を測った結果ではない。

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鍛えた体の皮膚は、多めに血を通す

体力の差は、皮膚の血流の差として表れる。1998年の総説は、体を鍛えた状態では、同じ体の中の温度のときの皮膚の血流が、運動をしていない、あるいはあまり鍛えていない状態より高いと書く[6]。この問いを直接試した研究の数は限られるが、結果は一貫しているという[6]。違う人どうしの比較でも同じ人を時間を追った比較でも、高齢の人でも若い人でも、安静時の暑さでも運動中でも、鍛えるのをやめたときの変化でも、同じ向きが見られた[6]。

増え方の中身は研究によって違う。皮膚の血流が増え始める体の中の温度が下がる研究もあれば、体の中の温度が上がるにつれての増え方の感度が上がる研究もあり、その理由ははっきりしないと総説は書く[6]。間接のデータからは、血管を締める神経の働きが全体に弱まり、血管を広げる神経の働きがより低い体の中の温度で始まることがうかがえる[6]。それが体を鍛えたこと自体によるのか、暑さに慣れたことによるのかも、はっきりしないという[6]。

若い女性で確かめた試験もある。2016年の試験では、平均25歳の女性18人が、最大心拍数の70%の強さで自転車をこぐか、42℃の湯につかるかを、1回30分、週3回、8週間続けた[14]。どちらの後でも、全身持久力の指標と腕の血管の広がりやすさが改善し、皮膚の血管が広がり始める体の温度が下がった[14]。著者らは、湯につかる繰り返しが、中くらいの強さの運動を8週間続けたのと似た、脳の血管、太い血管、体温調節の適応を引き起こすと結論している[14]。

こうした研究を並べると、「顔が赤くなるのは体力がない証拠」という言い方は、少なくとも皮膚の血流の研究とは合わない。鍛えた体ほど、早めに、あるいは多めに皮膚へ血を回す方向の結果だからだ。続けた後の皮膚の血管の変化そのものは、同じサイトの「有酸素運動で肌の血管は広がりやすくなる?一度の赤みと継続後の適応を読む」に譲る。

暑さに慣れた体は、汗と血流で熱を逃がす

暑さへの慣れも、皮膚の血流を変える。職場の熱中症を扱った2013年の総説は、暑さに慣れると、暑い中での持久的な作業の力と、同じ作業の強さでの暑さの快適さが良くなると書く[17]。それは汗と皮膚の血流の反応が増え、体の水分の釣り合いと循環の安定が良くなることで達成されるという[17]。体力がつくと体温を調節する力と血液の量が増えるため、暑さに体を慣らす実際的な方法として、毎日の有酸素運動が勧められるという[17]。

この総説には、思わぬ例外も書かれている。暑い場所で防護服を着て働く人は、短い期間の運動や暑さへの慣れから得るものが少ない[17]。服の中では汗が熱を逃がす役に立たず、たまった汗で不快さが増すからだという[17]。汗を流す力が上がっても、その汗が乾く場所がなければ働かない。皮膚の血流も汗も、外へ熱を受け渡せてはじめて意味を持つ。

夏の終わりには赤みが落ち着く、と感じる人もいる。だが暑さに慣れた体で増えるのは、汗と皮膚の血流の反応のほうで[17]、慣れで赤みが引くとは言えない。慣れと顔の色を同じ人で追った研究も、この記事で読んだ中にはない。

男女の差は汗に出て、皮膚の血管には出なかった

「女性のほうが赤くなりやすい」と聞くことがある。2013年の研究は、男性12人と女性12人の皮膚に、汗を出させる薬と血管を広げる薬を細い管で少しずつ流し込み、量を増やしたときの反応を比べた[1]。別の日には、運動ではなく体を外から温めて体の温度を上げ、汗と皮膚の血流の反応を見た[1]。

汗では差が出た。汗を出させる薬への最大の反応は女性のほうが小さく、体を温めた日の汗の出方の感度も女性で低かった(1℃あたり女性1.29、男性1.83)[1]。汗が出始める体の温度には有意な差がなかった[1]。一方、皮膚の血管が広がる反応には、薬に対しても、体を温めた日にも、男女の差は見られなかった[1]。著者らは、女性の汗の働きには皮膚の側での調節があり、皮膚の血管の広がりは性別によって変わらないと結論している[1]。

別の角度の総説もある。2021年の総説は、皮膚の血管が広がる反応や締まる反応を含む暑さへの血管の反応は、女性では生殖のホルモンの影響を受け、エストラジオールという女性ホルモンが血管の広がりと熱の放散を促すようだと書く[12]。男女の平均を比べた研究と、女性の中でのホルモンの働きを扱った総説は、問いが違う。両方を並べると、男女で決まった差があるというより、女性の中でも時期によって揺れうる、という読み方になる。ただし、月経の周期の中で運動中の顔の赤さが変わるかを測った研究は、この記事で読んだ中にはない。

数字で読む顔の赤みと皮膚の血流

  • 6〜10%: 2分間ものを握る運動で、額、頬、下唇の皮膚の血流が増えた幅[11]。
  • 5%: 冷たい刺激の検査で、鼻の皮膚の血流が逆に減った幅[11]。
  • 65%: 前腕では血管が広がり始める温度が上がったが、額と胸では違いが見られなかった運動の強さ(最大酸素摂取量に対して)[4]。
  • 12人と12人: 皮膚の血管が広がる反応に男女の差が見られなかった研究の人数[1]。
  • 8週間: 平均25歳の女性18人で、運動でも湯につかる習慣でも、皮膚の血管が広がり始める体の温度が下がった期間[14]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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