ストレス解消に握るボールは効く?検査や手術の最中に握った試験で、不安と痛みはどう変わったか

ストレス解消に握るボールは効くのか。試験の多くは検査や手術の最中の患者で、白内障の手術の66人では不安と痛みが下がったが、皮膚がんの手術の135人と子宮の検査の70人では差がなかった。77研究の統合、初めての献血の102人、学校で使う手遊びの道具の研究も読む。

健診の採血の椅子で、袖をまくって待つ。空いているほうの手が、何か握るものを探している。あの柔らかいボールを握れば、少しは楽になるのだろうか。

握るボールの試験は思ったより多い。ただ、その舞台はほとんどが病院で、対象は検査や手術、出産の最中の患者だった。結果は割れている。白内障の手術を受けた66人では、ボールを握った群で不安と術後の痛みが下がった[15]。一方、頭や首の皮膚がんを切除した135人では、ボールを握っても、研究者に手を握ってもらっても、不安と痛みは何もしない群と変わらなかった[3]。

もう一つの芯は、日常との距離である。この記事で読んだ研究の中に、仕事や人間関係のストレスを抱えた健康な大人が、ふだんの暮らしでボールを握って気分が変わるかを試したものはない。いちばん近いのは、初めて成分献血をする18〜55歳の102人の試験で、ここでは不安を下げる効果が音楽のほうが大きかった[11]。

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握るボールは、どんな場面で試されてきたか

握るボールの試験の多くは、注意をよそへ向ける「気そらし」の方法として、ボールを位置づけている[5][6]。痛みや不安を伴う処置の間、手の中の感触と動きに注意を移す、という考え方である。

この記事で読んだ試験の場面を並べると、内視鏡の検査[5]、透析[6]、日帰りの手術[13]、白内障の手術[15]、結石を体の外から衝撃波で砕く治療[9]、皮膚がんの切除[3]、子宮内膜の組織を取る検査[17]、初めての出産[16]と続く。子どもの点滴の針[10]、成分献血[11]もある。どの試験も、ボールを使う群と使わない群に無作為に分けているが、握っているかどうかは本人に分かる。痛みや不安は、線の上に印を付けて答える視覚的アナログ尺度[3][5][9][13][15][16][17]や、そのときの不安を尋ねる質問票[3][5][9][13][17]で、本人に答えてもらう形で測るものが多い。血圧、心拍数、呼吸の回数といった体の値を一緒に測った試験もある[3][6][15]。

対象の国にも偏りがある。この記事で読んだ試験には、イスタンブール[5]、アンタルヤ県[15]、トルコの西部[13]や内陸の地域[6]など、トルコの病院で行われたものが多い。どの国の結果も、そのまま日本の暮らしの場面に移せるとは限らない。

指を動かすことが脳の働きによいかという問いは、同じ特集の、指の運動と脳の記事に譲る。この記事は、握る動作と不安や痛みの関係に絞る。

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皮膚がんの手術と子宮の検査では、差が出なかった

いちばん規模の大きい否定の結果から読む。2017年に都市部の大学の皮膚科外来で行われた試験は、局所麻酔で頭や首の皮膚がんを切除する大人135人を、手を握ってもらう群、ボールを握る群、何もしない群(ふだんどおりの処置だけの群)に45人ずつ無作為に分けた[3]。手を握る群では女性の研究者が麻酔と切除の間ずっと片手を握り、ボールの群は丸い柔らかいボールを好きなように握った[3]。参加者の平均年齢は65.5歳で、62.2%が男性だった[3]。

不安はどの群でも時間とともに下がったが、3つの不安の物差しのどれでも群の差はなかった[3]。手術中の不安の点は、何もしない群が1.89、手を握る群が2.31、ボールの群が2.47で、有意な差ではなかった(P=0.55)[3]。術後の痛みの点も0.78、0.64、0.67で差はなかった[3]。ほぼ全員の99.2%が、とても満足していた[3]。

この試験には、もう一つ耳の痛い数字がある。手術の前に下調べをしていた人のほうが、手術前の不安の点が高かった(3.84対2.62)[3]。これは一つの試験の中の観察で、調べたから不安になったのか、不安だから調べたのかは分からない。検索してこの記事を読んでいる人には、少し気になる数字かもしれない。

著者らの結論は、手を握ることもボールを握ることも、皮膚がんの手術の不安を上乗せして下げはしないようだ、というものだった[3]。ただ、一部の人にはもっと効くかもしれないこと、自分で好みの方法を選べれば効きがよくなるかもしれないことも書き添えている[3]。

2025年の試験は、子宮内膜の組織を取る検査を受ける女性70人を、ボールの群35人と対照の群35人に分けた[17]。検査中の不安の平均の点に有意な差はなかった(p=0.296)[17]。不安が下がると痛みも下がるという関わりは見られたが、著者らは、ボールの使用は不安、ストレス、痛みを下げる意味のある影響を示さなかったと結論している[17]。心拍数が検査の前後で有意に下がったのは、むしろ対照の群のほうだった[17]。

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白内障、内視鏡、結石の治療では、不安や痛みが下がった

反対の向きの結果も多い。2022〜2023年にトルコの病院で白内障の手術を表面麻酔で受けた66人を、33人ずつに分けた試験では、ボールの群は手術中の15分間ボールを使った[15]。ボールの群は、術後の痛みの点、不安の点、上と下の血圧、心拍数が対照の群より有意に低く、術後の呼吸の回数も少なかった[15]。血液の酸素の値は高めだったが、有意な差ではなかった[15]。

イスタンブールの病院で内視鏡の検査を受けた60人の試験は、時間の向きで結果が分かれた[5]。痛みの点は、検査の前(p=0.925)と最中(p=0.149)には群の差がなく、検査の後にボールの群で有意に低かった(p=0.008)[5]。不安の点も、前はそろっていて、後はボールの群で有意に低かった(p<0.001)[5]。満足の点はボールの群が高かったが、有意な差ではなかった(p=0.166)[5]。握っている最中ではなく、終わった後に差が出たわけである。

体の外から衝撃波で結石を砕く治療を初めて受ける50人の試験では、ボールの群25人の、治療中と後の痛み、後の不安が対照の群より低く、満足は高かった[9]。この試験でいちばん目を引くのは、3回目の治療に来た人の割合で、ボールの群が92%、対照の群が68%だった[9]。著者らは、ボールは安くて薬を使わない方法で、繰り返す治療を続けやすくするかもしれないと書く[9]。

日帰りの手術を受けた66人の試験は、手術の30分前にボールを渡し、1週間追った[13]。手術前の不安はボールの群で有意に低く、術後1日目の痛みには差がなかったが、7日目の痛みと1週間の痛み止めの総量はボールの群で有意に少なかった[13]。

透析の患者45人をボールの群23人と対照の群22人に分け、ボールの群に8回続けて透析のたびに10〜15分ほどボールを握ってもらった試験では、血圧などの値と心地よさの点には差がなかった[6]。それでも、つらさを測る物差しの点は、ボールの群で有意に下がり、対照の群では上がった[6]。

出産の痛みは、最後の移行期だけ下がった

2025年の秋に、初めて出産する女性66人を無作為に分けた試験では、結果を解析できた60人(ボールの群29人、対照の群31人)を比べた[16]。ボールの群は、子宮が縮む陣痛のたびにボールを使った[16]。

痛みの点は、お産の3つの時期のうち、最後の移行期だけでボールの群が有意に低く、効果の大きさはd=−0.89だった[16]。それより前の潜伏期と活動期には、群の差はなかった[16]。出産の体験を尋ねる質問票の合計の点は、ボールの群で有意に高かった(d=1.08)[16]。著者らは、ボールの使用は陣痛の痛みの低さと、より前向きな出産の体験と関わっていたとし、群の差がはっきり出たのは移行期だった、と書いている[16]。

数字で読む握るボール

  • 2.47と1.89: 皮膚がんの手術中の不安の点。ボールの群と何もしない群で、差は有意でなかった[3]。
  • 3.84と2.62: 同じ試験で、下調べをした人としなかった人の手術前の不安の点[3]。
  • 92%と68%: 結石の衝撃波の治療で、3回目に来た人の割合。ボールの群と対照の群[9]。
  • p=0.149とp=0.008: 内視鏡の検査で、最中と後の痛みの群の差の検定の値[5]。
  • d=−0.89: 初めての出産で、移行期の痛みの差の大きさ[16]。
  • 8.0、14.5、50.5: 子どもの点滴の針で、風車、ボール、対照の群の痛みの平均の点[10]。

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宮川涼 Founder

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