
組み方は遺伝するのか、双子の一致は低かった
組み方は親から子へ伝わるのか。ハンガリーの大人の一卵性と二卵性の双子を調べた1983年の研究は、指組み、腕組み、舌を丸める動作の遺伝の背景を確かめられなかった[2]。ただし、指組みの型と利き手のあいだには正の相関があるようだとしている[2]。
総説の双子の数字も、同じ方向を指す。腕組みについては13人の著者が家族を、2人が双子を調べ、指組みについては18人の著者が家族を、4人が双子を調べてきた[7][8]。家族の資料からは、ある程度の遺伝の関与がうかがえるが、単純な遺伝の型は当てはまらない[7][8]。一卵性でも二卵性でも双子の一致の割合は低く、右と右、右と左、左と左の組の割合は二項分布に従っていた[7][8]。二人の組み方が互いに関係なく決まったときと同じ並び方だった、と読める。
292の家族の研究は、もう少し踏み込む[19]。指組みと腕組みは遺伝の関与を受けるかもしれないが、資料は単純な優性や劣性の遺伝の型には合わず、利き手の遺伝の説明に使われてきた「揺らぐ非対称」を想定する型とは矛盾しない[19]。そして、指組み、腕組み、脚の組み方は、手や腕の物理的な左右差に由来するか、その影響を受けた個人の癖かもしれない、と述べる[19]。すべての家族の資料を足し合わせると遺伝の寄与がうかがえるが、環境の影響もはっきりしている、というのが結論だ[19]。
チュヴァシの235の核家族、男性595人と女性592人の研究は、数字で示した[14]。利き目、指組み、腕組みの遺伝率は確かめられなかった[14]。利き手については、親子ときょうだいの相関から0.19という遺伝率の推定が得られ、著者らはこれを高い推定値と書いている[14]。医学と看護の学生の家系も調べた研究でも、左右の好みはメンデル式の遺伝の型に従わなかった[9]。親と同じ組み方をしているとしても、それを遺伝だけで説明することは、いまの研究からはできない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
女性と男性、年齢、月経の時期で組み方は変わるか
年齢と性別による違いは、二つの総説ともに小さいとしている[7][8]。ただし個別の研究では差が出ることもある。チュヴァシの研究では、腕組みだけに有意な男女差があり、利き手、利き目、指組みには男女差がなかった[14]。ドイツの628人の研究で男女差が出たのは利き足だけで、左足の男性が多かった[17]。
年齢の見え方は研究で違う。ドイツの628人の研究では、年齢の高い世代ほど利き手、利き目、利き耳、脚の組み方が右に寄り、腕組みは逆の向きに動いていた[17]。指組みと利き足には年齢による違いがなかった[17]。一方、12,720人の研究では、年齢とともに左右の好みが増し、男性は利き手と関係なく、右が上の指組みを好む度合いが高かった[11]。
女性の読者が気になりそうな結果もある。2012年の調査は、自己申告の月経周期の時期が組み方に影響するかを探索的に調べた[5]。黄体期の中ごろの女性は、それ以外の時期の女性より、腕組みの好みの強さが弱かった[5]。探索の段階の結果で、確かめられた法則ではない。逆向きの問いもある。18〜80歳のチュヴァシの女性650人の研究は、利き手、利き目、指組み、腕組みの左右で、初経の年齢と閉経の年齢に有意な差を見つけなかった[13]。著者らは、利き手などの左右と、早い初経や閉経の年齢との関係という仮説を支持しなかった[13]。

脚の組み方と聴診器の掛け方、体のほかの左右の癖
左右の癖は、腕と指だけではない。ドイツの628人の研究では、右を好む人の割合が、利き手で86.8%、利き足で77.1%、利き目で70.9%、利き耳で67.8%、脚の組み方で56.6%だった[17]。4つの働きの左右は互いに有意に結びつき、どれも脚の組み方と正に結びついていた[17]。組み方どうしはおおむね相関せず、脚の組み方と腕組みだけが逆向きに結びついた[17]。著者らは、利き手、利き足、脚の組み方、利き耳がより大きな一つの特徴の側面で、指組みと腕組みはそれとは独立しているという仮説を支持する結果だとした[17]。
18〜22歳の医学と看護の学生の研究は、右利きが96.5%、右足が利き足の人が79.9%、右脚を上に組む人が60.6%だったと報告した[9]。足の好みと組み方のあいだ、腕組みと指組みのあいだに有意な相関が見られた[9]。著者らは、こうした姿勢は脳の優位の目安で臨床でも大事だと結論している[9]。ただ、ドイツの研究は指組みと腕組みを利き手などとは独立した特徴とみる仮説を支持しており[17]、目安としてどこまで使えるかは研究によって見方が違う。
職業の癖も研究になる。ウェールズのカーディフの大学病院の医師186人に、聴診器を首に掛けたときの向きを聞いた調査では、右が60%、左が35%、どちらでもない人が5%だった[16]。この向きは利き手、利き足、利き耳、指組みと相関し、利き目、腕組み、脚の組み方とは相関しなかった[16]。著者らは、聴診器の向きは偶然ではなく、脳の優位の表れかもしれないと書いている[16]。白衣の首元に、左右の研究の材料がぶら下がっていたことになる。
利き足の割合と調べ方は、同じ特集の「利き足の割合は左足が1割強、蹴る足と支える軸足の違いと調べ方を164研究の統合で読む」に譲る。左利きの割合や天才説は、同じサイトの「左利きの特徴は本当か」が扱っている。
よくある誤解
「指組みと腕組みで、右脳派か左脳派かが分かる」。研究が組み方と結びつけてきたのは利き手や運動の左右の優位で、その結びつきさえ、121集団と192研究の総説では無いか小さく[7][8]、12,720人の研究ではあるとされた[11]。性格の型を読む道具として調べられてきたわけではない。
「腕組みで左が上なら、隠れ左利き」。左が上は、ヨーロッパの右利きにとって標準の型とされてきた[3]。509人の研究で隠れ左利きの説が支持されたのは、腕組みの左が上に、指組みの右が上が組み合わさったときだけだった[3]。
「組み方は親からそのまま遺伝する」。ハンガリーの双子の研究は遺伝の背景を確かめられず[2]、双子の一致は一卵性でも低かった[7][8]。家族の資料は遺伝の寄与をうかがわせるが、環境の影響もはっきりしている[19]。

今日からできること
- 腕と指の両方を組み、上に来る側を2つ並べて書き留める。509人の研究では、腕も指も左が上の組み合わせが右利きと、左右がそろわない組み合わせが右利きでない人と結びついた[3]
- いつもと逆に組み、落ち着かなさを0〜10で書く。腕組みと指組みでは、好みの強さどうしが相関していた[5]
- 家族で組み方を比べても、似ている・似ていないで血筋を語らない。双子でも組み方の一致は低かった[7][8]
- 月経の記録をつけているなら、腕組みの違和感を書き添えて自分で比べてみる。黄体期の中ごろの女性は、それ以外の時期の女性より腕組みの好みの強さが弱かったという探索の結果がある[5]
- 組み方で人を分類しない。利き手との関係さえ、12,720人の調査と121集団の総説で答えが違う[7][11]
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参考文献
[2] A Hungarian twin study on hand clasping, arm folding and tongue curling — Forrai G, Bánkövi G., 1983, Acta biologica Hungarica. DOI: なし
[3] Arm folding, hand clasping, and Luria’s concept of “latent left-handedness” — Mohr C, Thut G, Landis T, Brugger P., 2006, Laterality. DOI: 10.1080/13576500500199795
[5] Hand clasping, arm folding, and handedness: relationships and strengths of preference — Ogah I, Stewart E, Treleaven M, Wassersug RJ., 2012, Laterality. DOI: 10.1080/1357650x.2010.551126
[7] [Arm folding–an overview] — Reiss M., 1998, Anthropologischer Anzeiger; Bericht uber die biologisch-anthropologische Literatur. DOI: なし
[8] [Hand clasping–an overview] — Reiss M., 1999, Anthropologischer Anzeiger; Bericht uber die biologisch-anthropologische Literatur. DOI: なし
[9] Are Footedness and Lateral Postures Better Predictors of Hemispheric Dominance Than Handedness: A Cross-sectional Questionnaire-Based Clinical and Pedigree Study — Muraleedharan A, Ragavan S, Devi R., 2020, Journal of neurosciences in rural practice. DOI: 10.1055/s-0039-3400699
[11] Lateral preferences for hand clasping and arm folding are associated with handedness in two large-sample latent variable analyses — Tran US, Koller I, Nader IW, Pietschnig J, Schild AH, Stieger S, Zeilinger EL, V, 2014, Laterality. DOI: 10.1080/1357650x.2014.891607
[13] Laterality and reproductive indices — Kalichman L, Kobyliansky E., 2008, Menopause (New York, N.Y.). DOI: 10.1097/gme.0b013e31816be99f
[14] Laterality indices in the Chuvashian population — Kalichman L, Korostishevsky M, Kobyliansky E., 2008, Anthropologischer Anzeiger; Bericht uber die biologisch-anthropologische Literatur. DOI: 10.1127/aa/66/2008/409
[16] Orientation of the stethoscope around the neck: a random phenomenon or an indicator of cerebral lateralisation? Cross-sectional survey — Antonarakis ES., 2006, Laterality. DOI: 10.1080/13576500600624056
[17] Functional and postural lateral preferences in humans: interrelations and life-span age differences — Dittmar M., 2002, Human biology. DOI: 10.1353/hub.2002.0040
[19] Signs of latent handedness in families — Reiss M, Reiss G., 1998, Perceptual and motor skills. DOI: 10.2466/pms.1998.87.3.875
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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