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12月の朝6時半、アラームが鳴っても窓の外はまだ暗い。布団から腕を出すまでに、夏より明らかに時間がかかる。冬の朝に起きられないのは、意志の弱さだけの話ではなさそうだ。自然の光と闇の中で1週間過ごした研究では、冬は夏に比べて、体内時計が夜と判断している時間帯(体の夜)が長くなっていた[4]。
暮らしの記録も同じ向きを示す。マットレスの下に置くセンサーで集めた、3年半の期間の11万6,879人の大人の眠りの記録を調べた研究では、北半球の冬の睡眠は15〜20分長かった[1]。ところが、電気の明かりの中で暮らすと、体内時計は冬も夏も、自然の光の下より遅い側にずれていた[4]。
季節で長くなる体の夜と、季節で動かない始業の時刻。冬の朝のつらさは、その間に挟まれて起きている、というのが私の読みである。ただし季節の差は土地や年齢などで大きさが変わり[1]、アメリカの40万人の調査では、月ごとの差は小さく、多くは統計的に意味のある差ではなかった[2]。

7,300万夜の記録で、北半球の冬は15〜20分長く眠っていた
2025年の研究は、アメリカの食品医薬品局の認可を受けた、マットレスの下に置く睡眠のセンサーの利用者を調べた[1]。2020年1月から2023年9月までに28晩以上の記録があり、平均で週4晩以上使っていた人が対象で、11万6,879人(男性9万333人、女性2万6,546人)、年齢は平均49歳だった[1]。題名にある数字は、その夜の数で7,300万夜である[1]。
結果ははっきりしていた。北半球では冬の睡眠が15〜20分長く、南半球では夏の睡眠が15〜20分短く、赤道に近づくほど季節の差は小さくなった[1]。睡眠は2020年から2023年にかけて短くなっていたが、その差は2.5分と小さかった[1]。著者らは、人の眠りには季節の性質があり、それは年齢や性別などの属性と土地に左右されるとまとめている[1]。
冬の15〜20分は、寝坊の数字ではなく、実際に眠っていた時間の数字である。冬の朝に布団が重いのは、体がその分を取りにいっているから、と読むこともできる。ただし記録が示したのは眠った長さで、起きにくさを測ったわけではない。
この研究の対象は男性が8割近く、年齢の平均も49歳で、立川で働く20代の女性とは顔ぶれが違う。季節の向きはつかめても、差の大きさをそのまま自分に当てはめることはできない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
週末は、起きる時刻が60〜80分遅れる
同じ研究は、曜日の差も測っている。週末の睡眠は平日より20〜35分長く、寝る時刻は30〜40分、起きる時刻は60〜80分遅かった[1]。研究の出発点には、不規則な眠りが健康を損なう大きな危険の要因だという認識がある[1]。
寝る時刻のずれより、起きる時刻のずれのほうが2倍ほど大きい。日曜の朝に1時間遅く起きた体で、月曜の朝はいつもの時刻に戻る。冬の月曜の朝がとくに重いのは、季節のずれと曜日のずれが重なるからかもしれない。これは私の推測で、2つを掛け合わせて調べた結果ではない。
週末に長く眠る傾向は、年齢でも形が変わる。アイスランドの1〜20歳の668人を10年追った研究では、週末に睡眠がのびる傾向は9歳で初めて統計的にはっきりし、若い大人より10代のほうが大きかった[8]。休日の起きる時刻そのものの整え方は、同じサイトの「睡眠前の習慣は休日も同じ時刻にする?支度の順序と寝起きのずれを分けて読む」に譲る。

自然の光の冬、体の夜は夏より長くなった
季節と体内時計の関係を、いちばん直接に確かめたのは、自然の光と闇の中で過ごしてもらう研究である。同じ研究グループは以前、明るい時間が14時間40分、暗い時間が9時間20分という夏の自然の光と闇の中で過ごすと、人の体内時計は太陽の時刻に合い、体の夜は日没の近くで始まって日の出の近くで終わることを示していた[4]。
2017年の研究は、これを冬に行った。明るい時間が9時間20分、暗い時間が14時間40分という冬の自然の光と闇の中で1週間過ごすと、電気の明かりの暮らしと比べて、体の夜と眠りの始まりが早くなった[4]。
さらに、体の夜は夏より冬のほうが長くなっていた[4]。著者らは、人の体内時計は自然の光と闇の季節の変化に敏感で、人以外の動物で見られるのと似た形で冬に体の夜が広がると述べている[4]。
この結果は、冬の朝の起きにくさを、体の夜が長い季節のこととして読む手がかりになる。ただし、ここでの冬は電気の明かりのない自然の光と闇の中の冬である。ふだんの暮らしの冬で同じことが同じ大きさで起きているかまでは、この試験だけでは決められない。
電気の明かりの暮らしでは、時計は冬も夏も遅れている
2013年の研究は、電気の明かりの暮らしと、夏のキャンプを比べた[5]。電気の明かりと建物の中の暮らしでは、昼に浴びる日光が少なく、日没のあとに浴びる光が多く、体内時計の時刻が遅れていた[5]。
自然の光だけで過ごすと、体内時計は太陽の時刻にそろい、体の夜は日没に始まり、日の出の少しあと、起きる時刻の前に終わった[5]。目を引くのは夜型の人で、自然の光だけの環境では、夜型の人ほど体内時計が大きく前へ動き、朝型の人の時計に近づいた[5]。夜型の時計は、少なくとも一部は明かりの環境がつくっているらしい。
2017年の研究は、週末だけのキャンプも試した[4]。夏の自然の光と闇の中で週末を過ごすと、ふつうの週末と比べて体内時計と眠りの時刻が早くなり、1週間のキャンプで得られた時計の動きの約69%に届いた[4]。著者らは、体内時計は電気の明かりの暮らしでは冬も夏も遅い側にあり、週末のキャンプでも早い時刻へすばやく戻せると結論している[4]。光を浴びる時刻によって体内時計が前にも後ろにも動く仕組みは、同じ特集の日光の記事に譲る。
電気のない3つの社会でも、夏と冬で眠りは1時間近く違う
電気が来る前の人は、どう眠っていたのか。2015年の研究は、産業化以前の暮らしを続ける3つの社会の眠りを調べた[3]。3つとも眠りの組み立てが似ていて、著者らは、近代以前の人に特徴的な、人の眠りの核の形を表しているのだろうと述べている[3]。
眠り始めから目覚めまでの時間は平均6.9〜8.5時間、実際に眠っていた時間は5.7〜7.1時間で、産業化した社会の値の低いほうの端に近かった[3]。夏と冬では、睡眠に1時間近い差があった[3]。日ごとの睡眠の長さの違いは、目覚める時刻より、眠り始める時刻と強く結びついていた[3]。
どの社会も、日没の頃には眠り始めていなかった。眠り始めは平均で日没の3.3時間後で、目覚めはたいてい日の出の前だった[3]。眠りは夜に気温が下がっていく時間帯に収まり、長く目覚める時間に途切れることなく、1日で気温がいちばん下がる頃、血管が縮むのと同時に終わっていた[3]。著者らは、いまの寝室からほぼ消えた1日の気温の変化が、眠りを整える強い自然の調節役かもしれないと書いている[3]。
電気がなくても、眠りは季節で動いていた。そして目覚めは日の出の前。冬の朝に起きられない私たちと比べると、可笑しいほど早起きである。
数字で読む冬の朝と眠り
- 15〜20分: 北半球の冬に睡眠が長かった幅。11万6,879人の7,300万夜の記録[1]。
- 60〜80分: 同じ記録で、週末に起きる時刻が平日より遅れた幅[1]。
- 9時間20分: 冬の自然の光と闇の研究で、明るい時間の長さ。体の夜は夏より長くなった[4]。
- 約69%: 夏の週末のキャンプで、1週間のキャンプの時計の動きに届いた割合[4]。
- 3.3時間: 電気のない3つの社会で、日没から眠り始めるまでの平均[3]。
- 7.82〜8.13時間: アメリカの40万人の、月ごとの平均睡眠の幅(4月が最短、1月が最長)。月の差の多くは統計的に意味がなかった[2]。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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