間食のヨーグルトの菌は胃を通って残る?生菌数と届く割合の違いを研究で読む

間食にヨーグルトを選ぶとき、生菌数の表示は気になるものだ。ただし、容器の中の菌数と胃を通過して残る割合は別の指標である。菌株、乳成分、発酵や保存の条件で変わる酸への強さを実験研究から読み、試験管での生存と人の健康効果を分けて、表示の受け止め方を考える。

ヨーグルトのふたをはがし、仕事の合間にスプーンを入れる。「生きた菌」と書かれていると、食べたあとも同じ数が残るように感じる。逆に、胃酸で全部死ぬと聞くと、スプーンを持つ意味まで薄れた気がする。

答えの芯は、菌によって酸への強さが異なり、周囲の成分や製造条件でも変わる、ということだ。ヨーグルトに使う菌を調べた実験では、乳由来のたんぱく質を加えて酸耐性が改善した例も、同じ加工で酸耐性と胆汁への耐性が逆方向に動いた例もある。全部生き残る、全部死ぬという決め方は、こうした結果に合わない。[11][12]

ただし、実験室で酸に耐えた菌の数から、自分の腸に届く割合や体調の変化までは読み取れない。この記事では、容器の中、酸にさらす試験、その先の働きを分けて考える。温めることによる食品の変化は既存記事「ダイエットのヨーグルトは温めると無意味?生きた菌とたんぱく質を分けて読む」に譲り、ここでは胃を通る菌の評価に焦点を絞る。

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生菌数と「届く割合」は、同じ数字ではない

生菌数の大きさを見る前に、その数字がどこで測られたものかを確かめたい。ヨーグルト中で生きている菌の数を測ることと、酸にさらしたあとで生き残る菌を測ることは別の操作である。実際、菌の組み合わせを比較した食品開発の研究では、生存性、酸耐性、胆汁耐性をそれぞれ評価している。「菌が多い」という情報だけで、これらの項目をまとめて評価する設計ではない。[10]

酸耐性とは、酸性の環境に耐える性質のことだ。胆汁耐性は、胆汁にさらされた環境での耐えやすさを指す。胃を通過する話で酸耐性だけが注目されがちだが、実験では異なる負荷として分けられる。ブルガリクス菌の特定の菌株では、均質化という加工によって酸耐性が改善した一方、胆汁耐性には悪影響が出た。ある関門に強いことは、別の関門にも強い証明にはならない。[12]

ここでいう菌株とは、同じ種類の菌の中でも区別して扱う個々の系統である。論文で菌名のあとに付く記号は飾りではない。たとえば乳成分を加える研究で調べたのは、サーモフィルス菌のST-M5とブルガリクス菌のLB-12である。この実験の結果を、同じ種類に属するすべての菌や、店頭のすべてのヨーグルトへ広げることはできない。[11]

買い物で目にする大きな菌数は、まずその表示が説明している範囲の数字として読むとよい。「多いから高い割合で届く」と考えるには、出発時の菌数と、生存のしやすさを混ぜてしまっている。製品中の生存性と酸耐性を別々に調べる研究の組み立ては、その混同をほどく手掛かりになる。[10]

さらに、生存率が高いことと、最終的に残る菌数が多いことも同義ではない。割合は出発点との比較、菌数は測った時点の量である。実験結果を読むときには、どちらを示しているのかを区別したい。酸への負荷をかけたあとに菌数を数える試験でも、添加量や試験時間がそろった比較の中で結果を読む必要がある。[11]

昼休みに容器を並べて迷ったとき、表示の数字を頭の中だけで「腸に届く数」へ換算しないこと。それが、この問いへの実用的な出発点である。表示に書かれた数と、自分が知りたい数の間には、試験条件という橋が要る。

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乳成分の実験では、酸への強さが変わった

乳成分との関係を具体的に調べたのが、分離ホエイたんぱく質を加えた実験である。分離ホエイたんぱく質は、乳由来のたんぱく質素材だ。研究ではST-M5とLB-12をそれぞれ培養し、添加しない対照と、1%、2%、3%を加えた条件を比較した。人がヨーグルトを食べた試験ではなく、培養した菌そのものを対象にした実験である。[11]

酸にさらす試験は2時間行い、30分ごとに評価した。調べた添加条件はいずれも両菌株の酸耐性を改善し、酸耐性の評価で最も高い菌数が得られたのは3%添加の条件だった。一方、胆汁にさらす試験は5時間で、胆汁耐性の改善が報告されたのは2%と3%の条件である。酸と胆汁で結果のまとまり方が同じではない点も見逃せない。[11]

この結果が教えるのは、菌の強さを菌名だけで決められないことだ。菌が置かれる成分の条件によって、試験中の残り方が変わりうる。ただし、ここでの添加率を、そのまま家庭での配合や摂取量に置き換えてはいけない。研究が比べているのは培養条件である。18〜39歳の女性がヨーグルトに粉を足して食べたときの胃での生存率への適用には、人を対象にした検証が必要だ。[11]

別の実験では、ヨーグルトの発酵に用いるサーモフィルス菌STI-06とブルガリクス菌LB-12に、植物由来成分などを加えて特性を調べている。一部の成分はサーモフィルス菌の酸耐性と胆汁耐性を改善したが、ブルガリクス菌では、それらの耐性や模擬胃液への耐性に影響しなかった項目があった。添加物の効果は菌によって異なったのである。[2]

しかもこの研究では、耐性の評価と、菌が増える様子の評価が分かれている。調べた成分は両菌の増殖には影響しなかった一方、耐性やたんぱく質を分解する酵素の活性には、成分と菌による違いがあった。増えやすい菌が必ず酸にも強い、という単純な関係では整理できない。[2]

これは、間食のヨーグルトに何かを混ぜればよい、という献立の提案ではない。食品に入っている成分の名前だけを抜き出し、実験の結果を自分の食べ方に直結させると、対象も条件も変わってしまう。乳成分の研究は、製品の中身を一枚岩として扱わないための知識として読むのが適切だ。[2][11]

製造と保存にも、菌ごとの違いがある

菌の残り方は、食べる瞬間だけの話ではない。製造中にどう扱われたかでも特性が変わる例がある。均質化の圧力を変えた実験では、ブルガリクス菌LB-12、サーモフィルス菌ST-M5、アシドフィルス菌LA-Kを個別に調べた。調べた加工条件に対し、菌ごとに違う反応が現れた。[12]

LB-12では、調べた均質化圧力のすべてで酸耐性が改善したものの、増殖と胆汁耐性には悪影響があった。ST-M5では6.90 MPaの条件で酸耐性、胆汁耐性、たんぱく質分解酵素の活性が改善したが、増殖には効果がなかった。LA-Kでは酸耐性と胆汁耐性を改善した圧力が異なった。加工を強めればすべての性質が一緒によくなる、という実験結果ではない。[12]

保存についても、単に時間がたったかどうかだけでは整理できない。ヨーグルトの発酵と保存を調べた研究では、パラカゼイ菌L9とアシドフィルス菌LACを、それぞれ発酵用の菌と組み合わせている。L9は発酵時間を0.5時間短縮し、高い生存性を示した一方、LACの増殖は限定的だった。同じ「乳酸菌を加える」という操作でも、反応がそろわなかった。[8]

21日間の保存では、L9を加えた組み合わせが高い菌数を維持する一方、LACは菌数が低下した。しかし、保存後の滴定酸度と乳酸量には、添加群の間で有意な違いがなかった。滴定酸度は、酸の量を捉えるための測定指標である。酸に関する測定値が似ていても、菌の残り方が同じとは限らないことを示す結果だ。[8]

この違いを、「酸っぱく感じる方が菌も強い」という味覚の判定へ置き換えることはできない。研究で比較したのは菌数や代謝、酸に関する測定値であり、消費者がひと口食べて腸への到達を見分ける試験ではない。冷蔵庫から出して舌で確かめられるのは味である。菌の通過試験まで兼ねるスプーンはない。[8]

発酵にかかる時間と、保存後に残る菌数も分けて考えたい。L9が発酵を速めた研究では、菌数だけでなく有機酸や代謝物も測り、菌と発酵用の菌の相互作用を調べている。製造が速く進むという結果を、食べたあとに速く働くという意味で受け取るのは取り違えである。論文の「時間」が工場の工程を指すのか、人の体内を指すのかで、数字の意味は変わる。[8]

数字で読むヨーグルトの菌の試験

1〜3%:分離ホエイたんぱく質の添加範囲。調べた両菌株で酸耐性が改善した。[11]

2時間:同じ研究で酸にさらした時間。人の胃の通過時間の推奨値ではない。[11]

6.90 MPa:ST-M5で酸耐性などが改善した均質化圧力。製造条件の数字である。[12]

21日間:菌の組み合わせによる保存中の違いを追った期間。家庭の保存期限を示す値ではない。[8]

7菌株:乳製品由来のプランタルム菌を比較した研究の対象。酸耐性や付着性を調べた。[9]

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