
向きを変えても、見え方が変わらなかった図がある
向きが変われば、どんな絵でも見え方が大きく変わるのか。Bruggerは学生100人に、アヒルにもウサギにも見える図と、その変種を合わせた12図を示した。くちばしにも耳にも見える部分を、参加者の半分には右向き、残りには左向きにして見せた。鳥とウサギのそれぞれについて、どれだけ識別しやすいかを9段階で評価する課題だった。学生を対象にした結果であり、18〜39歳の女性の見え方をそのまま代表するものとしては扱えない。[4]
結果は、6図では鳥、2図ではウサギが優勢だった。どちらも同じ程度に識別しやすい、真に曖昧な図は4図である。「両方に見える図」という名前を付けても、実際にどちらへ見えやすいかは図ごとに違った。同じ種類の図を集めたつもりでも、刺激としての性質はそろっていなかったのである。[4]
左右の向きの効果は、全身を表した図を除くと認められなかった。元の図の曖昧さの順位も、12図のうち7番目だった。[4] よく知られた図だから、最も曖昧だろう。左右を変えたから、見え方も変わるだろう。その予想を、実際の評価で確かめたところにこの研究の面白さがある。
手の線画の実験と並べると、「向き」という言葉の中身を細かくする必要が見えてくる。アヒルとウサギの実験は、左右の向きを変えて識別のしやすさを調べた。手の実験は、線画の向きと刺激の配置が、触覚の位置判断にどう関わるかを調べた。絵に対する回答でも、片方は何に見えるか、もう片方はどこに触れられたかである。[4][5]
ここから腕のスケッチに持ち帰れるのは、確認する問いを具体化する姿勢だ。左右を反転したときの違和感と、紙を横に回したときの違和感を、同じ出来事として一つのメモに詰め込まない。どんな操作をしたとき、肘や手首のどこが気になったのかを書けば、次に見直す線を探しやすくなる。これは研究を読む私からの自己観察の提案である。
また、「分かる」と「描ける」の違いも残る。鳥かウサギかを答えるためには、自分でその図を描く必要がない。手の線画を見て触れられた場所を答えるときも、線を引く技能は測っていない。[4][5] 参考画像を見れば腕だと分かるのに、描くと輪郭が決まらない。その戸惑いを扱うには、認識の課題に加えて、自分が描いた線を比較する作業が必要になる。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
身体の絵を測る研究でも、線はまだ単純な成績表ではない
Bastaらは成人44人に、自分の身体を描き、その後に対照となる花を描いてもらった。成人全体を対象にした探索的研究なので、18〜39歳の女性だけに同じ関連が成り立つかは別に検証する必要がある。さらに身体活動について質問し、描画の線を数値化した。用いられたのは局所的なシャノンエントロピーという指標で、線の特徴の複雑さをデータから捉えようとするものだ。線の長さによる影響も調整している。[14]
身体の絵は花の絵よりエントロピーが低く、身体に特有の表現の違いを捉える可能性を示す予備的な結果だった。年齢が高いほど、調整後のエントロピーは低かった。著者らは、これを年齢に伴う身体図式の安定化を示唆するものとしている。ただし、低い値をそのまま「美しい絵」、高い値を「未熟な絵」と呼んだ結果ではない。[14]
身体活動との関係も、都合のよい部分だけを取り出せない。標準的な身体活動水準による分類では有意な効果がなく、活動量をデータに基づいて分けた解析では年齢との有意な交互作用があった。より活動的な参加者では、年齢が上がっても描画のエントロピーが安定していた。[14] 分類の仕方を変えた結果をひとまとめにして、「運動をしている人は腕を上手に描ける」と書くことはできない。
この研究には、身体の絵を先に、花を後に描くという順序もある。著者らは、順番を入れ替えて割り付ける研究を含め、今後の検証が必要だとしている。身体と花の違いを探る新しい指標の提案であって、完成した身体感覚の採点表ではない。数値が出ることと、その数値の意味が固まることは別である。[14]
日常のスケッチ帳でも、最初の絵と描き直した絵を比べるときには、変えた条件を添えるとよい。参考画像を足したのか、画面を回したのか、描く対象を変えたのか。これは研究で上達が実証された方法としてではなく、自己観察の工夫としての提案である。変化の理由を先回りして決めずに、見えた違いを残すために使う。
例えば、同じ腕の絵でも、肘の位置を確認する目的と、手の向きを確認する目的では、見る箇所を変えられる。後で見返すためのメモも「変」より「肘から先の向きが参考画像と違う」のほうが具体的だ。描き手の感覚を否定する必要はなく、感覚をどの線の話にするかを決める。研究の測定項目を読む姿勢を、スケッチの記録に借りるのである。

よくある誤解
「絵の向きを変えると違和感があるから、身体図式が乱れている」。手の線画の向きが感覚間の一致効果を変えた実験は、そのような個人診断を示していない。調べられたのは刺激位置の判断と、手の絵や姿勢との関係だ。イラストの違和感をこの言葉だけで説明しようとせず、参考画像との違いを確かめるところから始めたい。[5]
「身体を持っているのだから、正しい身体の絵は自然に描ける」。身体の表現を描画から調べる研究では、線の複雑さを数値にする指標の検証が進められている。自分の体を感じることと、描いた絵を何で評価するかは同一ではない。身体の絵だけを見て身体感覚の全体を採点する発想は、これらの研究よりも強い決めつけになる。[14]
「運動をすれば、腕の絵が上達することは確定している」。成人の身体活動と描画を調べた研究では、活動量の分類によって結果が分かれた。活動量と線の特徴の関連を調べることと、運動の前後で腕の絵の上達を比べることは別の検証である。描画のエントロピーを、イラストの上達率に読み替えることもできない。[14]
見慣れた向きなら有利なのか、という最初の疑問にも同じ区切りが必要だ。手の絵の向きで感覚の対応は変わったが、見た回数を操作して描画の上達を比べた結果ではない。[5] 見慣れている気がすることは練習の記録に残せる。その感想を研究の結論に置き換えないことが、この記事で守りたい境界である。
今日からできること
- 参考画像を見る回と、思い出して描く回を分け、何を手がかりにしたか書き添える。身体の描画を評価する研究でも課題と指標は限定されているため、ここでは自己観察として使う。[14]
- 向きが気になる絵は、参考画像と完成画の向きをそろえて見比べる。手の向きが感覚の対応に関わる実験を、比較条件を意識するきっかけにする。上達効果を保証する方法ではない。[5]
- 輪郭全体の印象だけでなく、向きと縦横の比率を別のメモにする。楕円の研究で、身体に対する軸の方向が調べられたことを参考にする。[1]
- 向きを変えた記録には、左右の反転か、紙の回転かを書き添える。左右の向きを変えても識別の評価が変わらない図が多かった研究を、操作を区別するきっかけにする。[4]
- 絵の良し悪しから運動不足を判定しない。44人の研究では身体活動の分類によって結果が異なり、絵の上手さを運動量から決める根拠にはならない。[14]

オンザショアで、描く時間とは別に続ける場所を
描画の記録とは別に、体を動かす予定も生活に置いておきたい。その予定を続ける場所の候補として、オンザショア立川店がある。所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から徒歩1分だ。通う場所を考えるときは、駅からの距離と実際のレッスンの時刻を合わせて確認したい。
営業時間は8:00〜23:30、年中無休である。ただし開閉の時刻とレッスン開始は別で、年末年始の12/29〜1/3は通常のレッスンを休み、会員向けの特別の有料講座となる。予定を組む前に確認するための入口は店のトップにある。
溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガに加え、常温のヨガやピラティスもある。妊娠中の方には常温のマタニティヨガがあり、溶岩ホットヨガには参加できない。医師から運動を止められている方は利用できない。ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスン、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。料金と体験予約を、続ける予定を考える際の確認先にしてほしい。
参考文献
[1] Egocentric references and human spatial orientation in microgravity. II. Body-centred coordinates in the task of drawing ellipses with prescribed orientation — Gurfinkel VS, Lestienne F, Levik YuS, Popov KE, Lefort L., 1993, Experimental brain research. DOI: 10.1007/bf00229792
[4] One hundred years of an ambiguous figure: happy birthday, duck/rabbit — Brugger P., 1999, Perceptual and motor skills. DOI: 10.2466/pms.1999.89.3.973
[5] Vision of a pictorial hand modulates visual-tactile interactions — Igarashi Y, Kitagawa N, Ichihara S., 2004, Cognitive, affective & behavioral neuroscience. DOI: 10.3758/cabn.4.2.182
[8] Body representations and cognitive ontology: Drawing the boundaries of the body image — Gadsby S., 2019, Consciousness and cognition. DOI: 10.1016/j.concog.2019.102772
[14] A proof of concept approach to quantify body schema using local Shannon entropy — Basta S, Montagnani E, Gori M., 2026, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-026-59332-x
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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