
揺れを感じないほど遅い動きでも、眠気は起きる
2020年の実験は、吐き気を起こさず、眠気だけを起こす揺れを使った[11]。参加者はまっすぐ座り、動力の台で、行ったり来たりする一直線のゆっくりした加速を受けた[11]。速さと大きさは、0.03ヘルツで0.5mGから、0.2ヘルツで5mGまでの組み合わせで、順番は無作為だった[11]。この遅く小さな動きは、平衡感覚の器官のうち、耳石器の卵形嚢と呼ばれる部分の毛の細胞を主に働かせ、しかも動いている感覚を生まない大きさである[11]。
測ったのは、皮膚に向かう交感神経(体を活動の側に向ける自律神経)の活動と、皮膚の血流だ[11]。どの速さでも、この神経の活動は心臓の拍動よりも、平衡感覚の器官からの入力に強く合わせて揺れていた[11]。揺れている間は、拍動に合わせた揺れと皮膚の血流が、どちらも揺れる前より有意に低かった[11]。著者らは、ソピテ症候群が皮膚への交感神経の出力の大きな変化と、皮膚の血管の収縮に結びつくと結論している[11]。
面白いのは、同じ研究グループが以前に吐き気で見ていた反応との違いである。吐き気のときには、平衡感覚の器官による神経の調整が強まり、皮膚の血流は増えていた[11]。眠気だけを起こす遅い揺れでは、皮膚の血流は減った[11]。体の側でも、眠気と吐き気は同じ道を通っていないように見える。1976年の論文が、眠気を引き出す仕組みは別だと推した[4]のと、向きはそろう。
それでも、これであくびの仕組みが解けたわけではない。この実験が測ったのは皮膚の神経と血流で、あくびの回数ではない[11]。あくびそのものの働きを体温と覚醒から考える話は、同じサイトの「有酸素運動であくびが出るのは眠いから?体温と覚醒の仮説を分けて研究で読む」に、あくびが人にうつる話は「あくびはなぜ人にうつる?」で始まる記事に譲る。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
荒れた海で、乗組員は平均1日9時間眠った
揺れの眠気は、実験室の外でも数字に出る。アメリカ海軍の艦の乗組員52人が、ふだんの勤務を続けながら、手首に着ける活動量計で睡眠を測り、質問票で酔いとソピテ症候群の重さを答えた[9]。
海が荒れると、酔いとソピテ症候群の重さはどちらも、穏やかな日より増した[9]。1日の睡眠は、海の状態3〜4の日に6.97時間、状態4の日に7.23時間、状態5〜6の日には9.04時間だった[9]。荒れた日の睡眠は、状態4の日より25%、状態3〜4の日より30%長い[9]。
研究の前提も面白い。叩きつけるような激しい揺れは眠りを妨げうるが、穏やかな揺れとソピテ症候群は、眠りを増やしうる、と著者らは書く[9]。そのうえで、荒れた海で睡眠が増えた原因は決めきれないとした[9]。たまった睡眠不足、揺れによる疲れ、ソピテ症候群のどれもが関わりうるが、結果からは酔いとソピテ症候群が主なストレスだったと示唆される、というのが著者らの読みである[9]。
これは船の上の観察で、揺れを割り付けた実験ではない。それでも、仕事の船で、荒れた日だけ2時間ほど多く眠る。原因は決めきれないとしても、この数字は、揺れる日の眠りの増え方を、実験室よりも生々しく伝えている。

軽い酔いでも、頭の仕事は落ちる
眠気は、ただ眠いだけでは済まない。2014年の別の実験は、健康な51人を3つの群に分け、2回の実験の回を受けてもらった[5]。2つの群は1回目か2回目のどちらかだけで揺れを受け、対照の群は揺れを受けなかった[5]。
酔いとソピテ症候群が成績の低さと有意に結びついたのは、2回目の回だけだった[5]。2回目では、症状のある人とない人の間に、総合点で9.43%、記憶の課題で31.7%、計算の課題で14.7%の差があった[5]。一方、回から回への成績の持ち越しには、軽い酔いは響いていなかった[5]。
著者らの結論は、酔いと眠気の症状が軽くても、複数の課題を同時にこなす成績は落ちる、というものだ[5]。回の順番による違いもあった[5]。著者らはその理由として、課題へ向ける注意の配分が関わるのではないかと推し、課題に注ぐ頭の努力が大きいほど、酔いが成績に響きにくいという逆の関係を示唆している[5]。初めての1回目は誰もが必死で、揺れに気を取られる余地が小さかった、と読むこともできる。
1998年の総説も、交通の場面での危うさを挙げる[3]。とくに睡眠不足のように、ほかにも成績を落とす条件がすでにある場面では、ソピテ症候群が危険になりうるという[3]。寝不足と酔いやすさの関係そのものは、同じサイトの「睡眠不足で酔いやすくなるのはなぜ?揺れへの慣れと立てる体の違いを読む」に譲る。
23歳の訓練生と35歳の女性、2つの症例
数字の研究のほかに、1人ずつを詳しく追った報告が2つある。どちらも1人の例で、ここから一般の話は引き出せない。
2018年の報告は、海軍の23歳の飛行訓練生の例である[6]。この訓練生は症状を乗り越えられず、飛行の激しく動く環境に最後まで慣れられなかった[6]。報告は、訓練の早い段階でこうした表れを記録して手を打てば、後の段階での脱落にかかる時間と費用の負担を減らせるかもしれないと書く[6]。飛行士と飛行将校の訓練は、海軍が毎年行う投資の中でも昔からとりわけ高くつくものの1つだ、という一文まで添えてある[6]。揺れの眠気は、軍の予算の話にまで届く。
2016年の報告は、放物線の軌道を描く飛行に乗った35歳の女性の例で、26人の対照群と比べている[7]。彼女は眠気と、苛立ちや腹立ちといった気分の変化を訴え、割り当てられた作業をこなせなかった[7]。症状は極度の疲れと、起きていられない状態にまで進んだ[7]。吐き気の症状は良くなったが、眠気の症状は飛行のあと数時間続いた[7]。著者らは、一般の人や特定の集団でどれくらい起きるのかを確かめる、対照を置いた研究が要ると結論している[7]。

よくある誤解
「あくびは寝不足か退屈のしるしにすぎない」。揺れる台の実験では、あくびはほとんど揺れの条件で出た[1]。回る縞の筒の実験でも、ソピテの点数は動きのあった群でだけ上がった[8]。ただし良い気分と嫌な気分の下がり方は動かない群と同じだったので、全部を揺れのせいにもできない[8]。
「吐き気がなければ酔っていない」。1976年の論文は、眠気が酔いの唯一の表れになる場面を2つ挙げた[4]。総説も、ソピテ症候群は吐き気から離れて単独で起きうると書く[3]。
「吐き気が引けば元通り」。放物線の軌道の飛行の症例では、吐き気が良くなっても眠気は数時間続いた[7]。軽い酔いでも、症状のある人とない人の間で、記憶の課題に31.7%の差が出た回がある[5]。
今日からできること
- 乗り物であくびが続いたら、眠いだけと決めず、酔いの始まりかもしれないと考えてみる。39人の実験で揺れの条件であくびをした5人には、例外なく症状があった[1]。
- 揺れのあと眠気が残るうちは、いくつもの作業を同時にこなす仕事や大事な判断を後ろに回す。軽い酔いでも、記憶の課題で31.7%の差が出た[5]。
- 吐き気が治まっても、眠気が数時間残ることもあると考えて予定を組む。1人の症例では、飛行のあと数時間続いた[7]。
- 寝不足の日は、揺れのあとの運転や自転車を急がない。睡眠不足が重なる交通の場面は、とくに危うくなりうる[3]。
- 長い船旅では、ふだんより長く眠る日があってよいと考える。荒れた海で、乗組員の睡眠は9.04時間まで延びた[9]。
- 揺れのたびの強い眠気が暮らしに響くなら、医師に相談する。睡眠の病気やうつと絡み、見分けにくくなることがある[3]。
揺れの眠気が引いてから、オンザショアで週の決まった時間を
この記事の研究が調べたのは、揺れる台と筒と船と飛行機で、ヨガのスタジオではない。店について書けるのは、移動の眠気が引くのを待ってから入れる、週の決まった時間の置き場所としての話である。
初めての人は、ヨガの体験レッスンが60分で税込1,980円。バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが付く(体験の予約)。
レッスンの始まりは曜日で違う。平日の朝いちばんは月曜から木曜が10時、金曜が13時で、8時の回は土曜と日曜だけ。遅い回は水曜と金曜の21時に始まる。店そのものは8:00〜23:30の年中無休で開いているが、12月29日から1月3日は通常のレッスンを休み、会員向けの特別の有料講座になる。
場所はJR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガのほか、常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがあり、ヨガだけで25種類以上。妊娠中の方は溶岩ホットヨガに参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。料金は料金のページ、店の全体は店のトップで確かめられる。
参考文献
[1] Yawning as a behavioral marker of mild motion sickness and sopite syndrome — Matsangas P, McCauley ME., 2014, Aviation, space, and environmental medicine. DOI: 10.3357/asem.3897.2014
[2] Sopite syndrome: a revised definition — Matsangas P, McCauley ME., 2014, Aviation, space, and environmental medicine. DOI: 10.3357/asem.3891.2014
[3] The sopite syndrome revisited: drowsiness and mood changes during real or apparent motion — Lawson BD, Mead AM., 1998, Acta astronautica. DOI: 10.1016/s0094-5765(98)00153-2
[4] Sopite syndrome: a sometimes sole manifestation of motion sickness — Graybiel A, Knepton J., 1976, Aviation, space, and environmental medicine. DOI: なし
[5] The effect of mild motion sickness and sopite syndrome on multitasking cognitive performance — Matsangas P, McCauley ME, Becker W., 2014, Human factors. DOI: 10.1177/0018720814522484
[6] Sopite Syndrome Identified in a Student Naval Aviator — Gemender MS, Sholes PC, Haight SP., 2018, Aerospace medicine and human performance. DOI: 10.3357/amhp.5115.2018
[7] Motion sickness and sopite syndrome associated with parabolic flights: a case report — Van Ombergen A, Lawson BD, Wuyts FL., 2016, International journal of audiology. DOI: 10.3109/14992027.2015.1111526
[8] Sopite symptoms in the optokinetic drum — Kiniorski ET, Weider SK, Finley JR, Fitzgerald EM, Howard JC, Di Nardo PA, Guzy, 2004, Aviation, space, and environmental medicine. DOI: なし
[9] Sleep Duration in Rough Sea Conditions — Matsangas P, Shattuck NL, McCauley ME., 2015, Aerospace medicine and human performance. DOI: 10.3357/amhp.4250.2015
[10] A questionnaire for the assessment of the multiple dimensions of motion sickness — Gianaros PJ, Muth ER, Mordkoff JT, Levine ME, Stern RM., 2001, Aviation, space, and environmental medicine. DOI: なし
[11] Vestibular modulation of skin sympathetic nerve activity in sopite syndrome induced by low-frequency sinusoidal motion — Foster M, Singh N, Kwok K, Macefield VG., 2020, Journal of neurophysiology. DOI: 10.1152/jn.00177.2020
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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