
個別試験とメタ分析の違いを押さえる
個別の試験でウエストが減っているのに、全体をまとめた結果では有意ではない。この違いを、個別試験と統合結果の両方から確かめたい。Wangらのメタ分析は、過体重・肥満の成人を対象とした11件の無作為化比較試験、393人を集めた。無作為化比較試験は、参加者を無作為に割り付けて群を比べる研究であり、メタ分析は複数の研究結果を統合する方法だ。[1]
統合結果では、体重は平均差−2.40kg、体脂肪率は−4.22ポイントと有意に減少した。ウエスト周囲径の平均差は−2.65cmだったが、95%信頼区間は−6.84から1.55cmで、有意な効果は認められなかった。[1] 信頼区間は推定に伴う幅を示し、ここでは減少だけでなく増加側の値も含む。「平均がマイナスだから全員に効く」とも、「有意ではないから誰にも変化がない」とも読まない。
Wangらのメタ分析では、肥満の人だけを含む研究で体重と体脂肪率の減少がより大きく、介入期間が長い研究では体重とBMIの改善がより明瞭だった。BMIは体格指数を指す。[1] これは体重や体組成に関する傾向であり、ウエスト周囲径には有意な統合効果が認められていない。[1]
成人女性を対象としたBajčetićらのメタ分析は、二の腕痩せの科学 第5回で扱うため、ここではウエスト周囲径に有意な統合効果が認められなかった点に触れるにとどめる。[16]
健康な成人のマットピラティスをまとめたCavinaらのメタ分析では、10研究を検討し、腹部周囲径、体脂肪率、除脂肪量などについて、従来の運動や対照条件を上回る効果は示されなかった。[17] 比較対象を上回らないことと、運動前から全く変化しないことは別である。歩行など、ほかの運動と並べて選ぶ際には、この比較の結果が役立つ。
健康な人の体組成を扱ったSilvaらの系統的レビューでは、採用された9研究のうち6研究が何らかの改善を報告していた。しかし、その改善を示した研究の中で、方法の質が良好と評価されたものは1研究だった。[18] 改善報告の数だけで確かさを判断しない理由がここにある。小規模でも興味深い試験はあるが、それを全員への確定的な効果に広げず、研究の質と対象も合わせて見る。
いま言えるのは、ピラティスはウエストと腹筋の持久力が改善した試験を持つ運動だが、ウエストを細くする最良の方法として他の運動より優れていることは確立していない、ということだ。[6][15][17] 腹筋が働いた感覚は、腹の脂肪が落ちた証拠ではない。周囲径を測った研究でも、その減少だけからお腹の脂肪だけが落ちたと結論することはできない。[1][15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
産後と休んだ後は、別の条件として考える
初めて出産した女性を対象としたLeeらの試験では、35人をピラティス群20人と対照群15人に分けた。運動群は1回50分、週5日、4週間実施し、対照群は日常生活を続けた。ウエスト周囲径だけでなく、左右の腹直筋の間隔、腹直筋の厚さ、腹筋の持久力も測定した。[5] 腹直筋の間隔は、腹部の左右の筋肉の距離を、この試験では超音波で調べた項目である。
ピラティス群では、対照群と比べて腹直筋間の距離、周囲径、腹筋持久力が有意に改善した。[5] 産後の体には、脂肪量以外にも腹部の筋肉の構造や働きという評価項目があることが分かる。ただし、要旨にはウエストが何cm減ったかは示されていない。有意な改善があったことから、日常で実感できる減少幅まで勝手に補わない。
この試験の運動量は、初心者のマット研究で示された週3回とは違い、週5日であった。[5][15] 産後の開始時期と頻度は、体の状態に合わせて決める。産後の状態に合う参加方法は専門家と相談し、腹直筋の間隔そのものをどう評価するかは、連載の次回で扱う。本稿では、産後の周囲径の変化を一般成人の減量と同じ話にまとめないことを重視する。
運動を休んだ後の研究も、計画を立てる材料になる。ピラティス経験のある女性20人を調べたZarasらの非無作為の研究では、8週間のマット運動で体脂肪率、内臓脂肪、ウエスト周囲径などが減少した。その後の3週間の中断で、体脂肪率と内臓脂肪は開始時の水準へ戻った一方、ウエスト周囲径は低い状態が保たれた。[4]
腹筋を繰り返す能力、下半身の柔軟性、有酸素能力も、運動後に改善し、中断期間に大きな変化がなかった。[4] ここでも、脂肪の指標、周囲径、運動機能は同じ動きをしていない。周囲径の維持と、体脂肪率が開始時に戻る変化が同時に報告された。中断後も複数の項目を分けて見る意味がある。
この研究の対象は平均年齢45.1歳の経験者20人であり、初心者とは経験も年齢層も異なる。[4] 生活に落とすなら、休む可能性まで含めて予定を考える。出張や家庭の都合で参加できない期間が決まっているなら、再開する日を先に確認しておく。継続と中断を調べた研究を参考に、参加できる期間と再開後に振り返る項目を予定に残しておく。

よくある誤解
「体幹を鍛えれば、ウエストだけの脂肪が減る」という説明は、今回の研究が示した範囲を越えている。今回測られた周囲径と全身の体組成からは、腹部の脂肪だけを選んで減らす効果は確認できない。メタ分析では、体脂肪率の減少が認められてもウエスト周囲径には有意な効果が出ていなかった。[1] 部分痩せの問いは連載の第1回に譲り、この回では実際に測定された結果を軸にする。
「周囲径が変わらなければ、ピラティスに意味がない」という考えも評価を狭くする。歩行と比較した試験では、周囲径の減少は同程度でありながら、腹筋の検査成績はピラティス群でより改善した。[6] 自分の目的がウエストの数値だけなのか、運動を繰り返せる体も含むのかを言葉にしたい。目的が違えば、同じ結果の受け止め方も変わる。
「研究と同じ期間で、同じcmだけ減る」という期待は、平均や集団の結果を個人への約束に変えてしまう。2.7cmの減少を報告した研究の運動群は9人であり、初級・中級のクラスに継続して参加した成人初心者だった。[15] 参加回数、経験、体格が異なる人に、その数値を目標として押し付ける根拠はない。研究の時間と内容は計画の参考にし、減少幅は自分の記録から確かめる。
今日からできること
- 初めて取り組む人は、予約前に初級マットピラティスの参加方法を確認する。1回60分、週3回、8週間の研究を参考に、移動も含めて予定表へ参加日を入れる。[15]
- 体脂肪率も記録する人は、運動を休んだ後にウエストと別々に振り返る。経験者の女性20人の研究では、8週間の運動後に3週間休むと、周囲径の減少は残ったが体脂肪率は開始時の水準へ戻った。細さが保たれていても、体脂肪率の変化まで保たれたと判断しない。[4]
- ウエストを記録したい人は開始前に周囲径と参加予定を別の欄に書き、8週間後に参加状況と動作の変化も振り返る。研究では周囲径と腹筋持久力を別々に測っている。[6][15]
- 休む予定がある人は、中断に入る前に再開日を予定表へ書く。経験者を調べた研究の8週間の運動と3週間の中断を参考に、休んだ後も周囲径と運動の記録を分けて見直す。[4]
- 妊娠中・産後すぐ・持病・服薬中・けががある人は、始める前に医師に、産後は産科の医師や助産師に相談する。産後の試験の1回50分・週5日・4週間を自己判断で再現せず、痛みが出たら中止する。[5]

オンザショアで、ウエストの記録とピラティスの予定をつなぐ
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参考文献
[1] Pilates for Overweight or Obesity: A Meta-Analysis — Yi Wang et al., 2021, Frontiers in Physiology. DOI: 10.3389/fphys.2021.643455
[2] Efficacy of Pilates in Functional Body Composition: A Systematic Review — M. Pereira et al., 2022, Applied Sciences. DOI: 10.3390/app12157523
[3] Psychophysiological Adaptations to Pilates Training in Overweight and Obese Individuals: A Topical Review — A. Batrakoulis, 2022, Diseases. DOI: 10.3390/diseases10040071
[4] Pilates-mat training and detraining: Effects on body composition and physical fitness in pilates-trained women. — Nikolaos Zaras et al., 2023, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2023.05.002
[5] Effects of Pilates on inter-recti distance, thickness of rectus abdominis, waist circumference and abdominal muscle endurance in primiparous women — Namee Lee et al., 2023, BMC Women’s Health. DOI: 10.1186/s12905-023-02775-5
[6] The effects of Pilates vs. aerobic training on cardiorespiratory fitness, isokinetic muscular strength, body composition, and functional tasks outcomes for individuals who are overweight/obese: a clinical trial — Angeles Bonal Rosell Rayes et al., 2019, PeerJ. DOI: 10.7717/peerj.6022
[15] Eight-Week Traditional Mat Pilates Training-Program Effects on Adult Fitness Characteristics — Kate Rogers et al., 2009, Research Quarterly for Exercise and Sport. DOI: 10.1080/02701367.2009.10599595
[16] Effects of Pilates Programs on Body Composition, Flexibility, Muscular Strength, Balance, Functional Performance and Respiratory Function in Adult Women: A Systematic Review and Meta-Analysis — Čedomir Bajčetić et al., 2026, Sports. DOI: 10.3390/sports14090407
[17] Effects of the Mat Pilates Method on Body Composition: Systematic Review With Meta-Analysis. — Allysiê Priscilla de Souza Cavina et al., 2020, Journal of physical activity & health. DOI: 10.1123/jpah.2019-0171
[18] Is the Pilates method efficient to cause changes in the body composition of healthy individuals? A systematic review. — Lays Liduário Silva et al., 2022, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2022.04.005
冒頭の写真: 室内のピンク色のヨガマットの上で、体を伸ばしてプランクの姿勢をとる女性。(写真: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。妊娠中・産後の方、持病のある方・服薬中の方は、運動を始める前に医師にご相談ください。
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