姿勢の科学 第2回 スマホ首と肩こりに効く運動は何か、伸ばすだけで終わらせない

スマホ首や肩こりが気になる人へ、首・肩の筋力トレーニングとストレッチを研究から比べる。職場で行う短時間の運動、実施頻度と期間、痛みと日常動作の変化を整理し、姿勢の見た目だけで成果を判断しない続け方を考える。研究の対象と限界も確かめ、自分に合う方法を選ぶ手がかりにする。

スマホの文字を追っているうちに、顔が画面へ近づき、端末を支える腕も同じ位置に留まっている。首・肩がつらいと感じて画面を閉じたとき、伸ばす運動を増やすか、筋肉を鍛えるかで迷う人は多いだろう。

研究から先に答えるなら、すでに首の痛みがあるデスクワークの人では、首・肩周辺の筋力トレーニングが有力な候補である。職場での運動を集めた系統的レビューでは、全身の運動にも痛みの軽減が認められたが、首・肩を対象にした筋力トレーニングの効果がより大きかった。[3] ストレッチにも比較試験での改善があり、筋力トレーニングとともに選択肢になる。[8]

本稿ではスマホ首と呼ばれる首・肩のつらさを入口に、主にオフィスワーカーの研究を読む。痛みがある人が続ける運動を、対象部位、時間、頻度、期間の順に選ぶための手がかりを探る。[1][3]

この記事は連載『姿勢の科学』全5回の第2回。前の回:姿勢の科学 第1回 猫背と前に出た首は運動で直せるのか次の回:姿勢の科学 第3回 ピラティスで姿勢は良くなるのか 背骨の並びを測った研究

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首と肩は、伸ばすだけで終わらせない

首の痛みを減らす方法を探すなら、候補の中心に筋力トレーニングを置きたい。2017年の系統的レビュー・メタ分析は、職場で行う介入のランダム化比較試験を27本まとめた。痛みのあるオフィスワーカーでは、首・肩の筋力トレーニングと全身の体力づくりに、中程度の質の根拠で痛みの軽減が認められた。[3]

このレビューで、効果がより大きかったのは首・肩を対象にした筋力トレーニングだった。また、運動への参加が多いほど大きな効果が観察された。[3] ここから選び方を考えると、首・肩の運動を内容として持ち、仕事や生活の予定に実施枠を置ける方法が候補になる。凝った運動を探す前に、その運動を予定どおり行えるかを確かめたい。

慢性的な首の痛みがあるオフィスワーカーを対象にした2024年の系統的レビューでも、首・肩・肩甲骨周辺の筋肉を鍛える運動で、痛みと生活上の支障が軽減する方向が示された。[1] 肩甲骨は背中の上部にある骨である。研究が扱うのは首だけを強く動かす運動ではなく、肩やその周辺を含めた筋力づくりだ。[1] 首が気になるから首だけを繰り返し回す、という選び方から一歩広げられる。

肩をほぐして終える前に、肩を鍛える予定を置く。 これは首・肩の筋力トレーニングを支持するレビューを、日常の行動へ置き換えた提案である。[3] 負荷は自分の状態に合わせて確認する。どの部位を対象にするか、どこで実施するか、どの頻度を目指すかを決める。その具体性があれば、漠然と「姿勢を気にする」だけの計画から離れられる。

種目、重さ、反復回数を決める段階では、研究で対象にした部位を手がかりに、自分の状態を指導者へ伝える。現在できる動きと実施場所も伝えれば、予定を具体的な内容へ進めやすい。実施内容を指導者と確認し、痛みを我慢して動くことを目標にしない。まず候補を選び、動き方を確認してから続ける設計にする。

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短時間でも、研究では継続して行っていた

運動時間の参考になるのが、軽度から中等度の首・肩の痛みがある30人を対象にした職場での介入研究である。全体は16週間で、最初の8週間を対照期間、その後の8週間をトレーニング期間とした。対照期間のあと、参加者を1日10分の群と、1日10分を2回行う群に無作為に分けている。[7]

運動は首・肩に特化した高強度の筋力トレーニングで、週5日、4種目から成るプログラムだった。[7] ここで大事なのは、10分という短さだけを抜き出さないことだ。この研究で確かめたのは、仕事の場で一定の内容を繰り返す方法である。週5日の実施を8週間続けた条件と一緒に、短時間の運動の成果を読む。[7]

トレーニング期間に両群を合わせると、平均の痛みは25%、最も強い痛みは43%減少した。健康に関連した生活の質も10.6%向上した一方、筋力には変化が認められなかった。[7] 痛みが変わることと、力が強くなることを同じ成果として扱わない点が、この研究の読みどころである。運動の評価を持ち上げられる重さだけに絞ると、見落とす変化がある。

群どうしでは、調べた項目に有意な差がなかった。[7] 統計上、差を確認できなかったという意味だ。短い群にも改善があったことは、忙しい日に運動の時間を確保する手がかりになる。高強度という条件も、初心者が自己判断で強い負荷をかける理由には使わず、研究条件として受け止めたい。

日常への応用は、長い運動時間を確保する前に短い実施枠を検討することである。実施する内容と負荷を決めたら、予定表には時間に加えて、場所と動き方を確認する相手まで書いておく。具体的な種目と負荷は指導者に確認し、実施枠とセットで決めておく。

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ストレッチは頻度と期間まで具体にする

筋力トレーニングと並ぶ候補が、定期的なストレッチである。2016年のランダム化比較試験は、中等度から重度の首の痛みが3か月以上続く96人を対象にした。全員に仕事中の姿勢や作業環境に関する資料を渡し、運動群には首と肩周辺のストレッチを追加した。[8]

その実施条件は1日2回、週5日、4週間である。[8] つまり、仕事中の環境についての情報を受け取る条件は両群に共通し、そこへ運動を加えるかどうかを比べた。ストレッチ群が改善したという話だけでなく、情報提供に上乗せした変化として読むと、運動の役割をつかみやすい。

両群とも開始時点から改善したが、運動群では痛み、首の機能、生活の質の身体面の改善が対照群より大きかった。痛みを表す尺度での改善差は1.4点、首の機能を調べる質問票での差は4.8点、生活の質の身体面では14.0点だった。[8] 各数値は、それぞれ痛み、首の機能、生活の質という異なる尺度で測った変化を表す。

首の機能とは、首の問題によって日常生活がどれほど妨げられるかを質問票などで捉えたものである。[8] 痛みの強さだけでなく、仕事や生活の動作で何が困るかを考える視点が得られる。読者が記録するなら「首が痛かった」だけでなく、どの作業がつらかったかも添える。そのメモは、相談時に日常の変化を説明する助けになる。

この試験では、週3回以上行った人は、それ未満の人より首の機能と生活の質の身体面で大きな改善を示した。[8] これは実際に行えた頻度による比較であり、週3回という数値は試験内での分類を表す。計画上の頻度と実際の実施日を照らし合わせ、続け方を相談する手がかりとして受け取りたい。方法を選ぶときに、頻度まで具体にする理由になる。

ストレッチを生活に取り入れる際は、予定表に朝と仕事後などの実施枠を置き、実際の動き方を確認する機会も考えておく。これは1日2回という試験の条件を予定へ落とす提案だ。[8]研究から借りられるのは、対象、実施頻度、期間と比較結果である。安全に行える動き方は別途確認し、首を強く引っ張ることや痛みを押し切ることを目標にしない。

痛み、動かしやすさ、姿勢を分けて見る

スマホ首という言葉から、横顔の首の位置だけを成果にしたくなるかもしれない。しかし、首の痛みを調べたレビューでは、痛みの強さ、日常生活の支障、生活の質を別々に評価している。[1] 同じ人の体でも、外見、つらさ、作業のしやすさは別の問いである。姿勢の写真だけで運動の成否を判断しないほうが、研究の評価に近い。

2024年のレビューに含まれた8本のランダム化比較試験のうち、7本で筋力トレーニング後の痛みの有意な低下が報告され、5本で首の問題による生活上の支障が有意に減少した。一方、生活の質を調べた試験は1本のみで、有意な効果は認められなかった。[1] この結果を踏まえ、相談時には痛みの変化と生活全体で気になることを、それぞれ伝えたい。

そこで成果のメモは、痛み、困る動作、実施した運動を分けて書くとよい。例えば、仕事中に首・肩が気になった場面と、その日に運動を行えたかを同じ記録に残す。この記録は、指導や相談のときに状況を伝えるための工夫として提案する。

姿勢の角度を中心にした話は前の回に譲る。この回で選ぶ基準は、首・肩を対象にした運動を続けられるか、痛みや日常生活の支障をどう確かめるかである。運動を行うたびに鏡で形を確認するより、実施内容とつらい動作を言葉にしておく。見た目の目標と生活上の目標が違えば、その違いも指導者と共有できる。

数字で読む首・肩の運動

  • 27本のランダム化比較試験をまとめた職場介入のレビューでは、痛みのある人への首・肩の筋力トレーニングが支持された。[3]
  • 30人の職場研究では、週5日、8週間の筋力トレーニングを実施した。[7]
  • その研究では1日10分と10分を2回の群を比べ、群間に有意な差はなかった。[7]
  • 96人のストレッチ試験では、1日2回、週5日、4週間が運動群の実施条件だった。[8]
  • 549人の職場試験では、特定部位の筋力トレーニングと全身の運動を1年間比較した。[13]

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