
炎症の数値が高くても、痛みが増えない試験がある
今度は、炎症反応を強める方向の研究を見てみよう。Markworthらは、訓練経験のある男性に、アラキドン酸という脂肪酸を追加する群と、比較用の油を摂る群を設けた。追加した群は9人、比較群は10人で、4週間の摂取後に強度の高い脚の筋力運動を行う無作為化比較試験である。訓練経験のある男性の結果を、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには性別と運動経験の違いが残る。[11]
追加した群では、運動に対する血液中の白血球などの反応や、筋肉内の炎症に関連する一部の遺伝子の反応が大きかった。一方、筋組織で確認した白血球の存在、感じる筋肉痛、筋力低下の程度や続く長さには影響が認められなかった。炎症に関する検査が強く動いても、症状の大きさには差が認められなかったのである。[11]
これは、その成分を追加する勧めではない。ここで役立つのは、血液の細胞数、筋肉の中の反応、主観的な痛み、出せる力を、研究者が別々に測っているという点である。「炎症が増えた」とだけ伝えると、実際には変わらなかった痛みや筋力まで、悪化したように読めてしまう。[11]
逆に、痛みの少なさだけで炎症反応の有無は判定できない。この試験で症状と検査の動きがそろわなかったことは、体感だけで免疫細胞の仕事を推定する難しさを示している。翌朝の通勤で脚が楽だったという実感は、その日の生活にとって大事だが、筋肉内の反応を測定した結果とは区別して受け取るべきである。[11]
薬の試験と並べると、両方向から同じ注意点が見えてくる。痛みを減らしても筋機能の回復に差が出なかった例があり、炎症に関連する反応を増やしても痛みや筋力低下に差が出なかった例もある。「痛みの強さが炎症の量を示し、そのまま回復の遅さになる」という一直線の図では、両方の結果を説明できない。[11,12]
対象にも目を向けたい。この栄養成分の試験は訓練経験のある男性であり、運動を始めたばかりの女性を調べたものではない。血液の白血球の増加と、筋組織で確認した白血球の存在にも結果の違いがあり、採血の結果をそのまま筋肉の中の細胞数と読み替えることもできない。[11]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
必要な炎症と、長引く炎症を分ける
炎症が修復に役立つと聞くと、「それなら強いほどよい」と考えたくなる。しかし、Perandiniらのレビューが扱う慢性炎症では、筋肉の再生はむしろ妨げられる。マクロファージの状態の偏りが、筋肉の幹細胞の働きや、その周囲の環境を乱すことに関わると整理されている。[10]
このレビューに出てくるM1、M2とは、マクロファージの性質を説明する呼び方である。炎症を進める側と、炎症を収め修復に関わる側の釣り合いが論点になる。どちらかの名前を見つけて善玉、悪玉と固定するより、修復の局面に合った反応へ移れるかに目を向ける方が、この研究の問題意識に近い。[10]
ただし、慢性炎症の研究を読んで、運動翌日の自分の痛みをそのまま慢性炎症と呼ぶ必要はない。ここで扱われるのは、再生を妨げる持続的な環境の問題である。慣れない運動の後に一時的に起こる反応と、修復の仕組みがうまく働かない状態を同じ箱に入れると、「炎症は必要」と「炎症は有害」が矛盾に見えてしまう。[9,10]
Karamiらのレビューも、この関係を単純化していない。炎症が高いことと筋肉の幹細胞の活動低下が結びつく研究がある一方、炎症の刺激がその働きに有利な研究もあると整理する。炎症の刺激と抑制のどちらがよいかは、細胞や周囲の条件を抜きに決められる問題ではない。[3]
ここから導けるのは、痛みを長く残す努力ではなく、強さだけで評価しない姿勢である。「炎症を抑える」という言葉の中には、いつ、何を、どの程度変えるのかという違いがある。筋再生と筋肥大を扱うBernardらのレビューも、温熱、冷却、マッサージ、薬などをそれぞれ検討しており、一つの方法の結果をすべてに配る読み方はできない。[4]
抗酸化という別の言葉にも同じ注意が要る。Le Moalらのレビューでは、酸化に関わる反応が筋肉の幹細胞や周囲の細胞の調節に関わり、抗酸化成分の補給による効果は一貫しないと整理されている。体内の反応を一括して減らせば筋機能がよくなる、という理解には限界がある。[14]
食事なら量を増やせば早く戻るのか。Cliffordらは平均年齢57歳の男女18人に、負荷をつけたスクワットを行ってもらい、その後48時間のたんぱく質量を比較した。体重あたり1日2.50g/kgと1.25g/kgで比べても、多い群が筋損傷や炎症の間接的指標を軽減する点で優れる結果ではなかった。平均年齢57歳の男女の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめ、適切な摂取量を決めることはできない。[6]
この結果は、たんぱく質が不要という意味ではない。摂取量を比較した特定の年齢層と運動条件で、量を多くする上乗せの効果が認められなかったという意味である。薬でも栄養でも、「反応を変えそうな仕組みがある」から「日常で増減すれば回復が速い」までには、人で確かめる段階が必要なのである。[6,12,14]

よくある誤解
「炎症は筋肉に悪いので、早く全部なくすべきだ」という見方は、修復に関わる免疫細胞の役割を落としている。動物実験と人の研究を扱うレビューでは、マクロファージは損傷部の処理だけでなく、筋肉の再生や周囲の構造の作り替えに関わる。不要なごみと、それを片づける働きは同じではない。[13,15]
「炎症が必要なら、痛いほど効いている」という逆の思い込みも支持できない。炎症反応が大きくても筋肉痛や筋力低下に差がなかった人の試験があり、炎症と痛みを同じ物差しにはできない。さらに、筋肉を再生することと、トレーニングで筋肉が大きくなることは、関連しながらも区別して検討されるテーマである。[4,11]
「痛みが引いたから修復も完了した」という判断にも飛躍がある。薬の比較試験では痛みは軽くなったが、筋力の回復が速くなったわけではなかった。楽になった感覚を疑う必要はない。ただ、その感覚に、測っていない筋肉の状態まで説明させないことである。[12]
こうした誤解に共通するのは、目の前で分かる一つの変化に、体の中の出来事すべてを代表させる点だ。研究が痛み、力、細胞、組織を分けて調べるのは、それぞれが違う情報を持つからである。自分で免疫細胞を測れなくても、違う情報を一つに束ねない読み方はできる。[9,11,12]
今日からできること
- 運動後は、椅子に座るときなどの痛む場面と、普段の動作のしやすさを分けて記録する。33人の試験が痛みと筋力を別に測ったことを、生活での観察に応用する案である。自宅で最大の力を出して試す必要はない。[12]
- 翌日だけで判断を終えず、運動前の状態と24時間後・48時間後の変化を見比べる。これは平均年齢57歳の男女18人の試験で使われた評価時点を記録の目安にする案であり、48時間で回復するという期限ではない。18〜39歳の女性の回復日数をこの試験から決めることはできない。[6]
- 次回の予定を立てる際は、前回と今回の運動の強度、長さ、動いた範囲を記録と照らし合わせる。33人の試験の3週間は実験の間隔であり、自分の休息日数として転用せず、日常動作の戻り方と運動条件を指導者に伝える材料にする。[9,12]
- 回復をうたう栄養情報では、対象者、比較した量、測った結果を確認する。平均年齢57歳の男女18人では、48時間のたんぱく質増量に優位性がなかった。18〜39歳の女性への適用は別に検討が必要であり、この数字を自分の食事の処方にせず、普段の食事を振り返る。[6]
- 痛みへの対応を医師に相談するときは、運動した時期と動き、痛む場面、動作への影響を伝える。若い男女33人の薬の試験でも痛みと筋機能は別の結果だったため、痛みの強さに加えて生活で困る動作を具体的に言葉にする。[12]

オンザショアで、次に続ける時間を考える
痛みの強さだけで次の運動を決めず、どんな動きを続けたいかを考える。その予定を置く場所として、通える時間と参加条件を確かめたい。オンザショア立川店は8:00〜23:30の営業で、年中無休である。JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。仕事の前後や休日など、自分の生活のどこに運動の時間を置くかを考える際の選択肢になる。
溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガに加え、常温のヨガ、ピラティス、パーソナルトレーニングなどがある。ヨガだけで25種類以上のレッスンがあり、続ける種目を検討する場所として利用できる。店や種目の情報は公式サイトで確認できる。
参加条件も予定と一緒に確認したい。妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。ヨガの体験は税込1,980円で、60分のレッスン、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。料金と体験の予約を見ながら、継続できる時間を予定に置いていく。
参考文献
[3] Unraveling the bidirectional relationship between muscle inflammation and satellite cells activity: influencing factors and insights — Karami E, Bazgir B, Shirvani H, Mohammadi MT, Khaledi M. / 年: 2025 / 誌名: Journal of muscle research and cell motility / 被引用: 1. DOI: 10.1007/s10974-024-09683-7
[4] Role of macrophages during skeletal muscle regeneration and hypertrophy-Implications for immunomodulatory strategies — Bernard C, Zavoriti A, Pucelle Q, Chazaud B, Gondin J. / 年: 2022 / 誌名: Physiological reports / 被引用: 35. DOI: 10.14814/phy2.15480
[6] The Effects of a High-Protein Diet on Markers of Muscle Damage Following Exercise in Active Older Adults: A Randomized, Controlled Trial — Clifford T, Hayes EJ, Scragg JH, Taylor G, Smith K, Bowden Davies KA, Stevenson / 年: 2020 / 誌名: International journal of sport nutrition and exercise metabolism / 被引用: 1. DOI: 10.1123/ijsnem.2020-0113
[9] Muscle damage and inflammation during recovery from exercise — Peake JM, Neubauer O, Della Gatta PA, Nosaka K. / 年: 2017 / 誌名: Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985) / 被引用: 517. DOI: 10.1152/japplphysiol.00971.2016
[10] Chronic inflammation in skeletal muscle impairs satellite cells function during regeneration: can physical exercise restore the satellite cell niche? — Perandini LA, Chimin P, Lutkemeyer DDS, Câmara NOS. / 年: 2018 / 誌名: The FEBS journal / 被引用: 129. DOI: 10.1111/febs.14417
[11] Arachidonic acid supplementation transiently augments the acute inflammatory response to resistance exercise in trained men — Markworth JF, D’Souza RF, Aasen KMM, Mitchell SM, Durainayagam BR, Sinclair AJ, / 年: 2018 / 誌名: Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985) / 被引用: 12. DOI: 10.1152/japplphysiol.00169.2018
[12] A COX-2 inhibitor reduces muscle soreness, but does not influence recovery and adaptation after eccentric exercise — Paulsen G, Egner IM, Drange M, Langberg H, Benestad HB, Fjeld JG, Hallén J, Raas / 年: 2010 / 誌名: Scandinavian journal of medicine & science in sports / 被引用: 85. DOI: 10.1111/j.1600-0838.2009.00947.x
[13] Inflammation during skeletal muscle regeneration and tissue remodeling: application to exercise-induced muscle damage management — Chazaud B. / 年: 2016 / 誌名: Immunology and cell biology / 被引用: 150. DOI: 10.1038/icb.2015.97
[14] Redox Control of Skeletal Muscle Regeneration — Le Moal E, Pialoux V, Juban G, Groussard C, Zouhal H, Chazaud B, Mounier R. / 年: 2017 / 誌名: Antioxidants & redox signaling / 被引用: 157. DOI: 10.1089/ars.2016.6782
[15] Monocyte/macrophage interactions with myogenic precursor cells during skeletal muscle regeneration — Saclier M, Cuvellier S, Magnan M, Mounier R, Chazaud B. / 年: 2013 / 誌名: The FEBS journal / 被引用: 196. DOI: 10.1111/febs.12166
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- 自律神経を整えるなら歌ってもよい?声を出す息と心拍の揺れを研究で読み解く
- 自律神経を整える色はある?青い絵の落ち着きと体の反応を分けて研究で読む
- 自律神経を整える塗り絵は自由に描くよりよい?不安と体の反応を分けて読む
- 自律神経を整えるハグは一人でもできる?触れる相手とストレス反応を研究で読む
- 自律神経を整える日記は気持ちまで書く?事実の記録とストレス反応を比べて読む
- 自律神経を整えるクラシックは曲間も大切?音の速さと無音の休憩を研究で読む
- 自律神経を整える首の温め方は局所でよい?全身浴と心拍の変化を分けて読む
- 自律神経を整える入浴は出た直後に判断する?湯上がりの脈と休息後を分けて読む
- 筋肉痛で熱い肌は損傷の目印になる?皮膚温と痛みがそろわない理由を研究で読む
- スクワットを毎日続ける効果は?連続記録より翌日の回復を見て休み方を決める
- スクワットはあと何回できるか分かる?初心者の限界感と回数のずれを研究で読む
- 片脚スクワットは反対の脚も強くする?鍛えていない側への効果と限界を研究で読む
- スクワットは重さを知らない方が挙がる?表示の数字と出せる力を分けて研究で読む
- 縄跳びダイエットは速さを変えて練習する?慣れた跳び方と応用の違いを読む
- 縄跳びダイエットは食後何分あける?跳ぶ衝撃と胃に残る食事を分けて研究で読む
- 女性の腹筋運動は膝を曲げる角度で違う?股関節の働きとお腹の負担を研究で読む
- 女性の簡単な腹筋運動は腰にタオルを入れる?すき間と筋肉の働きを分けて読む
- 疲労回復の料理ににんにくを足す前に、刻む順番と加熱で変わる成分を読む
- 疲労回復の副菜は切ってから水洗いする?ビタミンの減少と残る栄養を研究で読む
- 自律神経を整える夜勤明けの光は朝浴びる?眠る予定と心拍の変化を分けて読む
- 自律神経を整える紅茶はカフェイン抜きがよい?落ち着く実感と脈を分けて読む
- 疲労回復のスープは温め直すと栄養が減る?加熱と保温を分けて考える台所の科学
- 食欲を抑える瞑想は食べ物を観察する?空腹と甘い物への欲求を分けて研究で読む
- リンゴ酢で食欲を抑えるのは気持ち悪さのせい?満腹感と食べにくさを研究で読む
- 食欲を抑えるには食べ物から目をそらす?視線の練習と食事量の違いを研究で読む
- 運動習慣がない自分を責めると戻れる?休んだ後の優しさと再開意欲を研究で読む
- 運動習慣のメリットは未来の自分に届く?遠い健康を今日の行動につなぐ研究を読む
- 運動習慣の例は階段前の一言でも変わる?ポスターと実際に選ぶ行動を研究で読む
- 運動習慣の定義に仕事の動きは入る?余暇の運動と健康への関係を分けて読む
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
2





