ダイエットの野菜は刻んですぐ加熱する?キャベツの酵素と成分の行き先を読む

ダイエット中の食事で、キャベツは刻んでから待つべきなのか。赤キャベツの切り方と酸味、ブロッコリー由来の酵素の温度条件、白キャベツの乾燥加工を調べた研究を読み分ける。成分が減ることと別の成分が生まれることの違いから、家庭の調理に持ち込める考え方と、決めつけられない待ち時間を整理する。

まな板には千切りのキャベツ、コンロには温めかけたフライパン。「刻んだあとに少し置く」と聞いたけれど、今すぐ炒めたら何が変わるのか。夕食の支度に、酵素の都合で休憩を挟む必要があるのだろうか。

答えの芯は、刻むと酵素が関わる反応が始まり、もとの成分から別の成分が生まれる、ということだ。赤キャベツを使った食品実験では、刻む場合とすりつぶす場合で分解の進み方が違い、酸味の追加でも生成物の組み合わせが変わった。ただし、その結果だけで家庭のキャベツを加熱する前の最適な待ち時間は決められない。[1]

ここで知りたいのは、包丁を入れたあとに何が動き出すかである。食品中の成分量と、それを食べた人の体重の変化は別の問いだ。台所の反応を知ることを、毎回の調理を採点する道具にしなくてよい。

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切ることは、成分を失うだけの操作ではない

キャベツには、硫黄を含む成分であるグルコシノレートがある。ミロシナーゼは、その成分の加水分解に関わる酵素だ。加水分解とは、水が関わって物質が分かれる反応であり、植物の組織が傷つくと、この酵素によってイソチオシアネートなどの生成物が生まれる。ブロッコリーと白キャベツの加工研究も、この反応を出発点としている。[2]

切っていない組織では、酵素と反応相手のグルコシノレートは、分かれた区画に存在する。ブロッコリー由来のミロシナーゼを調べた実験では、細胞が壊れることが反応を可能にする条件として説明されている。もともと同じ野菜の中にあっても、出会える状態になるかどうかが違うのだ。[3]

この仕組みを知ると、「切ると栄養が壊れる」という言葉が粗いことが分かる。赤キャベツでは、組織の破壊をきっかけに、もとの含硫成分の加水分解と、その後の生成物の形成が起こった。もとの物質の減少だけを数えるのか、生まれた物質も数えるのかで、同じ操作の説明は変わる。[1]

とはいえ、「新しい物質が生まれたから栄養が増えた」と言い換えるのも飛躍である。この段階で測っているのは食品中の化学的な変化だ。切る前と後の成分を比較する実験から、食べた人の健康全体に順位を付けることはできない。まず、何を測った数字なのかを確認したい。

既存の「間食のサラダは作り置きで栄養が減る?切ったキャベツの保存とビタミンを読む」には保存の問いを譲り、ここでは切断をきっかけに進む酵素反応に絞る。冷蔵庫に入れたあとの話と、包丁を入れた瞬間からの話を分けるためである。

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千切りとすりつぶしでは、反応の進み方が違う

赤キャベツを対象とした実験では、刻む処理と、組織を均一にすりつぶす処理が比べられた。刻む処理ではグルコシノレートの一部が加水分解され、すりつぶす処理ではグルコシノレートが完全に分解された。同じ野菜に力を加えても、組織をどこまで壊したかで結果が変わった。[1]

成分によって、細かくしたときの反応は異なる。この研究は、別の含硫成分であるSメチルLシステインスルホキシドも調べている。こちらへのすりつぶしの影響は小さいという結果である。グルコシノレートでは大きな変化が起きた操作でも、同時に存在する別の成分は同じ動きをしなかった。[1]

生成物の種類にも違いがある。すりつぶすことで、ある構造のイソチオシアネートからのアミン形成は増えたが、別の構造では同じ増加は確認されなかった。アミンも、ここでは反応の先に生まれる物質の一群を指す。単に「細かくするほどイソチオシアネートが残る」という一本道ではない。[1]

家庭の料理で考えるなら、サラダの千切り、汁物に入れるざく切り、すりつぶした材料を、同じ「切ったキャベツ」にまとめないことが役立つ。研究のすりつぶし処理を、包丁を何度か往復させた状態と同一視する必要もない。包丁の回数を増やして実験室に近づこうとすると、夕食がなかなか始まらない。

研究結果の「完全に分解された」という表現にも注意したい。これは、調べた条件で、もとのグルコシノレートがどうなったかを示す。キャベツ全体の栄養がなくなった、あるいは全部が望ましい成分に変わった、という意味ではない。部分的な成分分析の言葉を、野菜全体の価値に広げない読み方が必要だ。[1]

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酢やレモンは、反応の行き先にも関わる

同じ赤キャベツの実験では、レモン汁や酢を加え、酸性にする影響も調べられた。酸性化は、SメチルLシステインスルホキシドに由来する生成物の形成を抑えた。一方、グルコシノレートに由来するニトリル、エピチオニトリルの形成を減らし、アミンの形成を止め、イソチオシアネートの量を増やした。[1]

ここでのニトリルやエピチオニトリルは、グルコシノレートから生じる別の生成物の名前である。名前を覚えるより、同じ出発物質からも、条件に応じて異なる生成物が生まれる、と捉える方が使いやすい。酸味は味付けの要素であると同時に、この食品実験では生成物の構成に関わる条件だった。[1]

酸味の影響は、増えた成分と形成が抑えられた成分を分けて読める。増えたのはイソチオシアネートであり、同時に形成が抑えられた物質もあった。ある反応を抑えたことで、別の生成物の量が高くなるという読み方だ。酸味が野菜全体を一括して強化する、という説明とは違う。[1]

また、この実験の対象は赤キャベツである。日常の白いキャベツ料理に、まったく同じ量の変化を約束する結果として使うべきではない。赤キャベツのサラダに好みの酸味を合わせる際、味付けが成分の行き先にも関わり得る、と理解するところからでよい。酸っぱさを我慢する量競争にする根拠はない。[1]

酸味の研究を読んだあと、加えるタイミングや量まで確定した調理法が欲しくなるかもしれない。しかし、食品中の反応の方向と、家庭で再現できる完成したレシピは別のものだ。材料や切り方を変えた料理を同じ条件として扱わず、研究が比べた操作の範囲で受け取ることが、調理情報を使い過ぎないこつである。

酵素の適温を、そのまま鍋の設定にしない

ブロッコリー由来のミロシナーゼを扱った実験では、常圧で酵素の活性が最も高かった温度は約30℃だった。活性とは、その条件で酵素が反応を進める働きの強さを指す。酸性・アルカリ性の程度を表すpHでは、6.5〜7が最適域で、新鮮なブロッコリーの搾汁のpHに相当した。[3]

この実験は、キャベツの炒め物を食べた人を追った研究ではない。ブロッコリーから得た酵素に対し、温度、圧力、添加物などの条件を変えて働きを調べた食品科学の実験である。約30℃という値は酵素の働きを理解する手掛かりであり、夕食をその温度で調理すべきだという指定ではない。[3]

同じ実験では、塩化マグネシウムとアスコルビン酸の組み合わせが酵素活性を高めた。最適となった濃度はそれぞれ0.1 g/Lと2 g/Lだった。これは酵素の周囲の化学的条件まで結果に関わることを示す数字であり、家庭で混ぜる調味料の配合として紹介する数字ではない。[3]

酸性化で赤キャベツのイソチオシアネートが増えた研究と、酵素活性の最適pHを調べた研究は、一見すると違う方向に見える。しかし、測ったものが違う。前者は野菜組織の中で最終的にどの生成物が生じたか、後者はブロッコリー由来の酵素がどの条件で働いたかである。酵素活性の高さだけから、料理に残る生成物の量を決められない。[1][3]

同じ酵素実験には圧力の比較もある。50〜100 MPaの圧力では活性がわずかに高まり、300 MPaでは大きく低下した。温度だけでなく、圧力を変えても反応の進みやすさが変わったのである。ここでも、低い圧力での小さな増加と、高い圧力での大きな低下を一緒に読む必要がある。[3]

この結果は、条件を強くすれば働きが増す、という直感が通用しない例だ。ただし、酵素に圧力を加えた実験を、葉の上から包丁で押す操作と重ねることはできない。何をどのように処理した実験かを省くと、数字の意味が変わってしまう。切断は酵素と反応相手が接触する条件であり、圧力の実験は酵素活性に影響する外部条件を比べている。同じ研究の中でも、区別して受け取る点である。[3]

数字で読む切り方と酵素の条件

約30℃:ブロッコリー由来のミロシナーゼが、常圧で最も高い活性を示した温度である。[3]

pH6.5〜7:同じ酵素実験で、活性が最適となったpHの範囲に当たる。[3]

50、60、70℃:白キャベツとブロッコリーの副産物を粉末化する研究で比較した熱風乾燥温度を示す。[2]

107 ± 5 nmol/g:生キャベツの葉を薄切りにしたときの、湿重量当たりのホスファチジン酸量である。[10]

286 ± 29 nmol/g:同じ葉の加工実験で、すりつぶしたときのホスファチジン酸量である。[10]

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