連載「見た目と運動の科学」全10回の第9回です。

体重が大きく減ると、皮膚が余る。この現象については、他の回で扱った題材より研究が揃っています。減量手術を受けた人を追跡したコホートが各国にあり、計測も質問票も蓄積されているからです。

最初に、この回の立場をはっきりさせておきます。減量の目的は健康であって、見た目ではありません。体重を減らすことで血糖・血圧・関節の負担・睡眠時無呼吸などが改善することは、この連載の範囲外ですが確立した知見です。余る皮膚の話は、その目的を揺るがすものではありません。以下は、起こりうることを事実として記述するだけの回です。

結論を先に書きます。大幅な減量のあと、多くの人に余剰皮膚が生じます。計測された下垂の量と、本人が感じる不快さの相関は、多くの部位で低いままです。そして「皮膚の弾性が回復するかどうか」を長期に追ったヒトの研究は、ほとんどありません。

見た目と運動の科学 第9回 体重が減ると皮膚はどうなるか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

どれくらいの人に、どこに起きるのか

まず頻度から。カナダで行われた質問票調査があります。

Klassen AF, Kaur M, Breitkopf T, Thoma A, Cano S, Pusic A. Using the BODY-Q to Understand Impact of Weight Loss, Excess Skin, and the Need for Body Contouring following Bariatric Surgery. Plastic and Reconstructive Surgery. 2018;142(1):77-86.

214名が回答し(回答率75%)、そのうち減量手術を受けた210名を解析しています。196名(93%)に余剰皮膚が残り、168名(80%)が身体の輪郭を整える手術を必要としていました。総体重減少率が高いほど余剰皮膚は多く(r = 0.24、p = 0.001)、必要とされる手術の数も多くなり、13の評価尺度のうち7つでスコアが悪くなっていました。

この領域を整理したスコーピングレビューもあります。バイヨ(Baillot)らは、減量手術後の成人の70%超に余剰皮膚が生じるとしたうえで、13件の量的研究と11件の質的研究を検討しました。身体面への負の影響を報告した研究が67%、心理社会面が75%、日常生活面が83%です。女性は男性より余剰皮膚が多く、不便も大きいと報告しました。

注目すべきは、この総説が「分からない」と述べている部分です。術前の体格指数も、手術からの経過時間も、手術の種類も、余剰皮膚による不便さとは有意に関連していませんでした。年齢・減量幅・体格指数といった他の要因についても、結論は出ていません。著者らは、どの人が余剰皮膚を生じやすく、あるいは強く影響を受けやすいのかを判定する証拠が不足していると結論しています。

減量幅との関係

減量の大きさとの関連を調べた研究を見ます。

Giordano S, Victorzon M, Koskivuo I, Suominen E. Physical discomfort due to redundant skin in post-bariatric surgery patients. Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery. 2013;66(7):950-955.

減量手術を受けた360名(男性110名・女性250名、平均年齢 51.2(標準偏差 10.8)歳)に、術後1年以上を経て質問票を送りました。術前の体格指数は平均 45.7(6.4)、追跡時は 33.6(6.0)。平均 56.1(43.6)か月の追跡で、平均の減量は 35.2(18.8)kg でした。

92.8% が余剰皮膚の問題を報告し、そのうち半数で日常の身体活動に支障が出ていました。部位は腹部・上腕・臀部が多く挙がっています。多変量解析では、女性であること(β = -13.56、95%信頼区間 -16.81〜-10.32、p < 0.0001)、減量の大きさ(β = 0.21、95%信頼区間 0.12〜0.29、p < 0.0001)、体格指数の変化幅が、余剰皮膚と関連していました。体格指数の変化が 20 を超えた群、減量が 50 kg を超えた群では、不快感が有意に大きくなっています。

つまり、減量幅が大きいほど余剰皮膚は多い。ここまでは直感と合います。ただし、この研究も横断的な質問票調査であり、減量の速さについては測っていません。「ゆっくり減らせば皮膚が追いつく」という説明はよく聞かれますが、減量の速度を曝露として比較した質の高い試験は、今回の調査では見つかりませんでした。

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計測と、本人の感じ方はずれる

この回で最も重要な所見に入ります。スウェーデンの前向きコホートです。

Biörserud C, Olbers T, Staalesen T, Elander A, Olsén MF. Understanding excess skin in postbariatric patients: objective measurements and subjective experiences. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2016;12(7):1410-1417.

200名を手術前と18か月後に評価し、149名(78%)が追跡を完了しました。標準化された手順で下垂と余剰皮膚を測り、同時に本人の体験を質問票で尋ねています。

結果は二重でした。減量後、下垂の計測値は大腿を除くすべての部位で減りました。ところが、客観的な計測値と本人の体験・不快感の相関は、大半の部位で小さいか低い値にとどまりました(順位相関 0.03〜0.67)。著者らは、測定された余剰皮膚は術前より減っているのに、患者はむしろ減量後にそれを強く意識し、悩まされ、不快に感じるようになるようだ、と書いています。予測の分析では、術前の腹部の下垂が1センチ増えるごとに、術後に3センチを超える下垂が残るオッズが約2倍になりました(オッズ比 2.32、1.76〜3.07)。

同じグループが、対象を広げて比較した研究もあります。

Elander A, Biörserud C, Staalesen T, Ockell J, Fagevik Olsén M. Aspects of excess skin in obesity, after weight loss, after body contouring surgery and in a reference population. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2019;15(2):305-311.

質問票のスコアは、一般の参照集団で 1.5±3.5、肥満の成人で 10.5±8.5、減量手術後の成人で 12.3±8.1、減量手術後の青年で 14.4±7.7、腹壁形成術を受けた人で 2.9±5.2 でした。余剰皮膚は一般集団ではほとんど問題になっていない一方、肥満と大幅な減量に結びついています。腕・乳房・腹部の余剰皮膚は減量後に減りましたが、内腿では両方の年齢群で増えました。客観的に測った下垂と本人の体験・不快感の相関は 0.16〜0.71 で、最も高かったのは青年でした。

第1回の物差しが、ここでも効いてきます。センチメートルで測った量と、本人が感じる不便さは、別の物差しです。そして減量というできごとは、後者だけを動かすことがある。体が変わったことで、以前は気にしていなかった部位に注意が向く——という説明が、著者らの記述と整合します。

時間が経つとどうなるか

変化がいつ止まるのかを追った研究もあります。デルデリアン(Derderian)らは、減量手術を受けた青年217名を術前から5年間追跡しました。術前の時点で198名(90%)に腹部のパニクルス(垂れ下がった皮下組織)があり、16名(7%)が関連する症状を訴えていました。重症度の変化は術後24か月以内に起き、24か月を超えると平均の重症度は変わりませんでした。術前の重症度が高いほど、術後の改善も大きく、同時に症状の発生も多くなっています。

より長期では、マレク(Marek)らが米国の多施設コホート1159名を術後4〜5年の時点で調査しました。余剰皮膚に悩まされる程度は、本人の申告では中程度にとどまっています。一方、実際に輪郭を整える手術を受けたのは 11.2% だけで、その多くは自費でした。費用が主な障壁として挙げられています。著者らは、余剰皮膚がより低い心理社会的機能と関連していると述べています。

外科的な選択については、この連載は推奨も否定もしません。事実として書けるのは、希望する人は多く、実際に受ける人は少なく、その差の主因は費用だと報告されているということです。

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皮膚そのものに何が起きているのか

組織と機能の側も調べられています。

Triwatcharikorn J, et al. Skin manifestations and biophysical changes following weight reduction induced by bariatric surgery: A 2-year prospective study. The Journal of Dermatology. 2023;50(12):1635-1639.

31名を2年間、複数の時点で診察と機器測定にかけた前向き研究です。皮膚の所見としては、線条・黒色表皮腫・足底の角質増加などが多く見られ、減量によって多くが改善しました。機器測定では、経表皮水分蒸散量・角層水分量・pHはいずれも変化せず、顔の皮脂の産生は3か月と6か月の時点で有意に減り、弾力は6か月と24か月の時点で低下しました。また、急性の休止期脱毛が17名(54.84%)に観察されています。

生検で調べた研究もあります。

Joudatt LLC, Zotarelli-Filho IJ, de Quadros LG, Lopes ACP, de Lima André J, Joudatt J, Junior RLK. Histological Skin Assessment of Patients Submitted to Bariatric Surgery: A Prospective Longitudinal Cohort Study. Obesity Surgery. 2023;33(3):836-845.

手術前と1年後に33の皮膚生検を採取し、コラーゲンと弾性線維を染色して比較しています。1年後には表皮の厚さに有意な差が生じ(p < 0.0001)、コラーゲン線維の配列の乱れと、量の見かけ上の減少、そして弾性線維の増加——ただし断片化を伴う増加——が認められました(p < 0.0001)。著者らは、肥満と大幅な減量が皮膚の細胞外基質のコラーゲン線維の乱れと弾性線維の断片化を引き起こすと結論しています。

顔についても系統的レビューがあります。

Jafar AB, Jacob J, Kao WK, Ho T. Soft Tissue Facial Changes Following Massive Weight Loss Secondary to Medical and Surgical Bariatric Interventions: A Systematic Review. Aesthetic Surgery Journal Open Forum. 2024;6:ojae069.

309本の論文から13件が基準を満たしました。大幅な減量は顔の加齢徴候と相関しており、脂肪の減少が最も大きかったのは中頬部、皮膚の弛緩が目立ったのは中央の頸部でした。見た目の年齢は、大幅な減量をした人のほうが高く評価されていました。ただし著者らは、術後の顔の容積を定量的に解析した研究がさらに必要だと述べています。13件という数は、この主題の研究がまだ少ないことを示しています。

「皮膚の弾性は戻るのか」について

最後に、最もよく問われる点を扱います。減量のあと、皮膚の弾性は時間とともに回復するのか。

正直に書きます。減量後の皮膚の弾性を、機器で長期に追跡し、回復の有無を主要な評価項目とした質の高い研究は、今回の調査では見つかりませんでした。2年間の前向き研究では、弾力は6か月と24か月の時点で低下していました。生検の研究では、1年後に弾性線維は増えていたものの断片化していました。ここから「戻る」とも「戻らない」とも言えません。

言えることを整理します。余剰皮膚の計測値は、減量そのものによって多くの部位で減る。ただし内腿は増えることがある。重症度の変化は24か月でほぼ止まる。機器で測った弾力は、少なくとも24か月の時点では低下したままである。これらは別々の研究の別々の指標であり、ひとつの物語につなげられるほど揃ってはいません。

論点報告されていること
頻度減量手術後の70%超、調査によっては93%に余剰皮膚
減量幅との関係減量が大きいほど多い。50 kg超・体格指数の変化20超で不快感が大きい
減量の速さ速度を曝露として比較した質の高い試験は見つからなかった
計測と実感相関は多くの部位で低い(0.03〜0.67)。測定値は減っても意識は強まる
時間経過重症度の変化は術後24か月以内。それ以降は平均値が変わらない
皮膚の組織コラーゲンの配列の乱れ、弾性線維の断片化を伴う増加
弾性の回復長期に追跡した質の高い研究は見つからなかった

この回を読んで、減量をためらう必要はありません。ここに挙げた研究の対象は、いずれも減量手術を受けた人たちです。先に見た研究では、術前の体格指数の平均は 45.7 でした。日常的な範囲の体重変化に、そのまま当てはまる数字ではありません。そして繰り返しますが、減量が目指しているのは健康であって、皮膚の見え方ではありません。

次回予告

最終回となる第10回は「総括——美容主張の読み方」です。第1回から第9回までを、「測れて効果が示された」「測れるが効果が不明」「そもそも測れていない」の3つに仕分けます。そのうえで、代理指標・自己申告・資金の出どころ・前後写真・体験談・短期試験・非再現という7つの観点を、読み手の道具としてまとめます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「肌がきれいになる」は測れるのか——皮膚科学の評価指標
  2. 第2回|運動と皮膚——血流・バリア機能・皮脂
  3. 第3回|紫外線と酸化ストレス——屋外運動の功罪
  4. 第4回|汗は「毒を出す」のか——発汗の生理学と言説の検証
  5. 第5回|睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化
  6. 第6回|姿勢と印象——姿勢は見た目を変えるか
  7. 第7回|むくみ——体液の分布と、圧迫・運動の効果
  8. 第8回|セルライト——何が分かっていて何が分かっていないか
  9. 第9回|体重が減ると皮膚はどうなるか(この記事)
  10. 第10回|総括——美容主張の読み方

出典

  1. Klassen AF, Kaur M, Breitkopf T, Thoma A, Cano S, Pusic A. Using the BODY-Q to Understand Impact of Weight Loss, Excess Skin, and the Need for Body Contouring following Bariatric Surgery. Plastic and Reconstructive Surgery. 2018;142(1):77-86.
  2. Baillot A, et al. What Is Known About the Correlates and Impact of Excess Skin After Bariatric Surgery: a Scoping Review. Obesity Surgery. 2017;27(9):2488-2498.
  3. Giordano S, Victorzon M, Koskivuo I, Suominen E. Physical discomfort due to redundant skin in post-bariatric surgery patients. Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery. 2013;66(7):950-955.
  4. Biörserud C, Olbers T, Staalesen T, Elander A, Olsén MF. Understanding excess skin in postbariatric patients: objective measurements and subjective experiences. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2016;12(7):1410-1417.
  5. Elander A, Biörserud C, Staalesen T, Ockell J, Fagevik Olsén M. Aspects of excess skin in obesity, after weight loss, after body contouring surgery and in a reference population. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2019;15(2):305-311.
  6. Derderian SC, Dewberry LC, Patten L, Sitzman TJ, Kaizer AM, Jenkins TM, Michalsky MP, Xie C, Mitchell JE, Inge T. Excess skin problems among adolescents after bariatric surgery. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2020;16(8):993-998.
  7. Marek RJ, Steffen KJ, Flum DR, Pomp A, Pories WJ, Rubin JP, Wolfe BM, Mitchell JE. Psychosocial functioning and quality of life in patients with loose redundant skin 4 to 5 years after bariatric surgery. Surgery for Obesity and Related Diseases. 2018;14(11):1740-1747.
  8. Triwatcharikorn J, et al. Skin manifestations and biophysical changes following weight reduction induced by bariatric surgery: A 2-year prospective study. The Journal of Dermatology. 2023;50(12):1635-1639.
  9. Joudatt LLC, Zotarelli-Filho IJ, de Quadros LG, Lopes ACP, de Lima André J, Joudatt J, Junior RLK. Histological Skin Assessment of Patients Submitted to Bariatric Surgery: A Prospective Longitudinal Cohort Study. Obesity Surgery. 2023;33(3):836-845.
  10. Jafar AB, Jacob J, Kao WK, Ho T. Soft Tissue Facial Changes Following Massive Weight Loss Secondary to Medical and Surgical Bariatric Interventions: A Systematic Review. Aesthetic Surgery Journal Open Forum. 2024;6:ojae069.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。減量の方法、減量手術の適応、術後の経過については、担当の医師にご相談ください。余った皮膚のあいだに湿疹・ただれ・感染をくり返す場合、痛みや出血がある場合は、自己判断せず皮膚科や形成外科を受診してください。急激な体重減少が意図しないものである場合、脱毛が続く場合も医療機関にご相談ください。皮膚の異常や急な変化に気づいたときは皮膚科の受診をおすすめします。

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