連載「見た目と運動の科学」全10回の第3回です。
屋外で体を動かすことには、たくさんの利点があります。同時に、屋外運動には屋内運動には無い曝露がひとつ加わります。太陽紫外線です。この回では、その量が実測でどれくらいなのかを見たうえで、運動そのものが生む酸化ストレスと、それに対する体の反応を扱います。
結論を先に書きます。屋外で運動する人が受ける紫外線の量は、実測すると相当な水準に達します。そして本人の対策は、その量に見合っていません。一方、運動が体内で生む酸化ストレスは、それ自体が適応を引き起こす信号として働いており、外から抗酸化物質を大量に入れるとその適応が弱まるという報告が複数あります。紫外線と、運動由来の酸化ストレス。どちらも「酸化」という言葉でくくられますが、扱いはまったく違います。
そして、この回で最も大事な点を先に置きます。紫外線による皮膚の変化は、運動をするかしないかとは独立した要因です。屋外で運動する人は、運動しているから皮膚が変わるのではなく、屋外にいる時間が長いぶん紫外線を多く浴びているのです。

屋外運動で実際に浴びている量
まず実測値から。高地で行われたウルトラ耐久のトレイルランニング競技で、選手が個人線量計を装着した研究があります。
Gutiérrez-Manzanedo JV, et al. Solar ultraviolet radiation exposure of trail runners in an ultraendurance competition at high altitude. Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry. 2024.
2023年にスペインで行われた大会での測定です。周囲環境の累積紅斑量は、最長の 154 km 部門で 59.9 標準紅斑量(SED)、最短の 25.1 km 部門で 19.3 SED。選手17名が実際に受けた有効放射量は、同じ順で 24.2 SED から 7.6 SED でした。
SED(標準紅斑量)は、皮膚に紅斑を起こす働きで重みづけした紫外線の量の単位です。細かい定義より、部門による開きを見てください。最長部門と最短部門では、環境の累積量でも選手が受けた量でも3倍以上の差があります。同じ大会・同じ日でも、外にいた時間の長さがそのまま曝露量の差になっているということです。しかも高地では、標高が上がるぶん紫外線が強まります。
比較の目安として、別の競技での測定を並べます。
Martínez AR, et al. Skin cancer prevention in extreme sports: Intervention in a 24-h race. Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine. 2024;40(1):e12940.
トレイルランニングとマウンテンバイクの種目からなる長距離レースで、最大紫外線指数 9.2、気温30度超、相対湿度35%超という条件でした。選手11名が受けた平均有効紅斑量は 2959.2±404.2 J/m2、標準紅斑量に換算して 29.6 SED です。皮膚科の検診を受けた170名のうち、日光角化症が 4.7%、皮膚がんを疑う病変が 4.2% に見つかっています。
競技ごとの差も見積もられています。
Downs NJ, Axelsen T, Schouten P, Igoe DP, Parisi AV, Vanos J. Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games. Temperature. 2020;7(1):89-108.
東京で屋外開催が予定されていた144の競技について、大気の実測値と、姿勢・衣服による遮蔽・会場の地面の反射率・開催時刻を織り込んで曝露量を推定した研究です。最も高いのは女子テニスシングルスの 1680 J/m2、次いで男子ゴルフの 1530 J/m2、男子自転車ロードレースの 941 J/m2と見積もられました。競技の性質——立っている時間、衣服の露出、会場の地面——で大きく変わることが分かります。
クリニエツ(Kliniec)らが62本の論文を整理した総説によれば、水上スポーツと登山は基底細胞がんのリスクと、サーフィンと水泳は有棘細胞がんのリスクと結びつけられており、悪性黒色腫は水泳・サーファー・マラソンランナーで多いと報告されています。水と雪は紫外線を反射し、水は日焼け止めを洗い流します。
量を知っていても、行動は変わっていない
同じ2つの研究は、選手の行動も調べています。トレイルランニングの調査では194名が質問票に回答しました(平均年齢 41.3±8.9 歳、76.8% が男性)。日焼けしやすい皮膚の型(I-II型)と答えたのが 22.4%。前年に屋外スポーツのあとで日焼けを経験したと答えたのが 66.5% に上ります。
対策はどうか。帽子の着用が 62.6%、正午前後の直射を避けるが 59.2%、SPF 15 以上の日焼け止めを使うが 38.7%。そして49.7% が「塗り直さない」と答えています。長距離レースの調査でも、日焼けの経験率は58%、普段から日焼け止めを使わないと答えた人が 62.9%、皮膚の自己検診をしないと答えた人が 67.2% でした。
この落差は重要です。知識が不足しているという話ではありません。競技中に塗り直すのは、実際には難しい。手が汚れている、立ち止まれない、汗で流れる、目に入ると痛い。行動の問題は、たいてい情報の問題ではなく段取りの問題です。
落ちやすさの問題も無視できません。クリニエツらの総説は、水上スポーツとウィンタースポーツが不利な条件を重ねることを指摘しています。水は日焼け止めを洗い流し、水面と雪面は紫外線を反射して、下からも当たるようにします。発汗も同じ方向に働きます。塗った直後の状態が、1時間後にも保たれているとは限らない——製品の表示にある数値は、規定の量を規定のとおりに塗った条件での試験値であって、汗をかきながら動いている状態での数値ではありません。
ここから言えるのは、「塗ったかどうか」ではなく「いつ、どれだけ、何度」が問題だということです。屋外にいた時間と、そのあいだの遮蔽の実態。曝露量を決めているのはその2つで、意図や知識ではありません。

汗は紫外線の害を増やす側に働く
発汗そのものが、紫外線の影響を強める方向に働くという指摘があります。
Moehrle M. Outdoor sports and skin cancer. Clinics in Dermatology. 2008;26(1):12-15.
この総説は、屋外スポーツの選手が高い紫外線量を受けることを一連の線量計測研究が記録してきたとしたうえで、運動による発汗は皮膚の光感受性を高め、日焼けのリスクを高めうると述べています。さらに、運動によって生じる一時的な免疫の抑制も、皮膚がんのリスクを高める方向に働く可能性があるとしています。母斑(ほくろ)や日光黒子の数——悪性黒色腫の危険因子として知られる所見——が、持久系の屋外スポーツを行う人で多いことも報告されています。
第4回で詳しく扱いますが、汗は「悪いものを外に出す」働きをしているわけではありません。ここでは、汗が皮膚の表面に留まることで光への感受性が変わる、という測定可能な事実だけを押さえておきます。
紫外線が皮膚に何をしているのか
紫外線による皮膚の変化がどう起きるのかは、比較的よく分かっています。
Fisher GJ, Wang ZQ, Datta SC, Varani J, Kang S, Voorhees JJ. Pathophysiology of premature skin aging induced by ultraviolet light. The New England Journal of Medicine. 1997;337(20):1419-1428.
59名を対象に、臀部の皮膚に管理された条件で紫外線を照射し、生検で調べた研究です。1回の照射で、コラーゲンなどを分解する3種類の酵素(コラゲナーゼ、92 kDa ゼラチナーゼ、ストロメライシン)の発現が増えました。内因性のI型コラーゲン線維の分解は、照射していない皮膚と比べて58%増加しています。2日おきに4回照射すると、コラゲナーゼの活性は基準値の 4.4 倍、ゼラチナーゼは 2.3 倍に上がったまま7日間続きました。
著者らは、これが繰り返されることで真皮の構造に欠損が蓄積していくと述べています。1997年の論文ですが、ここで示された枠組みは現在も光老化の基本的な説明として使われています。
大事なのは、この機序が運動とは無関係に成立することです。同じ量の紫外線を、走りながら浴びても、椅子に座って浴びても、皮膚で起きることは変わりません。屋外運動が皮膚に及ぼす影響として語られるものの相当部分は、運動の影響ではなく、屋外にいた時間の影響です。

運動が生む酸化ストレスは、話が別
ここで用語の整理をします。運動中は酸素の消費が増え、その過程で活性酸素種(ROS)が生じます。これを「体が錆びる」と説明することがありますが、生理学の見方はもう少し込み入っています。
Ristow M, Zarse K, Oberbach A, Klöting N, Birringer M, Kiehntopf M, Stumvoll M, Kahn CR, Blüher M. Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2009;106(21):8665-8670.
未訓練の健康な若い男性19名と、訓練経験のある20名を対象に、4週間の運動介入を行った試験です。半数にはビタミンC 1000 mg/日とビタミンE 400 IU/日が投与されました。結果は明快でした。インスリン感受性の指標は、抗酸化物質を摂らなかった群でのみ改善しました(未訓練群・訓練経験群とも P < 0.001)。ROS に応答する転写調節因子の発現増加も、抗酸化物質を摂らなかった群でのみ起きています。体が自前で持つ抗酸化系(スーパーオキシドディスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)の誘導も、サプリメントによって阻止されました。
著者らはこれをミトホルミシスの概念に沿うものと解釈しています。運動で生じる酸化ストレスが、それ自体で「防御を強めよ」という信号になっている——だから、信号を先回りして消してしまうと、適応も起きない。
ホルミシスという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、考え方そのものは運動の常識と地続きです。筋肉が強くなるのは、負荷という一種のストレスに対して体が作り直しの反応を起こすからです。負荷をゼロにすれば筋肉は強くなりません。酸化ストレスも同じ構図で捉えられている、というのがこの分野の見方です。少量なら有益で、過剰なら有害。用量で向きが変わる。「酸化ストレスはすべて悪」でも「多いほど良い」でもない、という点が要です。
メリー(Merry)とリストウは、この領域を整理した総説で、抗酸化物質の摂取が持久系トレーニングによる抗酸化能の向上・ミトコンドリア新生・細胞の防御機構・インスリン感受性の改善を減弱させうるとしています。ただし、すべての研究でそうなるわけではなく、訓練を続けることで打ち消される場合もあると但し書きを添えています。有害な影響がより一貫して報告されているのは、高強度のトレーニングや過負荷に対する応答だとされます。そして、抗酸化サプリメントがトレーニング適応を高めるという説得力のある証拠は無いとはっきり書いています。
「酸化ストレスを減らす」は目的ではない
この領域を早い時期に整理したのが、ペテルネリ(Peternelj)とクームズの総説です。150本を超える論文が発表されているものの、その大半は小規模で質の低い研究だと述べています。一貫している所見は「抗酸化物質の摂取が運動による酸化ストレスを減衰させる」ことですが、その生理学的な意味は一貫して示されておらず、筋の損傷やパフォーマンスへの効果は多くの研究で認められていません。著者らは、トレーニング適応を妨げたことを示した23本の研究を提示し、運動する人にとって最良の方法は、多様でバランスのとれた食事から十分なビタミンとミネラルを摂ることだと結論しています。
注意深く読んでください。これは「抗酸化物質は体に悪い」という話ではありません。食品に含まれる量と、サプリメントで一度に入れる量は桁が違います。問題になっているのは、高用量を慢性的に、しかも適応を起こしたい時期に重ねることです。
| 同じ「酸化」でも | 紫外線由来 | 運動由来 |
|---|---|---|
| 発生する場所 | 皮膚(表皮・真皮) | 主に活動している筋 |
| 体の反応 | コラーゲン分解酵素の誘導と、不完全な修復の蓄積 | 防御系の誘導という適応の信号 |
| 減らすべきか | 曝露そのものを減らす対象 | 信号を消すと適応も消える |
| 運動との関係 | 運動とは独立。屋外にいた時間で決まる | 運動そのものが原因 |
整理すると、屋外運動の「功罪」は次のようになります。運動には運動の効果があり、そこで生じる酸化ストレスはむしろ適応の一部です。一方、屋外にいることで受ける紫外線は、運動の効果とは何の関係もない、別立ての曝露です。前者を減らそうとして抗酸化サプリメントを足すより、後者を減らすほうが、皮膚に対しては筋が通っています。
どこまで減らすか、どうやって減らすかは、競技や生活の事情によります。ここで挙げた研究が示しているのは、屋外で運動する人が受けている量に対して、実際にとられている対策が見合っていないという事実です。まず自分の曝露量を知ること。この連載の関心からいえば、そこが出発点になります。
最後に、この回の扱い方について一言だけ。ここで並べた数字は、屋外運動を控えるべきだという主張ではありません。運動の利点と、紫外線の曝露は、別々に足し引きできる事柄です。両方を同じ皿に載せて「屋外運動は良いのか悪いのか」と問うから、答えが出なくなります。分けて数えれば、どちらも扱えます。
次回予告
第4回は「汗は『毒を出す』のか——発汗の生理学と言説の検証」を扱います。この連載の中心にあたる回です。汗の組成は実測されており、重金属や有機化合物がどれだけ含まれるかも測られています。その数字と、広く語られている言説のあいだに何がずれているのかを、淡々と並べます。
この連載の全10回
- 第1回|「肌がきれいになる」は測れるのか——皮膚科学の評価指標
- 第2回|運動と皮膚——血流・バリア機能・皮脂
- 第3回|紫外線と酸化ストレス——屋外運動の功罪(この記事)
- 第4回|汗は「毒を出す」のか——発汗の生理学と言説の検証
- 第5回|睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化
- 第6回|姿勢と印象——姿勢は見た目を変えるか
- 第7回|むくみ——体液の分布と、圧迫・運動の効果
- 第8回|セルライト——何が分かっていて何が分かっていないか
- 第9回|体重が減ると皮膚はどうなるか
- 第10回|総括——美容主張の読み方
出典
- Gutiérrez-Manzanedo JV, et al. Solar ultraviolet radiation exposure of trail runners in an ultraendurance competition at high altitude. Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry. 2024.
- Martínez AR, et al. Skin cancer prevention in extreme sports: Intervention in a 24-h race. Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine. 2024;40(1):e12940.
- Downs NJ, Axelsen T, Schouten P, Igoe DP, Parisi AV, Vanos J. Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games. Temperature. 2020;7(1):89-108.
- Kliniec K, Tota M, Zalesińska A, Łyko M, Jankowska-Konsur A. Skin Cancer Risk, Sun-Protection Knowledge and Behavior in Athletes-A Narrative Review. Cancers. 2023;15(13):3281.
- Moehrle M. Outdoor sports and skin cancer. Clinics in Dermatology. 2008;26(1):12-15.
- Fisher GJ, Wang ZQ, Datta SC, Varani J, Kang S, Voorhees JJ. Pathophysiology of premature skin aging induced by ultraviolet light. The New England Journal of Medicine. 1997;337(20):1419-1428.
- Ristow M, Zarse K, Oberbach A, Klöting N, Birringer M, Kiehntopf M, Stumvoll M, Kahn CR, Blüher M. Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2009;106(21):8665-8670.
- Merry TL, Ristow M. Do antioxidant supplements interfere with skeletal muscle adaptation to exercise training? The Journal of Physiology. 2016;594(18):5135-5147.
- Peternelj TT, Coombes JS. Antioxidant supplementation during exercise training: beneficial or detrimental? Sports Medicine. 2011;41(12):1043-1069.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ほくろやしみの大きさ・形・色が短期間で変わった場合、出血やかさぶたを繰り返す皮膚の変化がある場合、治りにくい傷やかさつきが続く場合は、自己判断せず皮膚科を受診してください。日焼け後に水ぶくれや強い痛み、発熱をともなう場合も医療機関にご相談ください。サプリメントの使用については、持病の治療中の方や薬を服用中の方は主治医・薬剤師に確認してください。






