間食の飲み物に選ぶコーヒーは、紙でこすと何が変わるのか。コレステロールに関わるカフェストールなどの油分と、カフェインを分けて読む。抽出後の粉・紙・飲料に成分がどう分かれたかを調べた分析研究と、血圧を比べた無作為化試験から、いれ方を選ぶ際の判断材料を示す。
使い終わった紙フィルターと、その上に残ったコーヒーの粉。カフェストールという油性成分が多く残ったのは、紙よりも粉の方だった。間食に添えるコーヒーを紙でこすと何が変わるのか。その答えは、カップの中だけを見ても分からない。[15]
答えの芯は、紙を使うとコレステロールに関わるジテルペンという油性成分が飲料に入りにくくなることだ。ただし、カフェインまで同じように減ると考えてはいけない。煮出した飲料を紙でこした群と、こさなかった群を比べた試験では、カフェイン濃度は近い値だった。[5][8]
さらに「油分は全部、紙に捕まる」という説明にも修正が要る。成分の行き先を調べた分析では、カフェストールの多くは紙よりも抽出後の粉に残っていた。間食の飲み物を選ぶなら、紙の有無だけでなく、何がどこに残るのかを見ると判断しやすい。[15]

紙で変わるのは、まず油性成分の届き方である
コーヒーのジテルペンの代表が、カフェストールとカーウェオールである。名前は長いが、ここではコーヒー豆の脂質に含まれ、血液中のコレステロールに影響する成分と押さえればよい。コーヒーの作用をカフェインだけで説明すると、この部分が抜け落ちる。[5]
栄養学のレビューは、いれ方によって総コレステロールと低密度リポたんぱくコレステロールの濃度が上がる場合と、そうでない場合があると整理した。低密度リポたんぱくは一般にLDLと表す。レビューが原因として挙げたのが、カフェストールとカーウェオールだ。豆に含まれる割合は重量で約1%とされた。[5]
この約1%は豆の中の割合であり、カップの中の割合ではない。豆にある成分がすべて飲料に移るなら単純だが、抽出には移らずに残る部分がある。豆の成分表と、飲む液体の成分表を同じものとして読むことはできない。抽出後の粉を調べた分析は、その違いを具体的に示している。[5][15]
レビューでは、熱湯で抽出されるジテルペンが紙フィルターに保持されるため、紙でこしたコーヒーと、北欧式の煮出し、カフェティエール、トルコ式のコーヒーではコレステロールへの影響が異なると説明された。カフェティエールは粉を湯に浸してから押し下げる器具として考えると身近だ。論点はコーヒーを飲むかどうかだけでなく、どのようにいれるかにもある。[5]
ただし、この整理から「紙を使えばコレステロールは絶対に動かない」と保証するのは行き過ぎである。後年の分析研究は、紙でこした飲料でも血中コレステロールが上がった報告があることを研究の出発点にしている。紙という道具の名前だけで結果を決めず、飲料にどれだけ移ったかまで確かめる必要がある。[15]
自宅の戸棚で紙フィルターを探すとき、考えたいのは健康の合格札が付くかどうかではない。油性成分が飲料へ届く経路を変える道具として使えるか、である。コレステロールに関わる成分への対処と、カフェインへの対処は分けておく。この区別だけでも、いれ方の選択はずいぶん整理される。[5][8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
カフェストールの大部分は、紙ではなく粉に残った
食品の分析研究は、人に飲ませて病気の発生を追う研究とは役割が違う。何が、どこに、どの割合で存在したかを測る研究である。紙フィルターの仕事を確かめるには、カップだけでなく、使い終わった粉と紙も測る必要がある。飲み終えた後に捨てる側にも、結果を理解する鍵がある。[15]
この研究では、品種や産地の異なる13試料から、カフェストール含有量が多いものと少ないものを選び、焙煎した豆にあった成分が紙、抽出後の粉、飲料にどう分かれるかを調べた。さらに焙煎の程度や粒の大きさと抽出の関係も検討している。家庭の好みを尋ねた調査ではなく、抽出の過程を対象にした分析である。18〜39歳の女性が飲んだ後の血中脂質の変化を、直接測った結果ではない。[15]
結果は、紙に12.41%、抽出後の粉に87.45%、飲料に0.15%だった。いずれも、焙煎したコーヒーに最初に存在したカフェストールを基準にした割合である。飲料に移った分が小さいというだけでなく、最大の残留先が粉だったことが大切だ。著者らは、熱湯による脂質の抽出が少ないため、多くが粉に残ると結論した。[15]
ここで分母を取り違えやすい。「飲料に0.15%」は、飲料そのものの重さの0.15%がカフェストールだという意味ではない。豆にあったカフェストールのうち、飲料へ移った割合を指す。また「紙に12.41%」も、湯に溶け出した成分を紙が何割除去したかを直接表す数字ではない。同じ百分率でも、何を全体とするかで意味が変わる。[15]
抽出後の粉に多く残ったことは、紙が無関係だったという意味でもない。紙と粉と飲料は同じ抽出過程の中で測られた行き先だ。粉に多く残る事実と、紙にも保持される事実は両立する。「紙がすべて止める」と「紙には役割がない」の間に、実際の結果がある。[15]
この分析で直接確かめた中心成分はカフェストールである。カフェインや、コーヒーに含まれる全成分が同じ割合で分配されたという読み方はできない。コーヒーの油性成分についての問いに答える研究を、刺激作用の強さを測った研究へ読み替えないことが重要だ。[15][8]
焙煎については、浅く焙煎したコーヒーでカフェストールの含有量が最も高かった。粒の大きさでは、粉が500μm未満の場合に飲料中の固形分が多かった。ここで固形分とは、飲料に移った物質をまとめて見た指標であり、カフェストールだけを指しているわけではない。細かく挽いて濃く見えたから、油性成分も同じ比率で増えたとは決められない。[15]
研究の数字を家庭に持ち帰るときは、測った条件を一緒に持ち帰りたい。別の豆や別の抽出であっても、飲料への移行率が必ず0.15%になるとは扱わない。この数字は研究で観察された分布であり、市販の紙フィルターすべてに付いた性能表示ではない。豆から飲料へ移る途中を見るための手掛かりである。[15]
カフェイン濃度が近くても、血圧の結果は同じではなかった
油分とカフェインを分けるうえで役立つのが、煮出したコーヒーをそのまま飲む場合と、紙でこして飲む場合を比較した無作為化試験である。無作為化とは、参加者を偶然に任せて群に割り付ける方法だ。この試験は女性31人、男性33人を対象に、コーヒーをやめる群も設けて、血圧と心拍数を調べた。男女を含む集団の結果であり、18〜39歳の女性に同じ大きさの変化が起こるかは、この比較だけでは判断できない。[8]
参加者は最初の17日間、煮出した後に紙でこしたコーヒーを1日6杯飲んだ。その後の79日間は、こさない煮出し、紙でこした煮出し、コーヒーをやめて果汁やミネラルウォーターに置き換える群に分かれた。午後の小さなカップだけを比べた試験ではなく、日々飲む条件をそろえてから変更する設計だった。[8]
カフェイン濃度は、こさない飲料で860mg/L、紙でこした飲料で887mg/Lだった。紙でこした群の値の方が少し高い。少なくともこの比較では、「紙を通したからカフェインも大幅に減った」とは説明できない。紙で油性成分に対処する話と、カフェインを少なくする話を同じにしない理由がここにある。[8]
この試験で見ておきたいのは、同じ煮出しという土台から、紙を通す工程の有無を比べた点である。家庭のドリップと店の別の豆の飲料を比べると、抽出以外の違いも重なる。試験では飲料の条件を決めて比較したからこそ、いれ方と結果の関係を検討できる。ただし、その結果をあらゆる抽出器具の順位に広げることはできない。[8]
血圧の結果では、こさない群の活動時の収縮期血圧が、紙でこした群より平均3.1mmHg高くなった。差に添えられた1.1mmHgは平均の標準誤差であり、参加者全員の変化がその幅に収まったという意味ではない。統計的に有意だったことを示す値はp=0.006だった。これは群の平均差を評価した結果であり、自分が飲んだ後の血圧変化を予告する数字ではない。平均を読むことと個人を予測することを切り分けたい。[8]
数字で読むコーヒーのろ過
豆に含まれるジテルペンは重量で約1%とレビューで整理された。飲料中の濃度ではない。[5]
カフェストールの87.45%は抽出後の粉に残った。焙煎した豆に最初にあった量を基準とする。[15]
紙に残ったカフェストールは12.41%、飲料へ移った分は0.15%だった。分析条件内の分布である。[15]
血圧試験の飲料中カフェイン濃度は860mg/Lと887mg/Lだった。紙を通した側が後者である。[8]
こさない群と紙でこした群の活動時の収縮期血圧の平均差は3.1mmHgだった。平均の標準誤差は1.1mmHgである。[8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






