連載「減量の科学」全10回の第10回です。

ここまで9回にわたって、体重が動くときに何が起きているのかを研究から追ってきました。最終回は、それらの研究が共通して抱えている方法論上の弱点をまとめます。個々の回で断片的に触れてきた話を、一か所に集める作業です。

弱点を並べるのは、研究を否定するためではありません。どの程度の強さで何が言えるのかを見積もるためには、測り方の限界を知っている必要があります。限界を知らずに読めば、小さな差を大きく受け取り、まだ分かっていないことを結論として受け取ることになります。

先に要点を書きます。減量研究の弱点は五つに集約できます。摂取量の測り方、脱落の扱い、追跡の短さ、体重以外の転帰の測定不足、そして研究課題の設定に働く力です。このうち最初の一つは、ほぼすべての結論に影響します。

減量の科学 第10回 総括減量研究の限界|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

土台にある自己申告の誤差

Burrows TL, Ho YY, Rollo ME, Collins CE. Validity of Dietary Assessment Methods When Compared to the Method of Doubly Labeled Water: A Systematic Review in Adults. Frontiers in Endocrinology. 2019;10:850.

第1回で見たとおり、自由生活下の成人6,298名を対象にした59件の研究の大半が、二重標識水法で測った総エネルギー消費量に対して、自己申告の摂取エネルギーが有意に少なく出ることを報告しています(P < 0.05)。バジュナイド(Bajunaid)らが4歳から96歳までの6,497件の実測から作った予測式を大規模な食事調査に当てはめると、誤申告の割合は50%を超えました。

これは一つの論点ではなく、すべての論点の土台に埋め込まれた誤差です。食事の型を比べる試験(第4回)で、群が本当に指示どおり食べたかは自己申告で確かめられます。時間制限食の試験(第6回)で、摂取量が揃っていたかどうかも自己申告です。運動の代償(第7回)で「摂取量は変わらなかった」という結論も、多くは自己申告に基づきます。維持に成功した人の食事内容(第9回)も同じです。

しかも誤差はランダムではありません。方向は一定で、しかも体格や減量の進み具合によって大きさが変わります。群間で誤差の大きさが違えば、群間差そのものが歪みます。これを完全に回避する方法は、参加者に食事をすべて提供して管理する以外になく、そうした試験は数週間が限界で、しかも日常とは違う条件になります。

対処の方向はいくつかあります。二重標識水法で測った消費量を基準に申告を補正する、生体指標(尿中窒素やナトリウム)で裏を取る、統計的に誤申告者をふるい分ける。いずれも部分的な改善にとどまり、費用も手間もかかります。読み手にできるのは、その研究が摂取量をどう測ったかを最初に確かめることです。「自己申告」としか書かれていない試験の摂取量の数字は、群間差を含めて幅を持って読む必要があります。

脱落をどう数えるか

Hollis S, Campbell F. What is meant by intention to treat analysis? Survey of published randomised controlled trials. BMJ. 1999;319(7211):670-674.

無作為化比較試験の原則は、割り付けたとおりに解析することです。途中でやめた人を除けば、続けられた人だけが残り、結果は良く見えます。ところが古典的なこの調査は、4つの主要医学誌に1997年に載った試験のうち、割り付けどおりの解析に言及していたのは119件(48%)にすぎず、しかもそのうち12件は割り付けた介入を開始しなかった人を除外し、3件は割り付けどおりに解析していなかったと報告しました。89件(75%)で主要評価項目に欠測があり、その扱いは一般に不適切で、治療効果に偏りを生じさせうるとされています。29件(24%)では欠測が10%を超えていました。

減量研究では、この問題がとりわけ重くなります。脱落する人は、うまくいっていない人に偏る可能性が高いからです。第9回で見たとおり、追跡開始からの脱落が30%未満という条件を課しただけで、3年以上追跡した高品質の研究は8件しか残りませんでした。ノルドモ(Nordmo)らがこの条件を置いたのは、脱落の多い研究では維持率が楽観側に寄るからです。

欠測の埋め方にも問題があります。最後に測った値をそのまま延長する方法は、減量研究では体重が戻る方向を無視することになり、介入群に有利に働きます。近年は多重代入などの手法が使われますが、脱落の理由が結果と関係している場合には、どの方法も完全ではありません。脱落率と、脱落者の扱い方は、結論と同じくらい重要な情報です。

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追跡の短さと、測られていない転帰

この連載で扱った試験の大半は、追跡が1年から2年です。第4回の食事の型の比較も、第5回のタンパク質も、第6回の時間制限食も、そこで終わります。体重が問題になるのは数十年の時間軸であるのに、証拠は数年分しかありません。

Hartmann-Boyce J, Theodoulou A, Oke JL, et al. Long-Term Effect of Weight Regain Following Behavioral Weight Management Programs on Cardiometabolic Disease Incidence and Risk: Systematic Review and Meta-Analysis. Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes. 2023;16(4):e009348.

行動的な減量プログラムの試験124件を集めたこの解析は、プログラム終了後の追跡が中央値28か月(範囲11か月から360か月)だったと報告しています。危険因子の改善は5年後まで確認できました。しかし心血管疾患や2型糖尿病の発症そのものを減らしたという証拠は不確かなままで、その理由として5年以上追跡した研究が少ないことが挙げられています。22%の研究は高いバイアスのリスクを持つと判定されました。

測られていない転帰も多くあります。筋力や身体機能、睡眠、食行動、生活の質、そして体重に関する介入が心理面に与える影響。第8回で見たとおり、除脂肪体重すら測定の誤差に埋もれがちです。体重という一つの数字が測りやすいために、測りにくい転帰が報告から落ちていく——この偏りは、証拠の総体を歪めます。体重と体型をめぐる心理的な側面については別の記事も参考になります。

誰が何を研究するか

Chartres N, Fabbri A, Bero LA. Association of Industry Sponsorship With Outcomes of Nutrition Studies: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine. 2016;176(12):1769-1777.

資金源の影響を調べたこの統合は、慎重な結論に着地しています。775本の報告から条件を満たした12本を検討し、そのうち8本・340件の研究が資金源と結論の関係を扱っていました。産業界が資金提供した研究は、そうでない研究より資金提供者に好意的な結論を出しやすい傾向がありましたが、その差は統計的に有意ではありませんでした(リスク比 1.31、95%信頼区間 0.99〜1.72)。方法論的な質を評価した5本では、いずれも資金源との関連を見つけていません。著者らは、関連を示唆はするが確立してはいない、と述べています。

より見えにくいのは、結論の方向ではなく何が研究されるかのほうです。

Fabbri A, Holland TJ, Bero LA. Food industry sponsorship of academic research: investigating commercial bias in the research agenda. Public Health Nutrition. 2018;21(18):3422-3430.

分析対象の10社のうち、研究課題の一覧を開示していたのは2社だけでした。開示された37の研究課題から生まれた204本の論文を分類すると、最も多い主題は身体活動で40.7%を占め、高度に加工された食品を扱ったものは10.8%にとどまりました。研究の公正性や研究手法そのものを主題にした論文も10.8%ありました。著者らは、資金提供者の関心に沿う方向へ証拠が偏る可能性を指摘しています。

資金源を理由に研究を切り捨てるのは、別の誤りです。上の統合が示したとおり、資金源と方法論的な質のあいだに関連は見つかっていません。資金源は、結論を疑う理由ではなく、どの問いが立てられ、どの問いが立てられなかったかを確かめる手がかりです。研究課題の一覧を開示していた企業が10社中2社だったという事実のほうが、この点では重い情報です。

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バイアスは効果量をどう動かすか

ここまでを読むと、栄養研究はすべて信用できないように思えるかもしれません。実証的な検討は、もう少し複雑な像を示します。

Stadelmaier J, Roux I, Petropoulou M, Schwingshackl L. Empirical evidence of study design biases in nutrition randomised controlled trials: a meta-epidemiological study. BMC Medicine. 2022;20(1):330.

栄養領域の27件のコクランレビューから77のメタアナリシス(927件の無作為化比較試験)を取り出し、バイアスのリスクが高い試験と低い試験で効果推定値がどれだけ違うかを調べた研究です。割り付けの生成(比 0.97、95%信頼区間 0.93〜1.02)、割り付けの隠蔽(1.00、0.96〜1.04)、参加者と実施者の盲検化(0.95、0.91〜1.00)、選択的報告(0.97、0.92〜1.02)、遵守(0.95、0.89〜1.02)では、効果が誇張されている証拠は見つかりませんでした。

例外は二つです。評価者の盲検化が不十分な試験では効果が誇張されており(0.81、0.70〜0.94)、その大半は主観的な転帰によるものでした。欠測データの扱いが不適切な試験でも誇張が見られます(0.92、0.88〜0.97)。つまり、危ないのは「主観で測る転帰」と「欠測の扱い」です。体重は客観的に測れますが、空腹感、食欲、遵守、生活の質はいずれも主観です。第3回や第5回で扱った満腹感の指標は、この警告の直撃圏にあります。

出版バイアス——差が出た研究のほうが公表されやすく、差が出なかった研究が机の中に残る現象——も、この領域から消えてはいません。上の検討で「選択的報告」のリスクが効果量を誇張していなかったことは、公表された論文の中での報告の話であって、公表されなかった研究のことは何も言っていません。登録された試験のうち何本が結果を公表したかを確かめることが、統合解析を読むときの基本動作になります。

第1回から第9回までの仕分け

主題分かっていること条件つきで言えること分かっていないこと
エネルギー収支(第1回)熱力学の関係は成立する測定の誤差は計画する赤字と同じ桁個人の消費量を非侵襲で正確に知る方法
代謝適応(第2回)減量後に安静時代謝は下がる体格から予測される以上の低下は、条件次第で縮むそれが体重の戻りを引き起こすか
食欲ホルモン(第3回)レプチンは下がりグレリンは上がる一部の変化は1年後も残る変化の大きさが誰の戻りを予測するか
食事の型(第4回)総エネルギーを揃えると差は小さい遵守の度合いが結果を動かす体質に合う型を事前に選ぶ方法
タンパク質(第5回)短期に満腹感と除脂肪体重で小さな利益運動と併用し遵守できた場合に検出される長期の転帰と、高齢者での効果
食べる時間(第6回)時間帯を絞ると摂取量が減りやすい熱産生には日内変動があるエネルギーを揃えたときの上乗せ
運動(第7回)減量幅は計算上の期待より小さい活動量の低下による代償が起きうる代償の大きさと、その内訳
除脂肪体重(第8回)筋トレ併用で失う組織の内訳が変わる統合解析で中程度から高い確実性個人単位で測定誤差を超えて検出できるか
維持(第9回)平均としては戻る対照群との差と危険因子の改善は数年残る疾患の発症まで減らすか

連載を終えて

この連載を通じて繰り返し現れた形があります。機序としては確からしい話が、転帰の試験では小さくなるか消えるという形です。食事誘発性熱産生の日内変動、タンパク質の満腹感、代謝適応、エネルギー代償——どれも実験室では観察されるのに、自由生活下の試験では検出しにくくなります。

理由は単純です。実験室で見える差が1日あたり数十から数百キロカロリーであるのに対し、自由生活下の測定誤差は同じ桁かそれ以上だからです。機序が本当かどうかと、その機序が実生活で結果を変えるかどうかは、別の問いです。この連載で最も繰り返した注意は、この一点に尽きます。

もうひとつ。ブラウン(Brown)らが朝食の文献で示したように、観察された関連は、引用を重ねるうちに因果の言葉に置き換わっていきます。「関連していた」が「効果がある」になり、やがて「すべきである」になる。この変換がどこで起きたかを辿れるようにしておくことが、読み手にできる最大の防御です。

最後に、この連載が扱わなかったことを書いておきます。体重を減らすべきかどうかという問いには、一度も答えていません。それは研究が答えられる問いではなく、一人ひとりの健康状態、価値観、生活の条件に属する問いだからです。扱ったのは仕組みと、研究で分かっていること・分かっていないことだけでした。数字は判断の材料であって、判断そのものではありません。体重や食事について迷いや不安があるときは、この記事ではなく、あなたを診てくれる医療者に相談してください。

この連載の全10回

  1. 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか
  2. 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
  3. 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
  4. 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式
  5. 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠
  6. 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
  7. 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
  8. 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持
  9. 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか
  10. 第10回|総括——減量研究の限界(この記事)

出典

  1. Burrows TL, Ho YY, Rollo ME, Collins CE. Validity of Dietary Assessment Methods When Compared to the Method of Doubly Labeled Water: A Systematic Review in Adults. Frontiers in Endocrinology. 2019;10:850.
  2. Bajunaid R, Niu C, Hambly C, Liu Z, Yamada Y, Speakman JR, et al. Predictive equation derived from 6,497 doubly labelled water measurements enables the detection of erroneous self-reported energy intake. Nature Food. 2025;6(1):58-71.
  3. Hollis S, Campbell F. What is meant by intention to treat analysis? Survey of published randomised controlled trials. BMJ. 1999;319(7211):670-674.
  4. Nordmo M, Danielsen YS, Nordmo M. The challenge of keeping it off, a descriptive systematic review of high-quality, follow-up studies of obesity treatments. Obesity Reviews. 2020;21(1):e12949.
  5. Hartmann-Boyce J, Theodoulou A, Oke JL, Butler AR, Bastounis A, Dunnigan A, Byadya R, Coppo M, Hobbs FDR, Sniehotta FF, Jebb SA, Aveyard P. Long-Term Effect of Weight Regain Following Behavioral Weight Management Programs on Cardiometabolic Disease Incidence and Risk: Systematic Review and Meta-Analysis. Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes. 2023;16(4):e009348.
  6. Chartres N, Fabbri A, Bero LA. Association of Industry Sponsorship With Outcomes of Nutrition Studies: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine. 2016;176(12):1769-1777.
  7. Fabbri A, Holland TJ, Bero LA. Food industry sponsorship of academic research: investigating commercial bias in the research agenda. Public Health Nutrition. 2018;21(18):3422-3430.
  8. Stadelmaier J, Roux I, Petropoulou M, Schwingshackl L. Empirical evidence of study design biases in nutrition randomised controlled trials: a meta-epidemiological study. BMC Medicine. 2022;20(1):330.
  9. Brown AW, Bohan Brown MM, Allison DB. Belief beyond the evidence: using the proposed effect of breakfast on obesity to show 2 practices that distort scientific evidence. The American Journal of Clinical Nutrition. 2013;98(5):1298-1308.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。意図しない体重の増減が続く場合、体重や体型のことで頭がいっぱいになり日常生活に支障が出ている場合、食べることをやめられない・食べられない状態が続く場合は、医療機関にご相談ください。糖尿病・腎疾患・甲状腺疾患・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、成長期の方、高齢の方は、食事や運動の内容を変える前に必ず主治医に確認してください。

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