連載「減量の科学」全10回の第5回です。
第4回では、三大栄養素の配分を変えても体重の差はほとんど出ないという結果を見ました。その例外候補として、繰り返し取り上げられてきたのがタンパク質です。満腹感を高める、消化と代謝に使われるエネルギーが大きい、除脂肪体重を保つ——三つの主張がよく並びます。
この回では、その三つがどこまで裏づけられているかを見ます。摂取すべき量や献立は書きません。扱うのは、試験が何を測り、どこで差が出て、どこで出なかったかです。
結論を先に書きます。タンパク質の割合を上げると、短期の試験では満腹感が高まり、除脂肪体重の減少がわずかに抑えられ、安静時代謝の低下も小さくなります。ただし効果量はいずれも小さく、体重そのものへの上乗せは1 kg未満です。そして、こうした差が検出されなかった試験も複数あります。「効く」と「大きく効く」のあいだには、かなりの距離があります。

なぜ満腹感が高まるのか
説明として挙げられる経路は複数あります。第一に、食事誘発性熱産生です。摂取した栄養素を消化・吸収・代謝する過程で消費されるエネルギーは、タンパク質で最も大きくなります。第二に、血中アミノ酸濃度の上昇そのものが中枢に作用するという経路。第三に、第3回で扱ったGLP-1、コレシストキニン、ペプチドYYといった満腹側のホルモンの分泌が増え、摂食を促すグレリンが下がるという経路です。
これらは動物実験や短時間の実験室研究で繰り返し観察されています。ただし、機序が確からしいことと、自由生活下で体重が変わることのあいだには、いくつも段差があります。この連載で繰り返し出てくる構図です。
統合すると、どれくらいの差か
エネルギー量と脂質量を揃えたうえで、タンパク質と糖質の比を変えた試験を集めた統合があります。
Wycherley TP, Moran LJ, Clifton PM, Noakes M, Brinkworth GD. Effects of energy-restricted high-protein, low-fat compared with standard-protein, low-fat diets: a meta-analysis of randomized controlled trials. The American Journal of Clinical Nutrition. 2012;96(6):1281-1298.
条件を満たした24件、1,063名が対象です。介入期間は平均12.1 ± 9.3週でした。標準タンパク質食と比べ、高タンパク質食では体重が -0.79 kg(95%信頼区間 -1.50〜-0.08)、脂肪量が -0.87 kg(-1.26〜-0.48)多く減り、中性脂肪も -0.23 mmol/L(-0.33〜-0.12)多く下がりました。除脂肪体重の減少は0.43 kg(0.09〜0.78)、安静時エネルギー消費量の低下は595.5 kJ/日(67.0〜1124.1)だけ小さく抑えられています。
数字の読み方に注意が要ります。体重で0.79 kg、脂肪量で0.87 kgという差は、統計的には有意でも、臨床的に重要な水準とは言いがたい大きさです。しかも信頼区間の下限は、体重でほぼゼロに接しています。空腹時血糖、空腹時インスリン、血圧、総コレステロール、LDL・HDLコレステロールの変化には、両群で差がありませんでした(すべて P ≥ 0.20)。満腹感についても、報告があった5件のうち高タンパク質食で高かったのは3件です。

満腹感は増えても、食べる量は減るとは限らない
満腹感の主張を、実際の摂取量まで追いかけた試験があります。
Gwin JA, Maki KC, Leidy HJ. Increased Protein Consumption during the Day from an Energy-Restricted Diet Augments Satiety but Does Not Reduce Daily Fat or Carbohydrate Intake on a Free-Living Test Day in Overweight Women. The Journal of Nutrition. 2017;147(12):2338-2346.
過体重の女性17名が、エネルギー量を揃えた高タンパク質食(1日124 g)と標準タンパク質食(1日48 g)を、交差法で順に摂りました。高タンパク質食では、1日を通じた空腹感が16%低く、食べたい気持ちが15%低く、この先食べられる量の見積もりが14%低く、ファストフードへの渇望が15%低く、満腹感は25%高いという結果でした(いずれも P < 0.05)。主観の指標は、期待どおりに動いています。
ところが翌日、タンパク質は指定量を摂ったうえで、糖質と脂質に富む食品を自由に食べてよいとした条件で測ると、摂取エネルギーに差は出ませんでした(高タンパク質食で2000 ± 180 kcal/日、標準タンパク質・食肉由来で2120 ± 190、標準タンパク質・植物由来で2070 ± 180)。満腹感の指標が動いたことと、実際に食べる量が減ることは、同じではありません。おいしい食品が目の前にある状況では、主観の変化は摂取量まで届かなかったというのが、この試験の所見です。
除脂肪体重は守られるのか
減量中の除脂肪体重の保持は、タンパク質の主張のうち比較的支持が厚い部分です。ライディ(Leidy)らの試験では、過体重・肥満の女性46名が12週間のエネルギー制限食を摂り、タンパク質がエネルギーの30%の群と18%の群に分かれました。体重減少が同程度だったのに対し、除脂肪体重の減少は高タンパク質群で -1.5 ± 0.3 kg、標準タンパク質群で -2.8 ± 0.5 kgと差がついています(P < 0.05)。エネルギー制限にともなう満腹感の低下も、高タンパク質群で緩やかでした(P < 0.005)。腎機能の指標は、タンパク質摂取量にかかわらずわずかしか変化しませんでした。
管理下でより厳密に比べた試験もあります。パシアコス(Pasiakos)らは成人39名を、体重1 kgあたり0.8 g、1.6 g、2.4 gのタンパク質を摂る3群に割り付け、31日間のうち後半21日をエネルギー40%不足の状態にしました。体重減少は3.2 ± 0.2 kgで、タンパク質量によらず同じです。しかし減った体重に占める除脂肪体重の割合は、推奨量の2倍・3倍を摂った群で有意に低く、脂肪の減少は逆に大きくなっていました(P < 0.05)。

差が出なかった試験
ここまでの所見だけを並べると、結論は明快に見えます。しかし、同じ問いで差が出なかった試験も複数あります。
Backx EMP, Tieland M, Borgonjen-van den Berg KJ, Claessen PR, van Loon LJC, de Groot LCPGM. Protein intake and lean body mass preservation during energy intake restriction in overweight older adults. International Journal of Obesity. 2016;40(2):299-304.
平均63歳の過体重・肥満の男女61名を、体重1 kgあたり1.7 gまたは0.9 gのタンパク質を摂る群に割り付け、12週間の25%エネルギー制限を行いました。食事の90%は大学側が提供しており、遵守の問題は小さい設計です。それでも体重減少は -8.9 ± 2.9 kgと -9.1 ± 3.4 kgで差がなく(P = 0.584)、除脂肪体重の減少も -1.8 ± 2.2 kgと -2.1 ± 1.4 kgで有意差はありませんでした(P = 0.213)。脚筋力の低下も身体機能の変化も両群で同等です。著者らは、習慣的な摂取量(体重1 kgあたり0.9 g)を超えてタンパク質を増やしても、高齢者の長期のエネルギー制限下では除脂肪体重も筋力も身体機能も保たれないと結論しました。
Lim JJ, Liu Y, Lu LW, Barnett D, Sequeira IR, Poppitt SD. Does a Higher Protein Diet Promote Satiety and Weight Loss Independent of Carbohydrate Content? An 8-Week Low-Energy Diet (LED) Intervention. Nutrients. 2022;14(3):538.
肥満の女性121名を、タンパク質(体重1 kgあたり1.2 gまたは0.8 g)と糖質(エネルギーの28%または40%)の二要因で割り付けた8週間の試験です。全体の減量は -7.5 ± 0.7 kg、脂肪量は -5.7 ± 0.5 kg、除脂肪体重は -1.4 ± 0.7 kgでしたが、いずれも群間に有意差はありませんでした。食後の満腹感を高めたのは低糖質の側で(P < 0.05)、高タンパク質の側では高まりませんでした。ただしこの試験では、実際の食事記録における群間のタンパク質・糖質の差が、意図したより小さかったことも報告されています。指示と実行の乖離は、この種の試験に常につきまといます。
目安とされる量
Leidy HJ, Clifton PM, Astrup A, et al. The role of protein in weight loss and maintenance. The American Journal of Clinical Nutrition. 2015;101(6):1320S-1329S.
この総説は、短期の厳密な給食試験では一貫して利益が検出される一方、長期の試験では所見が限られ、かつ食い違うと整理しています。食い違いの主因として挙げられているのは遵守です。指示された高タンパク質の摂取を守れた人では改善が検出され、守れなかった人では検出されませんでした。そのうえで著者らは、体重1 kgあたり1.2 gから1.6 g、1食あたり25 gから30 g程度を摂った研究で、食欲・体重管理・心血管危険因子のいずれか、あるいはすべてに改善が見られたとまとめています。これは研究で用いられた範囲の記述であって、個人への処方ではありません。必要量は年齢・活動量・腎機能によって変わり、判断には医療者の関与が要ります。
| 主張 | 統合された効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 体重が多く減る | -0.79 kg(-1.50〜-0.08) | 信頼区間の下限がほぼゼロ |
| 脂肪量が多く減る | -0.87 kg(-1.26〜-0.48) | 介入期間は平均12.1週と短い |
| 除脂肪体重が保たれる | 0.43 kg(0.09〜0.78) | 高齢者の試験では差が出ていない |
| 満腹感が高まる | 報告5件中3件 | 摂取量の減少には必ずしも至らない |
腎臓への影響という懸念と、この回の限界
高タンパク質食をめぐる最も古い懸念が、腎臓への負担です。タンパク質摂取量が増えると糸球体の内圧が上がり、濾過量が増える。これが長期に続けば腎機能を損なうのではないか、という議論です。
Devries MC, Sithamparapillai A, Brimble KS, Banfield L, Morton RW, Phillips SM. Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Journal of Nutrition. 2018;148(11):1760-1775.
腎疾患のない成人を対象とした28件、1,358名の統合です。介入後の糸球体濾過量を比べると、高タンパク質群でわずかに高いという結果でした(標準化平均差 0.19、95%信頼区間 0.07〜0.31、P = 0.002)。一方、介入前後の変化量で比べると両群に差はありませんでした(標準化平均差 0.11、-0.05〜0.27、P = 0.16)。著者らは、健康な成人において高タンパク質摂取が糸球体濾過量の面で腎機能に悪影響を及ぼすという証拠はないと結論しています。ただし、含まれた試験の選択バイアスのリスクが不明確であることも限界として挙げています。
対立する見方も併記しておきます。コー(Ko)らの総説は、糸球体内高血圧・過剰濾過・蛋白尿という経路を通じて、長期の高タンパク質摂取が新規の慢性腎臓病につながる可能性を論じ、観察研究では動物性タンパク質の摂取が末期腎不全のリスク上昇と関連していたことを指摘しています。そのうえで、観察研究の残余交絡と先行試験の結果の食い違いを踏まえ、大規模で長期の研究が必要だと述べています。「健康な人の短期では問題が検出されていない」ことと、「誰にとっても長期に安全である」ことは、同じ主張ではありません。腎機能に懸念のある方は、量を変える前に医療機関で確認してください。
最後に、この回で扱った研究の限界をまとめます。ここで見た試験の多くは、期間が数週間から3か月で、参加者は数十名規模です。長期の追跡は限られ、体重が戻る局面でどうなるかはほとんど分かっていません。除脂肪体重の測定法も研究によって異なり、二重エネルギーX線吸収測定法と体水分量法では結果がずれます。そして、ここで扱ったのはタンパク質の「割合」を変えた試験であって、特定の食品や製品の効果ではありません。タンパク質と筋量の関係については別の記事にも整理があり、本連載では第8回で運動と組み合わせた場合を扱います。
次回予告
第6回は「食べる時間——時間制限食と体内時計」を扱います。何を食べるかではなく、いつ食べるかで結果が変わるのか。食べる時間帯を狭める介入を、総エネルギーを揃えて比べた試験が何を示したか、そして体内時計の研究から何が言えて何が言えないかを見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか
- 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
- 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
- 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式
- 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠(この記事)
- 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
- 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
- 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持
- 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか
- 第10回|総括——減量研究の限界
出典
- Wycherley TP, Moran LJ, Clifton PM, Noakes M, Brinkworth GD. Effects of energy-restricted high-protein, low-fat compared with standard-protein, low-fat diets: a meta-analysis of randomized controlled trials. The American Journal of Clinical Nutrition. 2012;96(6):1281-1298.
- Gwin JA, Maki KC, Leidy HJ. Increased Protein Consumption during the Day from an Energy-Restricted Diet Augments Satiety but Does Not Reduce Daily Fat or Carbohydrate Intake on a Free-Living Test Day in Overweight Women. The Journal of Nutrition. 2017;147(12):2338-2346.
- Leidy HJ, Carnell NS, Mattes RD, Campbell WW. Higher protein intake preserves lean mass and satiety with weight loss in pre-obese and obese women. Obesity (Silver Spring). 2007;15(2):421-429.
- Pasiakos SM, Cao JJ, Margolis LM, Sauter ER, Whigham LD, McClung JP, Rood JC, Carbone JW, Combs GF Jr, Young AJ. Effects of high-protein diets on fat-free mass and muscle protein synthesis following weight loss: a randomized controlled trial. The FASEB Journal. 2013;27(9):3837-3847.
- Backx EMP, Tieland M, Borgonjen-van den Berg KJ, Claessen PR, van Loon LJC, de Groot LCPGM. Protein intake and lean body mass preservation during energy intake restriction in overweight older adults. International Journal of Obesity. 2016;40(2):299-304.
- Lim JJ, Liu Y, Lu LW, Barnett D, Sequeira IR, Poppitt SD. Does a Higher Protein Diet Promote Satiety and Weight Loss Independent of Carbohydrate Content? An 8-Week Low-Energy Diet (LED) Intervention. Nutrients. 2022;14(3):538.
- Leidy HJ, Clifton PM, Astrup A, Wycherley TP, Westerterp-Plantenga MS, Luscombe-Marsh ND, Woods SC, Mattes RD. The role of protein in weight loss and maintenance. The American Journal of Clinical Nutrition. 2015;101(6):1320S-1329S.
- Devries MC, Sithamparapillai A, Brimble KS, Banfield L, Morton RW, Phillips SM. Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Journal of Nutrition. 2018;148(11):1760-1775.
- Ko GJ, Rhee CM, Kalantar-Zadeh K, Joshi S. The Effects of High-Protein Diets on Kidney Health and Longevity. Journal of the American Society of Nephrology. 2020;31(8):1667-1679.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。特定の食品・サプリメントを推奨するものでもありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。むくみ・尿の異常・強い倦怠感が続く場合は医療機関にご相談ください。腎疾患・肝疾患・糖尿病・痛風・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、および高齢の方は、タンパク質の摂取量を大きく変える前に必ず主治医に確認してください。






