連載「減量の科学」全10回の第1回です。
この連載では、体重が動くときに体の中で何が起きているのかを、公表された研究の範囲で追いかけます。痩せることを勧める記事ではありませんし、「こうすれば落ちる」という手順書でもありません。扱うのは仕組みと、研究で分かっていること・分かっていないことだけです。体重にまつわる話題には、根拠の乏しい断定と、断定を裏切る実測とが同居しています。その境目を、数字の出どころまで戻って確かめていきます。
初回の主題は「カロリー計算」です。摂取したエネルギーと消費したエネルギーの差が体のエネルギー貯蔵の増減になる——この関係そのものは熱力学の帰結であり、疑う余地はありません。問題は、その式に入れる二つの数字を、私たちがどれくらい正確に知ることができるのか、という点にあります。
結論から書きます。エネルギー収支の原理は正しいが、実務で使う道具、つまり食事記録・食品表示・基礎代謝の推定式には、いずれも無視できない誤差があります。その誤差は「多少のずれ」ではなく、計画している赤字と同じか、それを上回る大きさに達することがあります。「カロリー計算は無意味」でも「カロリー計算は正確」でもない、その中間に本当の位置があります。

熱力学の式と、その式の使い方は別物
エネルギー収支の式は、閉じた系のエネルギー保存を人体に当てはめたものです。摂取したエネルギーが消費を上回れば余剰は貯蔵され、下回れば貯蔵が取り崩されます。この命題は測定の精度とは無関係に成立します。ここを否定する研究者はいません。
ところが、この式を日々の行動に翻訳しようとすると、話は一気に難しくなります。式の左辺である摂取エネルギーは、食べたものを記録し、その記録を食品成分表に照合して初めて数値になります。右辺の消費エネルギーは、基礎代謝の推定式に身体活動の係数を掛けて出すのが普通です。つまり実務上のカロリー計算は、三つの推定値を掛け合わせた結果であって、測定値ではありません。誤差はそれぞれの段階で発生し、しかも一方向に偏る傾向があります。
この誤差の大きさを知るには、基準となる「本当の値」が要ります。摂取エネルギーの基準として使われてきたのが、二重標識水法という手法です。水素と酸素の安定同位体で標識した水を飲み、尿中の同位体の減り方から二酸化炭素の産生量を推定し、そこから総エネルギー消費量を求めます。体重が安定している期間なら、総エネルギー消費量は摂取量とほぼ等しいはずですから、自己申告した摂取量と突き合わせれば、申告の正確さが分かる——という論法です。
自己申告は、ほぼ例外なく少なく出る
この突き合わせを網羅的に集めたレビューがあります。
Burrows TL, Ho YY, Rollo ME, Collins CE. Validity of Dietary Assessment Methods When Compared to the Method of Doubly Labeled Water: A Systematic Review in Adults. Frontiers in Endocrinology. 2019;10:850.
1973年から2019年2月までに公表された59件の研究、自由生活下の成人6,298名分のデータが対象です。研究あたりの参加者は平均107名でした。結果は明快で、大半の研究が、二重標識水法で測った総エネルギー消費量と比べて摂取エネルギーの有意な過少申告を報告しています(P < 0.05)。過多申告を報告した研究はごくわずかでした。写真やアプリを使う技術ベースの手法を含めた16件でも、傾向は同じです。著者らは、過少申告の程度は同じ手法を使った研究間でも大きくばらつくこと、思い出し法のなかでは24時間思い出し法が比較的ばらつきも過少申告の程度も小さいことを指摘しています。
では、どれくらい少なく出るのか。手法別・性別に統合したメタアナリシスがあります。
McKenzie BL, Coyle DH, Santos JA, et al. Investigating sex differences in the accuracy of dietary assessment methods to measure energy intake in adults: a systematic review and meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 2021;113(5):1241-1255.
条件を満たした31件、合計4,518名(うち54%が女性)の統合結果です。女性では、食物摂取頻度調査票で1日あたり -1318 kJ(95%信頼区間 -1967〜-669)、24時間思い出し法で -2650 kJ(-3492〜-1807)。男性では、食物摂取頻度調査票で -1764 kJ(-2285〜-1242)、秤量記録法で -3438 kJ(-5382〜-1494)でした。手法によらず、どれも過少に出ています。過少申告の程度に性差はほぼ見られず、唯一の例外が推定記録法で、男性のほうが590 kJ(35〜1,146)だけ大きく過少申告していました。
単位を揃えると、この幅はおおむね1日300〜800 kcalに相当します。一般的な減量計画で設定される赤字と、同じ桁の数字です。つまり記録の上では赤字になっていても、実際には収支が釣り合っている、ということが十分に起こりえます。
もっとも、これを「人が嘘をついている」と読むのは早すぎます。記録の負担、食品の量を目分量で見積もる難しさ、外食の内容が分からないこと、記録している期間だけ食べ方が変わってしまうこと——複数の要因が混ざっています。近年は、大規模なデータベースから期待される消費量を推定し、そこから外れた申告を機械的に選り分ける試みも進んでいます。
Bajunaid R, Niu C, Hambly C, et al. Predictive equation derived from 6,497 doubly labelled water measurements enables the detection of erroneous self-reported energy intake. Nature Food. 2025;6(1):58-71.
4歳から96歳までの6,497件の総エネルギー消費量の実測から回帰式を導き、体重・年齢・性別から期待される消費量とその95%予測限界を出す、という手続きです。これを2つの大規模な食事調査に当てはめたところ、誤申告の割合は50%を超えました。さらに、誤申告の程度が大きくなるほど、報告された三大栄養素の構成にも系統的な偏りが生じることが示されています。食事の内容と体格の関連を調べた研究が、見せかけの相関を拾っている可能性がある、という指摘です。
ただし、条件を整えれば精度は上がります。モシュフェグ(Moshfegh)らが米国農務省の多段階思い出し法を二重標識水法と突き合わせた検証では、30歳から69歳の524名で過少申告は全体で11%にとどまり、標準体重の人に限れば3%未満でした。許容できる申告者と分類されたのは男性の約78%、女性の約74%です。一方で、過少申告の割合も程度も、肥満に分類された人で最も大きくなっていました。誤差の大きさは、手法と対象者の両方で決まります。

食品表示と外食の表示にも誤差がある
記録が正確だったとしても、照合する側の数字が正しいとは限りません。ジャンパーツ(Jumpertz)らが市販の菓子類24製品を爆弾熱量計で測った研究があります。1食分の重量は表示値を1.2%上回り(25〜75パーセンタイル -1.4〜4.3、P = 0.10)、重量差を補正したうえでの代謝可能エネルギーは表示値より6.8 kcal(0.5〜23.5、P = 0.0003)、率にして4.3%(0.2〜13.7、P = 0.001)高いという結果でした。差の大半は、炭水化物含量が表示より7.7%(0.8〜16.7、P = 0.01)多かったことと、1食分の重量で説明されています。著者らは、この差が米国の表示規制の許容範囲にはおおむね収まっているとも述べています。
外食になると、ばらつきはさらに大きくなります。
Urban LE, McCrory MA, Dallal GE, et al. Accuracy of stated energy contents of restaurant foods. JAMA. 2011;306(3):287-293.
3州の42店舗から無作為に選んだ269品を熱量計で測った研究です。全体の平均では、表示値と実測値の差は1食あたり10 kcal(95%信頼区間 -15〜34、P = .52)にすぎず、平均としては表示は正確でした。ところが個々の品目を見ると話が変わります。269品のうち50品(19%)は、実測値が表示値を1食あたり100 kcal以上上回っていました。ずれの大きかった上位10%を再採取して測り直すと、1回目で平均289 kcal(186〜392)、2回目でも258 kcal(154〜361)の超過が再現されました。さらに、表示エネルギーが低い品ほど実測が表示を上回り、高い品ほど下回るという傾向も見られています。減量を意識して低カロリー表示の品を選ぶ人ほど、超過を受け取りやすいということです。
この問題は現在進行形です。2022年に外食のカロリー表示が義務化されたイングランドで、2024年に295品を測った調査があります。
Finlay A, Jones A, Thorp P, et al. Accuracy of menu calorie labelling in the England out-of-home food sector during 2024: assessment of a national food policy. The British Journal of Nutrition. 2025;134(8):696-704.
実測値の平均は表示値より -16.70 kcal(標準偏差 149.19)と、平均では表示をわずかに下回りました。しかし個別には、実測値の20%を超える過大表示が23%の品目で、同じく20%を超える過小表示が11%の品目で見られ、表示と実測の差の絶対値は平均21%(標準偏差 29%)でした。差が20%を超えた品目は全体の35%に達しています。店舗の種類によって差の出やすさも違っていました。
基礎代謝の推定式は、個人には当たらない
収支の右辺も推定です。安静時代謝量は総エネルギー消費量の最大の構成要素で、臨床でも減量支援アプリでも、身長・体重・年齢・性別から推定式で出すのが一般的です。この推定式の精度を、間接熱量測定による実測と比べた検討は数多くあります。
フランケンフィールド(Frankenfield)らの系統的レビューは、臨床でよく使われる4つの式のうちミフリン・セントジョー式が最も信頼でき、実測の10%以内に収まる人の割合が他の式より高く、誤差の幅も最も狭いと結論しました。ただし著者らは同時に、個人に適用したときには無視できない誤差と限界が残ること、高齢者や特定の民族集団は式の開発にも検証にも十分に含まれていないことを明記しています。「集団平均としては当たるが、目の前の一人には当たるとは限らない」という構図です。
Macena ML, Paula DTDC, da Silva Júnior AE, et al. Estimates of resting energy expenditure and total energy expenditure using predictive equations in adults with overweight and obesity: a systematic review with meta-analysis. Nutrition Reviews. 2022;80(11):2113-2135.
過体重・肥満の成人に絞った61件の統合では、安静時エネルギー消費量の推定で偏りが最も小さかったのは体重だけを使う FAO/WHO/UNU(1985)の式で、平均差は8.97 kcal(95%信頼区間 -26.99〜44.94)でした。精度、つまり実測に近い人の割合が最も高かったのはハリス・ベネディクト式で、過体重で60.65%、肥満で62.54%です。裏を返せば、最も精度の高い式でも、4割近い人では実測から外れます。大半の解析で研究間のばらつきは大きく(I2 > 90%)、体組成のデータを使う式はむしろ偏りが大きくなっていました。
| 推定の段階 | 誤差の向き | だいたいの大きさ |
|---|---|---|
| 食事記録(自己申告) | 少なく出る | 1日 -1318〜-3438 kJ(手法と性別による) |
| 市販食品の表示 | やや低く表示される | 1食あたり 6.8 kcal(4.3%) |
| 外食の表示 | 平均は近いが個別は大きく振れる | 差の絶対値で平均21% |
| 安静時代謝の推定式 | 集団では近く、個人では外れる | 実測の10%以内は6割前後 |

それでもカロリー計算が捨てられない理由
ここまでを「だから数えても仕方がない」と読むのは、もう一つの誤りです。誤差が大きいことと、情報が無価値であることは違います。
第一に、誤差の多くは系統的であり、方向が分かっています。自己申告は少なく出る。表示の低い品は実測が上回りやすい。推定式は集団としては近い。方向が分かっている誤差は、絶対値を信じずに変化を見ることで、ある程度まで扱えます。同じ方法で記録を続けたときの増減は、絶対値よりも信頼できます。
第二に、記録そのものが行動に影響します。ただしこの効果は、記録が正確だから生じるのではなく、注意が向くから生じます。両者を混同すると、「正確に数えなければ意味がない」という誤った要求が生まれます。
第三に、研究の読み手としては、この誤差構造を知っていること自体が武器になります。食事の内容と健康の関連を論じた観察研究の多くは、自己申告の摂取量に依存しています。先に挙げた研究が示したとおり、誤申告の程度が大きいほど報告された栄養素構成は偏り、見せかけの関連が生まれます。「この食べ方が体重と関連していた」という報告を読むとき、まず確かめるべきは摂取量がどう測られたかです。この論点は最終回で改めて扱います。
そして、収支の式が正しいことと、収支の両辺が独立に動かせることは別だ、という論点が残ります。摂取を減らせば消費も変わる。減量が進めば食欲を調整するホルモンも変わる。右辺と左辺は互いに引っ張り合っています。この連動こそが、計算どおりに体重が落ちない最大の理由であり、第2回以降の主題です。基礎代謝と活動代謝の関係については別の記事にも整理があります。
次回予告
第2回は「体重が落ちない時期——代謝適応という現象」を扱います。減量にともなって安静時代謝量が下がることは確かですが、問題は「体格が減った分より余計に下がるのか」です。長期追跡で大きな数字を報告した研究と、その解釈に対する強い批判の両方を並べます。
この連載の全10回
- 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか(この記事)
- 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
- 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
- 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式
- 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠
- 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
- 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
- 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持
- 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか
- 第10回|総括——減量研究の限界
出典
- Burrows TL, Ho YY, Rollo ME, Collins CE. Validity of Dietary Assessment Methods When Compared to the Method of Doubly Labeled Water: A Systematic Review in Adults. Frontiers in Endocrinology. 2019;10:850.
- McKenzie BL, Coyle DH, Santos JA, Burrows T, Rosewarne E, Peters SAE, Carcel C, Jaacks LM, Anderson CAM, Neal B, Woodward M. Investigating sex differences in the accuracy of dietary assessment methods to measure energy intake in adults: a systematic review and meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 2021;113(5):1241-1255.
- Bajunaid R, Niu C, Hambly C, Liu Z, Yamada Y, Speakman JR, et al. Predictive equation derived from 6,497 doubly labelled water measurements enables the detection of erroneous self-reported energy intake. Nature Food. 2025;6(1):58-71.
- Moshfegh AJ, Rhodes DG, Baer DJ, Murayi T, Clemens JC, Rumpler WV, Paul DR, Sebastian RS, Kuczynski KJ, Ingwersen LA, Staples RC, Cleveland LE. The US Department of Agriculture Automated Multiple-Pass Method reduces bias in the collection of energy intakes. The American Journal of Clinical Nutrition. 2008;88(2):324-332.
- Jumpertz R, Venti CA, Le DS, Michaels J, Parrington S, Krakoff J, Votruba S. Food label accuracy of common snack foods. Obesity (Silver Spring). 2013;21(1):164-169.
- Urban LE, McCrory MA, Dallal GE, Das SK, Saltzman E, Weber JL, Roberts SB. Accuracy of stated energy contents of restaurant foods. JAMA. 2011;306(3):287-293.
- Finlay A, Jones A, Thorp P, Putra IGNE, Polden M, Adams J, Brealey J, Robinson E. Accuracy of menu calorie labelling in the England out-of-home food sector during 2024: assessment of a national food policy. The British Journal of Nutrition. 2025;134(8):696-704.
- Frankenfield D, Roth-Yousey L, Compher C. Comparison of predictive equations for resting metabolic rate in healthy nonobese and obese adults: a systematic review. Journal of the American Dietetic Association. 2005;105(5):775-789.
- Macena ML, Paula DTDC, da Silva Júnior AE, Praxedes DRS, Pureza IROM, de Melo ISV, Bueno NB. Estimates of resting energy expenditure and total energy expenditure using predictive equations in adults with overweight and obesity: a systematic review with meta-analysis. Nutrition Reviews. 2022;80(11):2113-2135.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。意図しない体重の減少や増加が続く場合、食事の量や体重のことで頭がいっぱいになり日常生活に支障が出ている場合は、医療機関にご相談ください。糖尿病・腎疾患・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、食事の内容を変える前に必ず主治医に確認してください。






