同じように体重が増えても、肝臓や内臓の脂肪まで同じとは限らない。パーム油とひまわり油を使った過食試験を軸に、飽和脂肪と多価不飽和脂肪の違いを確かめる。若いやせた人と過体重の人で分かれた結果、筋肉への期待の限界、油を足すことと置き換えることの違いを整理する。
マフィンに使う油をパーム油からひまわり油に替えると、同じように体重が増えても、肝臓の脂肪の増え方に差が出た。[1][8] 食卓で選ぶ脂と、体内で脂肪が増える部位。この関係を、食べ過ぎてもらう実験で調べた研究がある。腰やお腹の見た目だけでは見えない違いだ。
ここでいう飽和脂肪と多価不飽和脂肪は、研究で比べられた脂肪酸の種類である。中心となる試験は、前者を多く含むパーム油と、後者のうちn-6系を多く含むひまわり油を使っている。[1] 「脂質を減らすか、糖質を減らすか」という量の配分とは、問いの立て方が違う。同じ食べ過ぎでも、何を余分に食べたのかを確かめる研究である。
ただし、油を替えれば食べ過ぎてもよい、と読むと話が裏返る。これらは体重を増やす条件で脂肪の行き先を調べた試験だ。[1][8] 減量方法の順位付けから少し離れ、増えた体重の中身を見ると、脂の選び方に期待できることと、期待し過ぎになることが見えてくる。
マフィンの油だけを替え、体の中を測った
LIPOGAINという無作為化比較試験では、若く標準体重の39人に、飽和脂肪の多いマフィンか、多価不飽和脂肪の多いマフィンを7週間、余分に食べてもらった。参加者を群に無作為に分け、油の種類を伏せて比較する二重盲検の方法だった。[1] ふだんの食事に何かを足すことで、体重が増える状況を作ったのである。

写真: torange.biz / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
同じ試験の血液指標を扱った報告によると、追加したマフィンは1日750 kcalに相当し、脂質からのエネルギーが51%、精製された炭水化物からが44%を占めた。異なったのは油の種類で、ほかの内容は同じだった。[17] この数字は実験の設定であり、日常に加える量の目安ではない。脂質だけを飲ませた実験でもなく、脂質と炭水化物を含む食品で比較している点に注意したい。
体の中は、磁気を利用する画像検査であるMRIで調べた。肝臓の脂肪、内臓脂肪、腹部の皮下脂肪、全体の脂肪、膵臓の脂肪、除脂肪組織を評価している。[1] お腹の見た目だけで脂肪の行き先を判断した研究ではない。食べた量を聞き取るだけでもなく、介入の後に体の部位ごとの変化を測ったことが、この問いへの強みである。
結果は、両群で体重が同程度に増えた一方、飽和脂肪群で肝臓の脂肪がより増え、内臓脂肪の増加も多価不飽和脂肪群のおよそ2倍だった。逆に除脂肪組織の増加は、多価不飽和脂肪群でほぼ3倍だった。[1] 同じ体重増加という見出しで終わらせていたら、この部位ごとの違いは隠れてしまう。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
過体重の人でも、肝臓の脂肪には差が出た
若い標準体重の人の反応が、体重の多い中年の人にも当てはまるか。続くLIPOGAIN-2は、過体重または肥満の男女61人で調べている。パーム油かひまわり油の多いマフィンを通常の食事に追加する期間を8週間設け、その後に4週間のエネルギー制限を行った二重盲検の無作為化試験である。[8]
体重増加は飽和脂肪群が平均2.31 kg、多価不飽和脂肪群が2.01 kgで、有意な群間差はなかった。ところが飽和脂肪群では肝臓の脂肪が相対的に50%増え、肝酵素や動脈硬化に関わる血中脂質にも悪化が見られた。多価不飽和脂肪群では、同程度に体重が増えても肝臓の脂肪や肝酵素の増加はなく、血中脂質への悪影響も認められなかった。[8]
一方、この追試では内臓脂肪、膵臓の脂肪、全体の体脂肪の蓄積に、油の種類による差はなかった。[8] 肝臓の脂肪では最初の試験と似た結果が得られ、内臓脂肪では結果が分かれた。
その後のエネルギー制限では、飽和脂肪群で生じた代謝面の悪影響は逆転したと報告されている。[8] 油の種類を気にすることと、余分なエネルギー摂取を見直すことは両立する。過食後の4週間を使い、摂取エネルギーを減らしたときの代謝の変化まで追っている。[8]
追試の読み方では、測定項目の位置付けも見ておきたい。2019年の報告は、主な評価項目が除脂肪組織であることを示したうえで、その結果は同論文では報告せず、肝臓などの脂肪を副次的・探索的な評価として扱っている。[8] 肝臓の結果が興味深いことと、最初からそれだけを主目的に設計した試験と同じ重みで読むことは分けられる。目を引いた結果から、研究の設計そのものを書き換えないようにしたい。
除脂肪組織が増えるという期待は、追試で分かれた
ひまわり油の群で除脂肪組織が大きく増えたという最初の結果は、筋肉を保ちたい読者には魅力的に映る。[1] ただ、この話には続きがある。過体重の人を対象とした試験の除脂肪組織を報告した2024年の論文では、油の種類で増え方が違うという結果は再現されなかった。[3]
対象は男女61人、年齢の中央値は43歳で、過食期間は8週間だった。MRIで測った除脂肪組織の増加は、多価不飽和脂肪群が0.54 L、飽和脂肪群が0.67 Lで、報告された群間差の推定値は0.07 L、その区間は−0.21〜0.35 Lだった。[3] 差の見積もりはゼロをまたいでおり、多価不飽和脂肪の優位を裏付ける結果になっていない。
2024年の報告は、2019年の論文が扱った過体重の人の過食試験について、除脂肪組織の結果を示している。どちらも61人にパーム油かひまわり油を8週間余分に摂ってもらった比較である。[3][8] 肝臓への影響はあったが、除脂肪組織への優位はなかった、という組み合わせは成立する。
2024年の論文では、一般集団の大規模データも使い、食事、血中の脂肪酸、MRIで測った除脂肪組織の関係を検討している。食事の置き換えを想定した解析でも、油の種類に固有の差を支持する結果は得られず、血中脂肪酸の関連は性別によって異なるなど曖昧だった。[3] 食事データとMRIがそろった13,849人、血中脂肪酸のデータがある9,119人を解析し、実験とは別の角度から除脂肪組織との関連を調べた。[3]
若い標準体重の人と過体重の人では、除脂肪組織の結果がそろわなかった。[1][3] 後者の試験では、血中アミノ酸、筋肉に関わるミオスタチンやIL-15にも、油の種類による差は認められず、除脂肪組織の増加を明確に説明する要因も見つかっていない。[3] 油の違いに注目した実験は、筋肉への期待を検証する作業にもなった。
数字を読む際には、測定したものと分母を一緒に見る。内臓脂肪の「およそ2倍」は7週間に増えた量の群間比であり、肝臓の脂肪の「50%増」は開始時に対する相対変化を表す。[1][8] 除脂肪組織の体積を測った結果も、筋力の測定とは区別する。MRIで部位を分けた結果と、体重計で測った総量には、それぞれ別の役割がある。
数字で読む脂の食べ過ぎ試験
39人・7週間:若い標準体重の人で、パーム油とひまわり油を比較した。[1]
およそ2倍:最初の試験での内臓脂肪の増加量の群間比である。[1]
61人・8週間:過体重または肥満の人に、油の異なるマフィンを追加した。[8]
相対的に50%増:追試の飽和脂肪群に見られた肝臓の脂肪の変化である。[8]
0.07 L:過体重の人の試験で報告された除脂肪組織の群間差の推定値であり、区間はゼロをまたいだ。[3]
食べ過ぎの差は、いつもの食事でも同じか
過食試験では余分なエネルギーが入る。その条件で生じた差が、体重を維持する食事でもそのまま生じるかは別の比較で確かめたい。健康な成人を対象に、必要なエネルギーに合わせた食事で油脂を替えた16週間の無作為化試験がある。83人が開始し、64人が完了した。[14]
この試験では、基本となる食事をそろえ、試験用の油脂としてパームオレイン、ココアバター、大豆油を使った。肝臓の脂肪と腹部の脂肪を画像で測ったところ、肝臓の脂肪、内臓脂肪、腹部皮下脂肪には油脂間の差がなかった。[14] これは食べ過ぎ試験の結果を打ち消すというより、エネルギーを余らせた条件と、必要量に合わせた条件を分ける材料となる。
血液の項目はまた違った。大豆油ではパームオレインより、総コレステロールとLDLコレステロール、総コレステロールとHDLコレステロールの比が低くなった。一方、すべての血中脂質に一様な差が出たわけではなく、体脂肪量では大豆油とココアバターがパームオレインより低下していた。[14] 「肝臓の脂肪に差なし」と「何も変わらない」は同義にならない。測る項目によって結果が分かれる例である。
必要量に合わせた試験の食事設計をもう少し見ると、試験用の油脂は総エネルギーの20%を担い、食事全体の脂質は33%だった。開始前には2週間の準備期間があり、20〜45歳、BMIが18.5〜27.5の健康な参加者を調べている。[14] 同じ食事の土台の中で、油脂の種類を動かした比較だ。エネルギーを余らせる過食試験とは、出発点から設計が異なる。
画像検査を行ったのは開始時と16週後で、その他の項目は開始時と4、8、12、16週に測った。肝臓の脂肪に加え、血圧、肝酵素、レプチン、空腹時血糖、肥満に関する指標にも、油脂の種類による差は見られなかった。[14] 体のどこを測るかだけでなく、どの期間を追うかまでそろえて、油の違いを検証している。
LDLコレステロールの群間差は大豆油でパームオレインより0.37 mmol/L低く、95%信頼区間は−0.68〜−0.07 mmol/Lだった。総コレステロールの差は−0.57 mmol/L、95%信頼区間は−0.94〜−0.20 mmol/Lである。[14] 肝臓の脂肪では差がなくても、血中脂質の一部では差があった、という結果を数値で表している。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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