間食のナッツは何カロリーまで、と迷うとき、表示と体で利用する熱量は同じとは限らない。アーモンドを噛む回数を変えた試験から、細胞壁、便に失われる脂肪、満腹感の違いを読む。粒と粉末の比較では予測値と実測値を分け、噛まない食べ方や回数のノルマに頼らず間食を考える。
アーモンドをひと粒かじると、硬い粒が音を立てて砕ける。この歯ごたえと、食べ終えた後の満足感はどうつながるのだろう。同じアーモンドでも、口の中でどの程度砕かれたかによって、脂肪の取り出され方が変わる。けれど、細かく噛めば腹持ちも順番によくなる、という話ではなかった。[3][4]
答えの芯は、よく噛めば脂肪が細胞の外へ出やすくなる一方、噛む回数と満腹感は単純な比例関係ではない、ということだ。健康な成人の小規模な試験では、少ない回数で噛んだ条件ほど便に失われる脂肪やエネルギーが多かったが、中間の回数が最も腹持ちのよい条件になったわけではなかった。[4]
だから、吸収を減らすために噛まずに飲み込む、あるいは決まった回数まで噛めば間食の問題が解決する、とは考えない。ここで扱うのは、アーモンドの構造と食べ方を調べた研究である。日々の間食の上限を決める話と、噛み砕いた粒から何が出てくるかという話は、分けて読む必要がある。[1][4]

噛む回数を変えると、便に出る脂肪も変わった
最も問いに近いのは、健康な成人13人が参加した無作為化クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を変えて比較する方法だ。アーモンド55gを食べる際の噛む回数を10回、25回、40回に分け、食後3時間の食欲や血液の変化を調べた。さらに続く4日間は食事を研究側が用意し、同じ咀嚼条件でアーモンドを食べ、便も回収した。対象は健康な成人であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この比較だけでは判断できない。[4]
この設計のよさは、「よく噛む人はふだんから食生活が違うのではないか」という疑問を減らせることだ。同じ人の食べ方を変え、食事条件もそろえて比較している。ただし、対象は健康な成人の少人数であり、長期間の体重変化を追った試験として読むことはできない。[4]
便中の脂肪排泄は、10回の条件が25回、40回の条件より有意に多かった。また、便に失われるエネルギーは、全参加者で10回と25回の条件が40回の条件より多かった。口で砕く操作の違いが、食後の気分だけでなく、体の外へ出る成分の違いとして表れたのである。[4]
ここで注意したいのは、脂肪が多く出たという方向と、日常の食事で何カロリー差し引けるかという計算は別だという点だ。この結果から、自分の間食の表示値に一定の係数を掛ける方法は導けない。参加者、食品、噛む条件をそろえた比較として読むのが適切である。[4]
また、55gは実験で使われた量であり、誰もが毎日の間食で食べるべき量ではない。研究の数字には、推奨量と実験条件という違いがある。試験の条件をそのままおやつのノルマにすると、研究が答えた問いから離れてしまう。[4]
実生活では、会議の合間につまむ日も、夕食まで時間が空く日もある。そのたびに咀嚼を採点するより、「この研究は口の作業を変えて比較した」と押さえたい。噛む回数の操作が吸収に関係することと、望ましい食事の量を決めることは、同じ作業ではない。[4]
便を回収する手順にも意味がある。食後の血液や本人の空腹感だけでは、食品に含まれていたエネルギーのうち何が体外へ失われたかは同じようには分からない。この試験は、食後の短い時間の反応と、その後の排泄を合わせて観察したため、咀嚼による違いを異なる側面から確かめられた。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
脂肪は粒の中の細胞壁に包まれている
なぜ口の動かし方で違いが生じるのか。鍵は、アーモンドの脂肪がむき出しの油ではなく、植物の細胞の内側に収まっていることだ。ここでいう細胞壁は、細胞の外側を囲む構造である。食品を砕くと、その壊れた面の細胞から脂肪が出やすくなるが、粒の内部には壊れていない細胞も残る。[8]
細胞壁の役割を調べた実験では、機械で壊したり噛んだりした際に、破断面の最初の層にある細胞が壊れ、脂肪を放出した。アーモンドを含む食事を取った健康な人の便も調べた研究である。18〜39歳の女性でも同じ程度の変化が起こるかは、別に確かめる必要がある。[8]
この「消化に向けて成分を取り出せる状態」を、生体利用可能性の入口としてのバイオアクセシビリティと呼ぶ。実際に体内に取り込まれた量そのものではなく、食品の組織から成分が出て、消化・吸収の過程に進めるかという観点だ。袋に含まれる脂肪量と、その場で消化に利用できる脂肪量をつなぐ途中の段階である。[8][19]
健康な人を対象にした別の無作為化クロスオーバー試験でも、噛んだ後のアーモンドの微細構造を調べると、多くの細胞は壊れず、脂肪を内部に保持していた。試験には17人が入り、途中で2人が離脱した。研究者は、噛んだ粒の大きさや細胞の寸法に基づく予測と、脂肪が放出された実験データを比較している。健康な人での結果を、18〜39歳の女性の吸収量へそのまま置き換えることはできない。[3]
また、目で見える粒と、顕微鏡で見る細胞は尺度が違う。口の中で細かくなったと感じても、その粒の中に壊れていない細胞が残ることはあり得る。咀嚼後の粒をふるい分ける方法や、微細構造を観察する方法が使われたのは、食感だけでは見分けられない部分を調べるためである。[3]
研究を読む際は、噛んだ試料を吐き出して分析したのか、食べた後の便を調べたのかにも目を向けたい。前者は飲み込む前の状態、後者は消化を経て残った状態を見ている。どちらにも細胞壁の役割を考える手がかりがあるが、観察した時点をそろえずに割合だけ比べると、途中の変化が見えなくなる。[3][8]
既存記事「間食の素焼きナッツは吸収も変わる?加熱と細胞壁から実際のエネルギーを読む」は加熱の側を扱う。ここでは焼き方の優劣へ広げず、口で砕く回数と、その後に残る粒を主役にする。加工が構造に影響する点は共通だが、同じ問いではない。[3][19]
満腹感は、噛む回数の順番どおりではなかった
脂肪が出やすくなるなら、よく噛むほど空腹もきれいに減るのだろうか。先ほどの13人の試験では、そう単純ではなかった。40回の条件では25回の条件より、空腹感が食前の水準より低く、満腹感が高い状態が長く続いた。[4]
一方、食後2時間の時点では、25回の条件の満腹感は10回と40回の条件より低く、空腹感は高かった。つまり、10回、25回、40回と回数を増やすたびに同じ方向へ変わる階段にはなっていない。真ん中の数字だから真ん中の結果になる、という予想が外れたのである。[4]
この結果は、よく噛むことの価値を丸ごと否定するものではない。ただ、アーモンドの腹持ちを回数だけで予測するには無理があることを示している。便中の脂肪が多い条件と、食後の特定の時点で空腹感が弱い条件は、同じ尺度で順位を付けるものではない。[4]
血液の反応にも差があった。食後初期の、消化管から分泌されるホルモンであるグルカゴン様ペプチド1の濃度は、25回の条件で40回の条件より低かった。また、インスリン濃度は25回と40回の条件で、10回の条件より速く低下した。研究は食欲の自己評価と生理的な反応の両方を観察している。[4]
食欲の結果にも、見る時間によって違う問いがある。「満腹感が高い状態が長く続いた」は食後の経過の比較で、「食後2時間で高かった」はその時点の条件間の比較だ。40回と25回の持続時間の差だけを取り上げれば、回数を増やすほどよさそうに見える。しかし、2時間後の10回と25回の比較まで読むと、その説明では足りなくなる。[4]
また、空腹感と満腹感は別々の指標として評価されている。25回の条件では、2時間後の満腹感が低いだけでなく空腹感も高く、両方の評価が同じ方向を向いていた。一方、血液ではグルカゴン様ペプチド1の初期反応と、インスリンの低下の速さを比較している。測った時間と項目を添えて読むと、「ホルモンが変わった」という一言で食欲全体を説明せずに済む。[4]
とはいえ、ホルモンの違いを見つけたら、そのまま次の食事の量や長期の体重まで分かったことにはならない。この記事で使う「満腹感」は、参加者が食後に感じた満たされ具合である。脂肪の放出、便への排泄、食欲の感覚を、それぞれの結果として並べると読み違いが少ない。[4]
数字で読むアーモンドの咀嚼研究
13人:噛む回数を変え、食欲と便中の脂肪などを比較した健康な成人の人数。[4]
55g:その試験で使われたアーモンド量。日常の推奨量ではなく実験条件である。[4]
10・25・40回:比較した咀嚼条件。満腹感はこの順に一方向へ変化しなかった。[4]
31人:粒と粉砕アーモンドを比較した別の咀嚼試験の完了者数。[1]
9.3%と10.4%:粒と粉砕品を噛んだ後の、モデルによる脂肪利用可能性の予測値。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






