糖質制限で痩せる仕組みは脂肪合成?糖から作る脂と食べた脂の行方を研究で読む

糖質制限で痩せる仕組みを、糖から新しく脂肪を作る経路と、食べた脂の行き先に分けて読む。肝臓の脂肪が減った短期試験、血中脂肪酸を調べた試験、同位体を使う測定の役割から、脂肪合成の低下を全身の体脂肪減少と同じにできない理由と、食卓で確かめたい点を考える。

弁当のご飯を減らしたら、隣の肉の脂はどうなるのか。「糖が脂肪に変わらないなら、その分だけ脂肪は減るはず」。糖質制限で痩せる仕組みを調べると、そんな説明に出会う。けれど、隣に入った肉の脂や調理油は、この説明のどこへ行くのだろう。

糖から新しく脂肪酸を作る経路はあり、糖質を減らした食事でその働きが低下することは、ヒトの介入研究で示されている。同時に、肝臓の脂肪の減少や脂肪を燃料として使う働きの変化も観察されている。ただし、脂肪を作る経路の低下だけで、全身の体脂肪がどれだけ減るかまでは決められない。[1][5][17]

ここで知りたいのは、糖質制限の勝ち負けではない。「作る」「使う」「たまる」を別々に見る方法である。肝臓の脂肪とお腹の見た目を同じ物差しで読むと、よい研究でも結論を取り違える。[1][5]

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糖から作る脂肪は、食べた脂と入口が違う

新規脂肪合成とは、体内で新しく脂肪酸を作る経路のことだ。食事の糖質が脂肪へ変わる説明で登場するが、血液中にある脂肪酸の由来はそれだけではない。パルミチン酸という脂肪酸を扱ったレビューは、食事の脂、体内での新規合成、蓄えられた脂肪の分解を、それぞれ供給源として挙げている。[6]

つまり、「糖からの合成を減らした」と「脂肪が入ってこなくなった」は違う。低糖質で脂質の多い食事では、食べた脂から来る経路も考える必要がある。レビューでは、脂質の多い食事と、脂質が少なく糖質などの多い食事は、異なる仕組みで血中パルミチン酸を増やしうると整理されている。どちらかの入口だけを閉じた絵では、体内の動きを描ききれない。[6]

これは、油の多いおかずを怖がるための話ではない。弁当のご飯を減らし、代わりに何を選んだかまで見るための話だ。「低糖質」という表示は糖質の情報であり、脂質の由来や体内での行き先まで説明する表示ではない。研究でも、糖質を減らす操作と、脂質やたんぱく質を増やす操作は組み合わされている。[1][5][17]

エネルギー量を維持した食事を扱うレビューでは、脂肪肝やインスリン抵抗性の指標を持つ肥満者において、糖質を減らして脂質やたんぱく質を増やすと、肝臓の中性脂肪が減る方向の結果が整理されている。インスリン抵抗性とは、インスリンの働きが効きにくい状態である。対象は肥満と代謝上の問題を持つ人であり、18〜39歳の女性一般に同じ反応を当てはめるには、健康状態の違いを考える必要がある。[5]

その仕組みとして挙げられたのは、新規脂肪合成の低下だけではない。脂肪酸をエネルギーとして使う酸化や、肝臓でケトン体を作る働きの増加も含まれる。ケトン体は脂肪酸の代謝から作られる物質である。作る側の変化と使う側の変化が同時にあるからこそ、片方の数字だけを成果の全部にしない読み方が要る。[5]

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同位体の追跡は、脂肪の流れを何まで見せるか

同じ体重でも、体内で何がどれだけ動いているかは別の問いになる。ここで役立つのがトレーサー、つまり目印を使って物質の動きを追う測定である。過体重または肥満の男性を対象とした無作為化クロスオーバー試験では、安定同位体で目印を付けたブドウ糖とグリセロールが使われた。参加者が異なる食事条件をどちらも経験する設計である。男性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[1]

この試験で同位体を使って調べたのは、肝臓から糖を供給する速さや脂肪分解の速さだった。さらに、呼吸の測定から燃料の使われ方を調べ、磁気共鳴を使う測定で肝臓の中性脂肪を評価している。新規脂肪合成については、その指標の低下が報告された。ここで捉えたのは短期間の肝臓を中心とする代謝の変化であり、全身の脂肪収支を測った結果とは区別する。同位体が登場する研究だからといって、食べた糖のすべてが何グラムの体脂肪になったかを直接数えた、と読むのは飛躍になる。[1]

血液の中の脂肪酸を調べる研究にも、似た注意点がある。軽度の糖尿病を持つ成人の試験では、パルミトレイン酸が新規脂肪合成の指標として使われた。18〜39歳の女性でも、糖尿病のない人への適用は別に検証する必要がある。「指標」は、その経路の状態を考える手掛かりである。脂肪酸の名前が付いた数値であっても、体全体の脂肪量そのものを量った値とは区別する必要がある。[4]

たとえば、検査票に出てくる血中の値、画像で測った肝臓の脂肪、体重計の表示を、同じ成果の別名として並べない。研究の説明を読む際には、まず「どの場所の、何を測ったか」を確認する。糖が脂肪になる経路を知りたいときも、体脂肪の変化を知りたいときも、この確認によって答えの範囲が変わる。[1][4]

また、合成を示す血中成分の変化と、肝臓の働きの変化が一緒に観察されても、前者だけが後者を起こしたとは限らない。レビューで整理された機序は、肝臓で使える糖やインスリン、糖を分解する働き、脂肪酸の供給などが組み合わさったものだ。入口を追う測定と、たまった量を測る検査が別々に必要なのは、そのためでもある。[5]

肝臓の脂肪が減った試験を、期間と対象ごとに読む

男性のクロスオーバー試験では、血糖が正常で過体重または肥満の男性11人が、低糖質・高脂質の食事と高糖質・低脂質の食事を、それぞれ4日間完了した。食事のエネルギー量は必要量に合わせた条件であり、単に食べる総量を減らした試験とは分けて読む必要がある。18〜39歳の女性の反応を直接確かめた試験ではない。[1]

低糖質条件の糖質は平均102g/日、総エネルギーの11%で、脂質は70%だった。高糖質条件では糖質が平均537g/日、65%で、脂質は16%だった。ふだんのご飯を少し残す程度の比較とは大きく異なる組み合わせである。この数字を、そのまま読者の食事目標として使う理由はない。[1]

低糖質条件のあと、肝臓の中性脂肪は相対的に35.3%減少した。95%信頼区間は減少幅として24.1〜46.6%で、測定された肝臓の脂肪割合の中央値は4.9%から2.9%へ変わった。一方、高糖質条件では肝臓の中性脂肪に変化がなかった。少なくともこの試験では、「糖質が多いと短期間で必ず肝臓の脂肪が増える」という予想は支持されなかった。[1]

35.3%は体重の減少率ではない。肝臓にある脂肪の測定値が、開始時からどれだけ変わったかを示す割合だ。また、4.9%から2.9%という値は、肝臓の脂肪割合を表す別の示し方である。同じ結果でも分母が違う。数字が大きく見えたときほど、何を基準に割った値かを読みたい。[1]

このとき、空腹時に全身で脂肪を燃料として使う働きと、血中のケトン体の濃度は増え、新規脂肪合成の指標は下がった。肝臓のインスリン感受性の指標も改善したが、末梢での糖の取り込みは変わらなかった。肝臓で起きた好ましい変化を、そのまま全身のすべての機能の改善と言い換えることもできない。[1]

別の無作為化試験では、軽度の2型糖尿病を持つ成人57人が、エネルギー量を維持したケトン食または低脂質食を12週間続けた。18〜39歳の女性一般への適用には、糖尿病の有無という対象の違いがある。ケトン食は糖質が総エネルギーの約9%、脂質が65%の条件である。新規脂肪合成の指標であるパルミトレイン酸はケトン食群で32%低下し、終了時の肝臓の脂肪は低脂質食群より28%低かった。[4]

ここでは、開始時からの指標の低下と、終了時の群間比較が同じ文章に並ぶ。どちらも「減った」で済ませると、何と比べた数字かが消えてしまう。低糖質の反応を評価する際には、前後比較か、別の食事との比較かも確かめたい。研究者は、脂肪を作る側より使う側へ肝臓の代謝が移ることが、改善の背景にある可能性を示している。[4]

試験の設計にも目を向けたい。男性の食事比較では、食事条件の間に少なくとも2週間の間隔を置いた。同じ人が両方の条件に参加するため、別々の人を比べるだけの設計とは異なる。その一方で、完了者は男性に限られる。立川で働く女性が夕食を選ぶ際の判断に使うなら、示された代謝の可能性と、自分に同じ反応が起きるという予測は分ける必要がある。[1]

また、この試験の開始時の肝臓の脂肪割合には個人差があり、中央値4.9%に対する四分位範囲は2.4〜11.0%だった。四分位範囲は、測定値の中央の半分が入る範囲である。代表値だけを読むと、参加者全員が同じ状態から始めたように見えるが、実際の測定値には幅がある。小規模な試験の平均的な反応を、個人の約束に変えないための情報だ。[1]

数字で読む糖質制限と脂肪合成

11人:短期の食事比較を両方完了した、血糖が正常な過体重・肥満の男性。[1]

4日間:各食事条件の期間。長期間の体脂肪の推移を示す数字ではない。[1]

35.3%減:低糖質条件後の肝臓の中性脂肪の相対変化。95%信頼区間は24.1〜46.6%減。[1]

32%減:軽度の2型糖尿病の試験で、ケトン食群に見られた脂肪合成指標の低下。[4]

23%減:2型糖尿病の成人を調べた別の試験で、対照食より低下したパルミトレイン酸の割合。[3]

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