スクワットで足は速くなる?重さの記録と短いダッシュの伸びを分けて読む

スクワットの重さが伸びれば、短いダッシュも同じ割合で速くなるのか。筋力と走力の関係をまとめたメタ分析、活動的な女性の負荷比較、競技者の試験から、効果が移る範囲を読む。負荷の重さだけでは成果を決められない理由と、筋トレの記録と走る記録を分けて確かめる視点を紹介する。

スクワットの記録は伸びた。ところが、友人と走ると出だしで置いていかれる。脚を鍛えたつもりなのに、ダッシュには別の請求書が届く。そんなずれを考えるとき、重さの記録と走るタイムを同じものとして扱わないことが出発点になる。

スクワットで足が速くなる可能性はある。下半身の筋力向上とスプリント成績をまとめたメタ分析では、筋力トレーニング後の走成績は平均3.11%改善した。ただし、これは研究対象者全体をまとめた値であり、自分のタイムの予告ではない。競技や練習歴の異なる対象をまとめた値を、18〜39歳の女性の改善率としてそのまま使うことはできない。[7]

筋力が大きく伸びても、走るタイムの変化は小さい場合がある。活動的な女性を対象にした試験では、重い負荷のほうが一律に優れていたわけでもない。問うべきは「どこまで重くするか」だけでなく、「その力が、どの走りに移ったか」である。[5][10]

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筋力が走りに移ることを、別々の記録で確かめる

運動研究でいう転移とは、ある運動で得た向上が、別の運動の成績にも現れることである。スクワットの筋力を高めた後、短距離走も改善したかを調べる研究が、この問いを直接扱っている。スクワットの成功を、走力の成功と最初から同一視しないための考え方だ。[3][7]

筋力を表す指標として、研究では1回だけ挙げられる最大重量を使う。以下では最大挙上重量と呼ぶ。一方、走る成績は決められた距離の所要時間などで評価する。重さは増えると向上であり、タイムは減ると向上である。両方を記録して初めて、鍛えた成果の行き先を確かめられる。[3][5]

Seitzらの系統的レビューとメタ分析は、フリーウエイトのバックスクワットで測った下半身筋力と、走成績の変化を統合した。対象は15研究、計510人である。練習経験や体格の異なる対象を含むため、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには慎重さが要る。筋力の伸びの効果量とスプリントの変化の効果量には、相関係数−0.77の関連があり、全体として筋力向上が走成績に移る結果だった。[7]

効果量は、異なる研究の変化を比較しやすくする尺度である。この相関の負の符号は、筋力が増える方向とタイムが短くなる方向の組み合わせを表す。筋力を一定量増やせば、誰でも同じだけ速くなるという換算表ではない。集団をまとめた関連と、個人への予測は分けて読む必要がある。[7]

ここで扱うのは短い距離の加速である。長く走るときの楽さは、隣の記事「スクワットでランニングは楽になる?走る練習とは別に育つ脚の力を研究で読む」に譲る。既存記事「体幹トレーニングで動き出しも速くなる?短いダッシュへの効果と限界を研究で読む」とも問いを分け、こちらではスクワットの筋力記録から走る記録への移り方を追う。

メタ分析の走成績の効果量は−0.87だった。平均の改善率と効果量は、同じ結果を異なる角度から表す数字であり、効果量をそのまま秒数と読むことはできない。また、筋力とタイムの関連が強いことだけで、スクワットの重量から現在の走タイムを計算できるわけでもない。数字の種類を分けると、強い関連という表現に期待を乗せすぎずに済む。[7]

研究が測ったのは、筋力と走力がともに変わるかという問題である。それに対し、友人より自分のスクワットが重いから自分のほうが速いはず、という比較は別の問いになる。訓練前後の変化と、人と人との順位を混ぜないことが、記録を読む際の最初の整理になる。[7]

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重さが大きく伸びても、タイムは同じ割合で縮まらない

数字のずれが見えやすいのが、思春期の男子ラグビー選手を対象にした試験である。筋力トレーニングを行う16人が、負荷の進め方の異なるプログラムに取り組み、別に10人の対照群が置かれた。介入期間は12週間で、ボックススクワットの最大挙上重量、短い距離の走タイム、ジャンプを評価した。思春期男子の結果を、18〜39歳の女性の改善率としてそのまま当てはめることはできない。[5]

ボックススクワットの最大挙上重量は、直線的に負荷を進める群で33.9%、日ごとに負荷を変える群で44.5%増えた。それに対し、10m走のタイムはそれぞれ1.6%、2.5%短縮し、20m走では0.5%、1.7%短縮した。重さの伸びと走る時間の変化は、桁の印象から違う。[5]

さらに、直線的に負荷を進めた群の走タイムの短縮は、10mでも20mでも統計的に有意ではなかった。日ごとに負荷を変えた群では、両距離の短縮が有意だった。見かけの変化があったことと、偶然による違いだけでは説明しにくい結果だったことも、区別しておきたい。[5]

これは「重さが増えても無駄だった」という結果ではない。筋力の改善は大きく、走りへの移り方はそれより小さく、プログラムによる違いもあったという結果である。重さの記録だけを眺めて、走りも十分伸びたと判断すると、実際に測った走成績との距離を見失う。[5]

自分の記録帳に置き換えるなら、スクワットの欄の横に、走る成績の欄を別に設ける考え方になる。重さの更新日は祝ってよい。しかし、その日にダッシュの記録まで更新したことにはしない。研究でも筋力と走力を別々に評価しているのだから、生活の記録でも同じ丁寧さを持てばよい。[3][5]

女性の試験でも、重いほうが一律に有利ではない

活動的な女性27人を無作為に分けた試験では、フルスクワットを軽い負荷で行う群、中程度の負荷で行う群、対照群を比べている。軽い負荷は最大挙上重量の40〜60%、中程度は65〜80%である。測ったのは推定最大挙上重量、ジャンプ、10mと20mなどの走タイムだった。[10]

両方の運動群で多くの指標が改善した。一方、中程度の負荷の群では、10m地点から20m地点までの区間タイムなど、改善が有意ではない項目があった。著者らは、軽い負荷のプログラムが中程度の負荷と同等、またはより有益な可能性があると結論している。[10]

ただし、軽い群のすべての走指標が、対照群より明確に優れていたわけではない。軽い群は対照群との比較で、10mと10〜20m区間の変化に有意差がなく、中程度の群は10mの改善で対照群を上回った。したがって、この試験を「女性は軽い負荷さえ選べば、どの距離も速くなる」と読み替えることもできない。[10]

大事なのは、負荷の順位と成果の順位が、すべての測定で一致しなかった点だ。スタジオで隣の人より軽い重さを使っていると、何となく遠回りに思えることがある。しかし、この女性の試験は、少なくとも走力への転移を重さだけで順位づけする根拠にはならない。[10]

また、軽い負荷とは、この試験で最大挙上重量に対して設定した条件である。何も持たずにしゃがむことと同義ではない。自宅のスクワットを、この試験の軽い群と同じものと決めつけないことも必要だ。言葉が同じ「軽い」でも、比較の基準を抜くと研究とのつながりが切れてしまう。[10]

女性が対象である点は読者に近いが、対象者は活動的な人たちである。運動から長く離れていた人の開始負荷を、その割合だけで決めるための結果ではない。「もっと重くしないと意味がない」と焦る前に、何を伸ばしたい練習なのかを確認する材料として使いたい。[10]

区間を分けて測る意味もここにある。女性の試験はスタートから10m、スタートから20mに加えて、10m地点から20m地点の区間も評価していた。出だしを含む成績と、その後の区間の成績で、負荷条件の見え方が異なる。単に「走りが伸びた」という言葉では、こうした違いが隠れてしまう。[10]

たとえば球技の出だしを気にしている人なら、全体のタイムだけでなく、研究がどの距離を測ったかに注目したい。反対に、出だしの改善だけを根拠に、もっと長い距離でも同じ効果が続くと期待するのは範囲を広げすぎる。この女性の試験が扱った距離の中で結果を受け取り、目的に近い指標を選ぶことが、負荷選びより先にできる作業である。[10]

数字で読むスクワットと短いダッシュ

15研究・510人:スクワット筋力の向上と走成績の関係をまとめたメタ分析の規模である。[7]

平均3.11%:同メタ分析で報告された筋力トレーニング後の走成績の改善率で、個人の保証値ではない。[7]

44.5%と1.7%:思春期男子ラグビー選手の負荷を日ごとに変える群で、最大挙上重量の増加率と20m走タイムの短縮率である。[5]

27人:軽い負荷と中程度の負荷のスクワットを比較した、活動的な女性の試験の対象者数である。[10]

18週間:両脚スクワットと片脚のステップアップを比較した、トレーニング経験者の試験期間である。[3]

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