HIITで成長ホルモンが増えれば脂肪も減るのか。若い女性の試験や男性の比較実験を手がかりに、運動直後の分泌、その場の脂肪利用、続けた後の体脂肪を分けて読む。中強度の運動との違い、変化がなかった試験、夜間の分泌も取り上げ、ホルモンの数字だけで運動を選ばない視点を示す。
最後の全力こぎを終え、タイマーを止める。「成長ホルモンが増えたなら、脂肪も減るのだろうか」。息が上がるほど頑張った後こそ、運動の手応えを体脂肪の変化と結びつけたくなる。けれど、運動直後の成長ホルモン上昇だけで、後の体脂肪減少は判定できない。座って過ごすことの多い男性の試験では、ホルモンが上がっても継続後の脂肪量に有意な変化はなかった。18〜39歳の女性への適用は、女性の試験と合わせて検討する必要がある。[6]
HIITは強い運動と回復を交互に行う運動である。よく鍛えた男性の比較実験では、中強度の連続運動より直後の成長ホルモンが高い一方、運動中の脂肪利用は少なかった。「ホルモンが多いから、その場でも脂肪を多く使う」という読み方は、この実験では否定された。男性競技者の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[5]
若い女性の研究にも、脂肪量が減った試験と、体力は伸びても体脂肪は変わらなかった試験がある。知りたいのはホルモンの勝ち負けではなく、何を、いつ測った結果なのかである。体脂肪を減らすことを目標にしない人にも、運動の成果を見失わないための区別となる。[3][9]

成長ホルモンの上昇は、脂肪減少の証明ではない
成長ホルモンは、運動に伴う内分泌反応、つまりホルモンの分泌や濃度の変化を調べる際の指標のひとつである。運動の内分泌反応を整理したレビューは、持久運動、強い間欠運動、筋力運動で反応が異なり、対象に適した運動の種類と負荷を考える必要があるとしている。単独のホルモンだけを取り出して運動の良し悪しを決める説明とは距離がある。[10]
ここでは、採血で捉えた成長ホルモン、その運動中に使われた脂肪、継続後に体に残る脂肪量を分けたい。採血の数字はホルモン反応を、脂肪酸化は脂肪をエネルギーとして利用する過程を、体脂肪量は体に蓄えられた量を見ている。男性の運動実験と女性の継続試験では、これらは同じ方向にそろわなかった。違う指標を同じ「燃焼効果」の言葉で包むと、結果を取り違える。[5][9]
たとえば、運動直後にホルモンが高かったという報告を読むときには、比較相手が何かも確かめたい。座っていた場合より高いのか、一定の強さで運動した場合より高いのかで意味が変わる。若い女性の予備試験では、強い間欠運動の分泌量は座位の対照条件を上回ったが、中強度の連続運動との差は有意ではなかった。「休むより増えた」を「ほかの運動より優れる」へ置き換えてはいけない。[11]
既存記事「女性の筋トレ後のホルモン上昇は成長の目安?一時的な変化と筋肥大を読む」には筋肉が育つかという問いを譲る。こちらで確かめるのは、HIIT後の分泌を、脂肪が減るという結論までつなげられるかである。ホルモンを測る研究と脂肪を測る研究を並べると、その間に飛び越せない段階が見えてくる。[5][6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
ホルモンが高くても、運動中の脂肪利用は少ないことがある
Peakeらは、十分に鍛えた男性の自転車競技者とトライアスロン選手10人に、HIITと中強度の連続運動を別の機会に行わせた。実施順序を無作為にして釣り合わせ、18〜39歳の女性では体力や性別の条件が異なるため、同じ反応が出るかは別に確かめる必要がある。仕事量はHIITが792±95 kJ、連続運動が797±95 kJと近づけた比較実験である。採血は運動前、直後、終了後1時間と2時間に行った。[5]
HIITでは直後の成長ホルモンが有意に高かった。しかし、運動中の糖質の酸化は連続運動より20%多く、脂肪の酸化は47%少なかった。この47%は、運動条件間で比べた脂肪利用の相対差である。体脂肪率がその割合で変わった数字でも、後日の脂肪減少量でもない。ホルモンが高かったという結果と、運動中の燃料の使い方を同じ欄に書かないことが大切だ。[5]
さらに、直後の血中遊離脂肪酸の総濃度には有意差がなかった。遊離脂肪酸は血液中の脂肪酸を捉える指標だが、この濃度、その場の脂肪酸化、ホルモン濃度は、それぞれ違う測定である。研究は代謝物や複数のホルモンに異なる反応を見いだしている。成長ホルモンは、こうした反応の一部を捉えた指標である。[5]
この結果を受けて「HIITは脂肪を減らせない」と結論するのも早い。調べたのは、鍛えた男性が別々の運動を行ったときの代謝反応であり、若い女性が長く続けた後の体脂肪ではない。ここで退けられるのは、成長ホルモンの高さから運動中の脂肪利用量を直接言い当てる説明である。短い実験に、長期の勝敗まで背負わせる必要はない。[5]
会社帰りに運動を選ぶ場面なら、「脂肪を使う割合が高い方」と「続けたときに自分が求める変化が出る方」を同じ質問にしないことになる。男性の急性実験は前者に関わり、女性の継続試験は後者の判断材料になる。実験の対象と時間をそろえるだけで、強い運動を持ち上げすぎることも、中強度の運動を過大評価することも避けやすい。[3][5][9]
運動の強さを比べる研究では、比較条件のそろえ方にも注目したい。この男性の実験は仕事量を近づけており、同じ時間だけ体を動かした比較ではない。「短時間で済む」という特徴と「運動中に何を使ったか」という結果は、違う軸の情報だ。仕事量の近い条件で得た脂肪酸化の差を、スマホに表示された運動時間だけで自分のレッスンへ移すことはできない。[5]
若い女性の夜間測定は、どこまで増えたのか
Deemerらの予備試験は、座って過ごすことの多い若い女性5人を対象にした。平均年齢は22.6歳で、月経周期の卵胞期早期に条件をそろえ、強い間欠運動、中強度の連続運動、座位の対照条件を、同じ参加者が無作為な順序で経験した。条件をまたいで同じ人を比べる、クロスオーバー試験である。[11]
強い運動は30秒の全力自転車運動を4本行い、間に4.5分の軽い運動を挟んだ。連続運動は測定した最大出力の50%で30分行った。夕方の運動から翌朝まで、10分間隔で採血し、12.5時間にわたる成長ホルモン分泌を解析している。運動直後の採血だけで判断せず、その後を追った点にこの試験の特徴がある。[11]
強い間欠運動では、最初の120分の血中濃度を時間に沿って積み上げた指標が、座位の対照条件より有意に大きかった。12.5時間全体の分泌速度も座位条件より有意に大きかった。一方、どちらの指標でも中強度の連続運動との差は有意ではなく、夜間7.5時間の分泌には各条件間で差がなかった。観察時間をどこで区切るかによって、見える結果が違ったのである。[11]
「12.5時間の分泌が増えた」という見出しだけを見れば、眠っている間ずっと高い状態が続いたようにも読める。だが、全体を合わせた結果と、夜間だけを取り出した結果は区別されている。この試験で差が出たのは全体を合算した値であり、夜間だけの値ではなかった。翌朝まで採血した研究を、そのまま「寝ている間の脂肪燃焼」の宣伝へ変換することはできない。[11]
また、この試験は女性を対象にしているものの、人数は5人である。月経周期の条件もそろえてあり、日常のあらゆる時期や体力の女性を代表する比較ではない。分泌の変化を丁寧に追った小さな試験として読むのが妥当である。この結果だけで長期の体脂肪減少を予測するより、実際に運動を続けて脂肪量を測った試験へ進みたい。[11]
この研究で特に参考になるのは、ホルモンの量だけでなく、比較の仕方まで読む姿勢である。同じ女性が各条件を経験したので、別々の集団を比べる場合とは設計が違う。一方で、条件の順序を無作為にしても、参加人数は少なく対象は限定されている。丁寧な測定と、広い読者へ当てはめる確かさは、分けて考える必要がある。[11]
連続運動と有意差がなかった点も、「まったく同じ効果が証明された」という意味にはしない。少人数の予備試験で得た結果として、強い運動の方が優れるとは確認されなかった、と読む。座位条件との差だけを強調すると、選択肢としての連続運動が視界から消える。検索結果で強い運動ばかりが並ぶ夜にも、比較相手まで読み戻したい。[11]
数字で読む成長ホルモンと脂肪の距離
男性10人:仕事量を近づけた運動比較。直後の成長ホルモンはHIITで高かった。[5]
脂肪酸化47%減:同じ比較での運動中の相対差。体脂肪が減った割合ではない。[5]
女性5人:夜まで追跡した予備試験。12.5時間全体と夜間だけの結果は異なった。[11]
男性24人・4週間:急性の成長ホルモン上昇はあっても、体脂肪量に有意な変化はなかった。[6]
女性18人・5週間:心肺体力が改善しても、体組成や測った全身性ホルモンに訓練効果はなかった。[9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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