HIITは無酸素・有酸素のどちら?遅筋も速筋も使う体の変化を読み分ける

HIITは無酸素運動だから速筋だけを使うのか。運動中の筋線維の動員と、続けた後の性質・割合の変化を分けて考える。速筋で起こる持久的な適応、遅筋にも見られる変化、筋線維の割合が変わらなくても体力が伸びた試験を紹介し、研究の対象と測定項目から日々の運動の見方を整理する。

短い運動を終えて椅子に座る。息は弾むのに、検索すると「HIITは無酸素運動」と出てくる。では、持久力に関わる遅筋は休んでいたのか。答えは、その区分だけで働いた筋線維を決めることはできない、である。短い全力運動では速筋が大きく動員され、続けた後には、その速筋で持久的なエネルギー産生に関わるたんぱく質の増加も観察されている。[3]

さらに、筋線維の割合が変わらなくても、遅筋と速筋の内部の指標や運動能力が改善した試験がある。「使うこと」「中身が変わること」「割合が変わること」は別の出来事だ。この区別が、HIITと筋肉の関係を読む出発点になる。[18]

既存記事「10秒の運動にも有酸素性のエネルギーは使われている」には、運動中のエネルギー供給の問いを譲る。ここでは、筋肉を形作る筋線維に焦点を絞る。脚の筋量そのものを扱う隣の記事とも問いを分け、どの線維にどんな変化が見られたかを追う。

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遅筋か速筋かと、有酸素か無酸素かを重ねすぎない

筋線維は筋肉を構成する細長い細胞であり、研究では遅筋に当たるタイプⅠ、速筋に当たるタイプⅡなどに分けて調べられる。タイプⅡの中でもⅡaのような区分が使われる。HIITの神経と筋肉への適応を扱ったレビューは、爆発的な動作に関わる速筋での動員を重視する一方、筋線維の構成や持久力への適応も論じている。速筋という名前から、持久力とは無縁と考えるのは早い。[1]

HIITは強い運動を休息などと交互に繰り返す方法であり、その中には全力の自転車運動を反復するスプリント・インターバル・トレーニングもある。後者の試験結果を、動画に合わせて行うあらゆる運動にそのまま当てはめることはできない。同じHIITという看板でも、筋肉にかかる仕事の内容を確かめる必要がある。[1][3]

「動員」は、その運動で筋線維を働かせる側の話である。「適応」は、練習を続けた後の性質や機能の変化を指す。レビューが述べる神経から筋肉への働きかけと、筋肉を採取して調べる線維内部の変化は、関連していても同じ測定ではない。後日の検査結果だけを見て、運動中の担当割合まで読み取らないことが大切だ。[1][18]

たとえば、ある線維で酸化的な酵素の活性が上がったとしても、その線維が別の型へ入れ替わったとは限らない。実際に、タイプⅠとⅡAの酵素活性などにトレーニングの効果が見られながら、線維型の分布は変わらなかった試験がある。名札は同じでも、内部の働きは変わりうる。[18]

立川駅の階段で脚を動かすとき、「いまは遅筋だけ」と頭の中で仕分ける必要はない。研究を読むときに必要なのは、使った筋線維の話なのか、線維の内部を測った話なのかを確かめることだ。「無酸素だから速筋だけ」という短い説明では、後者の変化が抜け落ちる。[3][18]

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短い全力運動の後、速筋にも持久的な変化が起こる

若い男性を対象にした試験では、全力の自転車運動を30秒ずつ4〜6回、週3回、3週間行った。研究者は太ももの外側の筋肉を採取し、線維型ごとにたんぱく質群の変化を調べた。速筋であるタイプ2の変化は、遅筋であるタイプ1より全般に大きく、ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わるたんぱく質の増加も含まれていた。[3]

ここでいうミトコンドリアは、筋肉のエネルギー産生に関わる細胞内の構造である。この試験の面白さは、速筋を大きく動員する運動が、その速筋の持久的な働きにつながる内部の変化も伴った点にある。「速筋を使う練習」と「持久力に関わる練習」を、互いに交わらない箱へ入れることはできない。[3]

ただし、結果は「速筋がすべて遅筋になった」ではない。調べたのは線維型ごとのたんぱく質の変化である。また、変化が大きかったという比較は、他方の線維が働かなかった証明でもない。増えたものがたんぱく質なのか、線維の数なのかを見落とすと、研究の意味が変わってしまう。[3]

この試験では、抗酸化ビタミンを投与した群で、運動によるたんぱく質群の適応が弱まった一方、最大自転車運動能力の改善は影響を受けなかった。細胞内部の反応と、全身で測る最高の運動能力が、常に同じ向き・同じ大きさで動くわけではない例でもある。抗酸化と運動の詳しい関係は隣の記事の論点だが、ここでは測定項目の違いに注目したい。[3]

もっと広く見ても、短い強い運動と持久的な適応は両立する。人の筋肉のミトコンドリアと毛細血管への適応を統合した系統的レビュー・メタ回帰では、対象者は全体で5973人であった。頻度や実施週数、初めの体力などを調整したミトコンドリア量の増加は、持続的な持久運動で23±5%、高強度運動で27±5%、全力反復運動で27±7%と、方法間に有意差はなかった。[11]

この数字は、個人の速筋内部が必ず同じ割合だけ変わるという予報ではない。線維型別の小さな試験と、多様な参加者をまとめた分析では、見ている範囲が異なる。それでも「全力で短く動くなら、有酸素的な能力を支える変化は起こらない」という思い込みは、この結果とは合わない。[3][11]

運動時間あたりで見ると、この統合分析では全力反復運動のミトコンドリア量増加は、高強度運動の約2.3倍、持続的な持久運動の約3.9倍であった。これは研究の運動時間をそろえて読む比較であり、初心者が予定を詰め込み、全力運動だけを選ぶ根拠ではない。合計の変化と時間あたりの変化は、異なる質問への答えなのである。[11]

線維の割合が同じでも、筋肉の働きは変わる

線維型の割合と内部の機能を分けて見るうえで、約22歳の、日頃から運動している男性16人のランダム化比較試験が参考になる。参加者はサプリメントまたはプラセボに割り付けられ、どちらの群も週3回、4週間のHIITを行った。比較しているのはHIITの有無ではなく、同じ練習にサプリメントを加えるかどうかである。[18]

練習後、筋線維型の分布は変わらなかった。一方、タイプⅠとⅡAでは、酸化的な代謝に関わるコハク酸脱水素酵素の活性と、筋肉に蓄えられる糖であるグリコーゲンの量に、トレーニングによる変化が認められた。型の構成比が動かなくても、同じ型の中で変化が起こるということだ。[18]

全身の運動能力にも変化があった。ピーク酸素摂取量は、プラセボ群で51.3から54.5、サプリメント群で49.6から52.3 mL/kg/分へ変化し、トレーニングの主効果が認められた。酸素摂取量は全身で酸素を取り込んで使う能力を見る指標である。ただし、この値だけで筋線維の割合の変化を推定することはできない。実際、この試験では両者の結果が分かれた。[18]

この試験を「HIITで必ず遅筋が増える」と紹介してはならない。逆に、「割合が変わらないから効果がなかった」と読むのも誤りである。成績表の欄が違うのだ。運動の成果を判定する際に、配分の変化だけを合格条件にすると、線維内部や運動能力の改善を取りこぼしてしまう。[18]

別の指標を使うと、遅筋と速筋の違いをさらに慎重に読む必要が出てくる。菜食の男性20人を運動なしの対照群とHIIT群へ無作為に分けた12週間の試験では、筋肉内のカルノシンを調べた。筋肉全体の値はHIIT群で15.8から20.6 mmol/kg乾燥筋へ増え、対照群では有意な変化がなかった。ここでの対象は、この食事条件の男性である。[16]

線維型別には、タイプⅠで14.4から16.8へ増え、有意な変化が認められた。タイプⅡaも18.8から20.5へ数値は上がったが、こちらは統計的に有意ではなかった。数字が上がったという観察と、研究が変化を確かめたという判断を、同じ言葉で扱わないことが大切だ。速筋の反応が常にすべての指標で大きいわけでもない。[16]

この試験では、運動能力や筋の緩衝能力にも改善が見られたが、カルノシンの増加が緩衝能力全体の改善に寄与する割合は小さいとされた。内部の物質が増えたからといって、それを運動能力向上の唯一の理由にしてはいけない。どの線維が反応したかを見ることと、その反応だけで成果を説明することの間には、もう一段の検討が必要なのである。[16]

数字で読む筋線維とHIIT

3週間:若い男性の全力反復運動で、速筋のたんぱく質群に大きな適応が観察された期間である。[3]

16人:線維型の分布が変わらず、タイプⅠ・ⅡAの内部指標に変化が見られた試験の参加者数である。[18]

27±7%:統合分析での全力反復運動によるミトコンドリア量の調整後の増加であり、個人への保証値ではない。[11]

6週間:座りがちな中年男性で、遅筋・速筋の線維サイズへの運動の時間効果が認められた練習期間である。[12]

42%から51%:心不全の男性の試験全体で観察されたタイプⅠ線維の割合の変化であり、健康な人の標準値ではない。[17]

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