スキムミルクの粉はなぜ浮く?ぬれ性・分散・再水和を分けて読む粒の科学

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粒を大きくする加工でも、すべての粉に同じ効果は出ない

高圧の噴流で処理してから乾燥させたスキムミルク粉の研究では、粒をまとめる造粒という工程が検討された。電子顕微鏡でも粒がまとまったことを確認している。500 MPaで処理した粉に、レシチンを伴う造粒を行うと、ぬれるまでの時間は60分超から4分へ変わった。対象は製造条件を設定した粉であり、市販品全般の平均値ではない。[4]

この比較で分散性は34%から58%へ改善したが、溶解性は77%にとどまった。同じ粉に同じ工程を加えても、改善する指標と動かない指標が並んでいる。ぬれ時間の大きな短縮だけを見て、「全部が完全に溶けるようになった」と読むと、この研究の面白い部分を落としてしまう。[4]

ホエイたんぱく質を加えたスキムミルク粉を対象にした別の加工実験でも、造粒はぬれ方を改善した。粒はぶどうの房のような構造になり、粒の大きさが増した。加工後の粉は、実験で用いた即席性の目安である20秒未満より速くぬれた。細かく砕くことだけが水への近道ではない。[5]

ただし、この結果を先ほどの4分と並べ、速い粉の順位表にするのは避けたい。対象の配合も加工方法も異なるからだ。前者は高圧処理したスキムミルク粉で、後者はホエイたんぱく質を強化した粉である。それぞれの研究内で加工前後を比較すれば意味があるが、時間の短いほうが家庭でも優秀だとは決められない。[4][5]

さらに乳由来の粉を比べた実験では、造粒がホエイ粉の戻る時間を改善する一方で、カゼイン粉では戻る時間を長くした。ホエイはぬれる段階、カゼインは散る段階が工程を制限していたため、同じ加工の影響が逆になったと説明されている。加工の名前が同じでも、粉の中で待たされている仕事が違えば答えも変わる。[15]

造粒には、ぬれやすさ以外の変化も伴っていた。高圧処理したスキムミルク粉の実験では、造粒とレシチンの付与によって泡立ちやすさが大きく抑えられた一方、乳化活性には影響がなかった。乳化活性は油と水を混ぜた状態を作る働きの指標である。粉を加工すると、すべての使い勝手が同じ方向へ動くのではなく、用途ごとに気になる性質が別々に変わる。[4]

ホエイ強化粉を造粒した実験では、色にもわずかな変化があった。明るさを表す値は下がり、黄色みを表す値は上がった。研究者はこれをメイラード反応によるものと説明している。ここでも評価したのは加工後の物性である。色やぬれ時間の変化から、その粉を飲んだ人の体への効果まで読み進めることは避けたい。[5]

台所の工夫として粒をつぶすことと、工場で粒の構造を設計することも分けたい。乳粉のモデル粒子を機械的に壊した実験では、粒が小さくなるとともに、形や表面の組成が変わり、分散性は低下した。ぬれ時間への影響は元のぬれ性によって逆方向だった。粒を小さくする操作は、分散性の低下と、元の性質に応じたぬれ時間の変化を伴った。[2]

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同じ配合でも混ぜる順序が違えば、保存中にも別の変化が起こる

カゼインとホエイを扱った実験には、家庭の感覚を裏切る比較がある。カゼイン80%、ホエイ20%という同じ比率でも、乾燥前に混ぜた粉はカゼイン粉だけの場合より戻る時間が改善した。一方、別々に乾燥させた粉を同じ比率で混ぜると、水に戻る性質は大きく悪化した。[15]

数字の配合が同じであることと、粒の作られ方まで同じであることは違う。袋の成分だけを見て、手元の粉同士を混ぜれば同じ使い心地になると考えたくなるが、この実験では混ぜる時点が結果を分けた。これは栄養の優劣を決める試験ではなく、粉を水に戻す過程の比較だ。[15]

同じ袋でも、保存中の変化は別に考える必要がある。乳粉を温度と湿度を設定して保存した実験では、乳糖の結晶化と戻り方の関係が調べられた。スキムミルク粉、全脂粉乳、脂肪を加えた粉を25℃で4か月保存し、湿度による違いを比べている。乳糖は乳に含まれる糖であり、この研究ではその結晶の状態に注目した。[1]

乳糖は相対湿度23%では非晶質、つまり規則的な結晶になっていない状態を保ち、湿度が高くなると結晶の形が異なった。温度と湿度が高くなるにつれて、推定された結晶子の大きさも約0.1〜20 µmへ増えた。結晶子は結晶を形作る微細な領域であり、粉の粒そのものの直径とは区別する必要がある。[1]

興味深いのは、結晶化が起きたかどうかだけでは戻り方を説明しきれなかった点だ。25℃、相対湿度43%で約0.1 µmより小さい結晶が生じた粉は、比較対象と同程度の安定した懸濁系に戻った。懸濁系とは細かな粒が液中に分散する状態である。著者らは、乳糖の結晶化と戻り方をつなぐ重要な性質として、結晶子の大きさを挙げた。[1]

これらの保存条件は、家庭で粉の袋を置く場所を細かく指定するための数字ではない。管理された条件で、粉が時間とともに別の性質を持ちうることを確かめた数字である。以前は混ざった粉が今日は扱いにくいと感じたとき、湯温に加えて保管の状況も振り返る、という観察の視点につながる。[1]

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

よくある誤解

「温めれば、製造時に変わったたんぱく質もすぐ元に戻る」という理解は飛躍がある。製造中の加熱ではホエイたんぱく質がカゼインミセルへ付着し、水で戻した後の離脱や再調整はゆっくり進んだ。4〜40℃ではその再調整の速度に温度の影響は認められていない。熱い湯を使うことと、製造工程の履歴が消えることは同義ではない。[3]

「水面から粉が消えれば、溶解性も改善した」という見方も分けたい。高圧処理した粉の実験では、ぬれ時間と分散性が改善しても、溶解性は変わらなかった。カゼイン粉には、ぬれるのは早くても散るのは遅い例がある。見た目の変化は役立つが、粉の性質すべてを代表する検査にはならない。[4][15]

「粉を細かくするほどよい」「造粒なら必ず速い」という両方の決めつけにも合わない結果がある。モデル乳粉の粒を壊すと分散性は下がり、造粒の効果もカゼインとホエイで逆方向だった。大きさの優劣より、どの構造の粉で、どの段階を改善したいのかを問うほうが研究に沿っている。[2][15]

今日からできること

  • 手元の粉の作り方の表示を出発点にする。研究の4〜40℃は再調整を調べた範囲であり、そのまま家庭用の推奨湯温とはしない。[3]
  • 混ざり方を見るときは、水面に残る段階と、ぬれてから散る段階を分ける。80対20の配合でも製造順序で戻り方が変わったため、別の粉の経験をそのまま当てはめない。[15]
  • 製品の混ざりやすさを比べるなら、粉や水の量、混ぜる条件を揃えて観察する。ぬれ時間が60分超から4分へ改善した加工でも、溶解性まで同時に変わったわけではない。[4]
  • 保管は手元の表示に従い、使い心地が変わったときは保管状況も振り返る。25℃で4か月の実験は、湿度と乳糖の結晶の状態が関わることを示すが、家庭の保存期限を決める数字ではない。[1]
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参考文献

[1] Crystal size, a key character of lactose crystallization affecting microstructure, surface chemistry and reconstitution of milk powder — Qí X, Malmos KG, van den Berg FWJ, Grumsen FB, Bakalis S., 2024, Food research international (Ottawa, Ont.). DOI: 10.1016/j.foodres.2023.113872

[2] Investigation of breakage behavior and its effects on spray-dried agglomerated whey protein-lactose powders: Effect of protein and lactose contents — Han J, Fitzpatrick J, Cronin K, Maidannyk V, Miao S., 2022, Journal of dairy science. DOI: 10.3168/jds.2021-21452

[3] Comparison of casein micelles in raw and reconstituted skim milk — Martin GJ, Williams RP, Dunstan DE., 2007, Journal of dairy science. DOI: 10.3168/jds.2007-0166

[4] Instant and physicochemical properties of agglomerated high-pressure jet spray-dried skim milk powder — Vyas MU, Harte FM., 2026, Journal of dairy science. DOI: 10.3168/jds.2025-27604

[5] Improved Flowability and Wettability of Whey Protein-Fortified Skim Milk Powder via Fluidized Bed Agglomeration — Seo CW., 2022, Food science of animal resources. DOI: 10.5851/kosfa.2022.e47

[15] Dairy powder rehydration: influence of protein state, incorporation mode, and agglomeration — Gaiani C, Schuck P, Scher J, Desobry S, Banon S., 2007, Journal of dairy science. DOI: 10.3168/jds.s0022-0302(07)71540-0

この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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