ショートスリーパーの定義は?子どもなら9.5時間の研究と遺伝子で短く眠れる人

ショートスリーパーの定義に一つの線はなく、7時間未満の研究も、子どもなら9.5時間以下の研究もある。遺伝子で短く眠れる人はまれで、短く眠る働き手の挙げた障害は仕事の時間、余暇、家族の用事が上位だった。無理している人との違いと、メリットとデメリットを分けて読み直す。

ショートスリーパーという語に、一本の時間の線は引かれていない。働く大人の研究では寝床にいる時間が7時間未満の人を[16]、糖尿病性腎症の患者の研究では5〜6時間の人を[20]、8〜11歳の子どもの研究では9.5時間以下の子を[2]、同じ語で呼んでいる。

混ざっているものを分けると二種類になる。一つは、ただ短く眠っている人。もう一つは、家系に受け継がれた遺伝子の変異によって短い睡眠で済んでいる人で、家族性自然短時間睡眠と呼ばれる。2009年に報告されたDEC2の変異[21]をはじめ、後者の遺伝子はNPSR1、ADRB1、GRM1、SIK3と少しずつ増えてきた[1]。ただしまれで、研究の数そのものが限られている[5]。

自分がどちらかは、時間の短さだけでは見分けられそうにない。手がかりになる数字が一つある。短く眠っている働き手225人に、長く眠るのを妨げているものを尋ねた試験では、仕事の時間が35%、余暇が23%、家族の用事が22%だった[16]。少なくともこの人たち自身は、短い夜の障害に予定を挙げている。

なお、同じサイトで「ショート」と題に入る記事には「ホットヨガの髪型は湿気で戻る?ボブとショートの形を吸水の速さから考える」があるが、あちらは髪の話である。

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「短い」の線は研究ごとに動く

短く眠るとは何時間か。論文を並べると、線は測る相手と目的に合わせて動いている。

8〜11歳の66人を対象にした試験は、一晩9.5時間以下を短い睡眠とした。腕時計型の機器で測ると、この子たちの睡眠は平均8.56時間だった[2]。多くの大人がうらやむ時間である。21〜40歳の働く人の試験では、平日の寝床の時間が平均387〜399分、就寝は平均で午前0時38〜53分だった[16]。平日の寝床が午前0時を過ぎる。中央線の遅い電車で帰る人には、見覚えのある時刻だろう。

糖尿病性腎症の患者237人の横断研究では、自己申告で5〜6時間の人を短いとし、7.5時間を超える人と比べた。血中尿素窒素は20.26対17.61mg/dLで、短い群が高かった[20]。一方で食事の質と睡眠の長さには関連が見られなかった[20]。病気の中で、眠りの短さと腎臓の数値が並んで見えるという話で、どちらが先かは分からない。

不眠の研究にはさらに別の切り方がある。測定器で測って実際に短い睡眠を、不眠の一つの型として区別するものだ[6]。週のうち不眠の夜が多い人がそう見えるだけだという仮説を2026年の報告が検証したが、不眠の頻度で一部は説明できても、それだけではなさそうだという結論に落ち着いた[6]。

ここまでで分かるのは、眠れない人、眠らない人、眠らなくて済む人が、ひとつの名前に同居していることだ。「私はショートスリーパーだ」という自己紹介は、どれを指しているのかが本人にも分からない。

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遺伝子で短く眠る人は、確かにいる

伝説ではない。話の土台は2009年の論文にある。ほかの遺伝子の働きを抑える転写抑制因子DEC2に、P385Rという変異が見つかり、人の短い睡眠の形質と結びついた[21]。同じ変異を持たせたマウスは、対照のマウスより起きている時間が長く、眠る時間が短かった[21]。それまで動物で見つかっていた候補には、対応する人の遺伝子型と形質がそろっていなかった。人とマウスが同じ変異でつながった点が、この論文の値打ちである[21]。

もう一つ大事なのは、マウスの差が時間帯と断眠の条件によって現れたことだ[21]。少なくともマウスでは、短く眠る性質は、いつでも同じ分だけ短いという単純なものではなかった。著者らはこのマウスを、眠りが人の心身に与える影響を探る模型と位置づけた[21]。

その後も、家系を調べる研究が眠りの時刻と量を決める遺伝子を見つけ続けている[1]。2026年の総説は、SIK3の機能を失わせる変異が家族性の短時間睡眠の遺伝子の一覧に加わったと報告した[1]。逆の端も見つかっていて、CADM2という遺伝子に影響する変異は過眠を駆動する候補に挙がった[1]。

12本の論文を読んだ2021年の系統的レビューは、DEC2、NPSR1、mGluR1、β1-ARの変異を挙げ、短い睡眠という形質が本人に備わった性質であり、関連する健康上の問題は見られないと確認した[5]。この人たちを睡眠の病気の一種として扱うのは誤りだ、というのがレビューの立場である[5]。もっとも、足場はまだ細い。12本のうち人と動物の両方を扱ったのが4本、残りは動物実験4本、横断研究2本、総説1本、症例報告1本である[5]。

本当に羨ましいのはここからだ。ふつうは睡眠が短いほど健康の見通しが悪いのに、この変異については健やかな老化を促すかもしれないという証拠が集まりつつあるという[1]。ただし「かもしれない」の段階で、しかも家系の中の話である。短く眠っている人がみな健康に老いるという意味では、まったくない。

同じレビューは慎重な注意も一つ添えた。家族歴のない高齢の男性で、外からの要因で短眠が始まったという症例が1例報告されていて、内因ばかりに注目する見方には限界があるという[5]。遺伝子が見つかったからといって、短眠の説明がすべて遺伝子になるわけではない。

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短眠の遺伝子を調べると、歯周病の論文が出てくる

検索してみると、DEC2の論文は眠りの話だけで終わらない。歯周の炎症に関わる時計遺伝子としてDEC1とともに論じ、細胞の自食作用や炎症性の細胞死との関わりを整理した総説がある[14]。DEC2はもともと、ほかの遺伝子の働きを抑える役目のタンパク質である[21]。眠り以外の場所に顔を出しても不思議ではない。

だから「短眠遺伝子」という呼び名は、覚えやすいが狭い。ここに挙げた総説は短眠の変異そのものの影響を調べたものではないので、短く眠る人が歯周病になりやすい、なりにくいと読むのは誤りである。読み取るべきなのは、一つの遺伝子に一つの機能という単純な図式が成り立たないということだ。

マウスは夜に起きている

短眠の遺伝子の研究は、2009年のマウスをはじめ、マウスとハエに大きく頼ってきた[21]。先のレビューは、マウスとハエの眠りが人と似ていることを、動物研究を含める理由に挙げている[5]。

一方で別のレビューは、この土台に疑問を出した。人は昼に活動するが、夜行性のげっ歯類はその逆である。光は人を覚醒させるが、夜行性の動物では眠りを誘う。メラトニンも、人では眠りの薬として使われるのに、夜行性の動物では活動期に分泌される[4]。昼夜を単純に裏返した関係ではないので、結果を人に移すときの溝になりうる、というのが著者らの主張で、昼行性の動物を使う利点が議論される例の一つに家族性の短時間睡眠を挙げている[4]。

マウスが短く眠って元気でも、終電で帰ってきた人の話にはならない。

集団で見ると、短い睡眠にはリスクとの関連が出る

遺伝子の家系を離れて、ふつうの人の集団を見ると景色が変わる。69本のメタ分析をまとめた2022年のアンブレラレビューでは、不適切な睡眠時間が、心血管の病気、認知機能の低下、うつ、転倒、脳卒中などのリスクを高めている可能性があった[15]。短く眠る人の中で24時間あたりの睡眠が1時間短くなるごとに、全死亡、冠動脈疾患、骨粗しょう症、脳卒中、2型糖尿病のリスクが3〜11%高い関連があるという[15]。

片方だけを責められないのが面白い。長く眠る人では1時間長くなるごとに、脳卒中死亡、冠動脈疾患、脳卒中、2型糖尿病のリスクが7〜17%高い関連が出ている[15]。短いほうにも長いほうにも坂がある。ただしメタ分析の材料には観察研究が含まれ、この関連は短い睡眠が原因だと証明したものではない。病気や仕事の事情のせいで眠りが短くなっている人も、この数字には混ざりうる。

数字で読むショートスリーパー

  • 9.5時間以下: 8〜11歳の試験での短い睡眠の線。実測の平均は8.56時間[2]
  • 2009年: DEC2の変異が人の短い睡眠と結びつき、同じ変異のマウスも対照より眠る時間が短いと報告された年[21]
  • 12本: 短眠の遺伝子の系統的レビューが対象にした論文の数。動物実験を含めての数である[5]
  • 3〜11%と7〜17%: 短い側と長い側で1時間ずれるごとの、リスクの上がり方の関連[15]
  • 35%、23%、22%: 長く眠るのを妨げるものとしての仕事、余暇、家族[16]
  • 79分と6分: 短く眠る過体重か肥満の男性18人の試験で6週間に伸びた睡眠。プログラムの群と対照[10]

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宮川涼 Founder

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