太陽を見るとくしゃみが出るのはなぜ?3%と57%に割れた光くしゃみ反射の調査と遺伝の話

太陽を見るとくしゃみが出る光くしゃみ反射は、調査によって3.1%から57%まで割れる。数字がずれる理由の候補、一家に出る遺伝と多数の遺伝子の話、脳波の研究、1人の記録では実験室の光で再現できなかった話、運転中の事故の症例までを読み、自分の場合を確かめる手がかりを示す。

あなたは太陽を見てくしゃみをする人だろうか。日本の 11,840 人に尋ねた調査なら、そう答えるのは 3.1% である [13]。中国の 3,417 人では 25.6% [9]。ドイツの病院の耳鼻科で 1,042 人に尋ねると 57% まで上がる [18]。同じ現象の数字とは思えない。

答えの芯を先に書く。明るい光を急に浴びるとくしゃみが出るこの現象は、光くしゃみ反射と呼ばれる [1]。一家に受け継がれる例が報告され [11]、遺伝子の場所もいくつか見つかっている [9] [12]。脳波の研究は、視覚の領域が興奮しやすく、鼻のむずむずに関わる領域も一緒に動く、という説明を出した [10]。ただし仕組みの説はいくつもあり、決定的に確かめられたものはまだ無い [1]。

だから、くしゃみの原因が花粉や風邪とは限らない。トンネルから出たとき、立川駅の北口のデッキに出たとき、決まって鼻がむずむずする人は、この現象の持ち主かもしれない。数字がずれる理由の一つは、持ち主の見つけ方にあるらしい。

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正式名称の頭文字が、くしゃみの音になっている

この現象には、長い正式名がある。訳せば「常染色体優性の、抗しがたい、太陽と目による発作」といったところで、その頭文字を並べたのが ACHOO である [3]。英語のくしゃみの音にそろえた名前で、医学の論文に大真面目に載っている。

ところがドイツの調査論文は、同じ ACHOO の「優性の、抗しがたい」の部分を「コリン作動性」に置き換えて展開している [18]。頭文字が先に決まっていて、中身があとから揺れているようにも見える。名前の時点で、この現象の研究の落ち着かなさがよく出ている。

発作の形も報告されている。スペインの 6 家族の調査では、光を浴びてから約 3 秒で出て、くしゃみの間隔は約 2 秒、1 回の発作で 2〜3 回だった [11]。そのあとしばらく出にくい時期も続く [11]。この家族たちでは、発作の回数と強さが時とともに増すという記述もある [11]。目の検査に来た人への質問紙調査でも、90.7% が 3 回以下だった [20]。

このサイトには「入浴後のくしゃみはタオルのほこりも確認、温度差と粒子を分けて残す湯上がりの記録」と「運動後のくしゃみは汗だけで起こるのか、帰り道の空気と症状を比べる記録法」がある。湯上がりや運動後の話はそちらに譲る。こちらは光の話だけをする。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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3.1% と 57% のあいだで、何が起きているのか

いちばん低い数字から見る。日本で一般の人に質問票で尋ねた研究は 3.1% と 3.2% を報告した [13] [12]。ただし著者ら自身が、この低さは質問票が光くしゃみをうまく見つけられなかったためかもしれないと断っている [13]。

いちばん高い 57% は、耳鼻咽喉科の患者 1,042 人への標準化された質問票の結果である [18]。こちらは、ときどき出る程度の人を除くと、これまでの文献と近い数字になった [18]。つまり「たまに出る」を入れるかどうかで、数字は大きく動く。

中間にあるのが 4 人に 1 人という数字だ。2025 年のミニレビューは約 25% [1]、中国の遺伝子研究は 25.6% [9]、大学の検眼クリニックの質問紙調査は 33% を示す [20]。この調査は回収した 367 人の結果で、太陽に毎回反応した人は光くしゃみの人の 12.3% にとどまった [20]。

さらに、もう一段の線引きがある。「4 人に 1 人」は、くしゃみか鼻のむずむずのどちらかが起きる人の数字として語られる [10]。「純粋な」光くしゃみはずっと少ないという整理もある [3]。鼻がむずむずするだけの人を数えるか、毎回くしゃみが出る人だけを数えるか。隣り合う日本と中国で 8 倍もの差が出る。国の違いなのか問いの立て方の差なのかは、これらの調査だけでは決められない。著者らが質問票を疑っていることからすると [13]、問いの立て方の影響は小さくなさそうだ。

私の読みでは、この現象の数字を 1 つに決める必要はあまりない。自分に当てはまるかどうかは、質問票より、次の晴れた日のトンネルの出口のほうが手早く教えてくれる。

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遺伝の関与は報告されている、ただし親を見れば分かるとは限らない

検索すると「優性遺伝」と書かれていることが多い。根拠はある。スペインの 6 家族では、すべての家系で常染色体優性、つまり親の片方から受け継げば現れうる形の遺伝が、受け継いだ人に実際に現れやすい形で示された [11]。

ところが、大きな集団を調べると話が細かくなる。全ゲノム関連解析という方法で、遺伝子の違いと光くしゃみの関連を探した中国の 3,417 人の研究は、2 番染色体と 3 番染色体の 2 か所で関連を見つけた [9]。オッズ比は 1.68 と 0.65 で、片方は光くしゃみを増やす向き、もう片方は減らす向きである [9]。見つかった 2 か所はどちらも遺伝子と遺伝子のあいだの領域だった [9]。2 か所を合わせても、光くしゃみの有無を見分ける力を示す値は 0.657 にとどまる [9]。当てずっぽうよりはましだが、完璧にはほど遠い値である。著者らは、他の集団の研究も合わせて、多くの遺伝子が関わり、特定の民族に限らない性質だと述べる [9]。ウェブ調査に答えて唾液を提出した日本人 11,409 人の研究でも、欧米の研究で先に見つかっていた 3 番染色体の同じ領域で関連が確かめられ、新しい候補も 2 か所挙がった [12]。

一家の中で強く受け継がれる場合と、集団の中で多数の遺伝子が少しずつ関わる場合が、並んでいるわけである。そして検眼クリニックの質問紙調査では、親にその反応があったと思い出せた回答者は 27% に満たなかった [20]。著者らは、光の強さや浴びる頻度にしきい値があるのかもしれないと考え、受け継ぐより後から身につける人のほうが多いかもしれない、とまで書く [20]。親の記憶という測り方の弱さは割り引くとしても、「親が違うから自分も違う」とは言えない。

脳を測ると、視覚の領域がよく反応していた

2010 年の脳波の研究は、光くしゃみのある人と対照群に、白黒の市松模様と明るい点滅光を見せた [10]。光くしゃみのある人では、視覚野、とくに楔部(けつぶ)と呼ばれる領域の興奮しやすさが全般に高かった [10]。鼻のむずむずが強いほど、島皮質の活動と、第二次体性感覚野のより強い活動が結びついていた [10]。

著者らの結論は思い切っている。光くしゃみは、脳幹や脊髄だけで完結する古典的な反射ではなく、大脳皮質の特定の領域も関わるというのである [10]。「反射」という名前を持ちながら、反射らしくないということになる。著者らはこれを、この現象を初めて科学的に調べた研究と位置づけている [10]。

ただし、これで決着したわけではない。2025 年のミニレビューは、光の信号と顔の感覚の信号が足し合わされるという説、副交感神経の過敏、副交感神経の興奮の広がりといった説を並べ、どれも決定的に確かめられていないと書く [1]。

1 人に 150 回以上光を当てても、実験室ではくしゃみが出なかった

この分野でいちばん味わい深い研究が 2025 年に報告された。光くしゃみのある男性 1 人が、30 日間、日常の光を測りながらくしゃみを記録したのである [7]。発作の記録は 82 回、1 日平均 2.73 回だった [7]。くしゃみの前には周囲の明るさが約 10 倍に増え、そのピークは 2 分前にあり、10 分以内にもとへ戻っていた [7]。急に明るくなると出る、という話とよく合っている。

同じ研究は、屋内で多原色の LED と積分球を使い、30 秒の光刺激を 150 回以上与えた [7]。結果、くしゃみは 1 回も出なかった。起きたのは鼻のむずむずだけである [7]。日常の光の中では毎日くしゃみをする人が、研究者の用意した光の前では出さない。

もちろん 1 人の記録で、一般化はできない。それでも、この研究には意味がある。2025 年のミニレビューによれば、調べた 167 件の記録のうち光の条件を扱った研究は 7 本で、内訳は症例報告 4 本と実験 3 本だった [1]。いずれも明るい光でくしゃみが出ることを支持するものの、方法も結果もばらばらで、光の強さや色、長さを系統的に変えて調べた研究はまだ無い [1]。研究者が確実に再現できないものは、仕組みを調べにくい。4 人に 1 人の現象といわれながら、実験室には気まぐれにしか来てくれないわけである。

一方で、人工の光でも起きるという報告もある [18]。太陽でなければならないのか、急な明るさの変化なら何でもよいのか。これもまだ割れている。

この研究のまねは意外に簡単である。明るさの計測器が無くても、くしゃみが出た場所と、その少し前にいた場所を書いておけば、暗い所から明るい所へ移ったかどうかは見当がつく。

数字で読む光くしゃみ

  • 3.1%: 日本の一般の 11,840 人での頻度。著者らは質問票の見逃しの可能性を挙げる [13]
  • 25.6%: 中国の 3,417 人での頻度 [9]
  • 57%: ドイツの耳鼻咽喉科の患者 1,042 人での頻度。ときどき出る人を含む [18]
  • 約 3 秒: スペインの 6 家族の調査で報告された、光からくしゃみまでの時間 [11]
  • 27% 未満: 検眼クリニックの調査で、親に反応があったと思い出せた回答者の割合 [20]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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