
筋肉が活動しても、肩甲骨の動く方向までは決まらない
前鋸筋の活動が高ければ、腕を上げるときに必要な肩甲骨の動きもすべて練習できるのだろうか。健康な男性18人を対象とした横断研究は、肩甲骨の立体的な動きと筋活動を同時に比べた。比較した運動のうち、プッシュアッププラス以外では肩甲骨の上方回旋が起きていた。[9] 男性18人で観察された動きの違いが18〜39歳の女性でも再現されるかは、この比較だけでは判断できない。 上方回旋とは、腕を上げる場面で肩甲骨が上向きに回る動きであり、単に肩甲骨を前へ動かすこととは異なる。[6][9]
その研究では、プッシュアッププラスの前鋸筋活動と、僧帽筋上部に対する前鋸筋の活動比は、肩甲骨面で腕を上げる運動より高かった。それでも、上方回旋を伴いながら前鋸筋を活動させる目的では、腕を体の前で内側へ寄せた位置から挙上する運動のほうが適している可能性が示された。[9] 高い筋活動と、目的とする動きが重なるかを別々に見た結果である。
これはプッシュアッププラスの価値を否定する話ではない。前鋸筋が働くという問いに答える実験と、肩甲骨が上向きに回るかという問いに答える実験は、測っているものが違う。[4][9] 電車のつり革へ手を伸ばす動きが気になる人と、床を押したときの肩甲骨の動きを知りたい人では、確かめたい課題も変わる。筋肉の名前が同じだからといって、動作まで同じとは限らない。
自分で動画を見る際も、背中が持ち上がったという外見だけで判断しないほうがよい。肩甲骨が前へ動いたのか、背中そのものを大きく丸めたのかを分けて観察したい。肩甲骨が浮き出る特徴を持つ男性13人を対象とした横断研究では、膝つきのプラス動作中に過度な胸椎後弯、つまり胸の高さの背骨を丸める代償が起こり得ることが研究の出発点となっていた。[19] 肩甲骨が浮き出る男性の結果であり、18〜39歳の女性全般へそのまま適用するには、性別と肩甲骨の状態の違いを検討する必要がある。
この研究では、背骨の胸の部分や肩甲骨間への触覚的な合図を加える条件を比べ、前鋸筋などの筋活動、肩甲骨の浮き出る程度、胸椎後弯に条件間の差があった。[19] 触れれば誰でも同じ結果になるという処方ではない。外からの合図によって、肩甲骨以外の動きや筋活動も変わり得るという観察である。「もっと押す」の一言に任せるより、どこが動いているかを確認する意義が見える。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
前鋸筋の中でも、部位によって働く割合が異なる
前鋸筋という名前を覚えると、その筋肉全体が同じように活動すると思いやすい。健康な男性15人が参加した実験では、前鋸筋の中部と下部を分けて筋電図を記録した。ベンチでのプッシュアッププラス、不安定なベンチでの同運動、抵抗をかけた肩の屈曲を比べた研究である。[11] 健康な男性の比較なので、18〜39歳の女性に同じ活動比が当てはまるかは、この実験では確かめられていない。 肩の屈曲とは、腕を前方へ上げる方向の動きだ。
中部と下部の活動比は、ベンチでのプラス動作が1.41、不安定な条件が1.81、抵抗をかけた腕上げが0.86だった。プラス動作では中部が下部より大きく活動し、腕上げでは逆の関係が見られた。[11] どちらが万人に優れるかという順位ではない。同じ筋肉を対象にしていても、運動によって部分ごとの配分が異なることを示している。
さらに、この実験では、安定したベンチと不安定なベンチの間で、前鋸筋中部・下部それぞれの筋活動に有意差はなかった。[11] 不安定面で活動が増えた小規模研究や、プラス動作での平均的な増加を示したメタ分析と、同じ結果ではない。[2][18] 支持面を変えたら必ず前鋸筋のすべての部分が増える、という言い方は避けるべきだ。
比較した姿勢や対象、筋肉のどの部分を測ったかが違う以上、研究の数だけで勝敗を決めることはできない。自分が取り入れるなら、まずプラス動作を行う目的を「前鋸筋を含む肩甲骨周囲の活動を確かめる」と具体化し、腕上げの課題と混同しないことが出発点になる。[9][11] 種目を覚えることより、種目ごとの役割を見失わないことが大事である。
二の腕の運動を検索してここに来た人も、肩甲骨の運動をすべて腕の反復に置き換える必要はない。腕立ての途中に肩甲骨を動かす局面があり、その局面では部位ごとの活動に違いが生じる。[18][11] 記録するときは、回数の横に「肘を伸ばして終えた」「プラス動作まで分けて行った」と書けば、次回に同じ内容を比べやすい。練習の名前だけでは残らない違いである。
また、前鋸筋の中部と下部を分けた実験は、同じ参加者が異なる運動を行ったときの比較である。[11] 前鋸筋の活動比が異なったからといって、日常で腕を使うたびに同じ比率になると考える必要はない。買い物袋を持つ場面や棚へ物を戻す場面まで、この実験の数値で採点することは避けたい。研究でそろえた条件の中で生まれた違いとして読むと、細かな数値が日常の動きを縛る規則にならずに済む。
観察の目的を小さく保つことも役に立つ。今日の記録で確かめたいのが「肘の曲げ伸ばしと肩甲骨の動きを分けて見られたか」なら、同時に腕上げの評価や筋肉の部位別の評価まで済ませる必要はない。それぞれを別の課題として調べた研究が示すのは、同じ筋肉の名前の下にも異なる測定があるということだ。[9][11] 次に見本を見るとき、何を確認するための映像なのかを選べるようになる。

よくある誤解
「プラス動作は、肘をさらに反らすこと」という理解は、肩甲骨の課題と肘の位置を混同している。系統的レビューでは、肘を伸ばした条件で前鋸筋の活動を評価しており、肩甲骨を前へ動かす運動として扱われている。[3][4] 肘が伸びた後に追加するのは、肘の可動域を競う課題ではない。見本を追う際は、肘よりも肩甲骨が動く局面を見たい。
「背中が大きく丸く見えるほどよい」とも言い切れない。肩甲骨の浮き出る男性を対象とした研究は、膝つきのプラス動作における胸椎後弯と肩甲骨の状態を別に測った。[19] 外見上の高さをそろえるために、背骨の丸まりまで大きくすることを目標にしない。肩甲骨の前方への動きと胸の部分の丸まりを、同じ成果として数えない見方が必要である。
「筋電図が高い種目なら、肩の困りごとに一律に使える」という理解も飛躍がある。肩甲骨の実際の動きを測った研究では、プラス動作で前鋸筋の活動が高くても、上方回旋を伴う課題には別の運動が候補となった。[9] また、今回扱った筋活動の比較には健康な男性を対象とした実験が含まれる。[9][11][18] 肩の痛みがある人が、自分をそのまま当てはめて治療法を選ぶための結果ではない。痛みや個別の健康状態の判断は医師に相談する。
今日からできること
- 見本動画では、肘を伸ばす局面と肩甲骨を前へ動かす局面を分けて見る。男性10人の比較でも、肩甲骨を寄せた姿勢と前へ動かした姿勢で筋活動は異なった。[18]
- 最初の観察は安定した支持面で行う選択肢がある。19研究・356人のレビューでは、安定面で前鋸筋の高い活動を得る条件が整理されている。[4]
- 回数だけでなく、プラス動作を含めたかを記録する。29研究のレビューは、肩甲骨を前へ動かす課題と寄せる課題で筋活動の比率を分けている。[3]
- 背中の高さだけを合格点にしない。男性13人の研究が分けて測ったように、肩甲骨の状態と胸の部分の丸まりを別に観察する。[19]
- 不安定面へ変える前に、何を増やしたいのかを言葉にする。38研究のメタ分析でも、活動の変化は腕立ての種類と対象筋によって異なった。[2]

オンザショアで、練習する時間と場所を決める
床を押す動きを観察する機会を、日々の予定のどこに置くか。オンザショア立川店を選ぶ際も、運動の名前だけでなく、通える時間や持ち物まで含めて続ける仕組みとして考えたい。営業時間は8:00〜23:30、年中無休である。仕事帰りに立川を通る日も、休日の朝を使いたい日も、自分の生活の予定と照らして検討できる。
店はJR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガに加え、常温のヨガ、ピラティス、パーソナルトレーニングもある。ヨガのレッスンは25種類以上であり、取り組む種目を選ぶ際の情報となる。
参加条件も先に確かめたい。妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。ヨガの体験は税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。店舗案内と料金を確認し、予定が定まったら体験予約へ進むという順序も、継続の準備になる。
参考文献
[2] Electromyography of scapular stabilizers in people without scapular dyskinesis during push-ups: a systematic review and meta-analysis — Arghadeh R, Alizadeh MH, Minoonejad H, Sheikhhoseini R, Asgari M, Jaitner T., 2023, Frontiers in physiology. DOI: 10.3389/fphys.2023.1296279
[3] Optimal activation ratio of the scapular muscles in closed kinetic chain shoulder exercises: A systematic review — Mendez-Rebolledo G, Morales-Verdugo J, Orozco-Chavez I, Habechian FAP, Padilla E, 2021, Journal of back and musculoskeletal rehabilitation. DOI: 10.3233/bmr-191771
[4] Serratus Anterior and Upper Trapezius Electromyographic Analysis of the Push-Up Plus Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis — Kang FJ, Ou HL, Lin KY, Lin JJ., 2019, Journal of athletic training. DOI: 10.4085/1062-6050-237-18
[6] Shoulder muscle activity and function in common shoulder rehabilitation exercises — Escamilla RF, Yamashiro K, Paulos L, Andrews JR., 2009, Sports medicine (Auckland, N.Z.). DOI: 10.2165/00007256-200939080-00004
[9] Analysis of the three-dimensional scapular kinematics and associated scapular muscle activity during scapular muscle exercises — Hori M, Muraki T, Ishikawa H, Sekiguchi Y, Izumi SI., 2024, Journal of bodywork and movement therapies. DOI: 10.1016/j.jbmt.2024.03.005
[11] Differences in Electromygraphic Activity of the Middle and the Lower Serratus Anterior Fibers During Open and Closed Kinematics Exercises — Ratanapinunchai J, Madeeyoh I., 2022, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0000000000003744
[18] Surface EMG during the Push-up plus Exercise on a Stable Support or Swiss Ball: Scapular Stabilizer Muscle Exercise — Seo SH, Jeon IH, Cho YH, Lee HG, Hwang YT, Jang JH., 2013, Journal of physical therapy science. DOI: 10.1589/jpts.25.833
[19] Tactile cues change trunk and scapular muscle activity, scapular winging, and thoracic kyphosis during knee push-up plus in subjects with scapular winging: The cross-sectional study — Shin AR, Lee JH, Kim DE, Cynn HS., 2018, Medicine. DOI: 10.1097/md.0000000000012569
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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