ダイエット中のたんぱく質を植物中心にしても、筋トレで筋力や筋肉量は増えるのか。若い成人と高齢者の比較試験を読み、摂取量をそろえた食事と自由に選ぶ菜食の違いを整理する。体重の減少だけで判断せず、補助食品の試験を食卓全体へ広げすぎない見方と、食事と運動を続ける際の確認点を示す。
夕食の肉を豆の料理に替えた日、筋トレまで無駄になるのではと気になる。冷蔵庫には豆腐があり、食卓には肉を使わない主菜がある。植物中心で食べたい気持ちと、筋肉を保ちたい気持ちは両立するのだろうか。
答えは、植物中心でも筋トレに伴う筋肉量と筋力の増加は期待できる。ただし、若い男性でたんぱく質量をそろえた試験の結果を、年齢も食事量も違う人へそのまま移すことはできない。高齢者が食品を自分で選ぶ試験では、菜食群の摂取量が低く、筋肉量について同等とする条件を満たさなかった。[16][1]
減量そのものの成績と続け方は、既存記事「植物性中心の食事とダイエット 菜食の減量試験でわかった効果と続け方の条件」に譲る。ここで確かめるのは、筋トレを続けたとき、植物中心の食事で「力」と「筋肉の量」がどう変わったかである。体重計の数字だけでは、この問いの答えにならない。[14][17]

植物性か動物性か、その前に比較条件を読む
植物中心という言葉には幅がある。卵と乳製品を含む菜食と、動物由来の食品を使わない食事は同じではない。研究でも、乳卵菜食を扱う試験と、日頃から完全菜食を続ける人を調べる試験があり、それぞれの結果はその食事の条件に結びついている。「肉を食べない人」とひとまとめにすると、比較した内容が消えてしまう。[1][16]
もうひとつの違いは、食事全体を比べたのか、普段の食事へ足すたんぱく質を比べたのかである。大豆とえんどう豆の混合たんぱく質を飲む群と、乳由来のホエイを飲む群を比べても、比較できるのは追加したたんぱく質の由来である。補助食品の原料と食卓全体の構成は分けて読む。[4]
筋トレの内容も食事と並べて読む必要がある。若い男性の比較試験では、指導下の筋トレを続けながら、食事のたんぱく質量を補助食品で調整した。これは、夕食から肉だけを外し、運動も食事の残りも変えない生活とは条件が違う。植物性だから成功した、動物性でなければ失敗する、というどちらの説明も、この試験の組み立てより粗い。[16]
たんぱく質の量に出てくるg/kg/日は、体重あたりで表した日々の摂取量である。同じ食品名を選ぶことと、その研究と同じ量を食べることは別の話になる。試験の数字は比較条件を知るために読むもので、誰でも直ちにその量へ合わせる処方箋ではない。対象者や筋トレの頻度も一緒に見ると、数字だけが独り歩きしにくい。[16][14]
植物中心にしたい理由が味や生活上の都合であっても、研究の読み方は変わらない。最初から肉をやめるか続けるかという大きな決断にせず、何をどのような食事へ替えるのかを具体的にする。食品を選ぶ方針と、食事で確保できた量と、続けた運動を別々に確認する。この区別が、次に紹介する試験の違いを理解する土台になる。[1][16]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
若い成人では、量をそろえて筋肉が増えた
日頃から完全菜食を続ける若い男性19人と、肉なども食べる若い男性19人を比べた臨床試験がある。参加者は筋トレ未経験で、12週間、週2回の指導下の筋トレを行った。たんぱく質摂取量は両群とも1.6 g/kg/日へ調整され、完全菜食群には大豆、混合食群にはホエイの補助食品が使われた。対象は男性であり、18〜39歳の女性にも同じ結果が得られるかは、この試験だけでは判断できない。[16]
結果は、脚の除脂肪量、筋肉の断面積、筋線維の断面積、脚で重りを押すレッグプレスの最大筋力が、両群で増加した。各指標に群間の有意差はなかった。レッグプレスの増加量は完全菜食群97±38 kg、混合食群117±35 kgだったが、見かけの数字の差だけから、混合食が優れていたとは判定できない。[16]
ここでの強みは、食事の由来だけでなく、総たんぱく質量をそろえて比較している点にある。一方、日頃の食事習慣が異なる人を比べた試験であり、食事法を無作為に割り振った試験としては読めない。植物性では筋肉が育たないという断定を退ける材料として読むのが適切だ。[16]
女性も含む若い成人を対象とした別の臨床試験では、長期の運動段階に男性11人、女性11人が参加した。約2 g/kg/日の高たんぱく食と、週5日、10週間の段階的な筋トレを組み合わせている。動物由来を含む食事と、菌類由来のたんぱく質を多く用いた非動物性の食事が比べられた。[14]
全身の除脂肪量の増加は、動物由来を含む群で2.6±1.1 kg、非動物性の群で3.1±2.5 kgだった。太ももの筋肉の体積は両群とも平均8.3%増え、筋力も同程度に改善した。除脂肪量とは脂肪以外の体の量であり、太ももの筋肉の体積とは測っているものが違う。この研究は別々の指標を測りながら、食事の由来による有意な差を認めなかった。[14]
この結果を見て、普段の夕食を豆だけに替えればよいと考えるのは早い。研究では高たんぱく食と頻度の高い筋トレが組み合わされている。使われた非動物性の食事も、菌類由来のたんぱく質を多く使った献立である。それでも、動物由来の食品を使わない条件で筋肉が増えたという事実は残る。食事の好みを捨てる前に、どんな条件で成り立った結果かを確かめたい。[14]
自分で食事を選ぶと、量まで同じにはならない
食事相談を受け、実際の食品は自分で選ぶ形にすると何が起こるのか。55歳以上の108人が参加した無作為化比較試験は、この生活に近い問いを扱った。参加者の58%は女性で、乳卵菜食または肉なども含む食事の相談を受け、12週間、週3回の筋トレを行った。どちらもたんぱく質1.2 g/kg/日以上を目標にしている。対象は55歳以上なので、18〜39歳の女性の食事選びに使う際は、摂取量の差に着目し、筋肉量の変化の大きさまでそのまま当てはめない。[1]
実際の摂取量は、菜食群1.24 g/kg/日、混合食群1.58 g/kg/日だった。植物性たんぱく質の割合は菜食群で76%、動物性の割合は混合食群で67%となった。どちらも設定した目標には届いている。しかし目標を達成したことと、群同士の量が等しいことは別である。目標という同じ看板の下でも、実際に食べた量には差が残った。[1]
手足の筋肉量は菜食群で0.38 kg増加し、95%信頼区間は0.12〜0.64 kgだった。混合食群の増加は0.66 kg、95%信頼区間は0.40〜0.93 kgで、両群とも増えている。レッグプレス筋力と椅子から立ち上がる検査も改善し、その改善には群間差がなかった。[1]
ただし、この試験は単に「差が見つかるか」だけを問う設計ではない。菜食が混合食より許容範囲を超えて劣らないことを確かめる、非劣性試験である。手足の筋肉量に設定した非劣性の幅は0.25 kg。群間差は菜食群から混合食群を引いて−0.33 kg、95%信頼区間は−0.69〜0.03 kgで、非劣性は確認されなかった。[1]
信頼区間は推定の不確かさを読む幅でもある。この結果を「菜食では筋肉が減った」と説明すると、菜食群でも増加した事実に反する。一方で「同じだった」と言い切れば、非劣性を確認できなかったという試験の答えを落としてしまう。両方の事実を並べて読む必要がある。若い男性で量をそろえた試験とは、年齢、食事の選び方、実際の摂取量も違うため、食事の由来だけを原因にできない。[1][16]
食事を選ぶ自由がある試験は、栄養量を厳密にそろえた試験より劣るという意味ではない。前者は相談を受けて生活の中で選んだときの結果を、後者は量を合わせたときの由来の違いを考える材料になる。買い物や外食を自分で決める人には前者の問いも身近である。植物性の比率だけに注目せず、目標から実際の摂取量までをたどると、なぜ同じ「植物中心」でも結果の読み方が変わるのかが見えてくる。どちらの設計も、自分の食生活へ結びつける際に必要な比較である。[1][16]
数字で読む植物中心の食事と筋トレ
1.6 g/kg/日:若い男性の食事比較で、両群のたんぱく質量を合わせた条件。[16]
12週間・週2回:同じ試験で続けた指導下の筋トレであり、食事だけの比較ではない。[16]
8.3%:若い男女の高たんぱく食試験で、両群にみられた太ももの筋肉の体積の平均増加。[14]
1.24対1.58 g/kg/日:高齢者が食品を自分で選んだ試験の、菜食群と混合食群の実際の摂取量。[1]
0.38対0.66 kg:その試験の手足の筋肉量の増加であり、非劣性は確認されなかった。[1]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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