
一定速度でも、体の中のエネルギーの受け渡しは続く
速度変化のある走りを定速走と区別すると、「定速なら何も加減速していないのか」という疑問も出てくる。移動のエネルギーを扱うレビューによれば、歩行でも走行でも、体が進む時には歩ごとの加減速による運動エネルギーの変化と、上下移動による位置エネルギーの変化が起きる。一定速度とは、体のあらゆる部分の動きが均一という意味ではない。[11]
歩行では、これらのエネルギーを交互に交換する仕組みが消費を抑える。走行では変化のタイミングがほぼ重なる一方、筋肉の弾性要素を伸ばしてエネルギーの一部を蓄え、次の動きで利用する仕組みがある。定速走にも、エネルギーの蓄積と再利用が含まれている。全体の速度を上げ下げする話と、歩ごとの受け渡しを混同しないことが大切だ。[11]
実際の走りで、足のアーチの働きと消費の関係を調べた研究もある。男性の競技者または運動愛好者16人が、時速10 kmの一定速度で60分間、トレッドミルを走った。足の内側にある縦方向のアーチが行う正と負の仕事を計算し、酸素摂取量などの代謝指標を同時に測った実験である。18〜39歳の女性でも同じ時間経過や相関の強さになるかは、この男性の実験からは判断できない。[20]
アーチの正の仕事と代謝指標は、最初の10分に急速に増え、その後は安定した。一方、アーチの負の仕事には時間による有意な主効果がなかった。さらに、正の仕事と負の仕事は、いずれも消費エネルギーと正の相関を示した。相関係数はそれぞれ0.588と0.514であった。[20]
負の仕事も消費と正の相関を示したという点は、言葉の印象とずれる。「負」とつくから体内の消費も引き算になる、という読み方はできない。ただし、この結果は足のアーチの仕事と消費の関連であって、走行全体の減速だけを取り出した比較ではない。アーチの数字を使って、減速の消費カロリーを計算することもできない。[20]
この研究は、一定速度という条件の内側にも、時間とともに変わる代謝指標や足の働きがあることを示している。同時に測った値が関連していたからといって、アーチの仕事を増やせば消費を狙いどおりに変えられるとまでは言えない。観察された関連を、動作を変えるための処方へ飛躍させない読み方が必要だ。[20]
スマホの速度欄は横ばいでも、体の中で行われる仕事まで静止しているわけではない。足の研究が捉えたのは、一定の走行条件における局所の働きと代謝の関係である。[20] そこへ全身の速度変化が加わるスプリントでは、定速走との差を改めて考える必要がある。[2] 同じ「ランニング」という名前の下にも、異なる測定の問いがある。
ここまでの研究を重ねる時にも、対象をそろえておきたい。アーチの実験は一定速度を保つ長い走行であり、全力走の実験は短い運動の供給経路を比較したものだ。前者の時間経過と後者の総消費を継ぎ合わせて、速度を変える自分の走りの数値を作ることはできない。それぞれから受け取れるのは、定速でも内部の働きがあることと、短い全力運動では複数の供給を数える必要があることだ。[18][20]
測定の役割も違う。足の研究では、力を測れるトレッドミルと動作の記録からアーチの仕事を計算し、代謝の測定と照らし合わせた。[20] 全力運動の比較では、酸素に加えて血中乳酸や運動後の酸素の値から、供給経路ごとのエネルギーを推定している。[18] どちらも単に速度を入力して熱量を出した実験ではない。自分の走行記録と論文の数字を比べるなら、測定の方法まで含めて条件の違いを残したい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
よくある誤解
「加速と減速を繰り返せば、最後は差し引きゼロ」は、動きの変化と代謝の消費を混ぜた考え方である。機械的エネルギーが増えた後に減っても、筋肉の収縮や弾性による再利用の違いが残る。加速前と同じ速度に戻ったという事実だけでは、それまでに体内で使ったエネルギーを相殺できない。[14] 消費の記録は、速さの収支表ではない。
「速い区間と遅い区間の定速走の値を足せば十分」という考えにも留保が要る。スプリントや往復走では速度変化に伴う追加のエネルギーがあり、加速とその後の減速を分離して評価する難しさもある。[2] 定速走の値を使った計算が見やすくても、それだけで速度変化の全体を測り終えたことにはならない。小数点が細かいことと、運動の条件をよく捉えていることは別だ。
「短い運動なら、酸素が少ないので総消費も小さい」とも決められない。男性競技者の比較実験では、有酸素性の寄与に種目間の有意差がなくても、総消費や解糖系の寄与には差があった。[18] 酸素の測定が不要なのではなく、酸素だけで同じ運動を評価してよいかを確かめる必要がある。総消費という言葉を使う時は、何を合計したのかが重要になる。[2][18]
いずれの誤解にも共通するのは、見やすい指標を運動の全部として扱うことだ。平均速度、動きのエネルギー、酸素摂取量は、それぞれ異なる面を示している。[2][14][18] 自分の記録を見る時も、消費の表示だけで「今日は前よりよい」と結論づける前に、速度を変えた運動だったのか、定速を保った運動だったのかを言葉で確かめたい。

今日からできること
- 走る前に、その日は一定の速さを保つのか、速める区間と緩める区間を設けるのかをメモする。走った後には実際の切り替えも書き添え、予定と実施内容を照らし合わせる。定速走と速度変化のある走りを区別するための記録方法である。[2]
- 緩急をつけて走った日は、速め始めた目印と緩め始めた目印、各区間にかかった時間を記録する。次回の比較では平均速度に加え、切り替えの位置や区間の長さも確認する。加速と減速を含む運動条件を残すための工夫だ。[2]
- 消費の数字を比べる時は、走行中の酸素だけの評価か、無酸素性の供給を含む推定かを確かめる。30秒全力走の130.8±18.0 kJは訓練された男性16人の実験値であり、18〜39歳の女性への数値の適用は別途検証が必要である。[18]
- 走行記録では「脚に感じた負担」と「機器に表示された消費」を別の欄に書く。体感のメモと熱量の表示を分ければ、動きを抑える働きと代謝の消費を取り違えずに振り返れる。機械的な仕事と代謝の関係には筋肉の収縮様式などが関わる。[14]
- 一定速度で走った日も、走り始めと後半の様子を言葉で残す。男性の競技者・運動愛好者が時速10 kmで60分走った実験では、アーチの正の仕事と代謝指標に時間経過の変化があった。18〜39歳の女性に同じ変化が生じるかは別の検証を要するが、記録を平均速度だけに絞らず振り返る視点になる。[20]
オンザショアで、続ける時間と場所を決める
速めた区間の消費量だけで運動を選ぶより、続ける種目と通う時間を一緒に考えたい。オンザショア立川店にはHIITのほか、常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、パーソナルトレーニングがある。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンを設けている。種目を選ぶ時には、自分が何を続けたいのかを先に言葉にしておくと、案内を読む目的が定まる。
妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。営業時間は8:00〜23:30、年中無休。所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fで、JR立川駅北口から徒歩1分の場所にある。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。店舗情報と料金で通う条件を確認し、ヨガを試す場合は体験の予約へ進める。研究の消費量はレッスンの保証値ではなく、ここでは日々の運動を予定に置く場所として考えたい。

参考文献
[2] Energetics (and Mechanical Determinants) of Sprint and Shuttle Running — Zamparo P, Monte A, Pavei G., 2024, International journal of sports medicine. DOI: 10.1055/a-2184-9007
[11] The mechanisms for minimizing energy expenditure in human locomotion — Saibene F., 1990, European journal of clinical nutrition. DOI: なし
[14] The relationship between mechanical and physiological energy estimates — Williams KR., 1985, Medicine and science in sports and exercise. DOI: 10.1249/00005768-198506000-00004
[18] Locomotion-specific metabolic demands in 30-s anaerobic efforts — Ulupınar S, Kishalı NF, Kıyıcı F, Yılmaz HH, Özbay S, Gençoğlu C, Öget F, Hoos O, 2026, Journal of exercise science and fitness. DOI: 10.1016/j.jesf.2026.200527
[20] Dynamic Changes of Longitudinal Arch Work Are Related to Energy Expenditure During Long-Distance Running — Zhang K, Yan Z, Duan Y, Xu Y, Chu Z, Yang F, Pu F, Ren W, Fan Y., 2025, Annals of biomedical engineering. DOI: 10.1007/s10439-025-03795-y
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- 筋トレ後の有酸素運動は速歩にする?走り出したくなる速さと歩幅の無理を読む
- 筋トレの休息日は軽く歩く?同じ速さでも脚の疲れと歩行の消費を分けて考える
- 筋トレと有酸素運動を交互に行う日、脚の力と自転車の踏み方は別々に育つ?
- 筋トレと有酸素運動で体重が増える?飲んだ水と血漿量の戻り方を分けて読む
- 筋トレの背中ストレッチは座って行う?腕の位置と骨盤だけで長さを決めない読み方
- 筋トレ翌日のHIITは腕なら軽い?使う筋肉と全身の回復を分けて考える
- 筋トレの背中は座り仕事の後に張る?硬い感覚と動かす抵抗がずれる理由を読む
- ダイエットの運動靴が汗で重くなったら?濡れた感覚と足元の温まり方を読む
- ダイエット中のお風呂で食欲は変わる?湯上がりに選ぶ夕食と温熱効果の境界
- ダイエットで顔の変化は横顔でも同じ?角度と脂肪量の印象を分けて確かめる
- ホットヨガ後の冷たい水で体温は下がった?口の測定値を読む前に確かめたいこと
- 女性の腹筋の縦ライン、左右差は何で測る?写真と筋厚・筋間距離を分けて読む
- 筋トレの休息日の有酸素運動は何分続く?きつさと残り時間の見積もりを読む
- HIIT・ケトルベルの呼吸は吐き始めを固定する?腕の周期と楽さの違いを読む
- HIITの縄跳びは持ち手を短く握る?握る位置と手が描く軌跡を分けて読む
- HIITのオンライン画面は近い方がよい?見本の細部と動く背景を分けて読む
- HIIT後の食事はにおいを感じにくい?鼻の通りと口で感じる風味を読み分ける
- スクワットは前につま先立ちすると変わる?朝の準備と直前の収縮を分けて読む
- スクワットで遠くを見ると重心は変わる?視線の高さと見る距離を分けて読む
- スクワットは数字を声に出して数える?毎日の回数と動作の速さを読み分ける
- スクワットの動画は少し遅れて見える?画面を追う修正と録画の確認を分ける
- スクワットの掛け声は動く前と立つ途中で同じ?走者の準備の試験から考える
- スクワットで足指が床から浮くとどうなる?接触の見た目と膝の負担を分けて読む
- 寝る前の運動後は生活音を忘れる?寝つきと途中の目覚めから夜の予定を考える
- 寝る前の有酸素運動は翌朝の眠気も変える?寝つきと休めた感覚を分けて読む
- 寝る前のストレッチは目を閉じて行う?動く脚の感覚と眠気を分けて読む
- ストレッチのポールで胸を開くとき腕は広げる?伸びる感覚と効果を分けて読む
- ストレッチ用のポールに足を乗せる?接触面の温度と押される感覚を読み解く
- ストレッチ用のポールで揺れる速さは予告する?反応時間と体幹の安定を分ける
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
2






