筋トレ翌日のHIITは腕なら軽い?使う筋肉と全身の回復を分けて考える

筋トレ翌日、脚を休めるために腕のHIITを選んでも、それだけで回復向きとは決められない。腕こぎ運動の小規模試験、脚と腕で測った糖の取り込み、休息と筋肥大の研究を読み分ける。運動する部位、きつさ、次の筋トレへの影響を別々に考え、オフ日の予定を見直すための視点を示す。

昨日はスクワット。今朝は椅子から立つたびに脚が気になり、動画のジャンプ種目を腕の運動に替えたくなる。「脚を使わなければ休息日になる」という考えは分かりやすい。しかし、腕の運動も体力や筋力を変えるトレーニングになり得る。腕こぎ運動を調べた小規模試験でも、継続後には心肺体力などの改善が見られた。[15]

答えの芯は、使う部位を替えることと、回復のために負荷を軽くすることを分ける、である。腕なら翌日の筋トレに響かない、という保証にはならない。ここで扱う腕こぎの試験が検討したのは継続による健康指標の変化であり、筋トレ翌日の回復を早める方法として読み替えることはできない。[15]

既存記事「HIITの後に筋トレをすると力は落ちる?脚の疲れと上半身への影響を読み分ける」には、先に行ったHIITから筋トレへの影響という問いを譲る。こちらで考えるのは逆の場面だ。昨日使った筋肉を避けるつもりの運動を、今日の予定表でどう扱うか。そのために、部位、測定した指標、時間の長さをそろえて研究を読む。

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腕で行うHIITも、運動として数える

HIITは高強度インターバルトレーニングという運動形式である。腕を使う形式の例に、ハンドルを腕で回す腕こぎ運動がある。長期の脊髄損傷がある人を対象とした予備的な無作為化試験では、腕こぎによるHIITと中強度の運動を比較した。18〜39歳の健康な女性に、そのまま当てはめられるかは別に検討する必要がある。参加者はどちらかの運動を続け、前後で体組成、心肺体力、筋力、血液の指標などを調べた。[15]

完了したのは7人で、男性6人、女性1人、平均年齢は51.3歳だった。HIIT群は4人、中強度群は3人で、期間は6週間である。どちらの群でもインスリン感受性、心肺体力、筋力などに改善が見られ、運動形式の間に差は見られなかった。インスリン感受性とは、血糖の調節に関わるインスリンの働きやすさを指す。[15]

この試験から受け取れるのは、腕で行う運動にもトレーニングとしての意味があることだ。一方、少人数で特定の身体状況を持つ人の結果なので、普段ジムに通う女性の翌日の疲れにそのまま当てはめることはできない。「腕だから軽い」という見た目の印象と、運動として体に与える刺激とは別に考えたい。[15]

動画の名前に「脚を休める日」とあっても、今日行うのが強く運動する時間なのか、負荷を抑えた時間なのかは確認が要る。これは実践上の整理であって、腕こぎの試験から導かれた回復の処方ではない。運動の名前だけで予定を決めず、その日の目的を先に言葉にしておく。「脚を使わない」が目的なのか、「次の筋トレに備える」が目的なのかで、確認したいことは変わる。

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使った筋肉の外でも、代謝の変化は測られる

部位だけで全身への影響を判断しにくい例が、脚の自転車運動と糖の取り込みを調べた無作為化試験である。対象は2型糖尿病またはその前段階にある26人で、平均年齢は49歳、女性は10人だった。18〜39歳の健康な女性にも同じ変化が起きるかは、この患者集団との違いを踏まえて考える必要がある。短い全力運動を繰り返す群と、中強度で連続して運動する群に分けられた。[17]

全力運動群では、自転車を30秒間全力でこぎ、4分間の回復を挟む運動を4〜6回行った。中強度群では40〜60分の自転車運動を行い、どちらも2週間のうちに6回のトレーニングを終えた。研究では、運動前後に太ももの筋肉と上腕の筋肉で糖の取り込みを測定している。[17]

インスリンの働きを調べる条件で測った全身の糖の取り込みは、両群とも25%増えた。変化は太ももだけでなく、腕の前側と後ろ側の筋肉にも見られた。脚でこぐ運動を続けた後に、腕でも代謝に関する変化が測定されたわけだ。ただし、これは糖の利用についての結果である。[17]

腕でも変化したと聞くと、「使っていない腕も同じように疲れた」と読みたくなる。そこは飛び越せない。糖を取り込む働きと、筋肉痛、力の出しやすさ、回復までの時間は同じ指標ではない。この試験の数字を、全身の疲れが増えた割合として示すのは誤りである。[17]

同じ試験では、太ももの前側を構成する筋肉のうち、大腿直筋では全力運動群の糖の取り込みの改善が中強度群を上回った。一方、ほかの太ももの前側の筋肉では運動形式による違いは見られなかった。「脚」というひとまとまりの呼び方の中でも、測る筋肉によって結果がそろうとは限らない。主に働く筋肉では脂肪酸の取り込みの増加も測定されたが、これも筋肉痛の程度を測った結果とは区別する必要がある。[17]

予定表では脚の日、腕の日と色を分けられる。研究では、運動した場所とは別の場所でも変化を測ることがある。体はカレンダーの色分けを提出してくれない。ただし、このことを理由に部位分けを無意味とする必要もない。読み取るべきなのは、主に動かした部位という情報だけでは、他の指標まで決められないという境界である。[17]

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「軽い」を何で判断するか決めておく

腕こぎの試験で測った心肺体力と筋力、自転車の試験で測った糖の取り込みは、どれも運動の変化を知るための指標だ。しかし、それぞれが測る内容は異なる。前者は継続後の体力や健康指標、後者は特定の検査条件での代謝を調べている。比較する前に、何の変化なのかをそろえる必要がある。[15][17]

この区別は日常でも使える。たとえば、昨日の脚を動かさずに済んだという感想と、今日の運動が楽だったという感想を別々に残す。次に予定している筋トレをいつも通り行えたかも、別の欄に書く。これは医学的な回復判定ではなく、自分の予定を見直すための記録の提案である。「腕に替えた」のひと言に、すべての評価を背負わせないためだ。

比較したい項目が変わると、答えも変わり得る。2型糖尿病のある120人(平均年齢60.2歳、女性46人)を対象とした32週間の在宅筋トレの無作為化試験では、腕立て伏せの回数や腕・脚の除脂肪量に改善が見られた一方、血糖管理の指標である糖化ヘモグロビンには効果が見られなかった。除脂肪量は脂肪以外の組織の量を表す指標で、筋力そのものではない。18〜39歳の健康な女性に同じ効果を見込めるかは、この試験だけでは判断できない。[14]

腕立て伏せの回数の群間差は3.6回、95%信頼区間は0.8〜6.4回だった。一方、糖化ヘモグロビンの差は−0.4 mmol/mol、95%信頼区間は−3.26〜2.47で、差がない場合を含んだ。ある項目が改善したことを、別の項目も改善した証拠にしない読み方が必要になる。翌日の回復を考えるときも、この区別を保ちたい。[14]

セット間の休憩と、翌日の休息は別の問い

「休むほど筋肉が育つ」という話を、翌日の予定に結びつけたくなることがある。だが、筋トレのセットとセットの間に置く休憩と、筋トレの翌日に別の運動を入れることは、時間の単位も比較する条件も異なる。休息という共通語だけでは、研究結果を移し替えられない。[8]

健康な成人を対象とした無作為化研究を集めた系統的レビューとメタ分析では、9研究の19の測定結果を使い、セット間の休憩時間と筋肥大の関係を検討した。筋肥大は筋肉が大きくなる変化を指す。分析は太もも、腕、全身を分けて行われ、長めの休憩に小さな利点がある可能性を示したが、結果のばらつきも大きかった。健康な成人全体を扱う分析なので、18〜39歳の女性に限った効果として受け取れるかは分けて考える必要がある。[8]

腕の比較の効果量は0.13で、95%信用区間は−0.27〜0.51だった。効果量は異なる研究の変化を比較しやすくした尺度であり、腕が何センチ太くなるかを表す数字ではない。推定の幅が差のない位置をまたいでいるので、長く休めば誰でも大きな差が出る、という話にはならない。[8]

太ももの比較でも効果量は0.17、95%信用区間は−0.13〜0.43と、長めの休憩に傾く推定だったが幅があった。全身の推定は−0.08、95%信用区間は−0.45〜0.29で、中心はわずかに短い休憩に傾いた。腕、太もも、全身を並べると、休憩時間についても単純な勝敗にはならない。研究をまとめた分析だからこそ、中心の数字だけでなく推定の幅も一緒に見る意味がある。[8]

著者らは60秒を超えるセット間休憩に小さな筋肥大利点を示唆し、90秒を超える範囲では目立つ違いを検出しなかった。これはセット間の話である。翌日に腕のHIITを何分入れてよいか、筋肉痛がある日にどの種目を選ぶかという規則へ変換することはできない。短い休憩の研究から長い休息の正解を作らないことも、科学を使う手順の一部だ。[8]

数字で読む、部位と時間の違い

腕こぎの比較試験は完了者7人、6週間。翌日の回復ではなく継続後の変化を調べた。[15]

脚の自転車運動の試験は26人、2週間に6回。糖の取り込みは脚と腕で測定された。[17]

全身の糖の取り込みは両運動群で25%増加。疲労の減少率ではない。[17]

在宅筋トレの腕立て伏せの群間差は3.6回、95%信頼区間0.8〜6.4回。対象は2型糖尿病のある人だった。[14]

セット間休憩の分析は9研究。翌日の運動予定を比較した数字ではない。[8]

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宮川涼 Founder

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