筋トレの増量に間食を足すなら、多いほど筋肉が育つのか。小さい余剰と大きい余剰を比べた試験を軸に、体重・筋肉・脂肪の増え方を分けて読む。たんぱく質を足した研究、食べる時間を絞った研究も照合し、食品ランキングに頼らず、普段の食事と練習の記録から間食の役割を考える。
筋トレの記録は書き終えたのに、夕食のあとで補食をもう少し足すか迷う。筋トレを始めてからは「増量用」の文字が気になる。食べ足せば筋肉の材料になる気がするし、食べなければ今日の練習が無駄になる気もする。売り場で迷っているのは味ではなく、追加する理由だ。
先に答えると、体重を速く増やすことと、筋肉を速く育てることは別だ。筋トレ経験者を対象に余剰の大きさを比べた試験では、速い体重増加は主に脂肪の増加と結びつき、筋肉の厚さへの上乗せは限られていた。[11] この筋トレ経験者の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめず、追加量を考える材料として読む。間食は筋肉への直通便ではない。
既存記事「体脂肪率を増やす食事は脂質を足す?女性の過剰摂取試験で読む蓄積の違い」には、余分な栄養の種類による蓄積の話を譲る。ここで考えるのは、筋トレを続ける人が増量目的で補食を足す場面だ。おすすめを品名だけで決めず、追加する量と、その後に何が変わるかを研究から確かめたい。

余剰を大きくすると、筋肉より先に何が増えるか
エネルギー余剰とは、必要とする量を上回ってエネルギーを摂る状態を指す。筋肉を大きくするために食事量を増やす考え方はあるが、筋肥大に必要な余剰の適量は確定していない。筋肥大とは筋肉が大きくなることで、その程度は練習内容だけでなく、経験、性別、栄養状態などにも左右される。これらを整理したレビューは、万人共通の追加量を置く難しさを指摘している。[4]
そこで重要なのが、維持量と、維持量より5%多い条件、15%多い条件を比べた試験だ。筋トレ経験者21人を無作為に割り付け、週3日の筋トレを8週間行い、17人が完了した。研究者は体重だけでなく、皮下脂肪の厚さ、腕や太ももの筋肉の厚さ、スクワットとベンチプレスの最大挙上重量を調べた。[11] 18〜39歳の女性の補食量は、この筋トレ経験者の比較だけでは決められない。大きくなった体を、重さだけで評価しなかった点がこの問いに合う。
筋肉の厚さとスクワットの最大挙上重量では、群分けによる違いを支持する証拠は得られなかった。一方、大きい余剰の群では、維持量の群より皮下脂肪の厚さが増えたことを支持する証拠があった。体重変化と皮下脂肪の変化の関係を調べた解析でも、体重増加が大きいほど皮下脂肪の増加が大きい傾向が示された。[11]
ただし「追加しても何も変わらない」ではない。大きい余剰の群は、ベンチプレスの最大挙上重量ではほかの群より伸びたことを支持する証拠があった。上腕二頭筋の厚さと体重増加の関係にも、弱いながら肯定的な証拠が見られた。[11] 筋力と筋肉の厚さ、腕と脚を同じ結果として扱うと、この違いを取りこぼす。
研究者の結論は、この試験条件では速い体重増加が主に脂肪の増加速度を高めた、というものだ。[11] 大きな間食を追加する理由を「体重が早く動くから」だけに置くと、筋肉を育てたいという目的からずれる可能性がある。体脂肪が増えること自体を失敗と呼ぶ必要はない。ただ、筋肉の増加を期待しているなら、増えた重さの中身を区別したい。
この試験の5%と15%は、比較のための条件である。[11] 自分に合う量を計算する公式ではない。夕食をきちんと食べた日の追加と、忙しくて昼食が十分でなかった日の補食は、同じ売り場で買っても目的が違う。まず「食事の不足を埋めたいのか、今の食事にさらに上乗せしたいのか」を言葉にすると、間食の役割を考えやすい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
たんぱく質入りなら、大きな追加も筋肉に変わるか
たんぱく質は筋肉づくりの文脈で欠かせない。たんぱく質とアミノ酸の役割を扱った研究整理では、たんぱく質の摂取後に筋肉のたんぱく質合成が高まり、分解が抑えられること、補給が筋トレによる筋量・筋力の増加を後押ししうることが述べられている。[7] ここでいう合成は、新しいたんぱく質をつくる働きだ。
しかし、食後の合成反応と、長く続けた後の筋肉の増加は同じ指標ではない。同じ研究整理でも、長期の結果を考える際には摂取量、供給源、タイミングを含む条件を考慮すべきだとしている。[7] 「筋肉の材料を含む」という説明だけでは、間食をどこまでも大きくしてよい根拠にはならない。
筋トレ経験のある男性21人を対象にした試験では、たんぱく質と糖質の補給群と、糖質の補給群を比べ、8週間の筋トレと過剰摂取を行った。たんぱく質と糖質の群には、追加の補給として毎日たんぱく質94gと糖質196g、糖質だけの群には糖質312gを与えた。[6] 18〜39歳の女性に同じ補給量と結果をそのまま当てはめる根拠にはならない。これは普段のおやつを少し替える試験ではなく、大きな補給を伴う無作為化比較である。
結果は、たんぱく質と糖質の組み合わせが、糖質だけより筋量や筋力を増やすうえで優れているとは示されなかった。両群で体重、体水分、脂肪量は増え、筋量と筋力の増加も群間で違わなかった。[6] たんぱく質を多く含めば、過剰に足した分が選択的に筋肉へ回る、という期待はこの試験では支持されない。
一方で、この結果を「たんぱく質はいらない」と読むのも誤りだ。比較したのは、筋トレをしている男性が大きな追加補給を受ける条件での、補給内容の違いである。[6] 普段の摂取が足りない人に必要なものを補う話と、すでに摂っている人がさらに増やす話は、分けて扱う必要がある。[7]
食品を選ぶ場面なら、袋の表のたんぱく質表示だけで決めず、普段の食事と合わせた追加として見る、という使い方になる。「入っている」と「今の自分に足りないものを補える」は別の問いだ。研究の補給量を買い物の目標にする必要はない。むしろ大きな量でも優位性が出なかった比較から、量そのものを安心材料にしない姿勢を学べる。[6]
体重が増えたとき、記録で混ぜたくないもの
増量中は体重の数字がいちばん手軽な成績表になる。だが、筋トレと補給の試験では、体重だけでなく体水分や脂肪量も変化していた。[6] 体重計の表示が動いたという事実と、筋肉が大きくなったという解釈の間には距離がある。表示は正直でも、こちらの読み方まで面倒は見てくれない。
筋トレ経験のある男性を対象に、監督下の筋トレと高エネルギーのたんぱく質・糖質補給を6週間行った予備的研究もある。28人が参加し、21人が完了した。全身の除脂肪量は平均4.8%増え、肘を曲げる筋肉の厚さは平均4.5%、膝を伸ばす筋肉の厚さは平均7.4%増加した。[10] この男性の平均変化を18〜39歳の女性の見込み量にそのまま当てはめることはできない。除脂肪量とは、脂肪を除いた体の重さを表す指標である。[4]
この研究では、体重の増える速さから体組成や筋力などの変化を精密に予測することは概して難しかった。体重増加と除脂肪量の増加を結ぶ推定には、意味のある個人差があった。[10] 平均では増えていても、その平均を目の前の人の予定表として使うことはできない。
また、体全体の除脂肪量と、腕や脚の筋肉の厚さは、測っている範囲が違う。この研究では、全身の除脂肪量と局所の筋肉の厚さの両方を評価している。[10] 家庭で見る体重の推移、練習中に扱う重さ、研究で測る筋肉の厚さを、すべて「増量が成功したか」という同じ数字に押し込めない方がよい。
筋肉を増やしたいなら、食べた記録の横に、どの練習をどう続けたかも置きたい。余剰量の比較試験で筋肉の厚さと筋力の結果が一致しなかったことは、結果の見方を複数持つ理由になる。[11] 体重が思ったほど動かない日も、体重だけで練習まで採点しない。反対に体重が動いた日も、それだけで間食をさらに足す理由にはしない。
予備的研究で、除脂肪量の平均増加と筋肉の厚さの平均増加に幅があったことにも注目したい。肘を曲げる筋肉の厚さの変化は平均4.5%に対して標準偏差5.9%、膝を伸ばす筋肉では平均7.4%に対して標準偏差8.4%だった。[10] 標準偏差は参加者の結果のばらつきを示す。平均の数値だけを並べるより、結果が一様ではなかったことが見えてくる。
これは、間食を選ぶときにも役立つ読み方だ。誰かが同じ補給で変化したとしても、その変化を自分の予告として扱わない。研究でさえ体重の増加速度から結果を精密に予測するのは難しかった。[10] 食品を替えるたびに期待値を上げるより、練習と食事の条件を一緒に記録して、何を変えたかが後から分かる形にしておきたい。
数字で読む増量の間食
5%と15%:維持量と比べた余剰の条件。万人向けの推奨量ではない。[11]
17人:余剰の大きさを比較した試験の完了者。小規模な比較として読む。[11]
8週間:たんぱく質・糖質と糖質の追加補給を比較した筋トレ試験の期間。[6]
4.8%:予備的研究での除脂肪量の平均増加。個人の予測値ではない。[10]
12週間:食べる時間を制限した増量期の無作為化比較試験の期間。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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