連載「老化と運動」全10回の第9回です。

ここまでの8回は、ほとんどが中間指標の話でした。メチル化年齢、VO2max、運動単位、ミトコンドリアの呼吸、テロメア、炎症マーカー、骨密度、認知機能の検査得点——どれも「本当に知りたいこと」の手前にある数字です。この回だけは違います。扱うのは死亡そのもの、つまり代理を経由しない転帰です。

結論から書きます。身体活動量と死亡率の関係は、なだらかな直線ではありません。まったく動いていない人が少し動くようになるところで下がり方が最も急で、量が増えるにつれて曲線は寝ていきます。高齢者では、比較的少ない量で頭打ちになります。

同時に、この回で扱うのはほぼすべて観察研究です。運動量を割り付けて何十年も追う試験は存在しません。したがって、逆因果・残余交絡・測定誤差をどう見積もるかが、数字そのものと同じくらい重要になります。推奨量そのものの話は別の記事に、筋力トレーニングと死亡率は別の記事にまとめてあります。

老化と運動 第9回 運動量と死亡率用量反応の疫学|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

何をもって「運動量」とするか

この分野の研究は、測り方で大きく2つに分かれます。ひとつは質問票による自己申告。もうひとつは加速度計による客観的な測定です。自己申告は大規模な集団で安価に集められる代わりに、思い出しの誤りと、望ましく答えたいという傾向が入ります。加速度計は正確ですが、装着期間は数日から7日ほどで、その数日がその人の普段を代表しているかという別の問題を抱えます。

単位も揃っていません。よく使われるのはMET時(メッツ時)で、安静時の何倍のエネルギーを使う活動を何時間行ったかを表します。早歩きはおよそ3〜4メッツですから、週に150分の早歩きはおよそ7.5〜10メッツ時に相当します。歩数を使う研究もあり、これは直感的ですが、水泳や自転車のような活動を拾いません。数字を比べるときは、単位と測り方がそろっているかを最初に確認する必要があります。

自己申告にもとづく大規模な統合

Arem H, Moore SC, Patel A, et al. Leisure time physical activity and mortality: a detailed pooled analysis of the dose-response relationship. JAMA Internal Medicine. 2015;175(6):959-967.

米国と欧州の6つのコホートを統合し、661,137名(年齢の中央値62歳、範囲21〜98歳)、死亡116,686件、追跡期間の中央値14.2年を解析しました。余暇の身体活動がまったくない人と比べると、推奨量である週7.5メッツ時に届かない人でも死亡リスクは20%低く(ハザード比 0.80、95%信頼区間 0.78〜0.82)、推奨量の1〜2倍で31%低く(0.69、0.67〜0.70)、2〜3倍で37%低い(0.63、0.62〜0.65)という結果でした。

注目すべきはここからです。利益の上限は推奨量の3〜5倍あたりに現れました(0.61、0.59〜0.62)。しかし推奨量そのものと比べた追加の利益はわずかで、31%に対して39%でした。推奨量の10倍以上でも有害という証拠は見られません(0.69、0.59〜0.78)。著者らの結論は明快です——推奨量を満たすことで、長寿の利益のほぼ最大値が得られる。

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加速度計で測ると、曲線はもっと急になる

Ekelund U, Tarp J, Steene-Johannessen J, et al. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. BMJ. 2019;366:l4570.

加速度計で測定した8件の研究の個人データを統合しました。36,383名、平均年齢62.6歳、女性が72.8%、追跡期間の中央値5.8年(範囲3.0〜14.5年)、死亡2,149件(5.9%)。総身体活動量の少ない四分位を基準にすると、ハザード比は第2四分位で0.48(95%信頼区間 0.43〜0.54)、第3四分位で0.34(0.26〜0.45)、最も活動的な第4四分位で0.27(0.23〜0.32)でした。

この下がり方は、自己申告の研究より急です。理由は単純で、自己申告には誤差が入り、その誤差が関連を薄めるからです。そして重要なのは、強度を問わずどの活動でもリスクが下がっていたことです。軽い身体活動でも0.60、0.44、0.38と下がり、中〜高強度では0.64、0.55、0.52でした。「意味があるのは息が上がる運動だけ」という前提は、このデータからは支持されません。

歩数という、分かりやすい指標

1日1万歩という目標は広く知られていますが、科学的な裏づけは限られていました。この点を検証した統合があります。

Paluch AE, Bajpai S, Bassett DR, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. The Lancet Public Health. 2022;7(3):e219-e228.

15件の研究・47,471名の成人、死亡3,013件、追跡期間の中央値7.1年を解析しました。四分位の歩数の中央値は、それぞれ1日3,553歩、5,801歩、7,842歩、10,901歩。最も少ない群と比べたハザード比は、第2四分位で0.60(95%信頼区間 0.51〜0.71)、第3四分位で0.55(0.49〜0.62)、第4四分位で0.47(0.39〜0.57)でした。

曲線の形が、この研究の要点です。60歳以上では1日6,000〜8,000歩まで、60歳未満では8,000〜10,000歩までリスクが下がり続け、それ以上では平坦になりました。つまり、高齢者ほど少ない歩数で頭打ちになります。歩く速さについては、1日の歩数で調整すると関連はかなり弱まりました。

高齢女性に限った研究も同じ方向です。

Lee IM, Shiroma EJ, Kamada M, Bassett DR, Matthews CE, Buring JE. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Internal Medicine. 2019;179(8):1105-1112.

平均年齢72.0歳(標準偏差5.7)の女性16,741名を平均4.3年追跡し、504名が死亡しました。平均歩数は1日5,499歩。四分位の中央値は2,718歩、4,363歩、5,905歩、8,442歩で、ハザード比は0.59(95%信頼区間 0.47〜0.75)、0.54(0.41〜0.72)、0.42(0.30〜0.60)でした。スプライン解析では、1日およそ7,500歩までリスクが下がり続け、その後は平坦になりました。歩く速さの指標は、歩数で調整するとほとんどが有意でなくなっています。

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高齢者に限ると、どこまで必要か

Fukushima N, Kikuchi H, Sato H, et al. Dose-Response Relationship of Physical Activity With All-Cause Mortality Among Older Adults: An Umbrella Review. Journal of the American Medical Directors Association. 2024;25(3):417-430.

60歳以上に焦点を当てた包括的レビューです。条件を満たした16件の系統的レビューはいずれも、週7.5〜15.0メッツ時——おおむね各国の推奨量の水準——で死亡リスクが大きく下がることを示していました(全死因で約19%〜30%、心血管疾患で25%〜34%の低下)。推奨量を超える週15.0〜22.5メッツ時では、低下幅はさらに大きくなりました(それぞれ35%〜37%、38%〜40%)。著者らは、現行の国際的な推奨を超える水準が高齢者に利益をもたらす可能性があると述べています。

筋力トレーニングの用量反応は形が違う

有酸素性の活動とは別に、筋力トレーニングについても検討が進んでいます。モンマ(Momma)らは、前向きコホート研究16件を統合し、筋を鍛える活動が有酸素性の活動とは独立に、全死因死亡・心血管疾患・全がん・糖尿病・肺がんのリスクを10%〜17%低くすることを示しました。

形が興味深いところです。全死因死亡・心血管疾患・全がんではJ字型の関連が見られ、リスクの低下が最大になるのは週30〜60分程度でした(約10%〜20%の低下)。糖尿病では週60分まで大きく下がるL字型でした。著者らは、それ以上の量が全死因死亡にどう影響するかは、このJ字型の関連を踏まえると不明確だと結論しています。多ければ多いほどよいという形ではないということです。

指標利得が最も大きいところ頭打ちの目安
余暇の身体活動(自己申告)まったくない人が推奨量に届くまで推奨量の3〜5倍
総身体活動量(加速度計)最も不活動な四分位からの脱出上位四分位で0.27
歩数(60歳以上)少ない歩数からの増加1日6,000〜8,000歩
歩数(高齢女性)同上1日およそ7,500歩
筋を鍛える活動まったくしない人が始めるところ週30〜60分(J字型)

観察研究であることの限界

ここまでの数字はすべて観察研究に由来します。最大の懸念は逆因果です。病気が進行しつつある人は活動量が落ち、その後に亡くなります。この順序を「活動量が少ないと死亡しやすい」と読み違えると、効果を大きく見積もることになります。

Lee DH, Rezende LFM, Ferrari G, et al. Physical activity and all-cause and cause-specific mortality: assessing the impact of reverse causation and measurement error in two large prospective cohorts. European Journal of Epidemiology. 2021;36(3):275-285.

2つの大規模コホートの133,819名、延べ320万人年、死亡47,273件を使い、解析の方法を変えて比較した研究です。週10メッツ時あたりの全死因死亡のハザード比は、開始時の1回の測定を使うと0.95(95%信頼区間 0.94〜0.96)、最も新しい測定を使うと0.78(0.77〜0.79)、繰り返し測定の累積平均を使うと0.87(0.86〜0.88)でした。最も新しい測定を使った解析で関連が最も強く出る——これこそ逆因果の影響が大きいことの現れです。

実際、活動量の測定から2年の間隔を置いて死亡を数え始めると、見かけの逆因果はかなり減りました(最も新しい測定で0.85、0.84〜0.86、累積平均で0.90、0.89〜0.91)。4年から12年の間隔をさらに置いても、変化はわずかでした。用量反応の形も方法で変わります。開始時または最も新しい測定ではJ字型かU字型——つまり動きすぎると不利に見える形——になる一方、累積平均では単調に下がる形になりました。「動きすぎは体に悪い」という主張の一部は、解析方法が作り出した形である可能性があります。

残余交絡も残ります。よく動く人は、喫煙が少なく、食事が違い、収入と教育歴が高く、社会的なつながりも多い傾向があります。統計的な調整は測れた変数についてしか行えません。そして測定誤差は、多くの場合、関連を弱める方向に働きます。逆因果は効果を大きく見せ、測定誤差は小さく見せる。両方が同時に働いているので、真の値がどちら側にあるかは一概に言えません。

もうひとつ、比較の相手にも注意が要ります。用量反応の研究では「まったく動かない群」が基準になることが多いのですが、この群には、動けない理由がある人が相当数含まれます。関節の痛み、心肺の病気、認知機能の低下、介護の負担、経済的な制約——いずれも死亡率と直接結びつく要因です。基準群がそもそも不利な集団であれば、そこからの差は運動の効果を超えた大きさになります。研究がどれだけ丁寧に調整しても、この構造そのものは消えません。

それでも、これらの研究に価値があることは変わりません。第8回で見た認知機能の試験と違い、ここでの転帰は検査の得点ではなく死亡そのものです。測定に主観が入らず、見落としもほとんどありません。証拠の弱さは設計に由来するのであって、測っているものの曖昧さに由来するのではない——この違いは大きいと思います。

相対リスクと絶対リスク、そして中間指標

「リスクが30%下がる」という表現は強く響きますが、これは相対的な減少です。もとのリスクが小さければ、減る絶対量も小さくなります。寿命の年数で表した研究を見ると、感覚がつかみやすくなります。周(Zhou)らは、333,865名(平均年齢56歳)を中央値13.8年追跡し、19,789件の死亡を解析しました。歩行を週90〜720分行っている群では死亡率が27%〜31%低く、平均余命はおよそ6年長いという推定でした。中強度の活動を週151〜300分行う群のハザード比は0.80(95%信頼区間 0.75〜0.85)で、追加の余命は3.40〜3.42年。高強度を週76〜150分行う群では0.78(0.75〜0.82)、2.61年(2.33〜2.89)です。

この研究には、この連載にとって重要な副次的な所見があります。中強度・高強度の活動と死亡リスクの関連のうち、白血球テロメア長で説明できた割合はおよそ1%にとどまりました(いずれも P < 0.001)。第5回で扱った代理指標が、実際の転帰のほとんどを媒介していなかったということです。

ここに、この連載の背骨がもう一度現れます。運動が死亡率を下げるという関連は、テロメアやメチル化年齢や炎症マーカーを経由して説明されているわけではありません。中間指標は、機序を探る手がかりではあっても、利益の大きさを測る物差しではないのです。次回はこの視点を、世の中に流通している「アンチエイジング」の主張の読み方へ広げます。

次回予告

最終回は「総括——『アンチエイジング』の主張をどう読むか」です。これまでの9回で使ってきた読み方を1枚にまとめ、検査サービス・栄養補助食品・美容医療の主張に出会ったときに何を確認すればよいかを整理します。第1回から第9回を「転帰まで示されたもの」「中間指標どまりのもの」「まだ分からないもの」に仕分けます。

この連載の全10回

  1. 第1回|老化とは何か——生物学的年齢という考え方
  2. 第2回|有酸素能力の低下——運動で取り戻せる幅
  3. 第3回|筋はなぜ減るのか——加齢性筋減少の機序
  4. 第4回|ミトコンドリアと運動
  5. 第5回|テロメアと運動——期待と実測のずれ
  6. 第6回|慢性微小炎症——インフラメイジング
  7. 第7回|骨と関節の加齢——何が可逆で何が不可逆か
  8. 第8回|脳の加齢と運動——認知機能はどこまで守れるか
  9. 第9回|運動量と死亡率——用量反応の疫学(この記事)
  10. 第10回|総括——「アンチエイジング」の主張をどう読むか

出典

  1. Arem H, Moore SC, Patel A, et al. Leisure time physical activity and mortality: a detailed pooled analysis of the dose-response relationship. JAMA Internal Medicine. 2015;175(6):959-967.
  2. Ekelund U, Tarp J, Steene-Johannessen J, et al. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. BMJ. 2019;366:l4570.
  3. Paluch AE, Bajpai S, Bassett DR, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. The Lancet Public Health. 2022;7(3):e219-e228.
  4. Lee IM, Shiroma EJ, Kamada M, Bassett DR, Matthews CE, Buring JE. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Internal Medicine. 2019;179(8):1105-1112.
  5. Fukushima N, Kikuchi H, Sato H, et al. Dose-Response Relationship of Physical Activity With All-Cause Mortality Among Older Adults: An Umbrella Review. Journal of the American Medical Directors Association. 2024;25(3):417-430.
  6. Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(13):755-763.
  7. Lee DH, Rezende LFM, Ferrari G, et al. Physical activity and all-cause and cause-specific mortality: assessing the impact of reverse causation and measurement error in two large prospective cohorts. European Journal of Epidemiology. 2021;36(3):275-285.
  8. Zhou HH, Jin B, Liao Y, et al. Associations of Various Physical Activities With Mortality and Life Expectancy Are Mediated by Telomere Length. Journal of the American Medical Directors Association. 2024;25(3):431-438.e15.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで紹介した関連はいずれも観察研究にもとづくもので、個人が同じだけリスクを下げられることを保証するものではありません。胸の痛み、強い息切れ、めまい、失神がある場合は運動を中止して医療機関にご相談ください。持病のある方、薬を服用中の方、高齢の方が新しい運動を始めるときや量を増やすときは、開始前に主治医に相談してください。

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