貧乏ゆすりはなぜ起こる?悪い癖と言われる動きが、3時間座った脚の血管を守った実験

貧乏ゆすりはなぜ起こるのか。小さな動きが覚醒や刺激で変わるという総説、40分の講義で時間とともに増えた観察、片脚だけ揺らして3時間座った11人の血管の試験を読む。かかとの上げ下げでは脳や大動脈に届かなかった試験もあり、効く範囲を分けて確かめる。

貧乏ゆすりは、行儀の悪い癖として叱られることが多い。ところが論文を読むと、貧乏ゆすりは、人間がもともと絶えずくり返している小さな動きの仲間に見えてくる。まばたきや姿勢の直しといった動きの回数は、覚醒の度合いや周りの刺激で変わる[12]。40分の講義の動画を見せた研究では、そわそわした動き全体が、時間がたつほど増えた[2]。

なぜ起こるのかの答えは、まだ1つに決まっていない。講義の研究の著者らは、注意が落ちたからというより、ストレスに関わる動きではないかという説明を出している[2]。不安症の特徴の一つとしても、そわそわした動きが挙げられている[17]。

そして「悪い癖」の話には、意外な裏がある。若い健康な11人に3時間座ってもらい、片脚だけ1分揺らして4分止めるのをくり返すと、じっとしていた脚では膝の裏の動脈の反応が落ちたのに、揺らした脚では落ちなかった[1]。ただし守られたのは脚の血管で、かかとの上げ下げという別の簡単な動きでは、脳の働きや大動脈の硬さまでは守れなかった試験もある[8][9]。効く範囲を分けて読む必要がある。

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人は一日中、小さく動いている

2019年の総説は、動物も人も、まばたき、ひげの動き、姿勢の直しといった小さな自発の動きを絶えずくり返していると書く[12]。総説はこれらを「フィジェット(そわそわした動き)」の仲間として扱っていて、貧乏ゆすりもこの仲間と読める。

こうした動きには、脳の感覚と運動の領域の活動の変化が伴う[12]。動きの頻度は時間とともに変わり、感覚の刺激、覚醒の度合い、病気の状態に影響される[12]。外からの刺激に合わせて動きのリズムが引き込まれることもある[12]。

研究者が困っているのは、この動きが脳の画像に映り込むことだ。小さな動きは脳の左右に広がる活動を起こし、脳の画像の研究で見える領域どうしのつながりに混じり込む[12]。それなのに、ほとんど記録されていない[12]。著者らは、覚醒や病気によるこうした動きの違いが脳の活動を「汚染」し、見かけの違いを生むとして、実験の間に注意深く記録するべきだと主張する[12]。

脳を調べる実験では、貧乏ゆすりは雑音の一つとして消す対象になる。叱られる理由が、教室と研究室で少し違うだけである。

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40分の講義で、そわそわした動きは時間とともに増えた

では、どんなときに増えるのか。2013年の研究は、参加者に40分の講義の動画を見せ、その様子を撮影した[2]。5分ごとに、どれだけ注意を向けているかを本人に答えてもらい、講義のあとで内容の記憶を調べた[2]。そわそわした動きは、録画から数えた[2]。

結果は3つある。講義への注意と内容の記憶は、時間がたつほど下がった[2]。予測どおり、そわそわした動きは時間とともに増えた[2]。そして、そわそわした動きと記憶の関係は、注意の分を式に入れても有意に残った[2]。

著者らはここから、そわそわした動きは本人の注意とは別に、講義の内容の記憶に独自に関わっていると読み、注意ではなくストレスに基づく新しい説明を提案している[2]。心が講義からそれていくのとは別の筋で、動きが出てくるという見方である。

講義のあとの夕方、ノートを見返して何も覚えていないと気づく。そのとき机の下で脚が揺れていたなら、注意だけの問題ではなかったのかもしれない。もっとも、これは動画の講義の研究で、提案された説明もまだ仮説の段階にある。

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不安の強い状態の中の、落ち着かない動き

落ち着かない動きは、病気の説明にも出てくる。コクランの系統的レビューは、不安症を、長く続く心配、緊張、神経の高ぶり、そわそわした動き、自律神経の過活動の症状で特徴づけている[17]。

このレビューは、瞑想が覚醒の状態を下げ、不安の症状を和らげうるという見込みから、無作為化試験を集めた[17]。条件に合ったのは2本だけで、どちらも別の瞑想やリラクセーション、バイオフィードバックと比べる形だった[17]。超越瞑想は、ほかのリラクセーションの方法と同じくらい不安の症状を減らした[17]。もう1本では、クンダリーニ・ヨガは強迫症の尺度で、リラクセーションと瞑想に比べて有意な差を示さなかった[17]。脱落の割合は33〜44%と高く、著者らは、研究の数が少なすぎて瞑想の効果について結論は出せないと書いた[17]。

ヨガの店のサイトで、ヨガに差が出なかった試験を紹介するのも妙な気分だが、結果は結果である。

もちろん、脚が揺れるから不安症だということにはならない。レビューが挙げたのは、不安症と診断された人の特徴の一つとしてである[17]。動きが急に増え、不安や落ち着かなさで暮らしが回らないなら、医師に相談する話になる。

3時間座ると、膝の裏の動脈の広がりが落ちた

ここからが血流の話である。長く座ると、脚の血管の内側の膜(内皮)の働きが落ちる[1]。主な理由と考えられているのは、血流が血管の内側をこする力(ずり応力)が長く減ることで、座っている間に脚を温めてこの力の低下を防ぐと、膝の裏の動脈の働きの低下は消える[1]。

2016年の試験は、温める代わりに脚を動かしたらどうなるかを確かめた[1]。若い健康な11人に3時間座ってもらい、片脚だけを1分揺らして4分止めるのをくり返し、もう片方の脚は最後までじっとさせて、その人自身の比べる相手にした[1]。座る前とあとで、左右の膝の裏の動脈が血流の増加にどれだけ広がるか(血流依存性の血管の拡張)を測った[1]。

揺らした直後、膝の裏の動脈の血流とずり速度ははっきり増えた(揺らす前33.7、直後222.7、単位は毎秒)[1]。この増加は、その後の60秒で小さくなっていった[1]。じっとしていた脚には影響がなく、座っている間ずっと血流とずり速度が下がっていた(座る前71.7から3時間後20.2)[1]。

3時間後、じっとしていた脚では、動脈の広がりの反応が4.5%から1.6%に落ちた(P=0.039)[1]。揺らした脚では、3.7%から6.6%に上がった(P=0.014)[1]。著者らの結論は、長く座ることで起きる脚の内皮の働きの低下は、座ったままの少しの脚の動きで防げる、おそらく血管のずり応力が間をおいて上がることによる、というものだ[1]。

自分の片脚が、自分の比べる相手になる。同じ人、同じ3時間で、違うのは脚が揺れたかどうかだけだ。叱られてきた動きが、この組み立てでは主役になる。

ふくらはぎの酸素と、食後の血糖でも差が出た

筋肉の側も調べられている。2025年の無作為化クロスオーバー試験は、健康な若い男性10人(平均21.2歳)に、3時間あお向けに寝る、3時間座る、3時間座りながら片方の下腿を揺らす、の3つの条件を順に試してもらった[3]。ふくらはぎの筋肉がどれだけ酸素を取り込めるかを、近赤外線の光と血流を一時止める検査で測った[3]。

180分の時点で、酸素の取り込みは、座る条件と揺らす条件で、寝ている条件より低かった(座る4384.2、揺らす5281.5、寝る6517.4、単位は任意)[3]。それでも揺らす条件は、座る条件より有意に高かった[3]。下腿に血液や水分がたまる目安の変化率は、座る条件で12.9%と、寝る条件の−2.3%、揺らす条件の2.2%より高く、寝る条件と揺らす条件の差はなかった[3]。

著者らは、3時間座ることで毛細血管への酸素の供給が減り、毛細血管と筋肉の細胞の距離が広がって、酸素の取り込みが落ちたと結論し、脚を揺らすことがそれを和らげたと書く[3]。和らげたのであって、寝ている条件と同じに戻したわけではない。

食後の血糖を測った試験もある。肥満のある大人20人の無作為化クロスオーバー試験で、75gのブドウ糖を飲んだあと3時間座り、じっとしているか、両脚を2.5分止めて2.5分揺らすのをくり返した[5]。揺らすと、加速度計の数値、酸素の消費量、膝の裏の動脈の血流がいずれも増えた[5]。血糖とインスリンの曲線の下の面積はどちらも小さくなり、血流の増え方が大きい人ほど、最初の1時間の血糖の面積が小さかった(r=−0.569)[5]。著者らは、脚を揺らすことは簡単な軽い身体活動で、長く座る間に取り入れれば肥満のある人の食後の血糖の管理を改善できるとする[5]。

むくみの側から同じ動きを読んだ記事は、同じサイトの「むくみ解消は座ったまま小刻みに動いてもよい?貧乏ゆすりと脚の循環を読む」に譲る。ここでは血管と頭の働きの試験を続ける。

数字で読む貧乏ゆすり

  • 1分と4分:11人の試験の揺らし方。1分揺らして4分止めるのを3時間くり返した[1]
  • 33.7→222.7:揺らす前と直後の膝の裏の動脈のずり速度(毎秒)。60秒で小さくなった[1]
  • 1.6%と6.6%:3時間座ったあとの動脈の広がりの反応。じっとしていた脚と揺らした脚[1]
  • 40分:そわそわした動きが時間とともに増えた講義の動画の長さ[2]
  • r=−0.569:肥満のある20人で、揺らして増えた血流と、最初の1時間の血糖の面積の相関[5]
  • 2本:不安症の瞑想の系統的レビューで条件に合った試験の数。結論は出せなかった[17]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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