犬の涙はなぜ出る?飼い主と再会した犬の涙の量とオキシトシン、涙を付けた写真の研究を読む

犬の涙はなぜ出るのか。2022年の研究は、飼い主と再会した犬の涙の量が有意に増え、なじみの人との再会では有意に増えなかったと報告し、オキシトシンが仲立ちする可能性を示した。見つめ合いで動く飼い主のオキシトシン、涙を描き足した動物の写真の見え方も読む。

実家の玄関を開けると、犬が尾を振って飛びついてくる。しゃがんで顔をのぞくと、目が潤んでいる気がする。あれは本当に涙なのか、それとも会いたかったこちらの思い込みなのか。

答えの芯を先に書く。2022年に発表された研究は、犬の涙の量を、飼い主と再会する前と後で測った[1]。飼い主との再会では涙の量が有意に増え、よく知っているが飼い主ではない人との再会では、有意な増加は見られなかった[1]。さらに、オキシトシンの液を犬の目にさすと、涙の量はやはり増えた[1]。オキシトシンは脳の視床下部でつくられる物質で、動物の社会的な絆に重要な役割を果たすことが示されてきた[3][4]。著者らは、再会のときの涙の分泌をオキシトシンが仲立ちしているのかもしれない、と示唆している[1]。

再会で犬の目が潤むのは、少なくともこの研究の測り方では、気のせいではなかった。ただし、測ったのは涙の量で、犬がうれしいのか悲しいのかではない。人の側の見え方も調べられていて、人工の涙を付けた犬の写真は、付けない写真より好ましく評価された[1]。涙は、犬の目から人の心へ渡る合図なのかもしれない。ここで読むのは再会の場面の涙であって、犬の目の病気の話ではない。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

涙の量を、再会の前と後で測った

人では、気持ちが大きく高ぶるとき、涙の量が増える[1]。著者らは、動物で気持ちの高ぶりと涙の量の関係を調べた研究は、自分たちの知る限りこれまで無かったと書く[1]。そこで、涙の量を測るシルマー試験を使い、犬が飼い主と再会する前と後、そして、よく知っているが飼い主ではない人と再会する前と後で、涙の量を比べた[1]。

結果は相手によって分かれた。飼い主との再会では、涙の量が有意に増えた[1]。なじみの人との再会では、有意な増加は見られなかった[1]。顔見知りなら誰でもよい、というわけではないらしい。犬の涙は、相手を選んでいるように見える。

この研究は、学術誌に短い報告(レター)の形で載り、動画の要約も添えられた[1]。大きな結論を1本の報告から引き出すのは早い。それでも「再会で涙が増える」を、印象ではなく涙の量として測ったところに、この報告の値打ちがある。

近所の顔見知りが来たときではなく、出張から帰った自分のときにだけ目が潤む。そう感じる飼い主がいるなら、この研究はその感覚に、測った数字の側から近づいた一歩になる。もちろん、家の犬1匹ごとに同じことが起きるかは、この研究からは決められない。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

オキシトシンを目にさすと、涙が増えた

研究の2つ目の段は、仕組みの手がかりを探した。オキシトシンの液を犬の目に直接さすと、涙の量はやはり増えた[1]。著者らはこの結果から、飼い主との再会の涙をオキシトシンが仲立ちしているかもしれないと示唆した[1]。言い切ってはいない。

慎重さには理由がある。外からさしたオキシトシンで涙が増えることと、再会のときに体の中でオキシトシンが出て、それで涙が増えることは、同じ話ではない。後者はまだ推論の段にある、と私は読む。

オキシトシンそのものの説明は、2014年の研究が簡潔だ。哺乳類の視床下部でつくられる神経ペプチドで、人でも人以外の動物でも、多くの複雑な社会的行動と認知を調節する[4]。ただ、動物の研究は一夫一妻の哺乳類に集中しており、子をつくる関係の外の絆にもオキシトシンが関わるのかは分かっていなかった、と同じ研究は書く[4]。

2009年の研究も、似た問いから始まる。オキシトシンが動物の社会的な絆で重要な役割を果たすことは示されてきたが、種を越えた絆と関わるのかははっきりしない[3]。犬と人は、種を越えた絆のいちばん身近な例である。犬の涙の研究は、この問いの延長に置かれていると読める。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

涙を付けた写真を、人はどう見たか

2022年の研究は、もう1つの実験で、人の側を調べた[1]。人工の涙を付けた犬の写真と、付けない写真を人に見せて印象を評価してもらうと、人工の涙を付けた写真のほうに、より好ましい点が付いた[1]。著者らは、気持ちから出る涙が、人と犬の気持ちのつながりを促しうると結論している[1]。

涙と人の判断の関係は、別の研究室でも調べられている。2021年のオンラインの研究は、猫、犬、馬、チンパンジー、ハムスターの5種類の動物の顔写真に、画像の処理で涙を描き足した[8]。参加者は、さまざまなSNSと大学などから集めた403人で、涙の有無で顔を比べ、気持ちの強さ、攻撃性、親しみやすさの印象を答えた[8]。「動物への情熱」と呼ぶ隠れた変数も、いくつかの指標で測った[8]。

結果は、涙があると悲しみを読み取る参加者の数が多くなり、攻撃性は低く見られた[8]。構造方程式モデル(いくつもの変数の関係を一度に調べる統計)でも、動物の顔の涙は、気持ちの強さと親しみやすさを高く、攻撃性を低く見せる方向に有意に働いていた[8]。この研究室は以前、人の顔の涙が攻撃的に見える度合いを抑える働きを指摘しており、悲しみの読み取りについても、人の画像で得た以前の結果を支持したと書く[8]。

ハムスターの顔にまで涙を描き足した実験の結論は、単純だ。涙のある顔は、悲しげに、そして親しげに見える。2022年の研究で人工の涙の犬が好ましく評価されたことと、向きは合っている[1][8]。

再会の4分間、触れるか、声だけか、無視するか

涙は測っていないが、再会の場面で犬の体に何が起きるかを血液で見た研究がある[6]。2014年の研究は、雌のビーグル12匹を対象に、なじみの人が戻ってくる前、戻った瞬間、その後の行動とホルモンを測った[6]。犬は、前もって慣らしておいた部屋に、その人から残された[6]。

戻ってきたときの関わり方は3通りで、どの犬も全部を、偏りの出ない順で経験した[6]。1つ目は、落ち着いて親しげに、体に触れながら声もかける。2つ目は、声だけをかける。3つ目は対照で、犬を無視する[6]。関わりは4分間続き、その人は決められた仕方でふるまった[6]。血液を採り、オキシトシンとコルチゾール(ストレスに関わるホルモン)を調べた[6]。

人が戻ると、まずオキシトシンが上がった[6]。著者らは、人が部屋に入り、犬のいる場所へ歩いてくるのが見えたためだろうと考えている[6]。触れて声をかけた条件では、関わりが終わったあとも、オキシトシンが高いままだった[6]。コルチゾールは試験の間ずっと下がっていく曲線を描いたが、下がり方がいちばん大きかったのも、触れて声をかけた条件だった[6]。この条件の犬は、自分から人に体を寄せることが多く、口をなめる仕草も多かった[6]。声だけの条件では、まず尾を振り、声を出した[6]。

無視された犬はどうしたか。部屋にはいつも助手が1人いて、犬はそちらへ近づく行動を向け直したのかもしれない、と著者らは書く[6]。著者らの結論は、なじみの人がただ戻るだけでもオキシトシンには良い効果があり、体を寄せる行動も引き出すが、オキシトシンを高く保ち、再会後のコルチゾールを下げるには、体に触れることが必要だった、というものだ[6]。

数字で読む犬の涙と再会

  • 2022年: 飼い主と再会した犬の涙の量が有意に増えたと報告された年。なじみの人との再会では有意な増加なし[1]。
  • 12匹: 戻った人の関わり方を3通りに変えた実験のビーグル。すべて雌[6]。
  • 4分: その実験で、戻った人が決まった仕方で犬と関わった時間[6]。
  • 403人: 5種類の動物の顔に涙を描き足した写真を評価した、オンラインの参加者[8]。
  • 30分: 飼い主がふだん通り犬と過ごし、前後で飼い主の尿のオキシトシンを比べた時間。尿は直前と20分後に採った[3]。
  • 1時間: 6匹の犬にオキシトシンを静脈へ注射してから、尿のオキシトシンが最も高くなるまでの時間[5]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約