口の中の時間で食べる量は変わるか 一口が長く残る菓子と硬い食事で量が減った実験

一口を小さくすると食べる量は減るのか。一口の大きさを直接変えた試験は見当たらない一方、口に長くとどまる菓子や硬い食事で量が減った試験はそろう。一口の大きさの測り方、口から脳へ届く満腹の信号、14日間の食事試験、自分の速さの当てにくさまで論文で確かめる。

同じ研究者たちが、同じ二つの甘い物を使い、同じ問いを二度続けて立てた。一口ごとに長い間を置けば、満腹になるまでに食べる量は減るのか。一度目と二度目で、答えがそろわなかった。

使われたのは、チョコレートのカスタードにキャラメルソースをかけたものと、キャラメルのファッジである。前者は口の中にいる時間が短く、後者は長い。一度目の試験(40人)では、一口ごとの間を長くすると食べる量が42g少なかったが、その差はファッジを食べたときにしか出なかった。二度目の試験(20人)では、間の長さによる差は出ず、代わりにファッジのほうがカスタードより66g少なかった。[7]

食い違った二つの結果には、どちらにもファッジが絡んでいる。一度目は、間を置く工夫がファッジのときにだけ量を減らし、二度目はファッジそのものが量を減らした。一口が大きいか小さいかを気にする人にとって、これは見逃せない手がかりになる。量の差に絡んでいたのは、一口の大きさより、一口が口の中にどれだけ居続けるかのほうだったと読めるからだ。

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一口の大きさを変えた試験は、集めた論文に無かった

一口の大きさそのものを大きくしたり小さくしたりして、食べる量を比べた試験は、この記事のために集めた論文の中には無かった。題の問いに、正面から「減る」「減らない」と答える材料は、まだそろっていない。

それでも、一口の大きさは研究の中で測られている。44人にパスタの昼食を4回食べてもらった試験では、食事の様子を録画し、食事の時間と、一口の数、水を飲んだ回数を数えた。そこから、1分あたりに食べたグラム数、一口あたりのグラム数、食べ物と水を行き来した回数を出している。一口の大きさは、食べる速さと並ぶ「食べ方の指標」の一つとして扱われていた。[14]

食べ物の側から一口を見た総説もある。食べ物の形・食感・内部の構造が、摂取量と代謝にどう関わるかをまとめたもので、固形の食べ物では、厚み・硬さ・なめらかさといった食感に加え、大きさや形といった幾何学的な性質が、口の中での処理、食べる速さ、摂取量に影響すると整理している。食べ物の大きさは、口に入れる量であると同時に、口の中でどれだけ処理するかの入口でもあった。[17]

食べる速さそのものや、噛む回数を増やした試験は「よく噛んでゆっくり食べるダイエットの科学 食事量と体重は同じように変わるか」で、硬い昼食や濃い粥、パンの種類を変えた実験は「噛みごたえのある食感で1食の量は減る 硬い昼食と濃い粥、パンの種類を変えた実験」で扱った。ここでは、一口が口に入ってから飲み込まれるまでの時間と、そのあいだに口から送られる信号に絞る。

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口は、満腹を知らせる最初の場所である

満腹は胃がふくらんでから始まる、と考えがちだ。口の中の感覚と満腹の関係をまとめた総説は、口を消化管の最初の部分と位置づける。噛んでいるあいだに口から送られる感覚の信号は、口腔の感覚刺激(オロセンサリー・エクスポージャー)と呼ばれ、満腹と食べる量に関わる生理的な信号を引き起こすという。[19]

総説が確立した知見として挙げるのは、口の中で食べ物を感じている時間が長いほど、満腹が早く来ることだ。もう一つ、同じくらいおいしいと感じる食べ物どうしでも、甘さや塩気の強いほうが早く満腹になる。ここを「味を濃くすれば量が減る」と読みたくなるが、総説が述べているのは満腹の早さであり、砂糖や塩を足すことを勧めた話とは違う。[19]

信号の通り道の整理も興味深い。口からの信号は脳幹を通り、味や報酬に関わる脳の領域、たとえば側坐核や島皮質へ直接届くとされる。一方で、口の刺激がホルモンや胃からの信号を介して間接的に満腹を早めるという証拠は乏しい、と総説は書く。噛んでいるあいだに「満腹のホルモンが出るから」という説明は、少なくともこの総説の中では主役になっていない。[19]

総説は、口の中での処理や食べる速さのような、ほとんど自動で進む食べ方が、幼いころにどう形づくられるかを理解することが欠かせないとも述べる。食べ過ぎと肥満を防ぐ手立てを考えるうえでの基礎になる、という位置づけである。大人の一口の大きさも、意識する前から身についた動きだと考えれば、明日から急に変えにくいのは無理もない。[19]

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間を置くより、口に長くとどまることが量に絡んだ

冒頭の試験に戻る。研究者らは、口の中の感覚刺激の長さと食べる速さを別々に動かせるよう、2×2の組み合わせを作った。カスタードかファッジか(口の中にいる時間の短い食べ物か、長い食べ物か)と、一口ごとの休みが短いか長いか(速く食べるか、ゆっくり食べるか)である。参加者は、どの条件でも満腹になるまで食べた。[7]

一度目の試験の40人は平均24歳で、BMI(体重を身長の2乗で割った体格の指標)は平均22。二度目の20人は平均23歳で、BMIは平均23だった。どちらも若く、標準的な体格の人たちであり、肥満のある人や中高年で確かめた結果ではない。研究者らは、口の中の感覚刺激と食べる速さが、それぞれ別々に食べる量へ関わりうると結論している。[7]

二度目の試験では、食べている最中の血液も調べた。食べ始めて8分後のインスリンは、どの条件でも対照と比べて42〜65%上がった。食事の終わりには、ファッジを長い休みを挟んで食べた条件のインスリンが、カスタードを短い休みで食べた条件より81%高かった。膵ポリペプチド(PP)は、カスタードを短い休みで食べた条件で、食べ始めて5分後に62%上がった。グレリンの濃度は変わらなかった。[7]

研究者らはこれを、口の中の刺激が長いとインスリンの反応が強まり、刺激が短く速く食べるとPPの反応が強まる、と整理した。これらの反応が、食べる量への影響を仲立ちしているかもしれないという。2型糖尿病の人が食べる量を調え、血糖を保つ食べ方として役立つ可能性にも触れている。ただし、糖尿病の人を対象にした結果ではなく、可能性の段階の話である。[7]

一口の大きさは、我慢の利きにくさと結びつかなかった

先のパスタの試験を詳しく見る。44人の大人が研究室で4回昼食をとり、パスタの量は回ごとに400g、500g、600g、700gと変えた。水は毎回700gを添えた。最も少ない量の回に比べ、最も多い量の回では、食べた量が121g増えた。出される量が多いほど食べる、という現象がここでも確かめられた。[14]

研究者らが見たかったのは、抑制の力、つまりとっさに出る反応を止める力との関係である。食べ物を使った停止信号の課題で、反応を止めるまでの時間(SSRT)を測った。値は143〜306ミリ秒に散らばり、長いほど抑制が利きにくいことを示す。SSRTは、出された量による増え方の大きさを変えなかったが、抑制の利きにくい人ほど、どの量の回でも多く食べていた。[14]

一口の大きさは、ここで意外な結果を見せる。SSRTは、食べる速さとも、一口の大きさとも関係しなかった。関係したのは、パスタと水のあいだを行き来する回数で、SSRTが1標準偏差長くなるごとに、1回の食事で1.5回多く行き来していた。研究者らは、抑制の利きにくさが行き来を増やすことを通じて、食べ過ぎに関わっている可能性を挙げている。[14]

「一口が大きいのは我慢の足りない人だ」という見方は、この試験では支えられなかった。一口の大きさを性格の問題として片づけるより、出された量や食べ物の側の条件から見たほうが筋がよい。食べ物と飲み物を交互に口へ運ぶ回数という、見落としやすい指標があることも覚えておいてよい。[14]

24回の食事で、口の中の時間が延びると量は同じ向きに減った

健康な参加者を、朝食の組15人と昼食の組15人に分け、それぞれ12回ずつ食事をしてもらった試験がある。12回のうち6回は速く食べられる食感の食事、6回はゆっくりになる食感の食事で、量は自由に食べてよい。食事の様子は動画に記録し、食べ方を分析した。[4]

おいしさの評価は、朝食でも昼食でも、速い食事と遅い食事で差が無かった。遅い食事は速い食事より、朝食で平均39%、昼食で平均45%ゆっくり食べられた。食べる速さが20%落ちるごとに、食べる量は11%減るという関係も示されている。[4]

この試験の要点は、効き目の大きさより、24種類の食事で向きがそろったことにある。献立が変わっても、食感によって一口を処理する時間が延びると、食べる量は減る側へ動いた。一方で、各組15人の試験であり、1回の食事の中の量を測った結果である。次の食事でどう埋め合わされたかは、この試験からは分からない。[4]

数字で読む口の中の時間

66g:二度目の試験(20人)で、口に長くとどまるファッジを満腹まで食べた量は、口の中にいる時間の短いカスタードより少なかった。[7]

42g:一度目の試験(40人)で、一口ごとの休みを長くした条件は短い条件より食べる量が少なかった。差が出たのはファッジのときだけ。[7]

81%:二度目の試験の食事の終わりに、ファッジを長い休みで食べた条件のインスリンが、カスタードを短い休みで食べた条件より高かった幅。[7]

24g:パスタの試験(44人)で、SSRTが1標準偏差長くなるごとに、出された量によらず、どの回の昼食でも多く食べていた量。SSRTは一口の大きさとは関係しなかった。[14]

22%と13%:食感でゆっくりになる食事は、速く食べられる食事に比べ、食べた重さで22%(84g)、エネルギーで13%(71kcal)少なかった。朝食の組と昼食の組を合わせた平均である。[4]

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宮川涼 Founder

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