炎症を起こしやすい食事と肥満 食事炎症指数の差は小さく、血液の値により強く響いたのは減量

食事炎症指数(DII)は、食べた物が炎症をあおる側か鎮める側かを点数にした物差しである。22本のメタ分析、PREDIMED試験の参加者7,236人、閉経後の女性の減量試験から、点数と肥満・腹囲の関係の大きさと、点数を下げたときに血液の値で何が動いたかを確かめる。

昨日の夕食に点数を付けるとしたら、プラスとマイナスのどちらに振れるだろう。ここで言う点数は、おいしさでもカロリーでもない。食べた物が体の炎症をあおる側に傾いているか、鎮める側に傾いているかを示す値である。

その物差しは実在し、食事炎症指数と呼ばれる。英語の頭文字でDIIと書かれることが多い。炎症をあおる性質の食事ならプラス、鎮める性質の食事ならマイナスの点が付く仕組みだ[20]。「抗炎症の食事で痩せる」という言い方もあるが、この点数と体重のつながりは、言い方ほど一本の線では引けない。

点数の高い食事をしている人は太っているのか。点数を下げれば体重も下がるのか。それとも、体重のほうが点数と炎症の両方に先回りしているのか。三つの問いは似て見えて、答えに使える研究の型がそれぞれ違う。一つ目は人を比べる研究で答えられるが、二つ目と三つ目は、時間を追うか、食事を実際に変えてみないと答えが出ない。

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食事炎症指数は、食べた物から炎症の傾きを計算する

食事炎症指数は2009年に作られた。ふだんの食事が炎症にどちらの向きで働きうるか、論文の言葉では「炎症の潜在力」を数字で表すための道具である[4]。もとになったのは、炎症を強める、または弱めると報告された45の食事の成分の分析だった[13]。エネルギー量を考慮して計算し直した版もあり、E-DIIと呼ばれる[13]。

点を付けるには、まず何を食べたかを知る必要がある。地中海食の大きな試験の参加者には、137項目の食物摂取頻度調査票が使われた[7]。「この食品をどのくらいの頻度で食べたか」を答える形式の質問票である。若い男性を調べた研究では、4日間の食事記録から計算している[11]。どちらの方法でも、点数は血液を採って測った値ではない。食べた物の申告から推し量った、食事の側の値である。

幅の感覚もつかんでおきたい。橋本病(橋本甲状腺炎)の成人149人を141項目の質問票で調べた研究では、最も鎮める側の人がマイナス3.49、最もあおる側の人がプラス4.68だった[16]。この研究は参加者を3つの群に分け、マイナス1.4より低い群、マイナス1.39〜プラス1.20の群、プラス1.21を超える群とした。この研究では、ゼロをはさんだ数点の幅に参加者の食事が並んでいた。

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22本の研究を束ねると、BMIとの関連は小さいが有意だった

2026年に出たメタ分析は、成人を対象にした22本の観察研究を集めた。メタ分析は、複数の研究の結果を統計の手順で一つにまとめる方法である。内訳は横断研究が19本、前向きのコホート研究(人を先に登録して後から追う研究)が3本で、大半は一時点の比較だった。横断研究の結果を一つにすると、点数の最も高い群は最も低い群よりBMIが高い側にあり、効果の大きさはコーエンのdで0.17(95%信頼区間0.09〜0.25)だった。dは2群の平均の差をばらつきの大きさで割った値で、論文自身も「小さいが有意」と書いている。研究ごとのばらつきは大きく、異質性を示すI²は85.7%だった。1本を除くとdは0.20、I²は42.0%に下がり、ばらつきの一部は出版年と地域で説明された[1]。

3本のコホート研究は、それぞれ別の物差しで結果を出していた。相対リスクは1.59で信頼区間が0.72〜3.50と1をまたぎ、ハザード比は1.32(1.08〜1.60)、回帰係数は0.41(0.21〜0.61)である。向きはそろって正だが、3本では時間の順序を決めるには足りない。著者らも、時間的な関係と体の中の仕組みをはっきりさせることを今後の課題に挙げている[1]。点数の高い食事が先にあって体重が増えたのか、体重の多い人の食べ方が点数を押し上げたのか、この束ね方からはまだ言えない。食事の質の点数そのものの考え方は、「食事の質の点数と体重 健康食指数を20年高く保った女性に内臓脂肪の多い人が少なかった」の記事に譲る。

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点数の高い人ほど腹囲が太く、食べた総量はむしろ少なめだった

地中海食の効果を調べたPREDIMED試験には、心血管の病気の危険が高い人が集められた。その参加者7,236人を一時点で調べた横断研究は、食事炎症指数で参加者を5つに分け、BMI、腹囲、腹囲身長比(腹囲を身長で割った値)を男女別に比べている。点数の最も低い、鎮める側の5分の1では、ほとんどの栄養素と健康的な食品の摂取が多く、地中海食への当てはまりも高かった。例外は動物性たんぱく質、飽和脂肪、一価不飽和脂肪の3つで、これらは点数の低い側で多いとは言えなかった[7]。

食べた量のほうには、意外な向きが出ていた。点数と総エネルギー摂取量の間には逆向きの関連が見えていた。あおる側の食事の人ほど、申告した総エネルギーは少なめだったことになる。それでも既知の危険因子を調整すると、点数が高いほどBMI、腹囲、腹囲身長比の平均は高かった。最も高い5分の1と最も低い5分の1の腹囲身長比の差は、女性で1.60%(95%信頼区間0.87〜2.33)、男性で1.04%(0.35〜1.74)である。地中海食への当てはまりの影響を差し引いても、あおる側の点数と肥満の指標の関連は残った[7]。申告した総エネルギーが少なめでも、調整後の腹囲身長比は点数の高い側で大きかった、というのがこの研究の示した事実である。ただしこれも一時点の比較で、どちらが先かはこの研究からは決まらない。

同じ肥満でも、代謝の検査値で分けると見えるもの

肥満と一口に言っても、血圧や血糖などの代謝の検査値が保たれている人と、そうでない人がいる。ラワンサールの非感染性疾患コホートの参加者5,956人を使った横断研究は、肥満かどうかと代謝が健康かどうかを組み合わせ、4つの群に分けた。代謝が不健康な肥満は、国際糖尿病連合の基準で代謝の異常を2つ以上持ち、BMIが30以上の人である。年齢、性別、喫煙、飲酒、運動を考慮すると、代謝が健康で肥満でない人に比べ、点数の高さは代謝が健康な肥満とオッズ比1.44(95%信頼区間1.18〜1.75)、代謝が不健康な肥満とオッズ比1.67(1.3〜2.15)で結びついていた。一方、代謝が不健康で肥満でない群とは関連が見られなかった[3]。この研究の組み合わせでは、関連が現れたのは肥満のある2つの群だった。

体の中の脂肪の置き場所でも、似た向きの結果がある。米国の全国健康栄養調査の2007〜2020年の参加者27,655人を解析した横断研究では、点数が1上がるごとに、脂肪肝(肝臓に脂肪がたまった状態)のオッズ比は1.07(95%信頼区間1.05〜1.10)だった。点数で4つに分けた最も高い群は、最も低い群に比べてオッズ比1.35(1.21〜1.50)である。感度分析では、B型肝炎の感染歴と多量の飲酒は関連を崩していなかった。それでも著者らは、横断研究の限界を理由に、追跡研究か介入試験での確認を求めている[17]。

数字で読む食事炎症指数

45:食事炎症指数のもとになった、炎症を強めるか弱めるとされる食事の成分の数である[13]。

0.17:横断研究19本をまとめた、点数の最も高い群と最も低い群のBMIの標準化平均差(コーエンのd)。小さいが有意とされた[1]。

1.60%と1.04%:PREDIMED試験の参加者で、点数の最も高い5分の1と最も低い5分の1の腹囲身長比の差。順に女性、男性の値である[7]。

1.67:代謝が健康で肥満でない人と比べた、代謝が不健康な肥満のオッズ比。点数の高さとの関連を示す[3]。

27,655人:点数と脂肪肝の関連を調べた米国の全国調査の解析人数で、点数1あたりのオッズ比は1.07だった[17]。

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宮川涼 Founder

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