運動前の洗顔は何分待つべきか、肌の酸性と水分が戻る時計を分けて考える

運動前に顔を洗ってから、肌の酸性が戻るまで待つべきなのか。顔の水分量・皮脂・水分の逃げ方・pHを追った研究と、手や前腕を洗った比較試験を読み分ける。洗顔直後の変化を運動開始の待ち時間へ置き換えず、洗い足しや保湿の予定を考えるための視点を示す。

洗面台で顔を洗い、タオルを片づけたところでレッスンの開始時刻を見る。もう出発したいのに、「洗顔後は肌の酸性が戻るまで運動しない方がよい」という話が気になる。すっきりした顔と、汗をかく準備が整った顔は、同じなのだろうか。

答えの芯は、顔の回復をひとつの時計で数えないことだ。女性の顔を洗浄後に追った研究では、水分量、皮脂、水分の逃げ方が元の値に戻る時刻は異なり、肌表面のpHには有意な変化がなかった。「酸性が戻るまで全員が同じ時間を待つ」という読み方にはならない。[13]

既存記事「運動後の洗顔料は酸性なら肌に優しい?汗の測定と洗浄力を分けて考える」には運動後の製品選びを譲る。ここで考えるのは、運動前に洗ってから始めるまでの時間だ。メイクをどこまで落とすかではなく、洗った直後の数値をどこまで予定表に使えるかを確かめたい。

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肌の酸性と、しっとり感は別の指標である

肌の酸性を表すpHは、肌表面の状態を見る指標である。酸性の表面環境は酸性皮膜とも呼ばれ、洗浄料と皮膚の微生物の関係を考える際に使われてきた。洗浄料の選択を扱ったレビューでは、アルカリ性石けんと、合成洗浄剤であるシンデットを区別し、肌表面のpHと微生物の構成の結びつきを論じている。[6]

ただし、酸性という言葉を「うるおい」「刺激がない」「運動してよい」の代わりにはできない。家庭で洗浄料を使った健康な女性の比較試験では、通常の石けんで肌のpHがわずかに上がった一方、ほかの機器測定には有意な変化が認められなかった。pHの変化と、ほかの指標の変化は分けて読む。[5]

水分量は肌にある水分の状態を、皮脂量は表面の脂の状態を測る。経皮水分蒸散量は、肌を通って外へ逃げる水分量を表す。顔の回復を調べた研究では、これらとpHを別々に測っている。その設計自体が、洗顔後を単独の「肌の良さ」で採点していないことを教えてくれる。[13]

たとえば、顔のつっぱりは本人の感覚であり、酸性度の測定値とは区別する。女性の家庭使用試験でも、乾燥感やつっぱりなどの本人の評価と、機器による評価は分けて検討されている。自分の感覚を捨てる必要はないが、感覚をpH測定の結果として扱わないことが大切だ。[5]

出発前の鏡は、測定器にはならない。見た目が落ち着いたこと、いつもの肌触りであること、研究で測った水分量が元に戻ったことは、別々の確認事項としておく。洗顔後の顔を科学の数字で考えるなら、まず何を測った数字なのかを言葉にするところから始まる。[5][13]

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顔の研究では、pHの回復待ちを数えていない

顔の時間経過を直接調べた研究は、韓国人女性22人を対象にしている。肌のタイプは普通肌から乾燥寄り、脂性寄りまで含まれ、洗浄後180分にわたり、水分量、皮脂量、経皮水分蒸散量、pHが評価された。運動中に測った試験ではなく、洗顔後の生理的な指標の推移を調べた研究である。[13]

洗顔20分後には、水分量、皮脂量、経皮水分蒸散量が開始時点より有意に低下した。その後、水分量は40分、皮脂量と経皮水分蒸散量は120分で元の値に戻った。ここでの「戻った」は各測定項目の値について述べたものであり、肌全体の修復が完了する時刻とは区別する。[13]

特に見落としたくないのは、pHには測定したどの時点でも有意な差が認められなかった点だ。題名に回復という言葉があっても、「洗顔でアルカリ性に傾き、決まった時間で酸性へ戻った」という物語に書き換えてはいけない。この研究の顔では、そうしたpHの時間変化は示されていない。[13]

また、経皮水分蒸散量が低下したことを、そのまま「バリアが強くなった」と言うのも飛躍である。この研究の目的は洗浄後の回復経過を調べることであり、運動する人の肌を改善する手順の比較ではない。低い値という結果と、その理由や望ましさについての判断は分けて読む必要がある。[13]

朝の支度に当てはめるなら、研究の時刻は待機命令ではなく、測るタイミングによって結果が変わることを示す目印になる。洗った直後と、出発の準備を済ませた後の測定を同じ条件として比べない。研究で元の値に戻った時刻を、レッスンに参加できる時刻として使わない。この区別が、数字を役立てる入口になる。[13]

顔の研究では、測定に入る前の支度にも条件があった。研究施設への来訪に先立つ12時間以内に洗顔し、使うものを化粧水、乳液、クリームに限り、翌日の来訪時には洗顔しない手順が設けられた。開始前の状態を整えたうえで洗浄後を追った結果であり、通勤しながら化粧を直す朝と同じ場面ではない。[13]

その開始時点を基準にした「元の値」は、すべての人に共通する理想値ではない。測定前に整えた条件の値との比較である。いつもの洗顔直後の顔と、前夜から洗っていない顔では、何と何を比べているかが違う。研究の回復という言葉を読む際には、戻り先がどこなのかを確かめたい。[13]

また、有意な差がなかったという結果は、どんな人でもpHが全く動かないと証明したことではない。この試験の対象と洗浄条件のもとで、各時点に統計的に有意な差を検出しなかったという読み方になる。だからこそ、顔の研究を使って「必ず上がる」とも「絶対に変わらない」とも言わない。[13]

手で上がったpHを、顔の待ち時間に移さない

洗浄後にpHが上がる研究もある。健康なボランティア48人の手を使った比較であり、18〜39歳の女性の顔にそのまま当てはめるには、対象と測定部位の違いを考える必要がある。この比較では、pHが9のアルカリ性製品と、pHが5.5の酸性製品を単回または反復して使用した。洗浄5分後、肌のpHの上昇はアルカリ性石けんで平均1.7、酸性洗浄料で平均0.8だった。ばらつきを示す標準偏差は、それぞれ0.5と0.4である。[15]

酸性の洗浄料でも、洗った後の肌のpHは上がっている。容器に書かれた製品のpHと、洗い流した後の肌のpHは同じ数値ではない。酸性の製品を使ったのだから肌もその数値になったはずだ、と引き算なしで考えると、実際に測った結果を読み落とす。[15]

この研究では、アルカリ性石けんの方がpHの回復が遅く、繰り返し洗った場合の上昇も大きかった。勤務中に手洗いを繰り返す看護師の測定でも、勤務前と勤務中で平均pHに差があった。看護師という勤務条件での測定を、18〜39歳の女性の運動前の洗顔にそのまま当てはめることはできない。洗浄の種類と繰り返しを考える理由にはなるが、そのまま運動前の顔の回復時刻を決める研究ではない。[15]

顔の研究と手の研究は、どちらかが正しくてどちらかが誤りという関係ではない。測定部位も、洗浄条件も、測定する時刻も違う。顔ではpHの有意な変化がなく、手では製品によって変化と回復の速さが違った。この違いを残して読めば、「洗顔後の酸性回復はいつも同じ」という前提を置かずに済む。[13][15]

さらに、前腕を低pH洗浄料と高pH石けんで比較した研究では、洗浄4時間後にも低pH洗浄料側の肌のpHが低かった。前腕での比較を18〜39歳の女性の顔にそのまま当てはめるには、測定部位と使用場面の違いがある。しかし、これは製品間の差を調べた結果である。「4時間で元どおりになった」という回復の完了時刻ではない。測定した時刻と、回復に必要だった時間は区別したい。[8]

前腕の研究で調べたのはpHだけではない。洗った後に肌表面の角層をテープで採取し、そこへ黄色ブドウ球菌と大腸菌をそれぞれ接種して、残った菌数を測っている。低pH洗浄料で洗った側では残存菌数が少なかった。洗浄後の肌から採った試料を使うことで、表面環境の性質を比較した方法である。[8]

ここでの測定対象は、スタジオで汗をかいた後の顔に自然にいる細菌数ではない。まして、その日の肌荒れや感染の発生率を追った数字でもない。実験で示した抗菌的な性質を、そのまま「洗ってから運動するほど肌が守られる」という手順へ飛躍させない。結果の行き先を実験の範囲にとどめることも、数字を正確に使う作業だ。[8]

研究を予定表に落とす際は、顔を追った時間経過、手で比べた回復の速さ、前腕で比べた製品間の差という順に、問いを切り分けると混乱しにくい。いずれも洗浄に関する結果だが、測定時刻を足したり平均したりして、ひとつの待ち時間を作れる関係ではない。出発までの残り時間は、研究の数字を合算して決めるものではない。[8][13][15]

数字で読む洗顔後の時間経過

22人:顔の回復経過を調べた韓国人女性の人数である。[13]

20分:顔の水分量・皮脂量・経皮水分蒸散量が有意に低下していた測定時刻である。[13]

40分:同じ顔の研究で、水分量が元の値に戻った時刻である。[13]

120分:皮脂量と経皮水分蒸散量が元の値に戻った時刻であり、運動の待機時間ではない。[13]

1.7と0.8:手の洗浄5分後のpHの平均上昇幅であり、アルカリ性石けんと酸性洗浄料の順である。[15]

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宮川涼 Founder

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