パッケージの栄養表示で買い物は変わるのか 信号の色と警告マーク、星の数を比べた試験

包装の表側に付く栄養表示は、買い物かごの中身をどこまで変えるのか。信号の色、警告マーク、星の数、健康的な商品だけに付く印を比べた無作為化試験と、156件を束ねた分析の数字を確かめる。表示が実際に見られる割合、実験と本物の売り場の差、食べる量と体重までの距離も分けて考える。

スマートフォンで商品のバーコードを読むと、その商品の栄養表示が画面に出る。ニュージーランドで4週間この仕組みを使った買い物客1,255人は、買った商品のうち23%でしか表示を見なかった。[2][13] しかも、見る頻度は週を追うごとに下がっていった。[13]

表示は、見られて初めて働く。そして見られた後も、何をどう伝えるかで働き方が変わる。栄養素の多さを信号の色で示すもの、星の数で総合点を示すもの、「多い」と警告するもの、健康的な商品にだけ付く印。包装の表側に置くこうした栄養表示は、海外の制度や実験で何種類も比べられてきた。[1][16]

表示の型の違いは、買い物かごの中身をどこまで変えたのか。その変化は、食べる量や体重にどこまで届くのか。二つの問いを、試験の数字で分けて確かめる。飲食店のメニューに載るカロリーの話は「カロリー表示はダイエットの選び方を変えるか メニューの数字が効く条件を読む」に、表示された数字そのものの正確さは「カロリー表示はどこまで正確か 食品の数字と体が受け取るエネルギーの差」に譲る。

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表示には「数字を並べる型」と「意味を添える型」がある

包装の裏にある栄養成分の表は、エネルギーや脂質、糖の量を数字で並べる。数字は正確だが、その量が多いのか少ないのかは、読む人が自分で判断するしかない。研究ではこの型を「解釈を添えない表示」と呼び、試験の比較対照に置くことがある。ニュージーランドの試験でも、オーストラリアの星の数の表示を確かめた試験でも、栄養情報の表が対照群に置かれた。[2][11]

これに対し、「解釈を添える表示」は数字に意味を付ける。栄養素の多さを信号の色で示す型、星の数で商品の総合的な健康度を示す型、「多い」と知らせる警告の型がその代表である。[1] 米国の試験は、さらに細かく分けた。商品の良い点だけを伝える型、飽和脂肪・ナトリウム・添加糖の量を低・中・高で示す型、最も健康的でないものから最も健康的なものまでを段階で並べる型である。[7] 1日の摂取目安量を手がかりにする型もあり、これも数値を示す表示である。[11]

2024年に発表された系統的レビューは、221本の論文を集め、表示の効果を確かさの度合いまで評価した。[19] 無作為化比較試験の結果からは、表示が無い場合に比べ、表示は食品の栄養の質の理解、健康的な選択、健康的な購入をおそらく改善するとされ、確かさはいずれも中程度だった。[19] 解釈を添える型は、添えない型より効果が大きいとされた一方、解釈を添える型のどれが最も優れるかは研究ごとに揃わなかった。[19]

数字を並べる表は、読む人に計算と判断を任せる。意味を添える表示は、その判断を前もって済ませておく。棚の前で迷う時間を短くする工夫と言い換えてもよい。

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実験の売り場では効き、本物の売り場では薄まる

表示の型を横並びで比べた研究を最も大きく束ねたのは、2021年のネットワークメタ分析である。複数の比較を一つの網の目にまとめ、直接比べていない型どうしも推定する方法をいう。1990年から2021年に発表された156件の研究(無作為化比較試験101件、それ以外55件)を集め、134件を統合した。[16]

健康的な商品を選ぶ見込み(オッズ)は、表示の無い場合に比べ、信号の色の表示で1.5倍、栄養素の警告で3.61倍、健康への警告で1.65倍だった。[16] 5段階の色で総合評価を示す型(Nutri-Score)と栄養素の警告は、購入品全体の健康度をそれぞれ7.9%と26%高めた。[16] 購入品のエネルギーの総量は、信号の色で6.5%、5段階の色の型で6%、栄養素の警告で12.9%減った。100gあたりの密度で見ると、減り幅はそれぞれ3%、3.5%、3.8%だった。[16] 減ったのはエネルギーだけでもない。購入品の飽和脂肪の総量は、信号の色で12.9%、5段階の色の型で17.1%、栄養素の警告で16.3%減り、ナトリウム(食塩)の総量も信号の色で6.4%減った。[16] 総量で見た減り幅は、どの型でも密度で見た減り幅より大きい。同じ「エネルギーが減った」でも、どの物差しで測ったかを見落とすと、効き目の印象は大きくずれる。

ただし、著者らが挙げた限界は重い。研究どうしのばらつきが大きく、95%が実験室での研究で、長期の影響を測った研究が欠けていた。[16] 実験室で行う研究には、画面上に作った売り場や、研究のためだけに設けた店を使うものがある。[1] 画面の売り場なら、参加者は表示から目をそらす理由が少ない。夕方の混んだ店で、子どもの手を引きながら、献立を考え、特売の棚を探し、レジの列を気にする。その合間に表示を読むのは、画面の前で読むのとは別の行動である。

本物の売り場を多く含むレビューは、より慎重な答えを出した。2021年の系統的レビューは15件(無作為化比較試験10件を含む)を調べ、そのうち10件はスーパーや食堂、自動販売機など、人がふだん食品を買う場所で行われていた。[1] 信号の色の表示が健康的な購入を助けたのは12件中5件、健康への警告は2件中1件、糖の多さを示す印は1件中1件だった。[1] 星の数の表示(3件)と1日の目安量の表示(1件)には、購入への効果が見られなかった。[1] 著者らの結論は「結果は混在し、決着していない」である。[1]

見られなければ、表示は棚の飾りになる

冒頭のニュージーランドの試験は、本物の売り場で表示を比べた数少ない例だ。スマートフォンを持つ18歳以上の買い物客1,357人を、信号の色の表示(459人)、星の数の表示(443人)、栄養情報の表(455人、対照)に無作為に割り付け、4週間の購入品の健康度を比べた。[2]

結果は、全体としては差が出なかった。信号の色と対照の差は-0.20(95%信頼区間-0.94〜0.54)、星の数と対照の差は-0.60(同-1.35〜0.15)で、どちらも有意ではなかった。[2] 一方、表示を平均より多く使った31%の参加者だけを見る探索的な分析では、信号の色も星の数も、対照より健康的な購入と結びついていた。[2] 解釈を添えた表示は、使った人からは役に立ち、分かりやすいと評価された。[2] 著者らは、この試験で見られた程度の低い利用では、購入への有意な効果は無かったとまとめている。[2]

同じ試験の後からの分析が、冒頭の23%である。参加者1,255人が4週間に表示を見たか購入したバーコード付きの商品は、66,915品にのぼった。[13] 表示がよく見られたのは、調理済みの便利な食品、シリアル、菓子類、パンや焼き菓子、油だった。[13] 見られにくかったのは、砂糖やはちみつ、卵、魚、果物と野菜、肉である。[13] 卵の栄養表示を棚の前で読み込む人が少ないのは、研究を待つまでもない気もする。

注目したいのは次の数字だ。表示を見たうえで同じ買い物の中で購入した商品は、表示を見たが買わなかった商品より健康的で、栄養の点数の差は-0.90(95%信頼区間-1.54〜-0.26)だった。[13] 表示を見た人は、見た後で棚に戻す判断もしていたことになる。

同じ型の試験は、星の数の表示を採用したオーストラリアの選択が妥当かを確かめるためにも行われた。1,578人(平均38歳、84%が女性)を対象に、4週間で148,727品の購入が記録された。[11] 栄養情報の表と比べて、星の数、信号の色、1日の目安量の表示は購入品の健康度を変えなかった。差が出たのは、推奨や警告を伝える表示だけで、平均差は0.87(95%信頼区間0.03〜1.72)だった。[11] 星の数の表示は、参加者から目安量の表示より役に立ち、信号の色や目安量より分かりやすいと評価されていた。[11] 分かりやすさと購入の変化は、必ずしも同じ表示に宿らない。

数字で読む包装の栄養表示

  • 23%:買った商品のうち、表示が見られた割合。4週間のうちに下がっていった。[13]
  • 31%:表示を平均より多く使った買い物客の割合。この人たちに限ると購入は健康的だった。[2]
  • 3.61倍:栄養素の警告で、健康的な商品を選ぶオッズが上がった大きさ。[16]
  • 12.9%:栄養素の警告で、購入品のエネルギーの総量が減った割合。[16]
  • 12件中5件:信号の色の表示が健康的な購入を助けた研究の数。[1]
  • 95%:表示の型を比べた研究のうち、実験室で行われたものの割合。[16]

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