きなこをプロテインの代わりに使いたい女性へ。同じ粉の重さと、補えるたんぱく質の量は分けて考えたい。焙煎大豆の成分分析、イソフラボンの吸収試験、女性を対象とした介入研究を読み、加熱や発酵から言える範囲と、食品表示で確かめる順序を整理する。毎日の食事に取り入れる際の判断につなげる。
朝のヨーグルトにきなこを振りかけ、運動用の粉の袋と見比べる。いつもの香ばしい粉で、たんぱく質の補給も済ませられるだろうか。スプーンを持ち替える前に、袋の表示で確かめたいことがある。
答えの芯は、きなこを食事に使うことと、プロテインを同じ重さで置き換えることを分ける点にある。大豆はたんぱく質に加えて食物繊維やイソフラボンを含む食品であり、焙煎大豆粉にも脂肪酸が存在する。粉の重量には、たんぱく質以外の成分も含まれる。[8] 置き換えを考えるなら、まず手元の商品の表示を並べたい。
もうひとつ、きなこの成分が血液に現れることと、筋肉の材料としての消化を混同しないことだ。きなこを食べた後のイソフラボンの動きを調べた人の試験はあるが、その濃度をたんぱく質の吸収率として読むことはできない。[2][10] 香ばしい粉の中で、何を測っている話なのかを順にほどいていく。

きなこの一杯と、たんぱく質の一杯は違う
「代わりになるか」を考えるときは、何の代わりかを先に決める必要がある。食べ慣れた味を食事に足したいのか、決まった量のたんぱく質を補いたいのか。それによって比較する欄が変わる。前者なら味や使う料理が出発点になる。後者なら、袋に入った粉の名前より、実際に使う分のたんぱく質量が出発点だ。
食品分析の研究では、生の大豆粉と焙煎大豆粉の脂肪酸が測られている。両方の粉で多い順はリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸、ステアリン酸であった。[8] きなこを見るときに、たんぱく質だけを切り抜いて理解しない理由がここにある。大豆粉として食べることには、他の成分も一緒に食べるという意味がある。
この研究で脂肪酸全体に占めた割合は、リノール酸が47%、オレイン酸が26%などであった。[8] この47%を、きなこの袋全体の脂質割合と読むのは間違いだ。分母は粉の重量ではなく、測定された脂肪酸の全体である。栄養の数字は、何に対する割合なのかを外すと、同じ見た目の数字でも別の話になる。
朝食にきなこを振りかける場面なら、表示の基準量と、自分が実際に出した量を照らし合わせる。粉の重さをそろえたら、次にそれぞれのたんぱく質量を比較する。比較する商品の基準が違う場合には、基準をそろえてから考える。この作業はきなこを低く評価するためではない。食品として使いたいのか、特定の栄養量をそろえたいのかを明確にするためだ。
隣の記事「女性のプロテインは原料の分け方で違う?豆の乾式と湿式で変わる成分を読む」には、原料を分ける工程の違いを譲る。ここで追うのは、きなこを食卓に置いたとき、焙煎した大豆についての研究をどこまで自分の選択に使えるかである。毎日の必要量の計算や、食事を飲料に置き換える是非までを、この粉の比較だけで決める必要はない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
焙煎と発酵を、同じ「加工」で済ませない
きなこは研究で、焙煎して粉にした大豆として扱われている。[2][19] 焙煎は原料に熱を加える工程、発酵は微生物を利用する工程として区別して読む。たとえば同じ粉から出発しても、発酵の前後で何を測ったかをたどると、加工が食品に与えた変化が具体的に見えてくる。[1]
加工によるたんぱく質の変化を考える手掛かりとして、焙煎大豆粉をさらに発酵させた食品実験がある。研究者は菌を使った発酵に続いて脱脂粉乳を加えた乳酸発酵を行い、大豆と乳のたんぱく質の加水分解を確認した。[1] 加水分解とは、ここではたんぱく質が分解される反応を指す。この実験は食品を作る工程で起きた変化を調べたものだ。
発酵後の食品は柔らかくなり、酸味を持ち、軟らかいチーズに似た食感を示した。[1] 同じ大豆粉から始まっても、追加された工程と材料によって、出来上がる食品は違う。朝のきなこを水に混ぜただけの状態と、この発酵食品を一緒に扱うことはできない。発酵で確認された分解を、焙煎だけの成果として説明するのも取り違えになる。
特に「分解されている」と「食べた人の筋肉に役立つ」をつなぐときは、評価の場所に注意したい。この食品実験が捉えたのは、作った食品内の反応と物性である。[1] 人が摂取してからの消化、血液中への移行、筋肉での利用までを同じ測定結果で済ませることはできない。柔らかい食感は料理の使い方を考える材料になるが、そのまま筋肉への効果の順位にはならない。
この食品実験では、最初の発酵を42℃で10時間行い、続く乳酸発酵では脱脂粉乳を10〜30%加えている。[1] 単に粉を温め直した比較ではなく、微生物の働きと追加の材料を組み合わせた工程である。菌や材料を含む条件を残して読むと、研究で作られた食品の姿がつかめる。家庭のきなこは袋の用途に沿って使い、この実験の発酵食品とは区別して考える。
また、保存も別の条件である。大豆粉の脂肪酸を追った食品実験では、温度と保存期間が脂肪酸の品質や安定性に影響し、包装材料による違いより保存条件の影響が大きいとされた。[8] 購入後は、手元の袋にある保存場所と開封後の扱いを確認する。加工工程を確かめることと、買ってからの品質を保つことは、食品を使う際の別々の確認事項だ。
血液で追ったのはイソフラボンの動きだ
きなこに関する人の研究で詳しく追われている成分のひとつがイソフラボンだ。食品分析では、大豆や大豆加工食品に含まれるイソフラボン類が測られ、調べた加工食品の中ではきなこの含有量が最も高く、しょうゆが最も低かった。大豆の品種や産地、加工法や材料によっても含有量や組成は異なった。[19] これは分析した食品同士の比較であり、どれを大量に食べるべきかという順位ではない。
健康な男性7人を対象とした摂取試験では、きなこ60gを食べた後の血液、尿、便が調べられた。血中のゲニステインとダイゼインというイソフラボンの濃度は、いずれも摂取から6時間後に最大となった。[2] きなこ由来の成分が体内に入る経過を示した、小規模な研究である。18〜39歳の女性に同じ濃度や時間経過をそのまま当てはめられるかは、この男性の試験だけでは判断できない。
同じ試験でも、ダイゼインから生じる代謝物の現れ方には個人差があった。代謝物とは、体内で変化してできた物質のことだ。エクオールの血中濃度のピークが確認されたのは7人中2人であり、別の代謝物のピークが現れた人数とも違っていた。[2] きなこを同じ量だけ食べれば、全員の血液が同じ成分構成になる、とは読めない。
別のボランティア10人の研究では、きなこ摂取後にイソフラボン由来の16種類の代謝物が血液と尿で測定された。ダイゼイン系とゲニステイン系の総代謝物の血中濃度が最大になる時刻は、それぞれ平均4.7時間と5.4時間であった。[10] ここでも追っているのはイソフラボンの代謝である。この時間は、測定したイソフラボン代謝物の血中濃度の経過を表す。
血液と尿で代謝物の構成が大きく違ったことも報告されている。[10] 食べた成分、血液にある形、尿に出た形を分けて測ることで、体内での変化を追える。袋に書かれた成分が、そのままの姿で体中を回るというイメージを少し修正してくれる結果だ。成分の行方を追う研究は、このように測る物質と測る場所を細かく区別している。
「吸収された」という言葉を見たら、続けて何が吸収されたのかを読む。イソフラボンの血中濃度から、きなこのたんぱく質の消化率や、筋肉の増加量を計算することはできない。[2][10] 女性向けの食品を探している場面でも、男性の小規模試験で得た成分の動きを、女性の体調改善の約束として扱わないことが必要だ。
食品の含有量を比べた後は、食卓で使う量も確認したい。[19] きなこを少し振りかける朝と、試験で決められた量を食べる日は、同じ食品名でも条件が違う。まず食品名を読み、次に実際の摂取量を見る。この順序を置くだけでも、濃度の高い食品ほど自分の食卓でも多く摂れる、という早合点を避けられる。
数字で読むきなこの研究
7人:きなこ摂取後のイソフラボンを追った試験の対象は、健康な男性であった。[2]
60g:その試験で摂取したきなこの量。日常の推奨量を示す数字ではない。[2]
6時間:同じ試験で、ゲニステインとダイゼインの血中濃度が最大になった時点。[2]
10人:別の代謝研究で、血液と尿のイソフラボン代謝物を調べた対象人数。[10]
100人:大豆と緑茶の介入研究の対象は、脂質異常のある人々であった。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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