キムチやケフィアを食べれば減量に役立つのか。発酵前の食品や牛乳と比較した試験、大規模な追跡研究から、発酵に固有の効果を見極める。体重と体脂肪、食欲のホルモンと満腹感で答えが分かれる理由をたどり、発酵食品を食卓で選ぶときに期待できることと、まだ判断できないことを整理する。
ケフィアを飲んで体重が減っても、牛乳より有利とは限らない。発酵乳飲料を扱った比較試験には、この一見意外な結果がある。[9] キムチの熟成にも、乳製品の売り場にも減量の助っ人を探したくなるが、買う前に知りたいのは「何と比べて変わったか」だ。
過体重・肥満の閉経前女性を対象とした試験では、発酵乳飲料であるケフィアを取り入れた群で体重が減った。一方、牛乳を取り入れた群との間に、有意な差はなかった。[9] 発酵という肩書きだけでは、この結果の説明は終わらない。
ここで扱うのは、発酵食品をひとまとめに採点する話ではない。キムチの熟成、発酵乳の比較相手、食品から取り出した菌を区別し、「何が変わった」という報告を食卓の判断へつなぐ話である。乳製品全般や大豆食品全般の栄養の話から少し離れ、比較の設計に焦点を当てる。

キムチは熟成すると体重への働きも変わるか
発酵の影響を探るなら、食材の異なる食品同士を比べるより、同じ食品の発酵状態を変えて比べる研究が手がかりになる。Kimらのランダム化試験は、過体重・肥満の成人22人を対象に、新鮮なキムチと発酵したキムチを比較した。参加者の体格指数であるBMIは25 kg/m²を超えていた。[3] BMIは体格を表す指標として登場するが、この試験の参加条件を、そのまま全読者の減量の目標にする話ではない。
この試験はクロスオーバー法、つまり同じ参加者が順に両方の条件を経験する設計である。それぞれの食事期間は4週間で、間に2週間の休止期間を置いた。[3] 別々の人を比較するだけの場合と違い、同じ人で食品を替えたときの変化を検討できる。もともとの体格や生活が違う人同士を比べる難しさを、設計の段階で小さくしようとする方法だ。
結果は、両方のキムチで体重、BMI、体脂肪が有意に減少した。[3] 「発酵した方だけで体重が減った」と紹介すると、この研究の姿が変わってしまう。キムチを食べる条件の中で変化が起きたことと、その変化のすべてが熟成に由来することは、区別して考えたい。
一方で、発酵したキムチの条件では、新鮮なキムチの条件よりも体脂肪率、空腹時血糖、血圧、総コレステロールなどの変化が大きかった。[3] 発酵状態に注目する理由はある。ただし、ここで挙げた指標すべてを「体重がより減った」と言い換えることはできない。体脂肪率と血糖と体重は、それぞれ別の測定結果である。
また、この報告から「何kg余分に痩せる」と約束できる具体的な体重差は取り出せない。[3] 読者にとっては少し歯切れが悪く感じられるかもしれない。それでも、熟成による違いが見えた項目をそのまま受け止める方が、日々の食べ方を過大な期待で縛らずに済む。酸味の強さを、減量効果の目盛りにするのは控えたい。
糖尿病予備群の21人を対象としたAnらの試験でも、新鮮なキムチと発酵したキムチが比較された。最初の8週間は製造から1日のキムチか10日のキムチを食べ、4週間の休止を挟んで、次の8週間はもう一方を食べた。両方の条件で体重、BMI、腹囲が有意に減少した。[18] 先の過体重・肥満成人の試験とは対象も期間も異なるが、体格の変化が発酵した側だけに限られなかった点は共通する。
この試験では、耐糖能、つまり糖を処理する働きの改善が見られた参加者の割合は、新鮮なキムチで9.5%、発酵したキムチで33.3%だった。発酵した条件では血圧やインスリンの効き方にも追加の変化が報告された。[18] この割合が表すのは耐糖能を改善した人の割合であり、減量した人の割合とは異なる。糖尿病予備群で得られた代謝の結果として読むと、熟成について分かったことと、一般成人の体重について残る問いが明確になる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
大人数の追跡では男性に関連が見えた
短い試験の外側に、普段の暮らしを追った研究がある。Tanらは韓国の地域住民を対象に、キムチの摂取と体重変化の関連を検討した。相関の解析は58,290人、将来の体格の変化を評価する解析は、開始時のBMIが25 kg/m²以上だった20,066人を対象とした。[7] 同じ研究の中でも、どの人数がどの解析に使われたかを区別したい。
摂取量の調査には、食品の種類や食べる頻度を尋ねる質問票が使われた。キムチについては種類も分けて扱っている。全体の解析では、摂取が多いこととBMIの増加が小さいことに関連があり、前向きの解析では、男性の中程度の摂取群で標準体重への移行との関連が認められた。[7] 前向きとは、出発点の情報を得た後の経過を追う研究のことである。
男性の該当群で示されたハザード比は1.28、95%信頼区間は1.06〜1.54だった。[7] これは、経過の中で標準体重へ移行する起こりやすさを比較した値であり、体重が28%減ったという意味にはならない。信頼区間は推定の不確かさを表す範囲で、平均的な関連の数値だけを読むより、結果の幅を把握しやすくする。
人数が多いことには価値があるが、これはキムチを割り付けて食べさせた実験ではない。キムチをよく食べる人の食卓や生活には、それ以外の違いもあり得る。したがって、この観察研究が示すのは摂取と変化の関連であり、キムチが体重の変化を起こしたという確定した因果関係までは含まない。[7]
立川で暮らす女性がこの研究を目にしたときも、「大勢で確かめたのだから自分にも同じ」とは受け取らない方がよい。著者らの結論は、中高年の韓国人、とくに男性における関連を強調している。[7] 研究の対象を残したまま読むと、身近な食品の話であっても、自分にどこまで重なるかを考える余地が生まれる。多く食べる競争の根拠にするより、次の介入試験を待つ手がかりとして位置付けたい。
ケフィアは牛乳より減量に有利だったのか
ケフィアの試験は、比較相手の大切さがよく見える。Fathiらのランダム化比較試験では、過体重・肥満で閉経前の25〜45歳の女性75人を、対照群、牛乳群、ケフィア群に割り付け、8週間の食事条件を比較した。試験を完了したのは58人だが、報告された主要な解析は割り付けられた75人を対象にしている。[9]
対照群は体重維持に相当するエネルギーの食事で、低脂肪乳製品を1日2サービング含んでいた。牛乳群とケフィア群は、それぞれの乳製品を追加して合計4サービングとする条件だった。[9] サービングは研究内で食品の提供量を数える単位である。この条件の数字を、そのまま日本の食卓のコップの数に読み替えることは避けたい。
牛乳群とケフィア群は、対照群に比べて体重、BMI、腹囲の減少が大きかった。しかし、ケフィア群と牛乳群の間には、これらの有意差が認められなかった。[9] ケフィアの群で減量が起きたという紹介も、牛乳より優れていると確認されなかったという紹介も、両方を並べて初めて試験の結果になる。
この設計で問えるのは、指定された食事の中で乳製品を増やした条件同士の違いだ。普段の食事にケフィアを自由に追加する場面とも、乳製品を全く食べない人が初めて取り入れる場面とも異なる。研究で維持用の食事が設定されていたことを外すと、「食事はそのままで、飲み物だけ足せばよい」という別の話になってしまう。[9]
完了者の人数と解析の人数が異なる点にも注目したい。この試験では、最初の割り付けに沿って解析する方法が用いられた。[9] 途中で続けられなかった参加者を外し、最後まで飲めた人の結果だけを見れば、日常で取り入れる人全体の姿から離れる可能性がある。だから、試験を終えた人数だけでなく、結果が誰を含む解析なのかも読む。ケフィアに好意的かどうかとは別に、比較を受け止めるための確認事項である。ここでは、割り付けを基準にした解析でも牛乳との差は認められなかった、というところまでを持ち帰りたい。[9]
ケフィアの動物と人の研究を整理したBourrieらのレビューでも、人での体組成などの結果は、動物の好ましい所見と食い違う場合が多いとされる。発酵に使われる微生物の違いも、比較を難しくする要素に挙げられている。[1] 研究で使ったケフィアと、売り場で同じ名前を見つけた飲料を、条件まで同一とみなすことはできない。
さらに、ケフィアの臨床研究を広く整理したスコーピングレビューでは、44件が分析対象となった。小規模な研究、方法のばらつき、ケフィアの種類や摂取量、期間の違いが、病気ごとの利益について明確な結論を出す妨げになっていた。[15] スコーピングレビューは、研究の広がりや不足を整理する手法だ。44件すべてが減量試験だったわけではなく、件数の多さをそのまま減量の確かさに換算できない。
数字で読む発酵食品の比較
22人:新鮮なキムチと発酵したキムチを比較した小規模なクロスオーバー試験の参加者数。[3]
20,066人:キムチの追跡研究で、開始時のBMIが25 kg/m²以上だった将来の変化の解析対象。[7]
75人:ケフィア、牛乳、対照の条件に割り付けられた閉経前女性の人数。[9]
0.8 kg:キムチ由来の特定菌を用いた試験で生じた体脂肪量の群間差。体重の減少量とは異なる。[5]
35%:発酵大豆の食後試験で、食後30分に見られた食欲関連ホルモンの開始時からの減少。主観的食欲には群間差がなかった。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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