亜麻仁やチアシードを食べれば、空腹も体重も変わるのか。種子を直接比べた満腹感の試験から、次の食事量、長期の減量までを分けて確かめる。効果が出なかった研究も並べ、丸ごとの種子と抽出した繊維の違い、食卓で試す際の考え方を示す。食材選びを減量の約束に変えず、続けられる判断につなげる。
同じ種子でも、飲み物の粘りは大きく違う。亜麻仁とチアシードを比べた試験では、チアシード入りの液体の粘度が49.9Pa·s、亜麻仁入りは2.5Pa·sだった。健康な成人15人が参加した食後2時間の比較で、チアシードのほうが食欲の評価も低かった。小さな種子の違いを、食品の性質と食後の感覚の両方から調べた研究だ。[16]
チアシードには亜麻仁より食欲の評価を下げた直接比較試験がある。しかし、過体重や肥満の成人にチアシードを続けても、体重や体組成に差が出なかった試験もある。食後の感覚のよさを、そのまま減量の約束に読み替えると、ここでつまずく。[16][6]
種子を食卓に取り入れるかどうかを考えるなら、まず「どの形の食品を、誰が食べて、何が変わったか」をつなげたい。香辛料の補給や食後の散歩を扱う隣の記事とは分けて、ここでは亜麻仁とチアシードの満腹感から実際の体重までの道筋に焦点を絞る。
直接比べると、チアシードは食欲の評価を下げた
亜麻仁とチアシードを同じ人が試した研究がある。健康な成人15人が参加し、平均年齢は23.9歳、平均の体格指数は22.2だった。体格指数とは、体重と身長から体格を表す指標である。参加者は、ブドウ糖50gだけの場合、粉砕したチアシード25gを加えた場合、亜麻仁31.5gを加えた場合を、別の日に経験した。順番を無作為に決める交差試験という方法である。[16]
食後2時間の血糖と食欲を調べると、種子を加えた場合はどちらも、ブドウ糖だけの場合より血糖の反応が小さかった。さらにチアシードは亜麻仁と比べ、食べたい気持ちと、これから食べられそうな量の評価がそれぞれ7mm低く、総合的な食欲評価は6mm低かった。ここでのmmは感覚を線上に記入した目盛りの差であり、感覚の差を数値にしたものだ。[16]
この試験が興味深いのは、栄養成分の似た種子でも、食後の反応が同じとは限らなかった点だ。試験液の粘りを表す粘度は、チアシードで49.9、亜麻仁で2.5、対照で0.002Pa·sだった。研究者は、チアシードの繊維による高い粘りが、食欲の差に関わった可能性を挙げている。粘りという食品の性質まで見ている研究である。[16]
ただし、これは若い健康な成人が糖を摂った後の比較だ。仕事帰りの定食や家族と囲む夕食を、そのまま再現しているわけではない。チアシードを選べば夕食が自然に減る、というところまで結果は届いていない。確認できたのは、この条件での短時間の血糖反応と主観的な食欲の差である。[16]
自分の食卓に置き換えるときには、食品の順位表にするより、どんな場面を試した研究かを思い出すほうが役に立つ。チアシードのほうが食欲の評価を下げたという結果を、すべての料理で優れているという意味に広げない。亜麻仁にもチアシードにも研究上の手掛かりがあり、得られた結果には違いがある。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
満腹感と、次に食べる量の間には段差がある
亜麻仁入りの食品でも、満腹感に差が出ている。健康な男女19人を調べた試験では、亜麻仁入りのスナックバーとクラッカーを、それぞれ300kcalの条件で比べた。食後2時間の評価で、バーを食べたほうが空腹感は低く、満腹感は高かった。満腹感の指標はクラッカーの1.6倍だった。[2]
このバーの試験では血糖も調べているが、その比較対象はクラッカーではなくブドウ糖の溶液だった。血糖の比較では利用可能な炭水化物50gの条件を用い、満腹感の比較では食品のエネルギー量をそろえている。血糖の結果と満腹感の結果を一つの対照条件で得たものとして読むと、研究の設計を取り違える。何をそろえて比べたかも、結果と一緒に確認したい。[2]
同じエネルギー量で比べている点は大切だ。単に多く食べたから満足した、という比較から一歩進んでいる。一方で、比べているのは完成した食品同士である。この結果から、どんな食品に亜麻仁を混ぜても満腹感が1.6倍になるとは言えない。バーとして食べた条件の結果であり、長期の体重変化を調べた試験でもない。[2]
次の食事量まで測った研究では、答えが分かれる。若い男性18人を対象とした無作為化交差試験は、同じエネルギー量の食事で、亜麻仁やそこから得た繊維の条件を変えている。粘りのある繊維を多く含む食事では、対照の食事より満腹感と充足感が高かった。しかし、その後に自由に食べたエネルギー量には差がなかった。[3]
お腹の感覚は変わったのに、食べた量は変わらない。食欲の研究では、この組み合わせも結果の一つとして受け止めたい。満腹感の評価が良好なら、次の食事量も必ず下がるという筋書きにはできない。研究では感覚を尋ねることと、実際の摂取量を測ることを分けている。[3]
反対に、食事量の差が出た試験もある。亜麻仁から抽出した水溶性の繊維2.5gを飲み物に加え、対照の飲み物と比べた短時間の交差試験では、その後の自由摂取の昼食が2937kJと3214kJで、繊維入りの飲み物の後に少なかった。参加者24人の比較で、飲み物のエネルギー量と容量はそろえている。kJも食品のエネルギー量を表す単位である。[4]
この結果は、満腹感と食事量の両方が変わる場合もあることを示す。ただし、使ったものは抽出した繊維である。台所にある亜麻仁を同じ重さだけ量っても、試験と同じ条件にはならない。種子の名前が一致していても、食品全体と成分を取り出したものは分けて扱うのが筋だ。[4]
食事を試す側にも、ここは使える視点である。「空腹が気にならなかった」と「夕食のおかわりをしなかった」を別々の言葉にしてみる。どちらかが自分の目的に合っていれば、その感覚は食べ方を選ぶ材料になる。ただ、体重を判断したい場合には、その先を調べた試験へ進もう。
亜麻仁の体重差は平均で小さく、対象によって変わる
長期の体格変化を考える土台として、亜麻仁の無作為化比較試験45件を統合したメタ分析がある。メタ分析は複数の試験の結果をまとめて、全体の傾向を推定する方法だ。体重の差は平均で−0.99kg、95%信頼区間は−1.67〜−0.31kgだった。腹囲の差も平均−0.80cmで、95%信頼区間は−1.40〜−0.20cmだった。[15]

写真: Sanjay Acharya / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
この分析では体格指数にも平均−0.30の差があり、95%信頼区間は−0.53〜−0.08だった。体重、体格指数、腹囲の方向はそろっている。ただし、この平均値だけから体脂肪がどれだけ減ったかまでを割り出すことはできない。体重計の変化と、お腹周りの測定を別の結果として示している点にも注目したい。[15]
信頼区間は、平均の効果の推定にどの程度の幅があるかを表す。この数字は、食べた人の全員が約1kg減るという予告ではない。複数の条件が異なる試験を合わせた平均の差である。満腹感の短時間試験に比べれば体重に近い根拠だが、平均の減量幅は小さい。[15]
同じ分析では、種子全体を用いた試験、1日30g以上の条件、12週間以上の介入、体格指数が27以上の参加者を含む試験などの部分集団で、好ましい体組成の変化が示された。これは全試験をさらに条件別に分けた解析だ。家庭で摂る量を決める基準に直結させず、結果が得られた背景として読みたい。[15]
個別の試験では、お腹周りに焦点を当てたものもある。過体重または肥満の女性60人を、バランスの取れた食事に粉砕亜麻仁を1日30g加える群と、同量の粉砕米を加える群に分け、12週間比べた。亜麻仁群は腹囲と腹囲・臀囲の比の減少率が対照より大きかった。一方、血中脂質には有意な差がなかった。体の指標の一部が変わっても、検査値が一緒に変わるとは限らない。[1]
より最近の別のメタ分析では、冠動脈の病気を持つ人の6件の無作為化比較試験をまとめ、亜麻仁による体重や体格指数の有意な差を認めていない。空腹時血糖などには変化が見られたが、減量の指標には差がなかった。広い対象を含む分析と、特定の病気を持つ人の分析では、読者が受け取るべき答えも変わる。[13]
前者が正しく後者が間違い、という整理はできない。対象者が異なり、統合された試験の組み合わせも異なるからだ。現在の根拠からは、亜麻仁は一部の条件で小さな体重差をもたらす可能性があるが、誰にでも同じ減量効果を期待することはできない、と考えるのが妥当である。[15][13]
数字で読む亜麻仁とチアシード
15人:亜麻仁とチアシードを直接比べた、若い健康な成人の交差試験。[16]
1.6倍:同じ300kcalのクラッカーと比べた、亜麻仁入りバーの満腹感指標。[2]
−0.99kg:亜麻仁の45試験を統合した平均体重差。95%信頼区間は−1.67〜−0.31kg。[15]
76人:チアシードの体重試験で全過程を終えた人数。体重や体組成の群間差はなかった。[6]
−1.1kg:別のチア試験の摂取群内の体重変化。対照群との有意差はなかった。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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