連載「見た目と運動の科学」全10回の第10回です。

9回にわたって、運動・紫外線・発汗・睡眠・姿勢・体液・皮下組織・減量と皮膚の関係を見てきました。最終回は総括です。個々の結論を並べ直すのではなく、それらを読み解くために使った道具のほうを、読者の手元に残します。

この連載を通じて繰り返し現れたのは、ひとつの断絶でした。機器で測った数値が動くことと、本人や他人が見て分かる変化が起きることのあいだには、思ったほど強いつながりが無い。そして多くの主張は、この断絶をまたいで語られています。

見た目と運動の科学 第10回 総括美容主張の読み方|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

第1回から第9回までの仕分け

扱った題材を、3つに分けます。「測れて効果が示された」「測れるが効果が不明」「そもそも測れていない」です。

回題材仕分け
第2回運動中の皮膚血流の増加測れて示された(ただし体温調節の反応であり、外観への効果ではない)
第3回屋外運動での紫外線曝露量測れて示された(個人線量計による実測)
第3回紫外線によるコラーゲン分解酵素の誘導測れて示された
第7回姿勢による下肢の体液移動と、圧迫・歩行の効果測れて示された
第4回汗に含まれる微量金属測れるが、体からの排出への寄与は不明
第2回運動が皮膚の構造に及ぼす影響測れるが、標本が小さく追試が乏しい
第5回睡眠制限による皮膚の機器測定値の変化測れるが、見た目の変化との対応は不明
第9回減量後の余剰皮膚の量測れるが、本人の不快感との相関は低い
第1回皮膚の弾力・きめの妥当な測定そもそも測れていない(妥当と判定された機器が無い)
第5回一晩の断眠が顔に与える他者評価の変化大規模な追試で再現せず
第6回姿勢によるホルモンと行動の変化大規模な追試で再現せず
第6回姿勢改善による見た目年齢の変化そもそも測られていない
第8回セルライトの重症度と介入の効果そもそも測れていない(妥当な尺度が無い)
第9回減量後の皮膚の弾性の回復そもそも測られていない

並べてみると分かることがあります。「測れて効果が示された」に入るのは、生理学的な反応——血流、曝露量、酵素、体液の移動——ばかりです。外観に直接関わる項目は、ほとんどが後ろ2つに入ります。

観点1——代理指標

代理指標とは、本当に知りたいことの代わりに測る指標のことです。皮膚では、経表皮水分蒸散量・角層水分量・弾力・粗さ・色。これらが動けば「肌が変わった」と説明されます。

Langeveld M, van de Lande LS, O’Sullivan E, van der Lei B, van Dongen JA. Skin measurement devices to assess skin quality: A systematic review on reliability and validity. Skin Research and Technology. 2022;28(2):212-224.

第1回で見たこのレビューの結論を、もう一度置きます。検討した機器のうち、構成概念妥当性にもとづいて「妥当」と判定できたものは一つもありませんでした。弾力については、観察者間・観察者内の信頼性すら報告されていません。ドボス(Dobos)らのレビューでも、111の臨床尺度のうち高い信頼性係数を示したのは19にとどまりました。

使える問いはこうです。その数値は、何の代わりに測られているのか。代わりであることが、どこかで検証されているのか。

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観点2——自己申告と他者評価

もうひとつの断絶は、誰が評価したかによるずれです。

Park JH, Choi Y, Jung YJ, Lee T, Kim H, Cho Y, Lee JH. Skin Hydration Measurement: Comparison Between Devices and Clinical Evaluations. Annals of Dermatology. 2024;36(5):275-281.

184名を対象に、2種類の水分量測定装置は互いに 0.708〜0.737 の相関を示しました。ところが医師が目で見て採点した乾燥の尺度との関係は、統計的に有意ではありませんでした。機器どうしは一致し、機器と人の目は一致しない。第8回で見たヤング(Young)とディベルナルドのレビューも、セルライトについて「画像の所見は重症度の主観的な評価と相関しないことが多い」と述べています。

自己申告には別の弱さもあります。第6回で見たとおり、姿勢の研究で大規模な追試を生き延びたのは自己申告の「力の感覚」だけでした。そして事前登録された研究に限り、さらに効果を知らない参加者に限ると、証拠の強さは中程度まで落ちました。本人が答える指標は、本人が状況をどう読んだかの影響を受けます。

観点3——資金の出どころと利益相反

誰が費用を出したかは、結果の向きと関係があります。これは美容に限らず、臨床研究全般で測られてきました。

Lundh A, Lexchin J, Mintzes B, Schroll JB, Bero L. Industry sponsorship and research outcome: systematic review with meta-analysis. Intensive Care Medicine. 2018;44(10):1603-1612.

医薬品と医療機器の研究について、資金源の違いを定量的に比較した実証研究を集めたレビューです。75本の論文が対象になりました。結果はこうです。企業が資金提供した研究は、有効性について好ましい結果を報告することが多く(リスク比 1.27、95%信頼区間 1.17〜1.37)、好ましい結論を述べることも多い(リスク比 1.34、95%信頼区間 1.19〜1.51)。有害事象の結果については差がありませんでした(リスク比 1.37、95%信頼区間 0.64〜2.93)。

重要なのは、著者らがバイアスのリスクを別に評価している点です。無作為化の手順、割り付けの隠蔽、追跡、選択的な報告については、企業資金の研究と非企業資金の研究で差が見つかりませんでした。つまり、目に見える手続きの不備で説明がつく話ではない。だからこそ、資金源の開示は読む側にとって独立した情報になります。

使える問いはこうです。誰が費用を出したのか。著者と製品の関係はどう開示されているのか。論文の末尾には必ず欄があります。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

観点4——前後写真の条件

前後の写真は、最も直感に訴える提示です。そして最も条件に左右されます。

第1回で挙げた項目を再掲します。照明の色温度と向き、カメラとの距離、顔や体の角度、撮影した時刻、直前の洗顔や入浴の有無、化粧の有無、表情。斜めからの光は凹凸を強調し、正面からの拡散光は凹凸を消します。同じ日に撮った2枚でも、光を変えるだけで「改善」にも「悪化」にも見せられます。

撮影される側の条件も同じだけ効きます。時刻によって皮膚の水分も血色もむくみも違い、直前に運動したかどうかで赤みが変わります。第7回で見たとおり、朝と夕方では脚の容積そのものが違う。「前」を朝に、「後」を別の日の朝に撮るのと、「前」を夕方に、「後」を翌朝に撮るのとでは、同じ介入でも違う絵になります。

第8回で見たとおり、セルライトの評価では、妥当性が十分に確認されている画像手法は2次元と3次元のデジタル写真だけでした。それは裏を返せば、標準化された条件で撮られた写真は、この領域で最も信頼できる道具でもあるということです。問題は写真そのものではなく、条件が書かれているかどうかです。

観点5——体験談という証拠

「私はこれで変わりました」という語りは、嘘ではありません。その人に起きたことの記述としては、たいてい正確です。問題は、そこから何が言えるかです。

一人の経験には、比較の相手がいません。同じ期間に何もしなかった場合にどうなっていたかが分からない以上、変化を介入に帰属させる根拠がありません。そして人は変化を語りたくなったときに語るので、語られた体験は、変化があった事例に偏ります。変わらなかった人は、そもそも語りません。

体験談が無価値だという話でもありません。何が起きうるか、どんな不便があるか、どこでつまずくかを知るには、当事者の語りが最も具体的です。体験談が答えられないのは、「その変化がその介入によるものか」という一点だけです。役割を限れば、体験談は有用な情報のままです。

第9回の所見は、この点で示唆的でした。減量後、測定された余剰皮膚は減っているのに、本人はむしろ強く意識するようになる。実感は、測定値の忠実な写しではありません。それは実感を否定する話ではなく、実感と測定が別のものを捉えているという話です。

観点6——短期試験

皮膚と外観の変化は、年単位で進みます。ところが試験の多くは、数週間から数か月で終わります。

第8回の数字が代表的でした。セルライトの無作為化比較試験24本の平均追跡期間は、1か月に満たない長さでした。第2回で見た運動と皮膚の試験は16週間、第5回の睡眠の研究は数晩です。短い試験は、効果が続くかどうかについて何も言いません。そして外観に関する関心は、たいてい「続くかどうか」にあります。

リュベルディング(Luebberding)らのレビューが挙げた数字も、ここに関わります。セルライトの67本の研究のうち、無作為化を伴うプラセボ対照試験は19本だけでした。期間が短く、対照が無ければ、何が起きたのかを区別する手段がありません。

観点7——再現しないこと

この連載では、同じ形の出来事を2回見ました。

Holding BC, Sundelin T, Cairns P, Perrett DI, Axelsson J. The effect of sleep deprivation on objective and subjective measures of facial appearance. Journal of Sleep Research. 2019;28(6):e12860.

Ranehill E, Dreber A, Johannesson M, Leiberg S, Sul S, Weber RA. Assessing the robustness of power posing: no effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science. 2015;26(5):653-656.

睡眠不足の顔は181名の追試で他者評価の差が消え、パワーポーズは200名の追試でホルモンと行動の効果が消えました。いずれも、最初の報告は数十名規模でした。小さな標本で目立つ効果が出て、注目され、大きな標本で確かめ直すと縮むか消える。この形は、心理学と医学の多くの分野で観察されてきました。

ここで強調しておきたいのは、再現しなかったこと自体は失敗ではないという点です。第5回で見た追試は、最初の研究の著者たち自身が行いました。自分の報告を大きな標本で確かめ直し、再現しなかったと公表する。これは制度が正しく働いた例であって、研究が信用できないことの証拠ではありません。確からしさは、一本の論文ではなく、複数の研究の積み重ねで決まります。

使える問いは単純です。その研究は、独立した集団で再現されているか。標本はいくつか。

読み手の7つの問い

以上をまとめます。美容にかかわる主張に出会ったとき、順に当てるための問いです。

問い何を確かめているか
何を測ったのか代理指標か、本人や他人が見て分かる変化か
誰が評価したのか機器か、本人か、第三者か。三者は一致しない
誰が費用を出したのか資金源は結果の向きと関連する
写真の条件は書かれているか光・角度・距離・時刻が揃っているか
比較の相手は何か無処置か、同じ手間の別の介入か
どれだけの期間追ったか効果が続くかは、短い試験では分からない
再現されているか独立した集団での追試があるか

この7つは、否定するための道具ではありません。7つすべてに答えられる主張は、信頼してよい主張です。そして答えられない項目があるとき、それは「嘘だ」という意味ではなく、「まだ分かっていない」という意味です。この2つを混同しないことが、この連載で最も強調したかった点です。

連載を終えて

10回を通じて、意図的に避けたことがあります。読者の外見を問題として扱うこと、そして何かを勧めることです。

理由は簡単で、研究がそれを支えていないからです。セルライトは思春期以降の女性の大多数に見られ、疾患ではないと文献に書かれています。むくみは重力に対する体の正常な応答であり、横になれば戻ります。夕方に足が大きいのは、設計どおりの挙動です。大多数に起きることを異常と呼ぶところから、多くの主張は始まっています。

一方で、確かなことも積み上がりました。屋外にいる時間が長ければ紫外線を多く浴びる。その量は測れますし、対策も測れます。座り続ければ下肢に体液が溜まり、歩けば減る。運動すると皮膚の血流は増えるが、それは熱を捨てるためである。汗に微量の金属は入っているが、ベイカー(Baker)の総説が整理したとおり、汗腺には排泄量を上げるための適応の仕組みが無い。どれも地味な事実ですが、地味であることと、確かであることは両立します。

「分かっていない」と書いた項目についても、書き方には幅があります。クライン(Klein)とキアットの批判的レビューが、市販のデトックスプログラムについて「有効性をヒトで評価した無作為化比較試験は、自分たちの知るかぎり行われていない」と書いたのは、その一例です。効果が否定されたのではなく、確かめる試験がまだ行われていない。この連載でも、姿勢と見た目年齢、減量の速さ、皮膚の弾性の回復について、同じ書き方をしました。証拠の不在は、不在の証拠ではありません。

この連載を書くあいだ、繰り返し出会ったのは「まだ確かめられていない」という答えでした。姿勢と見た目年齢、減量の速さと皮膚、汗と体内負荷、セルライトへの介入。いずれも、主張は流通しているのに、それを支える設計の試験が見当たりません。それは研究者の怠慢ではなく、外観という主題を測ることの難しさの表れです。何をもって「良くなった」とするかが決まらなければ、試験は組めません。第1回が測定の話から始まったのは、そのためでした。

最後に、この連載が扱わなかったことを書いておきます。何が美しいか。どう見えることが望ましいか。それは研究が答えられる問いではありませんし、他人が決めることでもありません。この連載が渡そうとしたのは、答えではなく物差しです。使い方は、読む人それぞれに委ねられます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「肌がきれいになる」は測れるのか——皮膚科学の評価指標
  2. 第2回|運動と皮膚——血流・バリア機能・皮脂
  3. 第3回|紫外線と酸化ストレス——屋外運動の功罪
  4. 第4回|汗は「毒を出す」のか——発汗の生理学と言説の検証
  5. 第5回|睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化
  6. 第6回|姿勢と印象——姿勢は見た目を変えるか
  7. 第7回|むくみ——体液の分布と、圧迫・運動の効果
  8. 第8回|セルライト——何が分かっていて何が分かっていないか
  9. 第9回|体重が減ると皮膚はどうなるか
  10. 第10回|総括——美容主張の読み方(この記事)

出典

  1. Lundh A, Lexchin J, Mintzes B, Schroll JB, Bero L. Industry sponsorship and research outcome: systematic review with meta-analysis. Intensive Care Medicine. 2018;44(10):1603-1612.
  2. Langeveld M, van de Lande LS, O’Sullivan E, van der Lei B, van Dongen JA. Skin measurement devices to assess skin quality: A systematic review on reliability and validity. Skin Research and Technology. 2022;28(2):212-224.
  3. Dobos G, Lichterfeld A, Blume-Peytavi U, Kottner J. Evaluation of skin ageing: a systematic review of clinical scales. British Journal of Dermatology. 2015;172(5):1249-1261.
  4. Park JH, Choi Y, Jung YJ, Lee T, Kim H, Cho Y, Lee JH. Skin Hydration Measurement: Comparison Between Devices and Clinical Evaluations. Annals of Dermatology. 2024;36(5):275-281.
  5. Young VL, DiBernardo BE. Comparison of Cellulite Severity Scales and Imaging Methods. Aesthetic Surgery Journal. 2021;41(6):NP521-NP537.
  6. Luebberding S, Krueger N, Sadick NS. Cellulite: an evidence-based review. American Journal of Clinical Dermatology. 2015;16(4):243-256.
  7. Holding BC, Sundelin T, Cairns P, Perrett DI, Axelsson J. The effect of sleep deprivation on objective and subjective measures of facial appearance. Journal of Sleep Research. 2019;28(6):e12860.
  8. Ranehill E, Dreber A, Johannesson M, Leiberg S, Sul S, Weber RA. Assessing the robustness of power posing: no effect on hormones and risk tolerance in a large sample of men and women. Psychological Science. 2015;26(5):653-656.
  9. Baker LB. Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019;6(3):211-259.
  10. Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。皮膚の異常や急な変化——広がる発疹、治りにくい傷、ほくろやしみの形や色の変化、痛みやかゆみを伴う症状——に気づいた場合は、自己判断せず皮膚科を受診してください。化粧品・美容機器・サプリメント・施術の使用を検討する際は、効果の見込みと限界、有害事象について専門家から説明を受けてください。持病の治療中の方、妊娠中の方、薬を服用中の方は、新しい手入れや運動、サプリメントを始める前に主治医・薬剤師にご相談ください。

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