連載「見た目と運動の科学」全10回の第8回です。
太ももや臀部の皮膚に、でこぼこした凹凸が見える。この見え方は「セルライト」と呼ばれ、おびただしい数の商品と施術の対象になってきました。この回では、そこで何が分かっていて、何が分かっていないのかを並べます。
結論を先に書きます。セルライトは疾患ではなく、思春期以降の女性の大多数に見られる皮下組織の形態です。皮下脂肪を隔てる線維性の隔壁が関わっていることは画像と解剖で確かめられていますが、その走行については報告が食い違っています。重症度を測る尺度は複数あって定まらず、画像所見と人の見立てはしばしば一致しません。そして介入を調べた試験の多くは、方法上の問題を抱えています。
この回は、効く方法を紹介する回ではありません。分かっていないことを、分かっていないと正確に書く回です。そして、読者の体のどこかを問題として扱う回でもありません。

どのくらいの人に見られるのか
まず頻度から。この領域を早い時期に整理した総説があります。
Avram MM. Cellulite: a review of its physiology and treatment. Journal of Cosmetic and Laser Therapy. 2004;6(4):181-185.
この総説は、セルライトが人種を問わず思春期以降の女性の 85〜98% に見られるとしたうえで、病的な状態ではないと明記しています。同時に、頻度の高さに比して科学的な検討がほとんど行われてこなかったこと——過去30年間に医学文献で査読を経た論文は数十本にとどまること——を指摘し、提示の仕方を説明する決定的な理論は無いと述べています。そして治療の節を、真に有効な治療法は存在しないという一文で結んでいます。2004年の記述です。
より新しい総説でも頻度の見積もりは同程度で、ヤング(Young)とディベルナルドは思春期以降の女性のおよそ 85〜90% に見られるとしています。大多数に見られる形態を「異常」と呼ぶことには、そもそも無理があります。この点は、以下を読むうえでの前提として置いておきます。
皮膚の下で何が起きているのか
もうひとつ、言葉の整理をしておきます。日本語で「セルライト」と呼ばれるものは、医学文献では脂肪の一種でも老廃物の塊でもなく、皮膚表面の形状の変化として定義されています。「固まった脂肪」「老廃物が絡みついたもの」といった説明を見かけますが、そうした実体が組織像で示されたわけではありません。以下で見る研究が扱っているのは、あくまで皮下の構造と表面の凹凸の関係です。
皮下脂肪の層は、線維性の隔壁(セプタ)によって区画に分けられています。この隔壁が皮膚を下へ引き、あいだの脂肪が上へ押し出されると、表面に凹凸ができる——これが標準的な説明です。画像で確かめた研究があります。
Querleux B, Cornillon C, Jolivet O, Bittoun J. Anatomy and physiology of subcutaneous adipose tissue by in vivo magnetic resonance imaging and spectroscopy: relationships with sex and presence of cellulite. Skin Research and Technology. 2002;8(2):118-124.
高い空間分解能の磁気共鳴画像で、真皮と皮下組織の境界の形状と、隔壁の三次元的な構造を調べています。セルライトのある女性では、脂肪組織が真皮へ深く入り込んでおり、内側の脂肪層の厚みが大きく増していました。隔壁のうち皮膚表面に垂直な向きのものの割合も高くなっています。
ただし著者らは、同時に2つの重要な但し書きを添えています。ひとつは、隔壁の網目は曲がりくねっており、「女性は垂直、男性は45度傾斜」という平面の並びとして単純にモデル化できないということ。もうひとつは、核磁気共鳴スペクトルによる測定で、セルライトのある女性の脂肪組織で水分が増えているという仮説は確認できなかったということです。「水が溜まっている」という説明は、この測定では支持されませんでした。
皮膚に凹みのある部位と無い部位を、同じ人の左右で比べた研究もあります。
Hexsel DM, Abreu M, Rodrigues TC, Soirefmann M, do Prado DZ, Gamboa MM. Side-by-side comparison of areas with and without cellulite depressions using magnetic resonance imaging. Dermatologic Surgery. 2009;35(10):1471-1477.
臀部にセルライトのある30名の女性が対象です。凹みのある部位では 96.7% で線維性の隔壁が描出され、その多くは分枝しており(73.3%)、T2強調像で高信号を示しました(70%)。隔壁の平均の厚さは、凹みのある部位で 2.18±0.89、無い部位で 0.27±0.64 でした。検査した部位で見つかった隔壁は、いずれも皮膚表面に垂直でした。

ところが、隔壁の向きの話は食い違っている
ここが、この回で最も注目すべき箇所です。同じ対象を超音波で調べた、より新しい研究があります。
Whipple LA, Fournier CT, Heiman AJ, Awad AA, Roth MZ, Cotofana S, Ricci JA. The Anatomical Basis of Cellulite Dimple Formation: An Ultrasound-Based Examination. Plastic and Reconstructive Surgery. 2021;148(3):375e-381e.
50名の女性の大腿と臀部、計200部位を調べ、173の凹みを同定しました。そのうち 169、つまり 97.6% で線維性の索状構造が確認されています。ここまでは先の研究と整合的です。ところが向きが違いました。索状構造の大半(84.4%)は、皮膚に対して垂直ではなく斜めの走行を示したのです。また 90.2% は深い筋膜ではなく浅い筋膜から起こっていました。血管構造を伴うものが 11% あり、過体重・肥満の人ほど血管が描出されやすい傾向がありました(p = 0.01)。
磁気共鳴画像では「すべて垂直」、超音波では「大半が斜め」。この食い違いをどう読むか。撮像法が違えば見えるものも違いますし、対象も測り方も同じではありません。言えるのは、隔壁が関与しているという点は一致しているが、その走行についての教科書的な説明——女性は垂直、男性は斜めの格子状——は、そのまま受け取るには足場が弱いということです。
性差はどこにあるのか
解剖体を用いた生体力学の研究が、性差の中身に踏み込んでいます。
Rudolph C, Hladik C, Hamade H, Frank K, Kaminer MS, Hexsel D, Gotkin RH, Sadick NS, Green JB, Cotofana S. Structural Gender Dimorphism and the Biomechanics of the Gluteal Subcutaneous Tissue: Implications for the Pathophysiology of Cellulite. Plastic and Reconstructive Surgery. 2019;143(4):1077-1086.
男性10体・女性10体(平均年齢 76±16.47 歳)の臀部から全層の切片を作り、脂肪小葉の数・高さ・幅を測り、真皮と浅筋膜のあいだの隔壁が破断するのに要する力を測定しました。
結果です。加齢は性別と独立して真皮の厚さの減少と関連していました(オッズ比 0.997、95%信頼区間 0.996〜0.998、p < 0.0001)。真皮下の脂肪小葉の数は、男性で 10.05±2.3、女性で 7.51±2.7 と男性のほうが多く(p = 0.003)、これは男性のほうが浅筋膜と真皮のあいだの隔壁による連結が多いことを意味します。隔壁の破断に要する力も、男性で 38.46±26.3 N、女性で 23.26±10.2 N と男性のほうが大きい結果でした(p = 0.021)。女性であることと高い体格指数は、浅層の脂肪小葉の高さの増加と関連していました。
著者らは、セルライトを「封じ込める力」と「押し出す力」の皮下境界における不均衡として理解できるとまとめています。つまり、脂肪の量だけの問題でも、皮膚の質だけの問題でもない。ただし、これは解剖体の研究であり、生きている人の見た目との対応は直接測られていません。

組織像は「段階」を区別しない
重症度を段階に分ける考え方は広く使われていますが、組織学的な裏づけは心もとないようです。スカラーノ(Scarano)らは、体格指数とセルライトの段階が異なる女性から大腿の生検を採り、組織像を比較しました。結果は、5種類の異なる組織学的特徴が、同じ1人の患者の中に同時に存在するというものでした。著者らは、組織学的な所見はセルライトの異なる状態を特徴づけておらず、この事実は段階分けを事実上無効にすると述べています。
測る道具が定まっていない
第1回で扱った測定の問題が、この領域では最も深刻な形で現れます。
ヤング(Young)とディベルナルドの総説は、セルライトの重症度を評価する画像手法のうち、十分に妥当性が確認されているのは2次元と3次元のデジタル写真だけであるとしています。そして決定的な一文が続きます——多くの場合、画像の所見は重症度の主観的な評価と相関しない。複数の評価尺度が開発されてきたものの、定性的な評価しか与えないものや、患者本人の視点を含めた臨床的に重要な側面をすべて捉えきれていないものがあり、広く採用された妥当な尺度は今も存在しないとしています。
バス(Bass)とカミナーの総説も同じ方向を指しています。試験のプロトコルが標準化されていないこと、改善を客観的に定量する手段が無いこと、追跡期間が短いこと、評価方法が研究ごとに違うこと。これらのために、有効性を調べた研究どうしを比較すること自体が難しいと述べています。
介入試験の質
では、実際の試験はどう評価されているか。系統的レビューを2本並べます。
Luebberding S, Krueger N, Sadick NS. Cellulite: an evidence-based review. American Journal of Clinical Dermatology. 2015;16(4):243-256.
67本の論文を、介入の種類・対照群の有無・無作為化・盲検化・標本の大きさ・統計手法の記述・結果・エビデンスの水準について分析しています。67本のうち、無作為化を伴うプラセボ対照試験はわずか19本でした。レーザーや光を用いる方法、高周波を用いる方法を含め、評価された研究の大半に重要な方法上の欠陥があり、重症度そのものを評価項目にしていないものや、十分な統計解析を示していないものもありました。著者らの結論は明確です——評価したいずれの方法についても、良好な有効性を示す明確な証拠は認められなかった。
より新しい系統的レビューもあります。
Lim SK, Gultekin G, Suresan S, Jacob A, Zou Y, Liyanage DD, Parekh JN, Mavilakandy AK, Vyas K, Khajuria A. Comparative Analysis of Cellulite Treatment Modalities: A Systematic Review. Aesthetic Plastic Surgery. 2025;49(7):2051-2075.
753本の研究から、適格基準を満たした無作為化比較試験24本、計2084名を解析しました。ここで注目したいのは、結果よりも追跡期間です。平均の追跡期間は 3.33±13.4 週でした。標準偏差が平均の4倍という値は、研究間のばらつきが極端に大きいことを示しています。そして平均で1か月に満たない追跡では、外観の変化が続くのかどうかは判定できません。著者らはエビデンスの総合的な質を「中程度」と評価しています。
2004年の総説が「真に有効な治療法は存在しない」と書き、2015年の系統的レビューが「明確な証拠は認められなかった」と書き、2025年の系統的レビューが平均1か月に満たない追跡しか集められなかった。20年のあいだに研究の本数は増えましたが、判定に必要な条件——長い追跡と、揃った評価尺度——は、まだ揃っていません。
この連載の方針として、個々の介入の名前を挙げて推奨することはしません。ここまでで確認できたのは、「どれが効くか」を論じる前提——測る道具と、追跡の長さ——が、この領域ではまだ整っていないということです。
| 論点 | 分かっていること | 分かっていないこと |
|---|---|---|
| 頻度 | 思春期以降の女性の 85〜98% に見られる。疾患ではない | — |
| 隔壁の関与 | 凹みの部位で線維性の構造が高率に確認される | 走行が垂直か斜めかで報告が食い違う |
| 水分の貯留 | — | 脂肪組織の水分増加は核磁気共鳴で確認されなかった |
| 性差 | 隔壁の連結数と破断に要する力に差がある(解剖体) | 生きている人の見た目との対応は測られていない |
| 段階分け | — | 同一人物に複数の組織像が併存し、段階を特徴づけない |
| 評価尺度 | 妥当性が確認された画像手法はデジタル写真のみ | 画像所見と主観的評価はしばしば相関しない |
| 介入 | — | 67本中19本のみが無作為化プラセボ対照。明確な有効性の証拠なし |
最後に、この回の書き方について一言添えます。頻度が 85% を超える形態について「原因」と「対策」を語るとき、その形態を異常と前提してしまいやすい。研究の現状は、その前提を支えていません。分かっているのは、皮下の構造に性差があり、その構造が表面の形状に関わっているらしい、というところまでです。
次回予告
第9回は「体重が減ると皮膚はどうなるか」を扱います。大幅な減量のあとに余る皮膚について、減量幅・年齢・減量の速さとの関連がどこまで分かっているのか。客観的な計測と本人の感じ方がどれだけずれるのか。そして皮膚の弾性が戻るかどうかについて、ヒトで分かっていることの乏しさを見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|「肌がきれいになる」は測れるのか——皮膚科学の評価指標
- 第2回|運動と皮膚——血流・バリア機能・皮脂
- 第3回|紫外線と酸化ストレス——屋外運動の功罪
- 第4回|汗は「毒を出す」のか——発汗の生理学と言説の検証
- 第5回|睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化
- 第6回|姿勢と印象——姿勢は見た目を変えるか
- 第7回|むくみ——体液の分布と、圧迫・運動の効果
- 第8回|セルライト——何が分かっていて何が分かっていないか(この記事)
- 第9回|体重が減ると皮膚はどうなるか
- 第10回|総括——美容主張の読み方
出典
- Avram MM. Cellulite: a review of its physiology and treatment. Journal of Cosmetic and Laser Therapy. 2004;6(4):181-185.
- Young VL, DiBernardo BE. Comparison of Cellulite Severity Scales and Imaging Methods. Aesthetic Surgery Journal. 2021;41(6):NP521-NP537.
- Querleux B, Cornillon C, Jolivet O, Bittoun J. Anatomy and physiology of subcutaneous adipose tissue by in vivo magnetic resonance imaging and spectroscopy: relationships with sex and presence of cellulite. Skin Research and Technology. 2002;8(2):118-124.
- Hexsel DM, Abreu M, Rodrigues TC, Soirefmann M, do Prado DZ, Gamboa MM. Side-by-side comparison of areas with and without cellulite depressions using magnetic resonance imaging. Dermatologic Surgery. 2009;35(10):1471-1477.
- Whipple LA, Fournier CT, Heiman AJ, Awad AA, Roth MZ, Cotofana S, Ricci JA. The Anatomical Basis of Cellulite Dimple Formation: An Ultrasound-Based Examination. Plastic and Reconstructive Surgery. 2021;148(3):375e-381e.
- Rudolph C, Hladik C, Hamade H, Frank K, Kaminer MS, Hexsel D, Gotkin RH, Sadick NS, Green JB, Cotofana S. Structural Gender Dimorphism and the Biomechanics of the Gluteal Subcutaneous Tissue: Implications for the Pathophysiology of Cellulite. Plastic and Reconstructive Surgery. 2019;143(4):1077-1086.
- Scarano A, Petrini M, Sbarbati A, Amore R, Iorio EL, Marchetti M, Amuso D. Pilot study of histology aspect of cellulite in seventy patients who differ in BMI and cellulite grading. Journal of Cosmetic Dermatology. 2021;20(12):4024-4031.
- Bass LS, Kaminer MS. Insights Into the Pathophysiology of Cellulite: A Review. Dermatologic Surgery. 2020;46(Suppl 1):S77-S85.
- Luebberding S, Krueger N, Sadick NS. Cellulite: an evidence-based review. American Journal of Clinical Dermatology. 2015;16(4):243-256.
- Lim SK, Gultekin G, Suresan S, Jacob A, Zou Y, Liyanage DD, Parekh JN, Mavilakandy AK, Vyas K, Khajuria A. Comparative Analysis of Cellulite Treatment Modalities: A Systematic Review. Aesthetic Plastic Surgery. 2025;49(7):2051-2075.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。皮膚の凹凸に痛み・赤み・熱感・急な変化を伴う場合、しこりが触れる場合、片側だけに生じた場合は、別の疾患の可能性があるため皮膚科などの医療機関を受診してください。施術や機器の使用を検討する際は、担当する医師から効果の見込みと限界、有害事象について説明を受けてください。皮膚の異常や急な変化に気づいたときも自己判断せず皮膚科にご相談ください。






