連載「見た目と運動の科学」全10回の第4回です。

「汗をかいて毒を出す」。この言い方は、運動にも入浴にも高温環境の運動にも添えられて、日本語のなかにすっかり定着しています。今回はこの言説を、感情を交えずに検証します。汗の組成は実際に測られており、重金属も有機化合物も定量されています。数字は出ているのです。

結論を先に書きます。汗の中に微量の重金属や化学物質が含まれていることは、繰り返し実測されています。しかし、体から不要物を除く経路として汗が担っている割合は、腎臓や消化管に比べて小さいと考えられており、汗腺には排泄を増やすための適応の仕組みもありません。「入っている」ことと「出している」ことは、別の主張です。

断っておきますが、この言説を笑うために書くのではありません。汗をかいたあとに体が軽く感じるのは本当のことですし、その体験を説明したくなるのも自然なことです。なぜこの説明が広まったのかも、最後に扱います。

見た目と運動の科学 第4回 汗は毒を出すのか発汗の生理学と言説の検証|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

汗は何でできているのか

汗腺の生理と汗の組成を包括的に整理した総説があります。この回の土台になる文献です。

Baker LB. Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019;6(3):211-259.

エクリン汗腺は、まず血漿に似た等張の一次分泌液を作り、導管を通るあいだにナトリウムと塩化物イオンを再吸収します。皮膚の表面に出てくるころには低張——つまり血液より薄い液になっています。主成分は水と電解質で、体温調節としての役割は、皮膚の表面で蒸発するときに熱を奪うことです。

この総説が明確に述べている点を、原文の趣旨のまま挙げます。老廃物や有害物質を排出する働きとして汗が果たす役割は、腎臓や消化管を通る他の経路に比べて小さいと考えられる。そして、エクリン汗腺は汗を濃縮したり発汗量そのものを増やしたりして排泄量を上げるようには適応しない、とも書かれています。腎臓は、体が必要とすれば尿を濃くも薄くもできます。汗腺にはその機能がありません。著者は、汗腺が老廃物や有害物質の除去でより大きな役割を果たしていると示唆する研究について、選択的な輸送の証拠というよりは方法上の問題による見かけの結果である可能性があると指摘しています。

組成の測定そのものが難しいことも、押さえておく必要があります。

Baker LB, Wolfe AS. Physiological mechanisms determining eccrine sweat composition. European Journal of Applied Physiology. 2020;120(4):719-752.

ナトリウムと塩化物イオンの膜輸送の仕組みは確立していますが、それ以外の大半の成分については、分泌や再吸収の機構がなお不確かだと述べられています。そして、汗と血液の濃度の相関は、大半の成分について確立していません(エタノールがおそらく例外です)。最終的な汗の組成は、細胞外の溶質濃度だけでなく、分泌・再吸収の機構、発汗速度、汗腺の代謝副産物、そして皮膚表面の汚れや皮脂の混入にも左右されます。皮膚の上で集めた液体に何が入っていたか、という測定は、思うほど単純ではないのです。

実測すると、汗には確かに金属が入っている

では実際の測定値を見ます。まず古典的な研究から。

Hohnadel DC, Sunderman FW, Nechay MW, McNeely MD. Atomic absorption spectrometry of nickel, copper, zinc, and lead in sweat collected from healthy subjects during sauna bathing. Clinical Chemistry. 1973;19(11):1288-1292.

健康な成人48名(男性33名・女性15名)が93度の乾式サウナに15分入り、腕にバッグをかぶせる方法で汗を集めました。採取量は男性が平均23±12 mL(範囲3〜55)、女性が7±3 mL(2〜13)です。汗に含まれる金属の濃度(μg/L)は、ニッケルが男性52±36(7〜180)・女性131±65(39〜270)、銅が男性550±350(30〜1440)・女性1480±610(590〜2280)、亜鉛が男性500±480(130〜1460)・女性1250±770(530〜2620)、鉛が男性51±42(8〜184)・女性118±72(49〜283)でした。

数字の幅の広さに注目してください。同じ条件で同じ方法で測っても、個人差が10倍以上あります。別の方法で測った研究も、同じように大きなばらつきを示しています。スタウバー(Stauber)とフローレンスは、男性24名・女性39名の前腕にピロカルピンを用いて発汗を促し、亜鉛が男性で平均181 μg/L(範囲25〜863)、カドミウムが 1.4(0.5未満〜10)、鉛が41(6〜87)、銅が103(5未満〜673)と報告しています。女性では亜鉛が331(87〜836)と高く、銅29・鉛24と低い値でした。

より広範に調べた研究もあります。

Genuis SJ, Birkholz D, Rodushkin I, Beesoon S. Blood, urine, and sweat (BUS) study: monitoring and elimination of bioaccumulated toxic elements. Archives of Environmental Contamination and Toxicology. 2011;61(2):344-357.

20名から血液・尿・汗を採取し、約120種類の化合物を分析した研究です。毒性元素はそれぞれの体液に程度の差をもって含まれており、多くの毒性元素が汗に優先的に排泄されるように見えたと報告されています。血清には見つからないのに汗からは検出された元素もありました。著者らは、誘導された発汗が体内からこれらの元素を除く方法になりうるとし、血液や尿の検査だけでは体内の総負荷を過小評価しうると述べています。

この領域の研究を集めた系統的レビューも出ています。

Sears ME, Kerr KJ, Bray RI. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. Journal of Environmental and Public Health. 2012;2012:184745.

122件の記録から24件が採用されました。著者らは、対象集団も汗の採取法も濃度も研究によって大きく異なると述べたうえで、曝露や体内負荷の高い人では汗の濃度が血漿や尿を上回ることが多く、皮膚からの排泄が尿からの1日排泄量に匹敵あるいは上回る場合があるとしています。そして結論部で、適切な規模の試験を含む研究が、安全で有効な手順を確立するために必要だと書いています。つまり、確立した手順はまだ無い、というのが2012年時点の到達点です。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

「入っている」と「出している」のあいだ

ここまでの所見は、一見すると言説を支持しているようにも読めます。汗に金属が入っているのは事実ですし、汗のほうが尿より濃い場合があるという報告もある。それでも、体の排出を汗が担っているという結論には届きません。理由を3つ挙げます。

ひとつは濃度と総量の区別です。濃度が高いことと、総量として多く出ていることは違います。1日に作られる尿の量と、汗の量と、その両方に含まれる物質の総量を並べて初めて、どちらが主な経路かが言えます。サウナ1回で集まった汗は、先の研究では平均で10 mL台から20 mL台でした。

ふたつめは、集めた液体が何であるかという問題です。皮膚の表面には、外から付着した物質と、皮脂と、角層の剥がれたものがあります。腕にバッグをかぶせて集めた液には、それらが混じります。ホーナデル(Hohnadel)らの研究自体、腕バッグ法は全身からの損失の指標としては値が高く出て変動も大きいと指摘されており、採取法そのものが結果を左右します。

みっつめが、先に挙げたベイカー(Baker)の指摘です。汗腺には排泄を増やす適応がありません。体が「これを出したい」と判断して汗の組成を変える仕組みは、見つかっていないのです。腎臓には、まさにそのための精緻な仕組みがあります。

運動とサウナでは、汗の中身が違う

発汗のさせ方によって、汗の組成が変わることは分かっています。

Kuan WH, Chen YL, Liu CL. Excretion of Ni, Pb, Cu, As, and Hg in Sweat under Two Sweating Conditions. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(7):4323.

健康な大学生12名(男性6名・女性6名)が、トレッドミルで走る条件と、サウナに座る条件の両方を経験しました。20分の連続発汗のあと、1人あたり7 mL以上の汗を採取して分析したところ、ニッケル・鉛・銅・ヒ素の濃度は、いずれも動的な運動時のほうがサウナで座っているときより有意に高くなりました(すべて p < 0.05)。水銀だけは発汗方法の影響を受けませんでした。

同じ研究グループのチェン(Chen)らは、6名の若い男性を対象に、上背部のエクリン汗腺と腋窩のアポクリン汗腺から汗を集め、走行時と高温環境で比べています。尿素とカリウムの排出は、両方の汗腺で走行時のほうが有意に高くなりました。尿酸はほとんど排出されませんでした。著者らは、走行時に尿素の排出が高いのは代謝の亢進によると考えられると述べています。

この所見は興味深いのですが、読み方には注意が必要です。濃度が高い条件が分かったということは、体から出す量が増えたということではありません。運動時は代謝が上がり、血流の配分も変わります。汗の中身が動いたことは、体内の負荷が減ったことを意味しません。それを示すには、介入の前後で体内の量そのものを追う必要があります。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

解毒を担っているのは肝臓と腎臓

体に入った異物の処理は、主に肝臓と腎臓が担っています。肝臓では、酵素が異物を化学的に変換して水に溶けやすくし、腎臓はそれを尿として排出します。一部は胆汁を経て消化管から便として出ます。この系は常時動いており、休んでいるわけでも、詰まっているわけでもありません。

この分業を、汗と比べてみます。腎臓は血液を濾過し、必要なものを選んで戻し、要らないものを濃縮して捨てます。選別と濃縮の両方ができる。汗腺にできるのは、一次分泌液からナトリウムと塩化物イオンを取り戻すことまでで、何を捨てるかを選ぶ仕組みも、捨てたいものを濃くする仕組みも備えていません。同じ「体から液体を出す」でも、設計思想が違うのです。

もうひとつ、言葉の問題があります。「毒」あるいは「老廃物」が何を指すのかは、日常の会話ではまず定義されません。重金属なのか、食品添加物なのか、疲労物質と呼ばれるものなのか、あるいは漠然とした不調の原因なのか。指すものが変われば、それを出す経路も、測り方も変わります。検証できる形に言い直せない主張は、支持も反証もできないまま残ります。

「デトックス」という語をめぐる評価も、同じ方向を指しています。

Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686.

この批判的レビューは、関連する産業が活況を呈している一方で、その使用を支持する臨床的な証拠はごくわずかしかないと述べています。市販のプログラムが肝臓の処理を高め残留性の汚染物質を体から除いたと報告した臨床研究はいくつかあるものの、方法の欠陥と標本の小ささに妨げられているとされます。そして著者らは、市販のデトックスプログラムの有効性をヒトで評価した無作為化比較試験は、自分たちの知るかぎり行われていないと書いています。

言説測定が示していること
汗に毒が含まれている微量の金属や化合物は検出される。濃度の個人差は10倍以上
汗をかくほど毒が出る汗腺に排泄を増やす適応の仕組みは見つかっていない
汗は尿より濃いそういう報告はあるが、濃度と総量は別。総量の比較はされていない
サウナのほうが出る金属の濃度は運動時のほうが高いという報告がある
体内の負荷が減る体内の量そのものを追った質の高い試験は不足している

なぜこの説明は広まったのか

最後に、この言説がこれほど定着した理由を考えます。批判ではなく、構造の話です。

第一に、汗は目に見えます。体内で起きていることのうち、これほど直接観察できる現象は多くありません。見えるものには、意味を与えたくなります。第二に、体感が伴います。運動や入浴のあとに感じる爽快さは本物で、その原因を説明する言葉を人は求めます。第三に、「毒」という語の定義が緩いことです。何を指すのかが定まっていないので、反証もできません。定義のない主張は、否定されないまま残ります。

第四に、この説明は誰かを責めません。体調が優れない理由を、自分の生き方や体質ではなく「溜まった毒」という外部の要因に置けば、対処の方向もはっきりします。汗をかけばよい、という具体的な行動が示される。分かりやすく、実行可能で、しかも気分が良い。定着する説明には、たいていこの3つが揃っています。

そして第五に、この説明には行動を促す力があります。「汗をかけば良いことがある」という形は、運動や入浴を続ける動機になります。動機として機能しているものを、事実ではないという理由だけで取り上げるのは、あまり親切ではありません。ですから、こう言い換えるのが妥当なところだと考えます——汗をかくこと自体に意味はあります。ただしその意味は、体温を下げることと、そこに至る運動や高温曝露そのものの効果にあります。

高温環境で運動したときに体に何が起きるかは、それ自体が研究の対象です。この連載とは別に、高温環境の運動の生理を扱った記事があるので、そちらも参照してください。発汗を「排出」として説明しなくても、高温曝露の生理は十分に興味深い題材です。

次回予告

第5回は「睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化」を扱います。睡眠を制限した人の顔写真を他者に評価させると、健康度や魅力度の評点が下がるという一連の研究があります。その効果の大きさと、後年の大規模な追試で何が起きたのかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「肌がきれいになる」は測れるのか——皮膚科学の評価指標
  2. 第2回|運動と皮膚——血流・バリア機能・皮脂
  3. 第3回|紫外線と酸化ストレス——屋外運動の功罪
  4. 第4回|汗は「毒を出す」のか——発汗の生理学と言説の検証(この記事)
  5. 第5回|睡眠と見た目——睡眠不足が顔にもたらす実測変化
  6. 第6回|姿勢と印象——姿勢は見た目を変えるか
  7. 第7回|むくみ——体液の分布と、圧迫・運動の効果
  8. 第8回|セルライト——何が分かっていて何が分かっていないか
  9. 第9回|体重が減ると皮膚はどうなるか
  10. 第10回|総括——美容主張の読み方

出典

  1. Baker LB. Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019;6(3):211-259.
  2. Baker LB, Wolfe AS. Physiological mechanisms determining eccrine sweat composition. European Journal of Applied Physiology. 2020;120(4):719-752.
  3. Hohnadel DC, Sunderman FW, Nechay MW, McNeely MD. Atomic absorption spectrometry of nickel, copper, zinc, and lead in sweat collected from healthy subjects during sauna bathing. Clinical Chemistry. 1973;19(11):1288-1292.
  4. Stauber JL, Florence TM. A comparative study of copper, lead, cadmium and zinc in human sweat and blood. The Science of the Total Environment. 1988;74:235-247.
  5. Genuis SJ, Birkholz D, Rodushkin I, Beesoon S. Blood, urine, and sweat (BUS) study: monitoring and elimination of bioaccumulated toxic elements. Archives of Environmental Contamination and Toxicology. 2011;61(2):344-357.
  6. Sears ME, Kerr KJ, Bray RI. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. Journal of Environmental and Public Health. 2012;2012:184745.
  7. Kuan WH, Chen YL, Liu CL. Excretion of Ni, Pb, Cu, As, and Hg in Sweat under Two Sweating Conditions. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(7):4323.
  8. Chen YL, Kuan WH, Liu CL. Comparative Study of the Composition of Sweat from Eccrine and Apocrine Sweat Glands during Exercise and in Heat. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2020;17(10):E3377.
  9. Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。有害物質への曝露が疑われる場合、体内の金属や化学物質の検査・治療が必要と考えられる場合は、自己判断や市販のプログラムに頼らず医療機関にご相談ください。高温環境での運動や入浴中に、めまい・吐き気・頭痛・動悸が出た場合はただちに中止し、症状が続くときは受診してください。皮膚の異常や急な変化に気づいたときも皮膚科の受診をおすすめします。心臓・腎臓・肝臓の病気で治療を受けている方、妊娠中の方は、高温環境での運動について事前に主治医に確認してください。

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

ご体験予約