連載「老化と運動」全10回の第7回です。
骨と関節は、加齢の話題のなかでも「もう戻らない」と語られやすい場所です。骨密度は減り、軟骨はすり減る——そう聞けば、できることは進行を遅らせることだけのように思えます。しかし実際には、骨と関節では事情がかなり違いますし、同じ関節のなかでも「戻らないもの」と「変えられるもの」が分かれています。
結論から書きます。骨密度は運動で変わりますが、変化は負荷をかけた部位に限られ、幅も小さいものです。関節では、画像に写る構造の変化は運動では戻りません。ところが痛みと動きやすさは改善します。構造と症状は、思われているほど連動していません。
この回は、連載のなかでも実務に直結する内容になります。同時に、代理指標の問題が最も分かりやすい形で出てくる回でもあります。骨密度は骨折の代理指標であり、軟骨の厚さは痛みの代理指標です。ヨガと骨密度の関係、筋力トレーニングと変形性膝関節症については、それぞれ別の記事と別の記事にまとめてあります。

骨は作り替えられ続けている
骨は、一度できあがったら変わらない構造物ではありません。古い骨を壊す細胞と、新しい骨を作る細胞が絶えず働いていて、全身の骨は年単位で入れ替わっています。加齢では、この収支が壊す側に傾きます。閉経後の女性では、女性ホルモンの減少がこの傾きを強めます。
作り替えが続いているということは、外から加わる力がその方向に影響できるということでもあります。実際、骨に加わる力の大きさと、その力がどれだけ速く加わるかが、骨の反応を決めることが分かっています。ここが、次に見る「部位特異性」の理由です。
運動で骨密度はどれだけ変わるのか
Mohebbi R, Shojaa M, Kohl M, et al. Exercise training and bone mineral density in postmenopausal women: an updated systematic review and meta-analysis of intervention studies with emphasis on potential moderators. Osteoporosis International. 2023;34(7):1145-1178.
6か月以上の対照試験を集めた統合です。80件の研究・94の運動群・80の対照群、参加者は合計5,581名。標準化平均差は腰椎で0.29(95%信頼区間 0.16〜0.42)、大腿骨頸部で0.27(0.16〜0.39)、股関節全体で0.41(0.30〜0.52)でした。研究間のばらつきは、股関節全体では小さく(I2 = 20%)、腰椎ではかなり大きなものでした(I2 = 68%)。
興味深いのは、著者らが調べた3つの区別——骨粗鬆症・骨減少症があるかどうか、閉経から間もないかどうか、監督つきかどうか——のいずれでも、効果に有意な差が出なかったことです(いずれも p > 0.09)。骨密度が低い人でも効果は同じように得られ、「もう遅い」という理由は見当たらないということになります。ただし、標準化平均差0.3前後という大きさは、実際の骨密度としてはわずかな変化です。

効くのは、力をかけた場所だけ
骨の反応が部位に限られることを、ひとりの体のなかで示した古典的な研究があります。カー(Kerr)らは、閉経後の女性56名に対して、片側の前腕と股関節に負荷がかかる筋力トレーニングを1年間行い、反対側を同じ人のなかの対照として比較しました。高負荷・低回数の群では、大転子(対照側 -0.6±2.2%、運動側 1.7±4.1%、p < 0.01)、転子間(-0.1±2.1%、1.5±3.0%、p < 0.05)、ワード三角(0.8±5.2%、2.3±4.0%、p < 0.05)、橈骨遠位端(-1.4±2.3%、2.4±4.3%、p < 0.01)で運動側が上回りました。低負荷・高回数の群では、橈骨中央部を除いて有意な増加はありませんでした。
この設計の強みは明らかです。食事も、ホルモンの状態も、全身の状態も同じ人なのですから、差は加わった力によるものと考えるほかありません。そして著者らが結論したのは、骨量を増やすのは、繰り返しの回数よりもピークの負荷の大きさであるということでした。同時に、負荷がかかった部位だけが反応したという事実も残ります。大腿骨頸部には効果が及んでいません。
強度で分けて統合した検討も、同じ方向を示しています。
Kistler-Fischbacher M, Weeks BK, Beck BR. The effect of exercise intensity on bone in postmenopausal women (part 2): A meta-analysis. Bone. 2021;143:115697.
53件の試験・63の介入(低強度19、中強度40、高強度4)を統合したところ、腰椎では高強度が最も大きな効果を示しました(平均差 0.031 g/cm2、95%信頼区間 0.012〜0.049、p = 0.002)。中強度は0.012(0.008〜0.017)、低強度は0.010(0.005〜0.015)です。ところが大腿骨頸部では、低強度(0.011、0.006〜0.016)と中強度(0.011、0.007〜0.015)が同程度に有効で、高強度では効果が観察されませんでした。著者らは、これは検出力の不足による可能性があると注意を促しています——高強度の介入は63のうち4件しかないからです。
衝撃を加えるという選択肢
骨量の低い閉経後女性に高強度の負荷をかけることは、長らく骨折の危険があるとして避けられてきました。この前提を検証した試験があります。
Watson S, Weeks B, Weis L, Harding A, Horan S, Beck B. High-Intensity Resistance and Impact Training Improves Bone Mineral Density and Physical Function in Postmenopausal Women With Osteopenia and Osteoporosis: The LIFTMOR Randomized Controlled Trial. Journal of Bone and Mineral Research. 2019;34(3).
骨量の低い閉経後女性101名(年齢65±5歳)を、高強度の筋力トレーニングと衝撃負荷を組み合わせた群49名と、自宅での低強度運動の対照群52名に割り付けました。腰椎の骨密度は2.9±2.8%増加し、対照群の-1.2±2.8%を上回りました(p < 0.001)。大腿骨頸部では0.3±2.6%と-1.9±2.6%(p = 0.004)、大腿骨頸部の皮質の厚さでは13.6±16.6%と6.3±16.6%(p = 0.014)でした。実施率は高く(介入群92±11%、対照群85±24%)、有害事象は1件(軽度の腰部の筋けいれん)のみでした。
膝への影響を心配する声にも、検討があります。ハートリー(Hartley)らは、閉経後の女性42名を対象に、片脚だけに多方向のホップを行う6か月の介入を実施しました。35名(61.7±4.3歳)が完遂し、実施率は76.8±22.5%。大腿骨頸部の骨密度・骨塩量・断面係数は運動側で増加し(それぞれ +0.81%、+0.69%、+3.18%)、対照側では低下しました(-0.57%、-0.71%、-0.75%、いずれも交互作用 p < 0.05)。膝のMRIによる軟骨の評価では、T2緩和時間が全体として延長したものの運動側と対照側で差はなく、骨髄病変や軟骨欠損の進行を介入が引き起こした所見も見られませんでした。

骨密度は、骨折の代理指標である
ここで立ち止まる必要があります。上に挙げた研究が測っているのは骨密度であり、骨折ではありません。骨密度は骨折のリスクと関連しますが、骨の強さを決める要素は密度だけではありません。骨の形状、皮質の厚さ、微細構造、そしてそもそも転ぶかどうかが関わります。
運動には、この最後の要素に働きかけるという別の経路があります。筋力とバランスが改善すれば、転倒そのものが減り得ます。骨密度の変化が1%程度であっても、転倒の頻度が変われば骨折の数は変わります。骨密度という代理指標だけを見ていると、運動の利益のかなりの部分を見落とすことになります。逆に、骨密度が増えたことをもって骨折が減ると断定することもできません。
関節:構造の変化は戻らない
関節に話を移します。変形性関節症では、軟骨がすり減り、骨棘ができ、軟骨下の骨が変化します。運動でこれを戻せるのか——答えははっきりしています。
Van Ginckel A, Hall M, Dobson F, Calders P. Effects of long-term exercise therapy on knee joint structure in people with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Seminars in Arthritis and Rheumatism. 2019;48(6):941-949.
6か月を超える陸上での運動療法を、無介入と比べた試験の統合です。X線画像上の病期に治療効果はなく(標準化平均差 0.06、95%信頼区間 -0.07〜0.20、I2 = 0%、中等度の質の証拠)、軟骨の形態にも効果は認められませんでした(0.06、-0.20〜0.36)。滑膜炎(オッズ比 0.90、0.51〜1.60)と関節液貯留(0.88、0.64〜1.20)にも効果はなく、一方で骨髄病変が悪化する見込みはやや高い結果でした(1.90、1.11〜3.26)。
軟骨そのものに絞った検討も同様です。ブリッカ(Bricca)らは、MRIで軟骨を評価した無作為化比較試験9件・14の比較を集めました。変形性膝関節症のある参加者では、6つの比較で軟骨の厚さ・体積・欠損に効果がなく、グリコサミノグリカンでは1つが負の効果・1つが効果なし、コラーゲンでは2つが正の効果・2つが効果なしという結果でした。著者らの結論は、膝に荷重をかける運動は軟骨にとって有害ではなさそうだというもので、証拠の質は低いと明記されています。
整理すると、運動は軟骨を再生しないが、壊してもいないということです。「運動すると軟骨がすり減る」という心配も、「運動で軟骨が再生する」という期待も、いまのところ支持されていません。
それでも痛みと動きやすさは変わる
Fransen M, McConnell S, Harmer AR, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee: a Cochrane systematic review. British Journal of Sports Medicine. 2015;49(24):1554-1557.
54件の試験を集めたコクランの系統的レビューです。44件を統合すると、運動は治療直後の痛みを100点満点で12点(95%信頼区間 10〜15)減らし、身体機能を10点(8〜13)改善しました。生活の質の改善は小さいものでした(4点、2〜5)。治療の終了から2か月から6か月後を追った12件では痛みが6点(3〜9)、10件では身体機能が3点(1〜5)改善したままでした。
より厳密な設計で再検討した統合もあります。
Holden MA, Hattle M, Runhaar J, et al. Moderators of the effect of therapeutic exercise for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual participant data meta-analysis. The Lancet Rheumatology. 2023;5(7):e386-e400.
31件の試験から個々の参加者のデータを集め、4,241名を解析しました。100点尺度での痛みの差は、短期(12週)で-6.36点(95%信頼区間 -8.45〜-4.27)、中期(6か月)で-3.77点(-5.97〜-1.57)、長期(12か月)で-3.43点(-5.18〜-1.69)。身体機能はそれぞれ-4.46点、-2.71点、-3.39点でした。著者らはこれを小さく前向きな効果だが、とくに中期・長期では臨床的な重要性が疑わしいと評価しています。同時に、開始時の痛みと機能が悪い人ほど効果が大きかったことも示されました。
| 変化するもの | 可逆性 | 測られているもの |
|---|---|---|
| 骨密度 | 負荷をかけた部位で増える。幅は小さい | 骨折の代理指標 |
| 骨の形状・皮質の厚さ | 介入で変わる報告がある | 骨の強さの一部 |
| 転倒の頻度 | 筋力とバランスの改善で変わりうる | 骨折に直結する経路 |
| 関節の構造(軟骨・骨棘) | 運動では戻らない。悪化もしない | 画像上の所見 |
| 関節の痛みと機能 | 改善する。効果は小さく、長期では薄れる | 本人が困っていること |
構造と症状の乖離をどう理解するか
画像で見る限り同じ程度の変形でも、痛みの強さは人によって大きく違います。逆に、強い痛みを訴える人の画像がそれほど傷んでいないこともあります。この食い違いは古くから知られていて、変形性関節症を「軟骨がすり減る病気」とだけ理解することの限界を示しています。関節の痛みには、関節包や靱帯、筋、そして痛みを処理する神経系が関わっています。
この視点に立つと、運動の効果の説明も変わります。運動が痛みを減らすのは、軟骨を修復したからではなく、関節を支える筋の働き、動作の仕方、そして痛みの感じ方に働きかけているからだと考えるほうが、観察された事実と整合します。構造が戻らないことは、症状が変わらないことを意味しません。
同時に、効果の大きさを誇張しないことも必要です。100点尺度で3点から6点という差は、多くの人にとって「劇的に良くなった」と感じられる幅ではありません。それでも、副作用がほとんどなく、他の健康上の利益を同時にもたらす介入としては、十分に意味があります。第9回では、その「他の利益」を死亡率の側から見ます。
次回予告
第8回は「脳の加齢と運動——認知機能はどこまで守れるか」を扱います。観察研究では運動している人の認知機能の低下が緩やかに見える一方で、近年の大規模な介入試験では否定的な結果が続いています。初期の小さな試験で見えた効果がなぜ再現しないのか、脳の容積の変化と認知の成績はなぜ一致しないのかを見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|老化とは何か——生物学的年齢という考え方
- 第2回|有酸素能力の低下——運動で取り戻せる幅
- 第3回|筋はなぜ減るのか——加齢性筋減少の機序
- 第4回|ミトコンドリアと運動
- 第5回|テロメアと運動——期待と実測のずれ
- 第6回|慢性微小炎症——インフラメイジング
- 第7回|骨と関節の加齢——何が可逆で何が不可逆か(この記事)
- 第8回|脳の加齢と運動——認知機能はどこまで守れるか
- 第9回|運動量と死亡率——用量反応の疫学
- 第10回|総括——「アンチエイジング」の主張をどう読むか
出典
- Mohebbi R, Shojaa M, Kohl M, et al. Exercise training and bone mineral density in postmenopausal women: an updated systematic review and meta-analysis of intervention studies with emphasis on potential moderators. Osteoporosis International. 2023;34(7):1145-1178.
- Kerr D, Morton A, Dick I, Prince R. Exercise effects on bone mass in postmenopausal women are site-specific and load-dependent. Journal of Bone and Mineral Research. 1996;11(2):218-225.
- Kistler-Fischbacher M, Weeks BK, Beck BR. The effect of exercise intensity on bone in postmenopausal women (part 2): A meta-analysis. Bone. 2021;143:115697.
- Watson S, Weeks B, Weis L, Harding A, Horan S, Beck B. High-Intensity Resistance and Impact Training Improves Bone Mineral Density and Physical Function in Postmenopausal Women With Osteopenia and Osteoporosis: The LIFTMOR Randomized Controlled Trial. Journal of Bone and Mineral Research. 2019;34(3).
- Hartley C, Folland JP, Kerslake R, Brooke-Wavell K. High-Impact Exercise Increased Femoral Neck Bone Density With No Adverse Effects on Imaging Markers of Knee Osteoarthritis in Postmenopausal Women. Journal of Bone and Mineral Research. 2020;35(1):53-63.
- Van Ginckel A, Hall M, Dobson F, Calders P. Effects of long-term exercise therapy on knee joint structure in people with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Seminars in Arthritis and Rheumatism. 2019;48(6):941-949.
- Bricca A, Juhl CB, Steultjens M, Wirth W, Roos EM. Impact of exercise on articular cartilage in people at risk of, or with established, knee osteoarthritis: a systematic review of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine. 2019;53(15):940-947.
- Fransen M, McConnell S, Harmer AR, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee: a Cochrane systematic review. British Journal of Sports Medicine. 2015;49(24):1554-1557.
- Holden MA, Hattle M, Runhaar J, et al. Moderators of the effect of therapeutic exercise for knee and hip osteoarthritis: a systematic review and individual participant data meta-analysis. The Lancet Rheumatology. 2023;5(7):e386-e400.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。骨粗鬆症や変形性関節症の診断・治療方針は個別の判断が必要です。関節の腫れや熱感、夜間も続く痛み、急に歩けなくなった場合は自己判断せず医療機関にご相談ください。骨量が低いと指摘された方、関節の治療を受けている方、持病のある方、高齢の方が新しい運動や強度の高い運動を始めるときは、開始前に主治医に相談してください。






