連載「減量の科学」全10回の第9回です。
減量した体重は戻る。この経験則は広く共有されており、研究もおおむねそれを裏づけています。同時に、長く維持している人も確かに存在します。この二つをどう両立して理解するかが、この回の主題です。
扱うのは二種類の研究です。ひとつは、維持に成功した人を後から集めて特徴を調べる登録研究。もうひとつは、介入試験の参加者を長く追いかけてリバウンドの曲線を描く研究です。前者は「何をしていたか」を教え、後者は「平均的に何が起きるか」を教えます。役割が違います。
結論を先に書きます。介入試験の平均像は、終了後に緩やかな戻りが続くというものです。それでも介入群と対照群の差は数年残ります。一方、維持に成功した人たちの登録研究は、共通する行動を数多く見つけていますが、その設計上、行動が維持の原因だという証拠にはなりません。「維持できた人がしていたこと」と「維持するためにすべきこと」は、同じではありません。

成功者を集めた登録研究
この分野で最もよく引用されるのが、米国の体重管理登録です。13.6 kg以上の減量を1年以上維持している人が自発的に登録する仕組みで、1990年代から続いています。
Klem ML, Wing RR, McGuire MT, Seagle HM, Hill JO. A descriptive study of individuals successful at long-term maintenance of substantial weight loss. The American Journal of Clinical Nutrition. 1997;66(2):239-246.
初期の報告では、女性629名と男性155名が対象でした。平均で30 kg減らし、13.6 kg以上の減量を5年維持しています。減量の方法は半々で、半数強が何らかのプログラムを利用し、残りは自力でした。ほぼ77%が、減量の前に何らかのきっかけとなる出来事があったと答えています。報告された現在の摂取エネルギーは1日あたり5778 ± 2200 kJ、脂肪由来が24 ± 9%。身体活動による消費は週あたりおよそ11830 kJでした。そして42%が、維持のほうが減量より楽だったと答えています。
その後の総説で、ウィング(Wing)らは、体重の10%以上を意図的に減らし1年以上維持することを「成功」と定義すれば、過体重の人のおよそ20%がそれに該当すると述べています。登録者の平均減量は33 kg、維持期間は5年超。維持のために報告された行動は、低脂肪・低エネルギーの食事、規則正しい朝食、体重の自己測定、平日と週末で変えない食べ方、そして1日およそ1時間の身体活動でした。2年から5年維持できた人では、その後も続けられる見込みが大きく上がる、とも書かれています。
この「20%」という数字は、しばしば楽観の根拠として引かれます。ただし元の総説が置いている条件に注意が必要です。基準は「10%以上を1年以上」であり、大幅な減量でも長期の維持でもありません。基準を厳しくすれば割合は下がります。成功率の数字は、成功の定義とセットでしか読めません。
10年間の追跡も行われています。
Thomas JG, Bond DS, Phelan S, Hill JO, Wing RR. Weight-loss maintenance for 10 years in the National Weight Control Registry. American Journal of Preventive Medicine. 2014;46(1):17-23.
2,886名(78%が女性、平均年齢48歳)の追跡です。登録時の平均減量は31.3 kg(95%信頼区間 30.8〜31.9)、5年後で23.8 kg(23.2〜24.4)、10年後で23.1 ± 0.4 kg(22.3〜23.9)。10年後の時点でも、87%以上が最大体重から10%以上の減量を保っていると推定されています。戻りが大きかった人の特徴として、余暇の身体活動・食事の抑制・体重測定の頻度の低下、脂肪由来のエネルギー割合と脱抑制の上昇が挙げられました。
この設計が答えられないこと
これらの数字は印象的ですが、登録研究の限界を作った当事者たち自身が明記しています。
Hill JO, Wyatt H, Phelan S, Wing R. The National Weight Control Registry: is it useful in helping deal with our obesity epidemic? Journal of Nutrition Education and Behavior. 2005;37(4):206-210.
著者らはこう書いています——これは減量を試みた人々からの無作為標本ではないため、結果を過体重・肥満の人全体に一般化できる範囲は限られる。登録するのは、成功した人のうち、その事実を報告しようと思った人だけです。同じ行動をとって失敗した人は、そもそもデータに入りません。
問題は三つに整理できます。第一に、自己選択。成功者だけを集めた集団から「成功の条件」を抽出しても、その条件を満たしながら失敗した人の数が分からない以上、条件の有効性は評価できません。第二に、因果の向き。体重を維持できているから運動を続けられるのか、運動を続けたから維持できたのか、横断的なデータでは決められません。第三に、測定。体重も食事も活動量も自己申告であり、第1回で見た系統的な過少申告をそのまま含みます。
とはいえ、登録研究が無価値だということではありません。維持が可能であること自体を示した点、そして検証すべき仮説の候補を大量に提供した点に価値があります。問題は、その仮説が前向きの試験で検証されないまま、助言として流通してしまうことのほうにあります。
登録研究を横断的に集めたレビューでは、パイシャン(Paixão)らが米国・ポルトガル・ドイツ・フィンランド・ギリシャの5つの登録から52本の論文を集め、51の維持戦略を14の領域に分類しました。最も一貫して維持と正の関連を示したのは身体活動の増加です。ただし著者ら自身が、登録ごとに参加条件も手続きも異なることを限界として挙げています。
もう一点。登録研究が示しているのは「維持できている人がいる」という存在証明であり、その人数が母集団のどれくらいかは分かりません。分母が測れない以上、成功率の推定には使えないのです。役割としては、次に検証すべき仮説の供給源、と位置づけるのが妥当でしょう。

介入試験が描く曲線
では、無作為に割り付けて追いかけたときの平均像はどうか。
Nordmo M, Danielsen YS, Nordmo M. The challenge of keeping it off, a descriptive systematic review of high-quality, follow-up studies of obesity treatments. Obesity Reviews. 2020;21(1):e12949.
著者らは厳しい条件を設けました。追跡が3年以上、体重の5%以上を減らしている、追跡期間中は介入を続けていない、前向き設計、追跡開始からの脱落が30%未満。該当したのは、膨大な文献のうちわずか8件でした。その8件が示したのは、体重が治療前の水準に向かって戻っていく傾向です。著者らの結論は、質の高い追跡研究の大半において、長期の体重維持は達成されていない、というものです。
もっとも、これは「すべてが無に帰す」という意味ではありません。
Hartmann-Boyce J, Theodoulou A, Oke JL, et al. Association between characteristics of behavioural weight loss programmes and weight change after programme end: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2021;374:n1840.
249件の試験、59,081名のデータです。プログラム終了後の戻りは、介入群のほうが対照群より速く進みます(年あたり0.12 kgから0.32 kg速い)。それでも両群の差は、少なくとも5年は維持されていました。終了時点で1 kg多く減らしていた人ほど、その後の戻りも速い(年あたり0.13 kgから0.19 kg)という関係も見られます。金銭的な報酬を用いたプログラムでは戻りがさらに速く(年あたり1 kgから1.5 kg)、逆に研究終了後もプログラムを利用し続けられた場合は戻りが遅くなっていました。著者らの結論は、初期の減量が大きいほど戻りも速いが、それでも5年後の体重は低いままだ、というものです。
長期の大規模試験も同じ形を示します。
Look AHEAD Research Group. Eight-year weight losses with an intensive lifestyle intervention: the Look AHEAD study. Obesity (Silver Spring). 2014;22(1):5-13.
2型糖尿病のある過体重・肥満の成人5,145名を、集中的な生活習慣介入と通常ケアに割り付け、8年追跡した試験です。追跡完了率は両群とも88%以上。8年時点の体重減少は、介入群4.7% ± 0.2%、対照群2.1% ± 0.2%でした(P < 0.001)。初期体重の5%以上を減らしていたのは介入群50.3%、対照群35.7%(P < 0.001)。10%以上では26.9%と17.2%です(P < 0.001)。1年目に達成した減量のかなりの部分は戻りますが、8年後でも半数が5%以上の減量を保っていました。
この試験の解釈には注意も要ります。対象は2型糖尿病のある人で、介入は長期にわたり支援が続く設計でした。支援が終わったあとに何が起きるかは、別の問いです。また、8年時点の平均値は、大きく減らして維持した人と、減らせなかった人の混合です。平均の軌跡は、誰か一人の軌跡ではありません。
二つの研究の食い違いも、設計の違いで説明がつきます。ノルドモらは介入が終わったあとを厳しく切り出し、ハートマン・ボイスらは介入群と対照群の差に注目しました。「元に戻る」と「対照群との差は残る」は、同時に成り立ちます。前者は絶対値の話、後者は比較の話です。読むときに混ぜないことが大切です。
戻っても残るもの
体重が戻れば、得られた利益も消えるのか。この問いに答えた統合があります。ハートマン・ボイス(Hartmann-Boyce)らの別の解析は、行動的な減量プログラムの試験124件を、プログラム終了後の中央値28か月にわたって追跡しました。プログラム終了の1年後と5年後で、総コレステロールとHDLコレステロールの比はいずれも1.5ポイント低く、収縮期血圧は1.5 mmHgと0.4 mmHg低く、ヘモグロビンA1cはいずれも0.38ポイント低いままでした。体重が戻るにつれて差は縮みますが、消えてはいません。一方で、心血管疾患や2型糖尿病の発症そのものを減らしたという証拠は、より不確かだと結論されています。5年以上追跡した研究が少ないためです。減量と代謝指標の関係については別の記事にも整理があります。
| 研究の型 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| 成功者の登録研究 | 維持している人に共通する行動 | その行動が原因かどうか |
| 介入試験の長期追跡 | 割り付けた集団の平均的な軌跡 | 個人がどうなるか |
| 終了後の統合解析 | 差がどれくらい持続するか | 疾患の発症まで減らすか |
ここには一つ、説明の難しい非対称があります。体重は戻るのに、代謝指標の改善は部分的に残る。考えられる理由は複数あります。介入群では戻ったあとも食事の質や活動量が対照群より良いままかもしれない。脂肪の分布が変わったのかもしれない。あるいは、薬物治療の開始時期が群間で違ったのかもしれません。どれが効いているかは、現時点では分かっていません。

読み方の整理
三つ、書いておきます。第一に、「リバウンドするから無意味」も「維持できる人がいるから誰でもできる」も、どちらもデータの読み違いです。平均としては戻り、しかし差は数年残り、代謝指標の改善も部分的に残る。個人差は大きい。それが観察されていることのすべてです。
第二に、登録研究の行動リストを「守るべき規則」に翻訳しないこと。体重の自己測定が維持と関連していたとしても、それを義務として課すことが誰にとっても良いとは限りません。体重を頻繁に測ることが負担や苦痛になる人がいることは、別に検討されるべき問題です。
第三に、研究の限界です。登録研究は自己申告に依存し、脱落も追えません。介入試験は追跡が2年程度で終わるものが大半で、3年以上の質の高い追跡は数えるほどしかありません。脱落した人の体重は多くの場合、最後に測った値で代用されるか、解析から外れます。脱落した人ほど戻っている可能性が高いことを考えれば、報告されている維持率はおそらく楽観側に寄っています。この論点は最終回で正面から扱います。
最後に、この回の内容を実務の言葉に直しておきます。研究が示しているのは、減量そのものよりその後の年月のほうが長いという当たり前の事実です。数か月の介入で得た変化を、支援が終わったあとも一人で保ち続けることを前提にした設計は、そもそも無理があるのかもしれません。プログラムを継続して利用できた人で戻りが遅かったという所見は、その方向を示唆しています。ただしこれも観察された関連であり、因果として読むにはさらに検証が要ります。
次回予告
第10回は「総括——減量研究の限界」です。連載を通じて繰り返し出てきた方法論上の問題——自己申告の系統的な誤差、脱落の扱い、追跡の短さ、体重以外の転帰の測定不足、資金源、出版バイアス——をまとめ、第1回から第9回までの内容を「分かっていること」「条件つきで言えること」「分かっていないこと」に仕分けます。
この連載の全10回
- 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか
- 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
- 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
- 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式
- 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠
- 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
- 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
- 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持
- 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか(この記事)
- 第10回|総括——減量研究の限界
出典
- Klem ML, Wing RR, McGuire MT, Seagle HM, Hill JO. A descriptive study of individuals successful at long-term maintenance of substantial weight loss. The American Journal of Clinical Nutrition. 1997;66(2):239-246.
- Wing RR, Phelan S. Long-term weight loss maintenance. The American Journal of Clinical Nutrition. 2005;82(1 Suppl):222S-225S.
- Thomas JG, Bond DS, Phelan S, Hill JO, Wing RR. Weight-loss maintenance for 10 years in the National Weight Control Registry. American Journal of Preventive Medicine. 2014;46(1):17-23.
- Hill JO, Wyatt H, Phelan S, Wing R. The National Weight Control Registry: is it useful in helping deal with our obesity epidemic? Journal of Nutrition Education and Behavior. 2005;37(4):206-210.
- Paixão C, Dias CM, Jorge R, Carraça EV, Yannakoulia M, de Zwaan M, Soini S, Hill JO, Teixeira PJ, Santos I. Successful weight loss maintenance: A systematic review of weight control registries. Obesity Reviews. 2020;21(5):e13003.
- Nordmo M, Danielsen YS, Nordmo M. The challenge of keeping it off, a descriptive systematic review of high-quality, follow-up studies of obesity treatments. Obesity Reviews. 2020;21(1):e12949.
- Hartmann-Boyce J, Theodoulou A, Oke JL, Butler AR, Scarborough P, Bastounis A, Dunnigan A, Byadya R, Hobbs FDR, Sniehotta FF, Jebb SA, Aveyard P. Association between characteristics of behavioural weight loss programmes and weight change after programme end: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2021;374:n1840.
- Look AHEAD Research Group. Eight-year weight losses with an intensive lifestyle intervention: the Look AHEAD study. Obesity (Silver Spring). 2014;22(1):5-13.
- Hartmann-Boyce J, Theodoulou A, Oke JL, Butler AR, Bastounis A, Dunnigan A, Byadya R, Coppo M, Hobbs FDR, Sniehotta FF, Jebb SA, Aveyard P. Long-Term Effect of Weight Regain Following Behavioral Weight Management Programs on Cardiometabolic Disease Incidence and Risk: Systematic Review and Meta-Analysis. Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes. 2023;16(4):e009348.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。体重の増減を繰り返すことで気分の落ち込みや体調の変化が続く場合、体重や体型のことで頭がいっぱいになり日常生活に支障が出ている場合は、医療機関にご相談ください。糖尿病・高血圧・脂質異常症・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、食事や運動の内容を変える前に必ず主治医に確認してください。






