連載「減量の科学」全10回の第8回です。
体重が減るとき、減っているのは脂肪だけではありません。水分、グリコーゲン、そして筋肉を含む除脂肪組織も一緒に減ります。第2回で見たとおり、除脂肪体重は安静時代謝量の最大の規定因子ですから、その減少はエネルギー消費の低下にも直結します。高齢者では、筋量と筋力の低下そのものが生活機能の問題になります。
この回では、エネルギー制限下で失われる組織の内訳が何によって変わるのかを見ます。ただし前提として、ひとつ厄介な事情があります。除脂肪体重の変化は、それを測る装置の誤差と同じ桁で起きることが多いという事情です。
結論を先に書きます。レジスタンストレーニングをエネルギー制限に加えると、体重の減り方は変わらないまま、除脂肪体重の減少が抑えられ、脂肪の減少が増えます。この所見は統合解析で中程度から高い確実性と評価されています。タンパク質の量も同じ方向に働きますが、効果は小さい。一方、減量の速さと除脂肪体重の関係は、短期には見えても長期には消えます。そして測定の誤差は、これらの差より大きいことがあります。

レジスタンストレーニングを加えると
Binmahfoz A, Dighriri A, Gray C, Gray SR. Effect of resistance exercise on body composition, muscle strength and cardiometabolic health during dietary weight loss in people living with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2025;11(3):e002363.
過体重・肥満の成人を対象に、エネルギー制限にレジスタンストレーニングを加えた群と、エネルギー制限だけの群を比べた無作為化比較試験25件を統合した解析です。結果は三つに分かれます。
第一に、体重の減少には差がありませんでした(群間平均差 -0.32 kg、p = 0.35)。減量幅は運動併用群で -2.5 kgから -20.9 kg、食事のみの群で -0.7 kgから -20.4 kgと、どちらも大きく散らばっています。第二に、除脂肪体重の減少は運動併用群で抑えられました(群間標準化平均差 0.40、p = 0.0003、確実性は中程度)。第三に、脂肪量の減少はむしろ増えました(標準化平均差 -0.36、p < 0.00001、確実性は高い)。筋力も大きく改善しています(標準化平均差 2.36、p = 0.00001、確実性は低い)。ほかの心血管代謝指標には差がありませんでした。
個別の試験でも、同じ構図が観察されています。キャンベル(Campbell)らは、平均68歳の過体重の女性16名に、食事を管理した16週間の減量プログラムを行い、うち8名に週3回のレジスタンストレーニングを課しました。体重の減少は運動なし群 -5.8 ± 0.6 kg、運動あり群 -5.0 ± 0.2 kgと同程度、脂肪量の減少も同程度です。しかし除脂肪体重は、運動なし群で -1.6 ± 0.4 kg減ったのに対し、運動あり群では -0.3 ± 0.4 kgと変化しませんでした(群と時間の交互作用 P ≤ 0.05)。全身の窒素出納や筋タンパク質の合成速度には群間差がなく、機序の説明はついていません。
タンパク質を上乗せすると
第5回では、タンパク質の割合を上げても効果は小さいことを見ました。運動と組み合わせ、かつエネルギー不足を大きくした条件では、話が少し変わります。
Longland TM, Oikawa SY, Mitchell CJ, Devries MC, Phillips SM. Higher compared with lower dietary protein during an energy deficit combined with intense exercise promotes greater lean mass gain and fat mass loss: a randomized trial. The American Journal of Clinical Nutrition. 2016;103(3):738-746.
若い男性を、体重1 kgあたり1.2 gまたは2.4 gのタンパク質を摂る2群(各20名)に割り付け、4週間にわたって必要量からおよそ40%少ないエネルギーを与えた試験です。この間、全員が週6回、レジスタンストレーニングと高強度インターバルトレーニングを行いました。結果は、高タンパク質群で除脂肪体重が1.2 ± 1.0 kg増え、低タンパク質群の0.1 ± 1.0 kgより有意に大きいというものでした(P < 0.05)。脂肪量の減少も高タンパク質群で大きくなっています(-4.8 ± 1.6 kg 対 -3.5 ± 1.4 kg、P < 0.05)。運動の成績には群間差がありません。
ただしこれは、4つの区画に分けて体組成を推定する精密な方法を使い、食事を厳密に管理し、強度の高い運動を課した短期の試験です。日常の条件にそのまま当てはまるとは限りません。体脂肪の少ない人に絞ったレビューでは、ヘルムズ(Helms)らが6件・13の試験群を検討し、体脂肪率はすべての群で0.5%から6.6%減った一方、除脂肪体重は13群のうち9群で0.3 kgから2.7 kg減っていたと報告しています。除脂肪体重を減らさずに済んだ6群は、もともと体脂肪が多いか、エネルギー不足が小さいか、運動の刺激が新しかったかのいずれかでした。

速く減らすと、より多く失うのか
「ゆっくり減らしたほうが筋肉が残る」という説は広く流通しています。検証した試験があります。
Vink RG, Roumans NJ, Arkenbosch LA, Mariman EC, van Baak MA. The effect of rate of weight loss on long-term weight regain in adults with overweight and obesity. Obesity (Silver Spring). 2016;24(2):321-327.
過体重・肥満の57名を、低エネルギー食で緩やかに減らす群と、超低エネルギー食で短期間に減らす群に割り付け、減量後に体重を安定させる期間を置き、9か月追跡しました。総減量はほぼ同じです(-8.2 kg 対 -9.0 kg、P = 0.24)。追跡後の体重の戻りにも差がありません(4.2 kg 対 4.5 kg、P = 0.73)。しかし失った体重に占める除脂肪体重の割合は、速く減らした群で8.8%、緩やかに減らした群で1.3%と大きく違いました(P = 0.034)。そしてこの割合は、その後の体重の戻りと相関していました(r = 0.325、P = 0.018)。
ところが、同じ問いを複数の試験から整理すると、印象は変わります。
Fogarasi A, Gonzalez K, Dalamaga M, Magkos F. The Impact of the Rate of Weight Loss on Body Composition and Metabolism. Current Obesity Reports. 2022;11(2):33-44.
フォガラシ(Fogarasi)らは、同じ減量幅を速い速度と遅い速度で達成した13件(週あたり0.2 kgから3.2 kgの範囲)を比較し、速い減量では減量の途中で除脂肪体重の減少が大きく安静時エネルギー消費の低下も大きいが、その差は新しい体重で2週から4週安定させた後には薄れ、9か月から33か月後の体重の戻りにも、戻った組織の内訳にも影響しなかったと結論しています。腹囲、内臓脂肪、肝脂肪、血圧、脂質、インスリン、アディポカインの反応の差も些細だと述べています。極端な制限そのものの問題については別の記事も参考になります。
二つの報告は矛盾しません。ヴィンクらが測ったのは減量直後の状態で、フォガラシらが指摘したのは、その差が体重を安定させた後には薄れるという点です。減量の最中に測った体組成は、まだ落ち着いていない——第2回で代謝適応について見たのと同じ構図が、ここでも繰り返されています。急いで減らすこと自体には別の問題(栄養の不足、胆石、生活への負担)がありますが、それは「筋肉が失われるから」とは別の理由です。
測定の誤差という壁
ここまでの数字を読むとき、前提として知っておくべきことがあります。除脂肪体重の変化を検出するのは、想像以上に難しいという事実です。
Moon JR, Stout JR, Smith-Ryan AE, et al. Tracking fat-free mass changes in elderly men and women using single-frequency bioimpedance and dual-energy X-ray absorptiometry: a four-compartment model comparison. European Journal of Clinical Nutrition. 2013;67(Suppl 1):S40-S46.
65歳以上の男女72名について、生体電気インピーダンス法(BIA)9式と二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を、4区画モデルという参照法と比べた研究です。1時点の推定値としては、どちらも高い相関を示しました(r = 0.79から0.95)。ところが変化を追跡する精度になると、参照法と一致したのはBIAで25%、DXAで27%にとどまりました。著者らの結論は明快です——除脂肪体重の変化が5 kg未満の場合、個人の結果は慎重に解釈すべきである。集団としての追跡なら、どちらも使える、とも述べています。
Dzator S, Weerasekara I, Shields M, Haslam R, James D. Agreement Between Dual-Energy X-ray Absorptiometry and Bioelectric Impedance Analysis for Assessing Body Composition in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clinical Journal of Sport Medicine. 2023;33(5):557-568.
装置間の系統的なずれも小さくありません。競技者を対象とした統合では、BIAはDXAより除脂肪体重を平均2.78 kg(1.38〜4.18)多く見積もっていました(P < 0.001)。相関は高いものの、一致の限界は広い。著者らは、競技者の体組成評価においてBIAをDXAの代わりに使うべきではないと結論しています。
同一の装置で繰り返し測ったときの精度も検討されています。オリヴァー(Oliver)らが40歳から65歳の女性44名で測った変動係数は、DXAで体脂肪率1.17%、脂肪量1.14%、除脂肪体重0.72%、BIAで1.25%、1.26%、0.57%でした。数字としては良好です。それでも装置をまたいだ個人単位の一致は不良で、一致の限界は広く、比例的な偏りも見られました。
| 介入 | 体重 | 除脂肪体重 | 確実性 |
|---|---|---|---|
| レジスタンストレーニングの追加 | 差なし | 減少が抑えられる | 中程度 |
| タンパク質の上乗せ(運動併用) | 差なし | 短期の試験で増加 | 試験が少なく限定的 |
| 減量を速くする | 同じ幅なら同じ | 途中では失うが安定後に差は薄れる | 研究間でばらつく |
ここから導かれる実務上の含意は、装置の数字をどう扱うかです。同じ装置で、同じ条件(時刻、食事、水分、運動の有無)をそろえて繰り返し測るなら、変化の向きはある程度読めます。しかし装置を変えたら、過去の値と比べてはいけません。そして、数か月で数百グラムという変化を個人の水準で論じることには、そもそも無理があります。

読み方の整理
まとめます。エネルギー制限にレジスタンストレーニングを加えることが、失う組織の内訳を変えるという所見は、この連載で扱ってきた論点のなかでは比較的そろっています。統合解析で確実性が中程度から高いと評価された項目は多くありません。
一方で、注意も要ります。統合された効果量は標準化平均差であって、キログラムに直せば小さな値です。そして測定の話で見たとおり、その小さな差は装置の誤差と重なります。個別の試験で「除脂肪体重が0.5 kg守られた」と書かれていても、それが本当に起きたのか測定のばらつきなのかは、区別しにくい。
研究の限界も挙げます。ここで見た試験の多くは数週間から半年ほどの長さで、高齢者や競技者など特定の集団に偏っています。除脂肪体重は筋肉だけでなく水分も含むため、エネルギー制限の初期にはグリコーゲンとそれに伴う水分の減少が数字を動かします。「除脂肪体重が減った」ことと「筋肉が減った」ことは、同じではありません。そして、これらの介入が長期の機能や健康にどう効くかを測った研究は、ほとんどありません。
次回予告
第9回は「リバウンド——維持できた人は何をしていたか」を扱います。減量を長く維持できた人たちを集めた登録研究が何を示し、その設計がなぜ因果の証拠にならないのか。そして介入試験の長期追跡が描くリバウンド曲線と、その中でも残る利益を見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|エネルギー収支——「カロリー計算」はどこまで正しいか
- 第2回|体重が落ちない時期——代謝適応という現象
- 第3回|食欲のホルモン——レプチン・グレリン・GLP-1
- 第4回|食事の型を比べる——低脂質・低糖質・地中海式
- 第5回|タンパク質と満腹感——高タンパク食の証拠
- 第6回|食べる時間——時間制限食と体内時計
- 第7回|運動で痩せるのか——エネルギー代償という壁
- 第8回|筋量を守りながら減らす——除脂肪体重の保持(この記事)
- 第9回|リバウンド——維持できた人は何をしていたか
- 第10回|総括——減量研究の限界
出典
- Binmahfoz A, Dighriri A, Gray C, Gray SR. Effect of resistance exercise on body composition, muscle strength and cardiometabolic health during dietary weight loss in people living with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2025;11(3):e002363.
- Campbell WW, Haub MD, Wolfe RR, Ferrando AA, Sullivan DH, Apolzan JW, Iglay HB. Resistance training preserves fat-free mass without impacting changes in protein metabolism after weight loss in older women. Obesity (Silver Spring). 2009;17(7):1332-1339.
- Longland TM, Oikawa SY, Mitchell CJ, Devries MC, Phillips SM. Higher compared with lower dietary protein during an energy deficit combined with intense exercise promotes greater lean mass gain and fat mass loss: a randomized trial. The American Journal of Clinical Nutrition. 2016;103(3):738-746.
- Helms ER, Zinn C, Rowlands DS, Brown SR. A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism. 2014;24(2):127-138.
- Vink RG, Roumans NJ, Arkenbosch LA, Mariman EC, van Baak MA. The effect of rate of weight loss on long-term weight regain in adults with overweight and obesity. Obesity (Silver Spring). 2016;24(2):321-327.
- Fogarasi A, Gonzalez K, Dalamaga M, Magkos F. The Impact of the Rate of Weight Loss on Body Composition and Metabolism. Current Obesity Reports. 2022;11(2):33-44.
- Moon JR, Stout JR, Smith-Ryan AE, Kendall KL, Fukuda DH, Cramer JT, Moon SE. Tracking fat-free mass changes in elderly men and women using single-frequency bioimpedance and dual-energy X-ray absorptiometry: a four-compartment model comparison. European Journal of Clinical Nutrition. 2013;67(Suppl 1):S40-S46.
- Dzator S, Weerasekara I, Shields M, Haslam R, James D. Agreement Between Dual-Energy X-ray Absorptiometry and Bioelectric Impedance Analysis for Assessing Body Composition in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clinical Journal of Sport Medicine. 2023;33(5):557-568.
- Oliver CJ, Del Vecchio L, Climstein M, Rosic N, Robinson S, Myers S. Precision, least significant change and validity of body composition estimates from bioelectrical impedance analysis, 3D-optical scanning, and dual X-ray absorptiometry. Clinical Nutrition ESPEN. 2026;73:102959.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自己流の極端な食事制限は避けてください。意図しない体重や筋力の低下が続く場合、立ち上がりや歩行がしづらくなった場合は、医療機関にご相談ください。心疾患・整形外科的な痛み・腎疾患・糖尿病・摂食障害などの持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、高齢の方は、運動やタンパク質摂取量を大きく変える前に必ず主治医に確認してください。






